AWS Managed Service Column <AWS運用コラム>

クラウドサービスの機能

Category: 入門編

2021.01.15

はじめに

クラウドサービスとは、クラウド事業者が保有・提供するデータベース、ストレージ、アプリケーションなどを、ネットワーク経由で利用できるサービスをいいます。

この記事では、パブリッククラウドでもAWSを例にして特に重要性が高い「マルチAZ」の概要について、AZの基礎知識にも触れながら解説します。

AZとは?

AZとは「Availability Zone(アベイラビリティーゾーン)」の略称です(AWS以外では呼び名が異なる場合があります)。一般的にパブリッククラウドは「リージョン」という大きな区分けと、「AZ」という小さな区分けから構成されています。

パブリッククラウドにおいて最もシェアが大きいAWSの場合、東京リージョンやバージニア北部リージョンなど、世界各地にリージョンを展開しています。リージョンのなかには複数のAZがあり、AZ は1つ以上のデータセンターで構成されます。

リージョン同士、そしてAZ同士はそれぞれ独立しており、互いに影響が出ない状態で運用管理が行われています。つまり、万が一どこかで障害が起こっても、それ以外の部分が問題なければ、システムを停止させずに稼働できる仕組みになっているのです。

そのため、パブリッククラウドによって構築されたシステムは、自社内で構築するオンプレミスと比較して可用性や耐障害性に優れているといえるでしょう。

なお、AZは大きく分けて「シングルAZ」と「マルチAZ」の2種類が存在するので、そちらについても説明します。

シングルAZとマルチAZの違いは?

シングルAZとマルチAZの違いは?)
シングルAZとマルチAZの違いは?)

「シングルAZ」はその名のとおり、1つのAZだけ使用してシステムを構築する仕組みを指します。

一方「マルチAZ」とは、システム構築において2つ以上のAZを用いる仕組みです。一般的にパブリッククラウドのサービスでは、マルチAZを推奨しているケースがよく見られます。

この2つはそれぞれ構成が大きく異なるため、以下のような違いが出てくることも押さえてきましょう。

冗長化の可否

シングルAZ構成では、稼働しているAZが停止した場合、その影響でシステム全体が停止してしまう可能性があります。したがって、AZ全体に影響するような障害が発生したときのリスクも高いといえるでしょう。

それに対してマルチAZ構成は、複数のAZをまたいだシステムの冗長化を実現できます。例えば、本番用と予備用という2つのAZを作った場合、本番用AZが停止しても予備用AZに系統を切り替えられるため、システムを滞りなく稼働させやすいのです。

(あわせて読む:「システムの冗長化とは?フェールオーバーについても解説」)

構成の複雑さ

シングルAZは1つのAZだけで稼働させる分、サーバーやネットワークの構成が比較的シンプルです。一方、マルチAZは複数のAZを稼働させるので、場合によっては構成が複雑になってしまうかもしれません。

また、マルチAZでシステムを構築した場合、通信速度やコストに悪影響が出てしまう可能性もあります。

マルチAZ構成のメリット・デメリット

自社のシステムをマルチAZ構成にする場合、どのようなメリット・デメリットが発生するのかを把握しておくことが大切です。

メリット

自社のシステムをマルチAZ構成にすると、以下のようなメリットが得られます。

可用性を高められる

マルチAZ構成における最大のメリットは、冗長化によってシステムの可用性を高められることです。メインで使用するAZとともに予備用AZ上でインスタンス(システム)が稼働しているので、前者のインスタンスが何らかの問題で停止してしまった場合、すぐ後者のインスタンスへ切り替えることができます。

そのため、仮に一方のAZ内のシステムが停止してしまっても、停止時間を短縮できる可能性が高まるので、被害を最小限に抑えられるでしょう。

マルチAZ構成によってシステムの可用性を高めておけば、障害自体をゼロにすることはできなくても、障害発生にともなうリスクを抑えることは可能です。

耐障害性を高められる

システムの可用性に加えて、耐障害性を高められることもマルチAZ構成の大きなメリットです。あるAZ全体にわたる広域障害が起こったとしても、マルチAZ構成であればシステム自体の処理性能を維持したまま、稼働し続けられます。

パブリッククラウドを利用する場合でも、クラウド基盤のトラブルやクラウド事業者側の人為的ミスはもちろん、地震・火災・落雷といった自然災害によってもAZ全体にわたる障害は起こり得ます。システム全体が停止してしまうと、取り返しのつかない事態にまで発展しかねません。

システムの耐障害性を高めることは、可用性の向上にもつながります。特に1秒たりとも停止できないシステムを運用している場合、可用性と耐障害性の両面から対策を講じることが大切です。

データの「レプリケーション」ができる

もう1つのメリットとして、本番用AZのデータを予備用AZにリアルタイムで同期する「レプリケーション」を実行できることが挙げられます。本番用AZが障害によって停止しても、予備用AZでまったく同じデータを取得・蓄積しているため、システム自体は問題なく稼働できるという仕組みです。

これにより障害発生によるリスクを低減できるのはもちろん、自社にとって重要なデータを自動的にコピーしておくこともできます。

デメリット

マルチAZ構成は優れた仕組みですが、メリットだけではなくデメリットもいくつか存在します。

レイテンシが増えやすい

マルチAZ構成はシングルAZ構成より複雑なので、データ転送要求から返信までのレイテンシ(通信遅延時間)がやや増加しやすいといわれています。構成に何らかの問題があると、レイテンシ増加によってシステムの処理性能が低下してしまうかもしれません。

また、レプリケーションによってレイテンシが増える可能性もあるので、通信遅延を許容できないシステムの場合はあらかじめ注意しましょう。

コストがかかる

マルチAZ構成の場合、機器の台数やシステム構築の手間が増えるので、必然的にコストが高くつきやすい傾向にあります。また、別々のAZ同士で通信が行われた場合、従量課金制の通信コストも発生するため、こちらも併せて把握しておきたいポイントです。

クラウド事業者や利用するサービスの内容にもよりますが、少なくとも2倍くらいのコストが求められると考えておきましょう。低コストでの構築・運用管理を優先するなら、シングルAZ構成を採用したほうが良いケースもあります。

おわりに

パブリッククラウドにはさまざまなサービスがありますが、自社にとって最適なシステムを構築するためには、まず基本的な仕組みを押さえることが大切です。

特にマルチAZは重要性が高く、AWSやAzureといった有名パブリッククラウドでも推奨されているため、仕組みやメリットを把握しておいて損はありません。レイテンシやコストなどのデメリットもありますが、それらを踏まえても可用性・耐障害性を高められるメリットは魅力的なので、検討する価値は大いにあるといえるでしょう。

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