Managed Service Column <システム運用コラム>

vSphere HAとは?他機能との違いや有効化手順を解説

Category: 入門編

2025.10.31

VMware製品のライセンス改定を受けての今後の選択肢も紹介

vSphere HA ( High Availability ) は、 ESXi ホストの障害で VM (仮想マシン)が停止してもほかの正常なホスト上で自動的に再起動させ、システムのダウンタイムを最小化する機能です。 vSphere Client から有効化でき、業務継続性の向上や運用コスト削減につながります。

一方で、 VMware のライセンス体系が大きく変化したことから、コストや将来性を考慮し、 vSphere HA と同等の可用性機能を備えた他社製品への移行を検討するケースも増えています。本記事では、 vSphere HA の仕組みとメリットに加え、ライセンス事情や代替案についても解説します。

1. vSphere HAとは

vSphere HA とは、 ESXi ホストの障害などで VM が停止しても、別の正常な ESXi ホスト上で自動的に再起動する機能です。 VM のダウンタイムを最小限に抑え、システムへの影響を軽減できます。

vSphere HAは「停止した VM をそのまま別のホストで再稼働させる」仕組みであり、「無停止で処理を引き継ぐ」わけではありません。 VM を再起動するための時間(ダウンタイム)が発生するため、ダウンタイムを許容できないケースでは、後述する vSphere FT の活用が必要です。

vMotionとの違い

vMotion とは、稼働中の VM を無停止で別の ESXi ホストへ移行するライブマイグレーションの機能です。

vMotion ではメモリや実行中のプロセス情報を転送し、ユーザーにダウンタイムを意識させずにホスト移動ができます。 ESXi ホストが停止するタイミングが決まっている場合、事前に vMotion をしておくことで、ダウンタイムをほぼ 0 に抑えられます。

一方の vSphere HA は、ホスト障害が発生した際に停止した VM を別ホストで再起動する仕組みであり、無停止での移行は行いません。

手動での負荷分散や計画停止を行いたい場合は vMotion 、障害発生後に自動復旧を図る場合は vSphere HA と、目的に応じて使い分けましょう。

vSphere FTとの違い

vSphere FT ( Fault Tolerance )とは、 VM の実行状態をリアルタイムで別ホストのセカンダリ VM に同期し、プライマリと完全に同一の状態を維持し続ける機能です。

FT では事前に VM が載る ESXi ホストのプライマリとセカンダリを事前に決めておきます。万が一プライマリに急な障害が発生しても、セカンダリが即座に処理を引き継ぐため VM のダウンタイムは発生しません。

一方、 vSphere HA は障害発生後に VM を再起動するためダウンタイムが生じます。完全な無停止稼働による高い信頼性を求める場合は FT 、一定のダウンタイムを許容しつつ自動復旧したい場合は HA が適しています。

ただし FT は、プライマリとセカンダリを同期させるため、CPU、メモリ、ネットワーク帯域などのリソース消費が大きい点がデメリットです。高速ネットワークも必要で、設計の難易度が高くなります。 HA は FT に比べてダウンタイムが生じる分、システムの信頼性は劣りますが、リソース消費は FT ほど激しくないことから、リソース消費とシステム信頼性のバランスが取れた機能といえます。

<vSphere FTの仕組み>
vSphere FTの仕組み

vSphere DRSとの違い

vSphere DRS ( Distributed Resource Scheduler )とは、クラスタ内のリソース使用状況を監視し、 VM を最適なホストへ自動的に移動させる機能です。

主な目的はリソースの均等化と負荷分散であり、障害時の自動復旧は行いません。 vSphere HA はホスト障害時に VM を自動復旧する機能のため、両者を組み合わせることでシステムの信頼性向上につながります。

<vSphere DRSの仕組み>
vSphere DRSの仕組み

2. vSphere HAの有効化手順

vSphere HA は vSphere Client から有効化できます。具体的な手順は以下のとおりです。

  1. vSphere Client にログイン
  2. インベントリ画面でクラスタを選択し、構成をクリック
  3. 「 vSphere の可用性」を選択し、編集画面で vSphere HA をオン
  4. 「 OK 」で設定を保存

