Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Logic Appsとは?Azureで簡単にノーコード/ローコード開発を行う方法を解説

Category: 入門編

2023.09.12

ノーコード・ローコードとは?誰でもアプリケーション開発ができる方法を解説

近年、IT 人材不足が顕著になっており、このままでは 2030 年には約 43 万人も不足する見込みと言われています。これは企業の DX(デジタル・トランスフォーメーション)に対する大きな障壁と考えられており、抜本的な対策が必要です。

このような状況下で注目されているのがノーコード/ローコード開発と呼ばれる開発手法で、多くの企業が DX を実現するために取り入れ始めています。Azure では、ノーコード/ローコード開発を行うためのサービスとして Azure Logic Apps が提供されており、企業の業務自動化や業務改善に役立っています。

本記事では、ノーコード/ローコード開発の目的とメリット、Azure Logic Apps の概要と特徴について解説します。

1. ノーコード/ローコード開発とは

システム開発に携わっている人であれば、「ノーコード」「ローコード」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。まず、ノーコード/ローコード開発の概要とメリットについて解説します。

ノーコード開発とローコード開発

ノーコード/ローコード開発とは、アプリケーション開発の際に、プログラミング言語によるコーディングが不要、またはほとんどコーディングをせずに行う開発手法です。一般的にはノーコードツール、ローコードツールと呼ばれるソフトウェアやサービスを利用して開発を行います。

ノーコード開発とは

ノーコードとは「コードがない」ということを意味しており、アプリケーション開発の際に一切コーディングを必要とせずに開発を進めることができます。ただし、予め定められた命令やロジックに限定されるため、開発の柔軟性や拡張性の点では制限・制約が発生します。ノーコード開発のための代表的なツールに Shopify や ASTERIA Warp などが挙げられます。

ローコード開発とは

ローコード開発は、ノーコードのように全くコーディングを必要としないわけではなく、必要に応じてコードを記述しながら開発を行う手法です。ある程度コーディングの知識が必要となりますが、ノーコード開発と比較して柔軟性や拡張性の点で優れています。ローコード開発のための代表的なツールに、Salesforce、Kintone、intra-mart などが挙げられます。

ノーコード/ローコード開発のメリット

ノーコード/ローコード開発を行うメリットは下記の通りです。

  • 誰でも開発ができる(内製しやすい)
  • アジリティが高い(開発スピード・変更しやすさ)
  • 開発・保守コスト低減

プログラミングの知識がなくても開発ができる

ノーコード/ローコード開発は、コーディングが不要、またはほとんど必要としない開発です。つまり、プログラミングの深い知識がなくても開発が可能ということになります。ただし、処理をどのような順番で実行するか、どのような処理を組み合わせればよいかなど、論理的に思考して機能を組み上げるスキルは必要です。

アジリティが高い

ノーコード/ローコード開発は、コーディングにかける時間を大幅に短縮することができるため、スピーディかつ迅速に開発や変更・改修を行うことができます。ノーコード/ローコード開発により、ビジネス環境の変化に対して迅速にサービスを対応させることができるようになります。

開発・保守コスト低減

ノーコード/ローコード開発は、プログラミングに関する深い知識や技術がなくても開発が可能です。そのため、通常の開発・保守と比較して人件費を削減できる可能性があります。

2. Azure Logic Apps とは

Azure 上でノーコード/ローコード開発を行うためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、Azure 上でノーコード/ローコード開発を行うためのサービス、Azure Logic Apps の概要と料金体系について解説します。

Azure Logic Apps の概要

Azure Logic Apps とは、マイクロソフトが提供している、Azure 上で利用可能なノーコード/ローコードサービスです。企業や組織の間でさまざまなアプリケーション、システム、データ、サービスを、コネクタとして接続・統合してワークフローを作成することで、簡単に統合的なノーコード/ローコードアプリケーションの開発が可能となります。

コネクタとは

コネクタとは、Azure Logic Apps で扱えるアプリケーション、システム、データ、サービスを、接続・統合して利用するためにコンポーネント化したものです。250 種類以上のコネクタが用意されており、GUI 上でコネクタを組み合わせていくことでアプリケーションを作成していきます。

Outlook や Microsoft 365 といったマイクロソフト製品から、Google、Twitter、Dropbox、Github などサードパーティ製品のコネクタも豊富に用意されていることが大きな特徴です。

ワークフロー

ワークフローとは、「ロジックアプリデザイナー」というブラウザ上のポータル画面で、複数のコネクタをパズルのように接続・スケジューリングして自動実行する一連のアプリケーションの流れを可視化したものです。

基本的にはコードを記述する必要がなく、ワークフローを作成することでノーコードアプリケーションが作成できますが、必要に応じて条件式などのコードを追加することで、柔軟にローコード開発も可能となります。

