目次
ビジネスに革命をもたらすクラウドベースの量子コンピューティングサービス
最先端のテクノロジーの一つである量子コンピューティングは、ビジネスに革命をもたらすことが期待され、注目を集めています。 Azure Quantum は、 Microsoft が提供する革新的なクラウドベースの量子コンピューティングプラットフォームです。
この記事では、量子コンピューティングの基本知識から Azure Quantum の基本概念や特徴、用途、料金体系まで詳しく解説します。
1. Azure Quantumとは?
まずは量子コンピューティングの概要と従来のコンピューティングとの違い、クラウド上で量子コンピューティングサービスを実現する Azure Quantum の概要について解説します。
量子コンピューティングとは
量子コンピューティングとは、量子力学の原理を計算に応用して情報処理を行う新しい形態のコンピューティングです。
私たちが日常的に利用しているコンピューティング(以下、古典コンピューティング)では、情報は 0 または 1 のビットという基本単位で表現されます。一方で、量子コンピューティングでは量子ビット( qubit )と呼ばれる基本単位を使用します。
量子ビットは、量子力学の原理である「量子重ね合わせ」や「量子もつれ」の性質を利用して、 0 と 1 の状態の両方を同時に持つことができます。これにより量子ビット同士の相互依存性や量子的な並列処理能力が生まれ、複数の計算経路を同時に探索し、高度な並列計算を行うことが可能になるのです。
量子コンピューティングの主な目的は、古典コンピューティングでは計算に時間がかかってしまう複雑な問題を効率的に解決することです。素因数分解や暗号解読、複雑なシミュレーションや最適化問題の解法など、古典コンピューティングの限定された能力では解決が困難な課題に対して大きなポテンシャルを持っています。
古典コンピューティングとの違い
古典コンピューティングと量子コンピューティングの最大の違いは、先述したように「ビット」を使うか「量子ビット」を使うかです。また、古典コンピューティングはすべての入力に対して毎回計算して答えを評価するのに対し、量子コンピュータは一括計算ができます。
これらの違いによって、古典コンピューティングでは答えを導き出すのに膨大な時間・コストがかかっていた問題でも、量子コンピューティングは計算原理を巧妙に利用することでステップを劇的に減らし、時間・コストを大幅に短縮できます。
Azure Quantum の特徴
Azure Quantum とは、Microsoft が提供するクラウドベースの量子コンピューティングサービスです。企業や研究機関が量子アルゴリズムの開発や実行、実験を行うためのツールやリソースを提供しています。ユーザーは Microsoft Azure のインフラストラクチャを利用して、量子コンピューティングの機能を活用できます。
Azure Quantum の特徴は以下のとおりです。
量子コンピュータ、古典コンピュータのハイブリッド型
Azure Quantum は、量子コンピュータ・古典コンピュータそれぞれの長所を生かして連携するハイブリッド量子コンピューティングを提供しています。これによりユーザーは古典コンピューティング環境で開発した既存のプログラムやツールを活用しながら、量子コンピューティングの利点を活かして問題解決能力を拡張できます。

図版出典:Microsoft公式サイト
オープンなエコシステム
Azure Quantum は、 Microsoft およびそのパートナーエコシステムとの連携を通じて、量子アルゴリズムの開発や実用化を推進しています。これにより、産業界や学術界のさまざまな分野で量子コンピューティングの利用が進められ、革新的な問題解決や新たな可能性の追求が促進されることが期待されています。
たとえば Qiskit 、 Cirq 、 Q# などの量子プログラミング言語を選択でき、複数の量子システムでアルゴリズムを実行することが可能です。
Azure Quantum の量子ソリューション
Azure Quantum には、量子コンピューティングと最適化という2種類の量子ソリューションが用意されています。
量子コンピューティング
化学反応や生物学的反応、物質形成など、現実的には観測することが難しいものでも、量子コンピュータで計算することによってさまざまなシミュレーションができます。Azure Quantum では量子コンピューティングを活用して、リスク管理・サイバーセキュリティ対策・ネットワーク分析・データ検索・ワクチン開発といった複雑なシナリオをモデル化することが可能です。
最適化
最適化とは、与えられた制約条件において問題に対する最適な解を見つけるプロセスです。量子アルゴリズムを使用して効率的に解空間を探索し、最適な解を見つけるための高速な計算を行います。これにより、従来のアプローチよりも効果的な解決策を見つけることができます。
2. Azure Quantum の用途
Azure Quantum の主な用途の一部として、以下のようなものが挙げられます。リソースの見積もり
量子コンピューティングや最適化の実行に必要なリソース(ハードウェア、ソフトウェア、ストレージなど)の見積もりを行います。Azure Quantum Resource Estimator でこの機能を提供しており、ユーザーはプロジェクトの要件に合った適切なリソースプランを選択することができます。
図版出典:Microsoft公式サイト
量子シミュレーション
量子コンピューティングによって、自然を構成する基本的な要素の振る舞いや相互作用をモデル化・シミュレートします。これにより実世界の物理系や化学系の性質について理解を深めたり、予測したりすることが可能です。モデル化できる量子システムの例としては、光合成、超伝導、分子錯体形成などがあります。
量子高速化
量子コンピュータが持つ高速な計算能力を活用して、古典コンピュータよりも特定の計算やアルゴリズムに対する解決を高速化します。たとえば大量のデータ解析や複雑なシミュレーションなど、従来の手法では解決困難であった課題に取り組めるようになります。
量子機械学習
機械学習は大量のデータからパターンや関係性を抽出し、予測や分類を行うための手法です。従来の機械学習のトレーニングではコストが課題となっていましたが、量子機械学習は一部の手法を、量子コンピュータを活用して改善・高速化することで解決します。
Azure Quantum 用のオープンソースの開発キットである「 Quantum Development Kit ( QDK )」 には、ハイブリッド量子機械学習実験を実行するための機能を提供する量子機械学習ライブラリが付属しています。
3. Azure Quantum の料金体系
Azure Quantum の料金体系は「学習と開発」「大規模パフォーマンス」の2種類です。
SKU / 1 か月あたりのクォータ | 機能 | パフォーマンス | コンピューティング時間あたりの料金 |
---|---|---|---|
学習と開発 1 〜 20 時間のコンピューティング |
シミュレート済みのアニーリング シミュレート済みのアニーリング (パラメーター フリー) 並列テンパリング 並列 (パラメーター フリー) 量子モンテカルロ法 タブー検索 |
最大 5 件のコンカレント ジョブ | 0 ~ 1 時間 – Free 1 ~ 20 時間 – $10/時間 |
大規模パフォーマンス 1,000 〜 50,000 時間のコンピューティング |
同上 | 最大 100 件のコンカレント ジョブ | 0 ~ 1 時間 – Free 1 ~ 100 時間 – $90/時間 100 ~ 500 時間 – $80/時間 500 ~ 1,000 時間 – $70/時間 1,000 時間未満 – $50/時間 |
- 参考記事:
- Azure Quantum の価格
4. まとめ
量子コンピューティングとは、量子力学の原理を応用した新たな形態のコンピューティングです。従来のコンピューティングでは膨大なコストや時間がかかっていた問題でも効率的に解決できるため、ビジネスをはじめあらゆる場面での活用が期待されています。
Azure Quantum は、クラウドベースの量子コンピューティングサービスです。量子コンピューティング・古典コンピューティングそれぞれの長所を活かしたサービスを提供します。クラウドならではのスケールを提供します。
スケーラブルで柔軟性の高いクラウドならではの環境で量子コンピューティングの利点をビジネスへ活用するため、 Azure Quantum の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
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Tag: Azure Quantum
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