目次
AVDのPoCを行う重要性や注意すべきポイントも
リモートワーク環境を整備するためによく検討されるのが VDI ( Virtual Desktop Infrastructure )の活用です。特に VDI をクラウドサービスとして提供する AVD ( Azure Virtual Desktop )は利便性が高く、おすすめできます。
しかし AVD の導入を成功させるためには、事前に AVD 環境を検証する PoC の実施が必要です。本記事では AVD の概要から PoC の必要性、 PoC の実施方法まで詳しく解説します。
1. AVD の PoC を実施する重要性
PoC ( Proof of Concept )とは「概念実証」という意味で、新たなアイデアの実現可能性や得られる効果を検証することです。 AVD の導入前に PoC を実施することで失敗するリスクを減らし、より効果的な導入ができます。
PoC を実施する具体的なメリットは次のとおりです。
AVD の使用感を体験できる
実際に AVD 環境を構築して利用するため、操作性や機能性などを体験できます。また現在使用している業務システムやアプリケーションが AVD 環境で問題なく動作するか、パフォーマンスに問題はないかなどを検証できます。
最適な設計・運用方法を検討できる
PoC 環境を利用するなかで課題を発見できれば、本番への導入前に最適な設計に改善することができます。また運用方法についても実際の利用状況をもとに検討できるため、本番環境でのトラブルを事前に回避するために役立ちます。
費用対効果を検証できる
PoC を行うことで AVD の利用に伴うより現実的なコストを試算できます。また AVD の利用で得られる効果も検証できるため、費用対効果を算出して意思決定の材料にすることが可能です。
2. AVD の PoC を実施する方法
AVD の PoC を実施する方法としては大きく次の 2 つのケースがあります。
AVD 専用の PoC 環境を用意する
PoC 専用の AVD 環境を本番環境とは別に構築し、 AVD の使用感を検証します。本番環境で使用しているアプリケーションやツールを PoC 環境にインストールすることで、互換性や動作も検証できます。
この方法のメリットは本番環境へ影響を与えないことです。一方で、社内の基幹システムなどとの連携を確認することは難しくなります。
<専用環境でのPoCイメージ>

図版出典:株式会社TOSYS「 Azure Virtual Desktop PoC サービス概要」
既存の環境で PoC を実施する
現在 Azure を利用している場合、もしくは Office365 を利用している場合に、その環境へ AVD 環境を構築して PoC を実施します。メリットはより本番に近い環境での検証が可能であり、 VPN 接続により基幹システムとの連携も可能なことです。
デメリットは既存環境へ影響するおそれがあるため、慎重に行う必要があります。
<既存環境でのPoCイメージ>

図版出典:株式会社TOSYS「 Azure Virtual Desktop PoC サービス概要」
3. AVD の PoC のポイント
AVD の PoC を成功させるためのポイントは次のとおりです。
ネットワーク構成を確認する
Azure のネットワークサービスには仮想ネットワークピアリングや ExpressRoute など、さまざまな接続方式があります。既存のネットワーク構成と選択する Azure のネットワーク接続方式の組み合わせによって、通信可能な範囲が変わります。そのため既存の構成と Azure のネットワーク接続方式について理解し、適切な選択をすることが重要です。
利用料金を確認する
AVD はサービスを利用した分だけ料金が発生する従量課金制です。また、これとは別にインバウンド通信は無料ですが、アウトバウンド通信には通信料金が発生します。 PoC の際には機能やパフォーマンスだけでなく、想定される利用料金を確認することも重要です。場合によっては、使用するサービスやネットワーク構成の変更を検討します。
環境ごとの接続状況を確認する
同じ設定でも、利用するデバイスやブラウザによって AVD の挙動が異なる場合があります。実際の利用環境を洗い出して、それぞれの環境ごとに接続確認を行うことが重要です。必要なアプリケーションが利用可能か、UIは問題ないか、パッチの適用は可能か、などを確認しましょう。
4. AVD のメリット
数ある VDI サービスの中で、 AVD を利用するメリットは次のとおりです。
マルチセッションによるコスト削減
AVD は VDI が稼働する 1 台の仮想マシンを複数人で利用できるマルチセッション接続が可能です。通常は 1 台の仮想マシンに対して 1 人のユーザーを割り当てますが、これに対して AVD はコストを大幅に削減できます。現在 Windows 10 / 11 のマルチセッションに対応しているのは AVD のみです。
Office365 に最適化された環境
通常の VDI では Office 製品の一部の機能が利用できない、新たなライセンスが必要、などの制限がある場合が多いです。一方で AVD は利用しているサブスクリプション版の Office365 をそのまま持ち込むことができ、使用感もローカル環境と遜色ありません。
運用管理負荷の軽減
AVD では構築作業はもちろん、仮想デスクトップ環境へのアプリケーションのインストールやユーザーの割り当て・アクセス制御などをすべて Azure の管理画面から一元的に行えます。インフラの管理や個々の環境のメンテナンスが不要になるため、運用管理負荷を軽減することが可能です。
5. AVD の要件
AVDの要件は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
利用できるOS |
・Windows 11 Enterprise マルチセッション ・Windows 11 Enterprise ・Windows 10 Enterprise マルチセッション ・Windows 10 Enterprise ・Windows Server 2022 ・Windows Server 2019 ・Windows Server 2016 |
必要なライセンス | ■Windows 10 / 11 の場合 ・ソフトウェア アシュアランス付き (ユーザーごとまたはデバイスごと)リモートデスクトップサービス ( RDS ) クライアントアクセスライセンス( CAL ) ・RDS ユーザーサブスクリプションライセンス |
必須環境 |
・Azure サブスクリプション ・Microsoft Entra ID (旧称 Azure Active Directory )および Active Directory Domain Services ( AD DS ) または Microsoft Entra Domain Services |
6. まとめ
AVD は利便性が高くメリットの多い VDI サービスですが、いきなり本番環境へ導入するとトラブルが発生する可能性もあります。 AVD の導入を成功させるには、事前に使用感やコストを検証したり、設計を最適化したりするための PoC の実施が効果的です。 PoC の実施方法や注意すべきポイントについて理解し、効果的な AVD の PoC を実現しましょう。
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