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仮想化基盤Xenとは?特徴やVMwareとの違い、移行計画のポイントと手順を解説

Category: 入門編

2025.08.02

高パフォーマンスと OSS による柔軟性を備えた、VMware からの移行先候補

Broadcom による VMware の買収後、 VMware 製品群でライセンスポリシーの変更が続いています。その影響もあり、初期費用を抑えやすく、カスタマイズ性も高いOSS (オープンソースソフトウェア)系の仮想化基盤に注目が集まっています。

Xen は優れた性能と OSS による柔軟性を備えた仮想化基盤であり、 VMware からの移行先候補の一つです。

本記事では Xen の特徴や VMware との違い、 VMware から移行する際の計画策定ポイントや移行手順について解説します。

1. OSS仮想化基盤Xenとは?

Xen は複数の仮想マシンを並行して実行・管理するための仮想化基盤です。

まずは Xen の基本的な機能や特徴、 VMware の移行先としての有効性を解説します。

Xenの機能

Xen は CPU やメモリなどのハードウェアリソースを抽象化して複数の仮想マシンに割り当て、それぞれの仮想マシンが効率的に独立して動作できるようにします。

また、以下のような主要な仮想化機能を、OSSツールや商用ディストリビューションと連携することで実現可能です。

  • 稼動中のままで仮想マシンを別サーバーへ移動させる「ライブマイグレーション」
  • サーバー障害時に仮想マシンを別の正常なサーバーに自動的に移動させる「高可用性( HA )」

Xenの特徴

Xen は、管理ドメイン( dom0 )と呼ばれる特別な仮想マシンを立て、ハードウェアへのアクセスや他の全ての仮想マシン( domU )の管理を行います。

<Xen ハイパーバイザ・アーキテクチャ>
Xen ハイパーバイザ・アーキテクチャ

仮想化の方式として以下の2種類をサポートしています。

方式 特徴
準仮想化(PV)
  • 高いパフォーマンスを発揮しやすい
  • ゲストOSの変更が必要
完全仮想化(HVM)
  • 互換性が高く、商用OSにも対応しやすい
  • ゲスト OS への変更は不要

VMwareの移行先としてXenが有効な理由

OSSならではの柔軟性に加え、移行性や性能面でも優れた特徴を備えています。

  • OSS の移行ツール( qemu-img )や、サードパーティ製の移行ツール( XenServer Conversion Manager )があり、 VMware からの移行が容易です。
  • Xen の準仮想化は、VMware で実現可能な完全仮想化と比較してオーバーヘッドが少なく高いパフォーマンスを発揮します。
  • オープンソースの柔軟性によりプロプライエタリな製品に縛られず、将来的な技術やベンダー選択の自由度が高いと言えます。

2. XenとVMwareとの違い

仮想化基盤を選定するうえで、XenとVMwareの違いを把握することは重要です。ここでは、Xen と VMware を3つの観点から比較します。

環境や機能の違い

VMware はGUIベースの統合管理機能が充実していますが、 Xen では必要に応じて別途ツールで補完する点が異なります。

VMware Xen
仮想化方式 主に完全仮想化。幅広いOSと高い互換性を確保。 準仮想化と完全仮想化の両方をサポートする。
軽量な構成や性能重視の用途にも柔軟に対応。
管理方式 専用の管理サーバー( vCenter Server )にて GUI ベースの一元管理が可能。 dom0 を介して CLI で管理。
GUI 管理は XenCenter など、主にベンダー提供の有償ツールで可能。
機能の範囲 高可用性・ライブマイグレーション・自動化など、エンタープライズ向け機能が充実。 仮想化の基本機能に特化。高度な管理は別途ツールで補完。

ライセンスとコストの違い

VMware のサブスクリプションベースのライセンスと Xen のオープンソースライセンスとで、ユーザーの自由度の観点で違いがあります。

VMware Xen
基本ライセンス 製品毎の商用ライセンス(改変・再配布不可)⇒自由度が低い オープンソースライセンスのひとつである GPLv2(自由に改変・再配布可能)⇒自由度が高い
提供形態 商用製品(サブスクリプション) オープンソースソフトウェア(無償利用可能)
費用 サブスクリプション費用、年間保守費用など ソフトウェア費用は基本的に無償
必要に応じて有償サポートを選択

