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Proxmoxとは?基本的な構成や機能とVMWareとの違いについて徹底解説

Category: 入門編

2025.07.27

新たな仮想化基盤として注目を集めるProxmoxを徹底解説

VMware の価格改定や製品構成の変化を背景に、仮想化基盤の見直しを検討する企業が増えています。中でも注目されているのが、無償で利用できるオープンソース(以下、 OSS )の仮想化基盤 Proxmox です。 Proxmox は、 VM とコンテナに対応した Debian ベースの OSS 仮想化基盤で、VMware と同等の機能を備えています。本記事では Proxmox の構成や機能、 VMWare との違い、 Proxmox 導入時に考慮すべき点について解説します。

1. Proxmoxとは

Proxmox は仮想マシンとコンテナを Web ベースの GUI から一元管理できる、OSS の仮想化プラットフォームです。正式には Proxmox VE ( Proxmox Virtual Environment )と呼ばれ、 Debian Linux のカーネルを使用しています。カーネルモジュールに組み込まれた KVM ( Kernel-based Virtual Machine )と LXC ( Linux Containers )によって VM とコンテナ双方を仮想化できる点が特徴です。

基本構成と仕組み

<Proxmox のアーキテクチャ>
Proxmox のアーキテクチャ

Proxmoxの 構成要素は以下のとおりです。

Proxmoxノード

Proxmox をインストールした1台の物理マシンをノードと呼び、各ノード上で VM やコンテナが動作します。

KVM

Linux カーネルに組み込まれたハイパーバイザー型の仮想化技術で、QEMU ( Quick Emulator )と組み合わせてVM環境を提供します。QEMU はハードウェアのエミュレーター機能で、 Linux で仮想化基盤を提供します。Windows や Linux などのOSを完全仮想化し、 CPU やメモリなどを柔軟に割り当て可能です。

LXC(Linux Containers)

Linux カーネルベースのコンテナ向け仮想化技術で、軽量かつ高速に起動する点が特長です。Linux 専用ですが、省メモリで物理リソースを効率的に活用できます。

管理ツール(Web GUI)

ブラウザから管理画面にアクセスできます。VM の作成・操作、ストレージ設定、バックアップ管理などを GUI によって操作可能です。

メリット

Proxmox には以下のようなメリットがあります。

無料で仮想基盤を構築できる

商用ライセンス不要で、コストを大幅に削減できるため、特に中小企業にとっては、初期費用を抑えながら導入できる点が魅力です。

仮想マシンとコンテナ両方に対応している

VM とコンテナを Proxmox で使い分けできます。VMware の場合、コンテナ利用のために追加構成が必要です。一方、 Proxmox は Linux ネイティブの LXC 技術を採用しているため、追加構成なしでコンテナをすぐに利用できます。

多様なストレージに対応している

ZFS や Ceph などに対応し、冗長構成やスナップショット、レプリケーションが可能です。その他、 iSCSI、 NFS 、 SMB / CIFS など主要プロトコルや、 POSIX 準拠のファイルシステムを実現するCephFS 、 GlusterFS にも対応し、柔軟なストレージ構成が可能です。

クラスタと高可用性(HA)機能も無料利用できる

複数ノードによる冗長構成を無償で構築が可能です。共有ディスク付きのクラスタ構成で HA を利用すると、ノード障害時も自動的に別ノードで VM を起動します。

WebベースのGUIで直感的な操作が可能

インストール後すぐに GUI で仮想マシンやコンテナを管理できます。直観的でわかりやすく、 VMware に似た操作感で扱いやすい点が特徴です。Proxmox VE モバイルによりスマートフォンからもアクセス可能です。

2. VMwareとの違い

<Proxmox と VMware の違い>
Proxmox と VMware の違い

Proxmox は VMware と同等の機能を備えているものの、両者には以下のような違いがあります。

項目 Proxmox VMware
ライセンス OSS (無償で利用可能)
※エンタープライズサポートは有償
商用ライセンス(有償)
仮想マシン管理 KVM + QEMU ESXi
コンテナ対応 LXC 別途 VIC ( vSphere Integrated Containers )の導入が必要
ストレージソリューション Ceph VMware vSAN
高可用性(HA) 標準機能 VMware HA
バックアップ機能 標準機能(簡易バックアップ)
Proxmox Backup Server と統合可能
サードパーティ製バックアップソフトウェアツールの使用
管理ツール Web GUI 、 CLI 、スマートフォン( Android ) ローカルベースの GUI (要インストール)、 CLI
※ Web ベースの GUI の場合 vCenter が別途必要
拡張性(API) Linux ベース( CLI /スクリプト可)、 REST API vSphere API

