Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

信頼性の高いリアルタイムオペレーティングシステム、Azure RTOSとは?

Category: 入門編

2023.05.17

Azure RTOSの概要、構成要素、利用事例、価格について解説

Azure RTOS ( Real-Time Operating System )は、リアルタイムシステムで使用されるあらゆる要件を満たすために開発された OS です。 Microsoft は、 Azure クラウドプラットフォームを提供しながら、組み込みシステム向けのソリューションを提供します。

本記事では、 Azure RTOS についての概要、構成要素、利用事例、価格について解説します。

1. Azure RTOSとは?

Azure RTOSを解説する前に、必要となる大前提の概念について解説します。

RTOS(Real-Time Operating System)とは

RTOS はリアルタイムシステムで使用される組み込みシステム用のオペレーティングシステムです。 RTOS は、リアルタイムシステムのための高度なスケジューリング、タスク管理、デバイスドライバー、ネットワーキング機能などを提供します。

一般的な OS は、大規模な汎用システム向けに最適化されており、アプリケーションの実行やネットワーキング、データ処理などの汎用的で多機能な機能を提供します。それに対し RTOS は、通常、リアルタイムシステムの要件に応じて最適化されており、ハードウェアの制御やデバイスの制御、データ収集や処理、通信、セキュリティなどの機能を提供します。

Azure RTOSとは

Azure RTOS は、 Microsoft が提供するマイクロコントローラーユニット( MCU )を搭載したコンパクトで高速なリアルタイム OS です。以前は「 Thread X 」と呼ばれていましたが、 Microsoft が買収したことにより、現在は Azure の一部として提供されています。

MCU とは、 CPU 、メモリ、入出力ポート、タイマー、アナログ・デジタル変換器、 Wi-Fi や Bluetooth などの無線通信機能などの機能を一つのチップに集積したマイクロプロセッサの一種です。

Azure RTOS は、 Azure RTOS ThreadX 、 Azure RTOS NetX 、 NetX Duo 、 Azure RTOS FileX 、 Azure RTOS GUIX 、 Azure RTOS USBX などのパッケージにより構成されています。

Azure RTOSとは

図版出典:Microsoft 公式サイト

Azure RTOSの特徴

Azure RTOSの主な特徴について解説します。

リアルタイム性能

Azure RTOS は、リアルタイムシステムの要件に応じて最適化されたカーネルを備えており、高度なスケジューリング機能を提供します。これにより、 Azure RTOS は、時間的な要求を厳密に満たすことができます。

スモールフットプリント

Azure RTOS は、小型で高速なシステム向けに最適化されており、メモリやプロセッサのリソースを効率的に使用し、必要な機能を最小限のリソースで実行するスモールフットプリントを実現します。

多様なプラットフォームサポート

Azure RTOS は、様々なプラットフォームで利用可能であり、ハードウェアに依存しないポータブルな API を提供します。これにより様々な組み込みシステムで Azure RTOS を使用することができます。

ドライバーやミドルウェアのサポート

Azure RTOS は、ネットワーキング、ストレージ、 USB 、セキュリティなどの機能をもった様々なドライバーやミドルウェアを提供します。

セキュリティ

Azure RTOS は、セキュリティに関する機能が豊富にあり、 SSL / TLS 、 IPsec 、セキュアブート、ファイル暗号化などの機能を提供します。また、 Azure Sphere との連携により、エッジデバイスからクラウドまでのエンドツーエンドのセキュリティを実現します。

クラウドとの統合

Azure RTOS は、 Azure IoT とのシームレスな統合を実現します。 Azure IoT には、 Azure RTOS 用のツール、 SDK 、クラウドサービスなどが提供されており、エッジデバイスからクラウドまでのデータの収集、分析、可視化が可能です。

FIPS 140-2 認定

Azure RTOS は、暗号化モジュールの要件を指定する、 Federal Information Processing Standards 140-2 ( FIPS 140-2 ) のソフトウェアの認定を受けています。 FIPS 140-2 は、暗号化ベースのセキュリティを使用するすべての連邦政府機関および部門が、暗号化の強度と機能に関連する特定の標準を満たすことが求められている高度なセキュリティ基準です。

投資対効果

Azure RTOS は、コスト効率に優れたライセンスモデルを採用していることから、豊富な開発者コミュニティやパートナー企業の支援により、開発プロセスを迅速化することが可能です。