上記の手順のみで、クラスタ全体の vSphere HA を有効化できます。ホスト単位や VM 単位での有効化はできず、クラスタ単位のみ可能です。

3. vSphere HAのメリット

vSphere HA を利用する主なメリットを紹介します。

障害発生時の自動復旧

vSphere HA は、ホスト障害が発生して VM が停止した場合、自動的にクラスタ内の別ホストで再起動します。従来は管理者が手作業で行っていた障害検知から復旧作業までの対応が自動化され、復旧スピードと確実性の向上を実現可能です。

ダウンタイム短縮と業務継続性の向上

vSphere HA により、障害発生時の復旧が自動化され、ダウンタイムを最小限に抑えられます。結果として、業務システムやサービスの停止によるユーザーへの影響を軽減でき、企業全体の業務継続性が高まるでしょう。

特に、顧客向けサービスを提供している企業にとって、ダウンタイムの短縮は信頼性向上に直結します。ただし、 vSphere HAは完全な無停止を保証するものではないため、必要に応じて vSphere FT などの機能で補うことを検討しましょう。

管理工数の削減

vSphere HA を導入すると、管理者の手作業を大幅に削減できます。

従来の復旧では、管理者が障害の検知から代替ホストの選定、 VM の再起動までを手作業で行わなければならず、多大な時間と労力が必要でした。 vSphere HA で一連の復旧プロセスを自動化すれば、これらの作業が不要となり、効率的な管理が可能です。

結果として、コストを抑えながら安定したシステム運用が実現し、リソースをより付加価値の高い業務に割けるようになります。

4. vSphereのライセンス体系

VMware 製品のライセンス体系は大きく変更され、従来の永続ライセンスからサブスクリプション型へと移行しました。改定によって長期的なコスト増加や柔軟性の低下を懸念する企業も多く、対策として vSphere HA と類似の可用性機能を備えた他社製品に移行する動きも見られます。

代表的な代替製品は以下のとおりです。

製品名 特徴 メリット
Microsoft Hyper-V Windows Server 標準機能としてクラスタリングとフェイルオーバー機能を搭載 Microsoft 製品との高い親和性が特徴
Proxmox VE オープンソースだが HA クラスタ機能を標準(追加コストなし)で搭載 低コストでの可用性確保が可能
Nutanix AHV VMHA ( VM High Availability )という vSphere HA と類似の機能を搭載 ハイパーコンバージドインフラのため、ストレージやネットワークを含めた単一管理が可能

上記の製品への移行によって、コストを抑えながら vSphere HA と類似の機能を利用し、可用性を維持したシステム運用を実現できる可能性があります。

5. まとめ

vSphere HAは、障害時に VM を自動的に再起動し、システムのダウンタイムを最小限に抑える可用性機能です。業務への影響を軽減できるほか、管理工数の削減にもつながります。

一方で、 VMware のライセンス改定により、 vSphere 環境の継続利用によるコスト増加が懸念されています。 Microsoft Hyper-V のように、類似の HA 機能を持つ代替製品への移行を検討する企業も出てきました。今後は、どの仮想化基盤を選択するかが重要な検討課題となるでしょう。

Rworks では、 VMware 移行にあたり、オンプレミスからクラウドまたはハイブリッドまで、お客様の状況に最適な環境をご提案し、設計・構築、運用を一貫して支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。

Free

資料ダウンロード

課題解決に役立つ詳しいサービス資料はこちら

資料ダウンロード
  • VMwareリプレイスの選択肢を整理!迷わず進められる判断軸と構成パターン

    本資料を読むことで、仮想化移行に関する不安や課題を整理しながら、目的別の構成パターンやPoCの観点、移行の進め方を押さえることができます。

  • VMware仮想環境 の移行・リプレースのユースケース集~課題別に見る5つの構成パターン~

    本資料では、VMware環境における代表的な課題に対し、企業の状況に応じた5つの解決策をユースケース形式で紹介しています。

Contactお問い合わせ

お見積もり・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。

single.php