Azure Logic Apps の料金体系

Azure Logic Apps では、作成および使用するリソースに基づいて、さまざまな価格モデルが適用されます。

Azure Logic Apps でアプリケーションを作成するためには、標準もしくは従量課金いずれかのリソースを選択する必要があり、リソースごとに課金内容が異なります。

標準(シングルテナント)
Logic Apps に組み込まれたアクションとコンテナの実行回数に応じて課金される。

従量課金(マルチテナント)
割り当てられたvCPUとメモリに対して使用時間に応じて課金される。完全に分離された環境においては、ベースユニットの利用時間に応じて課金される。

3. Azure Logic Appsの活用事例

Azure Logic Apps を活用するイメージを掴むためには、具体的な活用事例から学んでいくのが効率的です。ここでは、 Azure Logic Apps の身近な活用事例として、 WEB 上の GUI であるフォームからの入力内容を受け取る例を紹介します。

Azure Logic AppsでGUIからの入力内容を受け取るロジックを作成する

GUI からの入力内容を受け取るために、 HTTP トリガーを活用します。 HTTP トリガーを活用することで、フォームからの入力内容を HTTP 又は HTTPS のリクエストとして送信できます。

入力内容を受け取る側は、ロジックアプリに HTTP 又は HTTPS のリクエストを追加し、送信されるリクエストを受け取るようにします。これらの設定により、ロジックアプリが GUI からの入力内容を受け取れるようになります。

受け取った入力内容の確認

入力を受け取ったら、受け取ったデータが正しいデータであるか等の確認をチェック処理にて行います。中には、悪意を持って送り込まれるデータも存在するので、十分なデータチェックを行う必要があります。必要なチェックは業務により異なります。

また、チェックが多くなりすぎるとロジックが無駄に複雑になる場合があります。システム要件に対して、過不足がないようにチェックを行うようにするべきです。

受け取った入力内容が適切でない場合は、エラー処理などを行います。エラーの場合の処理、正常な場合の処理とは別に行うようにし、エラーの場合は次の処理を行わないなどの制御をするようにします。

入力内容をメールで通知する

入力内容の確認後、メール送信して問題なければ、アクションによりメールを送信します。 Azure Logic Apps は、多くのメールサービスに対応しており、簡単にメール送信ができます。

ここまでの活用事例で、 Azure Logic Apps を活用して GUI からの入力内容をメール送信するまでの一連の流れを紹介しました。 Azure Logic Apps を活用すると、このように身近で活用できる処理が実装できます。

また、トリガー、ロジックアプリ、アクションなどを活用することで、ここで紹介した活用方法以外の場面でも、 Azure Logic Apps を活用できます。

チュートリアルの活用

ここで紹介したトリガー、ロジックアプリ、アクションなどの具体的な実装方法についてはマイクロソフトが提供しているチュートリアルなどの公式ドキュメントを活用してください。

マイクロソフトが提供している Azure Logic Apps の公式ドキュメントは、以下のリンクから遷移できますので、是非確認してみてください。

また、チュートリアルなどを参照する際は、ただ参照するだけではなく、チュートリアルに沿って手を動かしてみるようにすると良いでしょう。

4. Azure Logic Apps の特徴とメリット

Azure Logic Apps を利用することで、ノーコード/ローコード開発が持つメリットを享受することが可能ですが、Azure Logic Apps が持つ独自のメリットもあります。ここでは、Azure Logic Apps の持つ特徴とメリットについて解説します。

ワークフロー作成にコードが不要

Azure Logic Apps はノーコード/ローコード開発のためのサービスです。基本的にコードを一行も書くことなく、ワークフローやジョブスケジュールを構築し、ビジネスロジックを制御・自動実行することが可能です。

そのため、プログラミング未経験者でもアプリケーション作成が可能であり、外部の IT ベンダーに頼らずにアプリケーションの内製が実現できます。なお、必要に応じてコードを追加し、柔軟なローコード開発を行うことも可能です。

ロジックアプリデザイナーによる開発のアジリティ向上

Azure Logic Apps は「ワークフローデザイナー」という視覚的にワークフローを構築するツールが提供されています。ワークフローデザイナーを使用すると、マウス操作でトリガーやアクション(操作)をつなぎ合わせることで簡単にワークフローを作成することができます。

視覚的かつ簡単に操作ができるため、ビジネスの状況に応じて迅速にアプリケーションの開発や変更が可能となります。

250 以上のサービス連携先

Azure Logic Apps は、250 を超えるさまざまなコネクタを用意しています。コネクタにより、クラウド、オンプレミスといったシステムの形態や、製品ベンダーを問わず、柔軟に数多くのサービス・アプリケーションとの連携が可能となります。

高いセキュリティが保たれる

Azure Logic Apps を活用すると、セキュリティに配慮した処理を実装できます。さらに、 Azure Monitor や Azure Active Directory 、 Azure Storage も併せて活用することで、高いセキュリティを保つことを実現できます。