2. Azure RTOSの構成要素

Azure RTOS に含まれる構成要素(コンポーネント)について解説します。

ThreadX

ThreadX は、 Azure RTOS のカーネルであり、リアルタイム性、信頼性、省電力性に優れ、小さなフットプリントで、さまざまなアプリケーションに適用できます。

FileX

FileX は、 Azure RTOS のファイルシステムであり、様々なストレージデバイスのアクセスを提供します。 FileX は、 FAT 、 NTFS 、 exFAT などのファイルシステムをサポートしています。

NetX Duo

NetX Duo は、 TCP / IP スタックであり、ネットワーク通信のために使用されます。 NetX Duo には、IPv4 、 IPv6 、 TCP 、 UDP 、 FTP 、 DNS 、 DHCP 、 SMTP 、 HTTP などのプロトコルが含まれます。

USBX

USBX は、 USB デバイスドライバーを提供するライブラリです。 USBX には、 USB ストレージ、 HID ( Human Interface Device )、 CDC ( Communication Device Class )などのプロトコルが含まれます。

Azure IoT Middleware

Azure RTOS は、 Azure IoT Middleware として、 Azure IoT Hub 、 Azure IoT Edge 、 Azure IoT Central などの Azure IoT サービスとの統合をサポートしています。 Azure IoT Middleware により、 Azure RTOS デバイスは、 Azure IoT サービスとシームレスに通信することができます。

GUIX

GUIX は、グラフィカルユーザーインターフェイス( GUI )を提供するためのライブラリです。 GUIX には、さまざまなグラフィカルコントロール、フォント、画像、アニメーションなどが含まれています。

Azure RTOSの構成要素

図版出典:IoT MCUのHappyTech「FSPベアメタルサンプルのRTOSスレッド化」

3. Azure RTOSの利用事例

Azure RTOSが実際どのような環境で動作しているのかを紹介します。

自動車のエレクトロニクス

Azure RTOS は、自動車のエレクトロニクスにおいて、車両制御などのアプリケーションで使用されています。例えば、エンジン、ブレーキ、ステアリング、サスペンションなどの機能をリアルタイムで制御する必要があり、高度なリアルタイム処理と信頼性が求められる環境で利用されています。

医療機器

命に関わるような高度な要件である人工呼吸器や心臓ペースメーカーなどの、高度なリアルタイム処理と信頼性が求められる環境でも Azure RTOS が使用されています。

スマートホーム

家電製品をスマートフォンやタブレットから制御するために使用されています。スマートホームデバイスは高速かつ安定した通信に加え、セキュリティ、省電力性などの要件を満たす必要があります。

IoTデバイス

IoT デバイスにおいて、センサーデータの収集、処理、通信、分析などを行うために使用されています。例えば、農業分野では、農作物の状態をリアルタイムでモニタリングするセンサーデバイスが使用され、高度なリアルタイム処理、省電力性、セキュリティ、信頼性を提供しています。

4. Azure RTOSの価格について

Azure RTOS の価格は、使用するコンポーネントや開発スイートの種類、デプロイされるデバイスの数など、様々な要因によって異なります。 Azure RTOS は、ライセンスモデルを採用しており、お客様が使用するコンポーネントや開発スイートに基づいて、ライセンス契約が必要です。また、デプロイするデバイス数によってもライセンス料金が変わってきます。

Azure RTOS コンポーネントの完全なソースコードは、GitHub で入手可能です。詳しくはMicrosoftの公式サイトでの確認をお勧めします。

5.まとめ

本記事ではAzure RTOS について概要・特徴、構成要素、事例、価格について解説しました。Azure RTOS はIoTシステムの構築を迅速かつ容易にする信頼性の高いリアルタイムオペレーティングシステムです。カスタマイズ可能な開発スイートを提供し、拡張性がありAzureクラウドとのシームレスな統合を提供し、IoTシステムのデータ収集、分析、可視化を実現します。

さらにコスト効率に優れたライセンスモデルであり、コミュニティも活発であることから、経験豊富なコミュニティやパートナー企業の支援から、開発プロセスの迅速化を実現できます。開発環境の改善などに導入の検討をお勧めします。

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Tag: Azure RTOS

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