Proxmox は VM とコンテナを扱えるのに対して、 VMware は標準で扱えるのは VM のみでコンテナを扱う場合は VIC の導入が必要です。

可用性については、 Proxmox は無償で HA 構成が可能ですが、 VMware は有償版である必要があります。ストレージ面では、 Proxmox は多様なストレージに対応する一方、 VMware は、追加設定や外部ツールが必要です。

バックアップ機能は、 Proxmox 単体では簡易的なものに限られ、高度なバックアップには他のソフトウェアとの連携を考慮する必要があります。

3. Proxmox導入のハードルとその対策

Proxmox を導入する際の課題と対策は以下のとおりです。

日本語情報・事例不足

Proxmox は日本国内での大規模商用導入事例がまだ限られており、日本語の技術情報も他製品に比べると少なめです。一方で Proxmox は代理店や支援企業が存在するため、そうした外部リソースを有効活用することがおすすめです。

Linux知識の壁

Proxmox は Linuxカーネルをベースにしているため、管理には Linux の知識やスキルを持った担当者が必要です。 Linux に対応できる人員の育成や運用委託・代理店支援の活用を検討しましょう。

更新・アップデート管理

Proxmox は無償利用向けのアップデートソフトもあります。しかし、動作検証が十分でない可能性があり、障害時は自己解決が求められます。安定した環境で運用する場合はカスタマーサポートを受けられる有償サポートを検討しましょう。

高度な管理機能の限定的な提供

Proxmox には基本的なバックアップ機能はありますが、大規模な環境や高可用性を求める場合は、 Proxmox Backup Server 、 veeam といった他のバックアップソリューションとの併用を考慮することが必要です。

4. Proxmox導入の検討ステップ

<Proxmox 導入時のステップ>
Proxmox 導入時のステップ

Proxmox を導入する際には以下のステップを経て実施します。

ステップ1:現行VM環境の棚卸し

以下の観点で現行環境と要件の棚卸を実施します。

  • インフラ構成(サーバー、ストレージ、ネットワークなどの物理・論理構成)
  • 仮想マシン情報(VM数、用途、リソース( CPU /メモリ/ディスク)、 OS 種別、IPアドレスなど)
  • 利用中の機能(バックアップ、スナップショット、 HA 、ライブマイグレーションなど)
  • 非機能要件(可用性、性能、セキュリティ、管理・監視体制など)
  • VMware のライセンス状況、サポート契約期限など

現行環境の棚卸を漏れなく実施することが重要です。

ステップ2:PoC(概念実証)での動作確認

次に PoC ( Proof of Concept )を実施します。

PoC では以下の点を中心に評価を行います。

評価項目 実施内容
Proxmox の基本機能 VM /コンテナ作成、起動、停止、バックアップなど基本機能が問題なく動作するか、操作性に支障がないか確認
独自機能の理解 Proxmox Backup Server との連携などが業務改善に効果があるか確認
VMware 機能との比較検証 VMware で利用している機能をどこまで移行後も維持できるか確認し、運用変更が必要な点を整理
新たな価値・代替案の確認 Proxmox に移行することで得られる新たな価値や、 VMware で実現できなかった改善点を把握

PoC では Proxmox と現行環境の共通点、現行環境との差異といった点について十分な検証を行う必要があります。

ステップ3:運用体制の整備とサポート検討

PoC と並行して、監視・バックアップ・セキュリティなどの運用体制の整備、管理者向けの教育を実施することも重要です。加えて、 Proxmox の有償サブスクリプションや代理店支援の活用も含めた保守体制の検討を行います。

ステップ4:本番移行計画の策定と実行

PoCの実施により導入の可否を評価したのち、本番移行計画の策定と移行を実施します。移行計画では以下のような点を考慮します。

  • 移行方法の検討(一括移行、並行移行など)
  • 移行手順
  • 動作検証手順
  • 問題が発生時の切り戻しや代替手段

なお、 VMware ESXi からの移行においては、仮想マシンの稼働を停止せずに移行できる Live Import 機能もあり、業務影響を最小限に抑えた移行が可能です。

移行実施時にはチェックポイントを設けて進捗管理することが重要です。

5. まとめ

Proxmox は Debian カーネルをベースとした仮想化基盤で VM とコンテナを取り扱えます。オープンソフトウェアで無償利用できるほか、有償のサブスクリプションもある点が特徴です。さらに、簡易バックアップ、スナップショットが利用でき、さまざまなストレージにも対応しています。

一方で、 VMware と比べてサポート面での課題があり、導入時には VMWare との機能差異を理解するために PoC を実施することが重要です。

こうした点を考慮するうえで、導入時には適切なサポートを受けることがポイントです。弊社は OSS の知見が高く、環境に応じた最適な導入支援をご提供します。導入を検討する際には、ぜひ弊社にご相談ください。

Tag: Proxmox

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