運用面の違い

運用面においては、 GUI による効率的な運用を重視するなら VMware 、柔軟な構成と自動化を求める場合は Xen などの違いがあります。

VMware Xen
管理ツール vCenter Server などの有償製品。ほとんどの操作を GUI で行える。 オープンソースまたはベンダー提供の有償ツール。
高度な操作や自動化には CLI が頻繁に用いられる。
パッチの提供 ベンダーによる計画的な実施。 ディストリビューションに大きく依存。
サポート 有償のベンダーサポート コミュニティサポート、または有償のベンダーサポート

3. VMwareからXenへの移行計画のポイント

移行計画では Xen のシステム構成、運用手順と体制、ライセンスと保守サポートを検討します。

Xenのシステム構成

dom0 に十分なリソースを割り当てられるようにホストマシンのスペックを検討します。検討の際は公式の互換性リストをチェックしましょう。

高可用性( HA )やライブマイグレーションには iSCSI 、 Fibre Channel などによる共有ストレージが必要です。単一障害点とならないようストレージ側の冗長化も確保しましょう。

<Xenでのシステム二重化構成例の図解>
Xenでのシステム二重化構成例の図解

※参考:XenServer Hardware Compatibility List

Xenでの運用手順と体制

他の仮想マシンを管理する dom0 は非常に重要です。 dom0 の動作ログの収集と分析ができる仕組みやリソース監視体制を計画しましょう。

運用やトラブルシューティングでは CLI コマンドが多く用いられ、 Xen 固有の知識も必要とされます。ノウハウを持つ技術者を確保するか、既存メンバーに教育を施すのか、外部ベンダーも考慮に入れた上で運用体制を考える必要があります。

ライセンスと保守サポート

OSS 選択の場合、ライセンス GPLv2 で提供される Xen Project Hypervisor を使用し、自力または外部ベンダーによって構築・運用していくことになります。商用ディストリビューションでは独自の商用ライセンスを持つ XenServer があり、有償サポートを受けられます。

それらを考慮してどちらを選択するか検討しましょう。

※参考:XenServer ライセンス概要

4. VMwareからXenへの移行手順

移行手順の概要と要点を解説します。

<移行の大まかな流れ>
移行の大まかな流れ

VMware での準備

移行プロセスをシンプルにするため、仮想マシンのスナップショットを全てコミットした後に仮想マシンをシャットダウンします。これによりデータの整合性が確保されます。

仮想ディスクの変換

VMware 仮想マシンのディスクイメージである VMDK ファイルを、 qemu-img や XenServer Conversion Manager を用いて Xen 形式に変換します。

  • qemu-img:CLI ベースのディスク変換ツール。柔軟性が高いが Linux コマンド操作が必要。
  • XenServer Conversion Manager:Citrix 製 GUI ツール。操作性は高いが、 Xen 環境に依存する。

qemu-img 利用時は CLI 操作が求められます。 XenServer では GUI での操作が可能ですが、いずれにしても Xen に関する知識は必要になります。

Xen 環境での仮想マシン作成

変換したディスクを使って、xl コマンドやGUIツールの XenCenter を用いて仮想マシンの作成を行います。仮想マシンの構成ファイルにて、メモリ、CPU、ディスク、ネットワークの設定を実施します。

その際、仮想マシンの MAC アドレスが変更されるとネットワーク設定が自動構成されないことがあり、その場合は手動設定を行なう必要があるので注意しましょう。

起動と動作確認

仮想マシンを起動し、アプリケーションの動作確認やログの確認を行ないます。一部のアプリケーションはハードウェアの変更を感知して再認証を求める場合があります。

5. まとめ

ここまで Xen の特徴や VMware との違い、移行計画と移行のポイントについて解説しました。

Xen は VMware の移行先として優れた選択肢ですが、運用には技術的ノウハウが求められます。安定した運用と迅速な問題解決のために、保守やサポートを相談できるベンダーの活用をお勧めします。

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Tag: Xen

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