セキュリティマネジメントが問われる現代において、高いセキュリティを保つ方法を解説します。

監視の設定

Azure Logic Apps は、ログを基にして監視の設定を行うことができます。 Azure Monitorを活用することで、より詳細な監視を行うことも可能です。

業務では、ログから問題が見つかれば、アラートを上げセキュリティ管理者に通知するなどの運用を行います。また、ログが残っていれば何か問題が発生した際に、ログから問題の原因を解析することができます。

監視の設定を行うことはセキュリティの基本でもあるので、 Azure Logic Apps の活用していく上で、監視の設定を忘れないようにすると良いでしょう。

Azure Active Directoryの活用

Azure Active Directory と連携することで、必要最小限のユーザーやグループ単位でアクセス管理を行うことにより、外部からの攻撃の防止を行うことができます。

また、 Azure Active Directory 認証を活用することで、認証においてもセキュリティを高めることができます。さらに、 Azure Active Directory アプリケーションプロキシを活用することで、セキュアなアクセスを保つことができます。

<Azure Active Directory アプリケーションプロキシを活用し、セキュアなアクセスを保つ例>
Azure Active Directory アプリケーションプロキシを活用し、セキュアなアクセスを保つ例

図版出典:Microsoft公式サイト

暗号化されたデータ

Azure Logic Apps は暗号化に対応しています。 Azure Storage を活用すると、保存したデータが自動的に暗号化されます。データが暗号化されることで、容易に解読できないことにより、データの流出を防ぐことができます。

<Azure StorageとAzure Logic Appsを連携する>
Azure StorageとAzure Logic Appsを連携する

図版出典:Microsoft公式サイト

5. Azure Logic Appsの注意点

身近に活用でき、セキュリティに配慮できる Azure Logic Apps ですが、使用する上での注意点もあります。旧来のローカル端末で行う開発であれば、環境の使用料金など発生せず、制限なく自由に使えましたが、ローカル端末で行う開発とは違う点を意識すると良いでしょう。

Azure Logic App の注意点について解説しますので、適切に Azure Logic Appsを活用できるようになりましょう。

課金制であるため、コストの運用に気を付ける必要がある

Azure Logic Apps は課金制であるため、使用量が増えるとコストも増えます。想定外のコストが発生しないようにするために、 Azure Logic Apps の使用状況を定期的に確認する運用を行うようにするべきです。

コストパフォーマンスを良くするために、不要なリソースは削除するなど積極的に行うと、コスト改善につながります。また事前にコストを見積り、予算を決めて Azure Logic Apps を使用するようにするのも、コスト管理の有効な手段となります。

開発環境がクラウド上に限られる

開発環境がクラウド上に限られるため、開発エンジニアが最適な環境で開発を進められるわけではない点に注意する必要があります。

ローカル環境での開発に慣れたエンジニアも良い機会と思い、クラウド上の開発に慣れるようにすると良いでしょう。与えられた環境での開発になるので便利で手軽ですが、一定の制限が付くことをあらかじめ理解しておくと良いでしょう。

アップデートの際の注意点

Azure Logic Apps がアップデートする際は、既存の処理に影響が出ることもあります。このため、 Azure Logic Apps をアップデートする時には、併せて動作確認をして既存の処理が動作するか確認するようにするべきです。

既存の処理に影響があった場合、マイクロソフトの公式な発表などを確認し、問題に対処する必要があります。アップデート後に、旧来の動作が保てない場合、アップデート前の状態に戻すことも対策の一つとなります。

6. まとめ

IT 人材が不足する中、プログラミングの深い知識がなくても開発が可能なノーコード/ローコード開発に注目が集まっています。ツールを使いこなすことで外部の IT ベンダーに依存することなく内製が可能となり、ビジネス環境の変化に迅速に対応することができます。

Azure Logic Apps を活用すれば、身近で必要な処理もノーコード/ローコードで開発できます。また、高いセキュリティを保つことができるので、ユーザーに安心感を与えることができます。 Azure Logic App を使う上での注意点に気を付け、適切に活用すれば、 Azure Logic Apps はエンジニアの強い味方になります。

Azure Logic Apps でノーコード/ローコード開発環境の構築を検討してみてはいかがでしょうか。

Azure の導入を相談したい

Azure導入支援サービス

Azure 導入支援サービス

Microsoft Azure 導入の具体的な方法の検討や技術検証を専門家にサポートいたします。

Free

資料ダウンロード

課題解決に役立つ詳しいサービス資料はこちら

資料ダウンロード
  • Azure導入支援・構築・運用サービス総合カタログ

    Microsoft Azure サービスの導入検討・PoC、設計、構築、運用までを一貫してご支援いたします。
    Azure導入・運用時のよくあるお悩み、お悩みを解決するためのアールワークスのご支援内容・方法、ご支援例などをご確認いただけます。

Microsoft Azureを利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

Azure導入個別相談会(無料)

Tag: Azure Logic Apps

Contactお問い合わせ

お見積もり・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。

single.php