Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

【初心者向け】Azure AI Custom Visionで画像認識モデルを構築

Category: 入門編

2025.03.05

使い方を理解して簡単な画像認識モデルを作ろう

Azure AI Custom Vision は、 Microsoft Azure が提供するサービスの一つで、画像認識に特化した AI モデルを構築できるサービスです。

画像認識モデルを構築するには、一般的にプログラミングや AI の知見、技術が必要です。そのため初心者にはハードルが高いですが、 Azure AI Custom Vision を利用すれば Web 上のわかりやすい画面でモデルを構築できます。

本記事では、 Azure AI Custom Vision の使い方から、料金体系やユースケースまで解説します。

1. Azure AI Custom Vision とは?

Azure AI Custom Vision は、 Microsoft Azure 上で提供される画像認識に特化した AI モデルを構築できるサービスです。 Custom Vision に画像を学習させることで、画像の分類や物体検出ができるようになり、業務で活用できます。

Custom Vision は、初期費用や運用コストが低いなどのクラウドサービスならではのメリットがあります。また GUI ベースでプログラミングや AI の知識が少ない初心者ユーザーでも簡単に画像認識モデルを構築できる機能が備わっていることが特徴です。

2. Azure AI Custom Vision の機能

Azure AI Custom Vision の機能は、主に画像の分類と物体検出の 2 種類に分類されます。

Azure AI Custom Visionの機能

画像の分類は、画像を特定のカテゴリに割り当てるタスクです。

たとえば画像データを「犬」や「猫」など、事前に定義されたラベルに分類する場合、以下の流れで行います。

  1. ラベル付きの画像データセットを使って Custom Vision をトレーニングする
  2. Custom Vision がパターンや特徴を学習する
  3. Custom Vision に新しい画像を入力すると、最も適切なラベルを推定する

今回の例だと「この画像は犬と猫どちらか」を分類し、ラベルを付けられます。

画像の分類は製造業での不良品(正常/不良)の判別や、小売業での商品カテゴリの自動分類に役立ちます。

物体検出

Azure AI Custom Visionの機能

物体検出は、画像内に存在する特定の物体を識別し、その位置を特定するタスクです。

画像の分類とは異なり、画像中の複数の対象物を同時に検出し、それぞれのカテゴリと位置情報を返します。例として「森の中で木の裏から顔を出している複数の鹿がいる画像」を入力すると、鹿がどの位置にいるか、何匹いるかを検出可能です。

物体検出は監視カメラでの異常行動の検知や、ロボットによるピッキング対象の特定などの業務に活用できます。

3. Azure AI Custom Vision のメリット

Azure AI Custom Vision には、次のようなメリットがあります。

少ない画像数で画像認識モデルを構築できる

一般的な画像認識モデルのトレーニングには、膨大な量のラベル付きデータが必要です。一方で、 Azure AI Custom Vision は 10 ~ 50 枚程度の画像でも十分な性能を発揮できます。事前学習済みモデルの利用やデータの拡張機能(例:回転やズームをした画像を自動生成して学習させる技術)がサービスを利用する裏で働くためです。

画像収集やラベル付けの手間を大幅に削減できるため、人数、時間、データなどのリソースが限られたプロジェクトでも導入しやすいでしょう。

エンジニアでなくてもモデル構築ができる

Azure AI Custom Vision は、 Web の画面で直感的に操作でき、プログラミングなしでモデル構築が可能です。

具体的には Web 画面で画像をアップロードし、ラベルを付けるだけでモデルを簡単にトレーニングできます。画像のアップロード後も、トレーニングのプロセスやモデルのパフォーマンス評価が視覚的に表示されるため、ソースコードや実行ログを眺めるよりもわかりやすいです。

このメリットにより、技術者以外の担当者でも作業を進めやすいサービスといえます。

インフラ導入や運用のコストを抑えられる

Azure AI Custom Vision はクラウドベースのサービスであるため、自前で高性能なハードウェアを用意したりセキュリティ対策を実施したりする必要がありません。ユーザーはインフラ構築やメンテナンスに時間やコストを割く必要がなく、初期費用を抑えられます。

ランニングコストも画像のアップロードや学習用の仮想マシンを利用した分だけ課金されるため、柔軟にスケールアップ・ダウンができ、料金の最適化が可能です。

4. Azure AI Custom Vision の料金体系

Azure AI Custom Vision は、インスタンスの性能および学習や画像アップロードの回数で決まる従量課金制です。料金単価は以下の通りです。( 2025 年 1 月時点 )

インスタンス 1 秒あたりのトランザクション数 (TPS)
= 1 秒間でいくつの処理が可能か、を示す指標
機能 料金
Free 2 TPS
  • アップロード、トレーニング、予測のトランザクション
  • 最大 2 個のプロジェクト
  • 1 か月あたり最大 1 時間のトレーニング
  • 5,000 枚のトレーニング画像は無料(プロジェクトあたり)
  • 1 か月あたり 10,000 回の予測
標準 10 TPS
  • 予測トランザクション
  • 最大 100 個のプロジェクト
1,000 トランザクションあたり¥ 315.111
  • トレーニング
コンピューティング時間あたり¥ 1,575.551
  • 画像ストレージ
  • それぞれ最大 6 MB
1,000 枚の画像あたり¥ 110.289

※参考:Azure AI Custom Vision の価格 | Microsoft Azure

5. Azure AI Custom Vision のユースケース

Azure AI Custom Vision の機能を具体的にどのような業務に活かせるのか、製造業と医療分野でのユースケースを紹介します。

製品検査

製造工程において、生産ラインでカメラを用いて製品の画像を撮影し、 Azure AI Custom Vision でトレーニングしたモデルに入力すれば、不良品を自動検出できます。

  • 傷や汚れの検出:製品に傷、汚れなどの不備があるかを画像で判別し、不備がある個体を不良品として分類します。
  • ラベルや印字の確認:製品に貼られたラベルや印字が正しい内容か、または所定の位置に貼られているかを判別します。

医療現場での異常検知

医療の現場でも、 X 線や胃カメラなどの画像から異常の有無を判別することで、医師をサポートします。

  • 診断支援: X 線画像、 CT スキャン、 MRI などの医療画像を解析し、病変や腫瘍の有無を検出します。
  • 皮膚病変の分類:皮膚の画像から良性・悪性を判別します。

これらは病変や腫瘍の見落としを減らして疾患の早期発見につなげる効果があり、医師の診断を補助します。

6. Azure AI Custom Vision の利用方法

Azure AI Custom Vision を利用する具体的な手順を解説します。なお、以下は Azure のサブスクリプションがあることが前提です。

画像の用意

Azure AI Custom Vision に学習させる画像を用意します。画像が少なすぎると学習が適切に行われず、多すぎると逆に過学習に陥る可能性があるので、 1 タグ( 1 種類の物体や場面)ごとに最低 30 枚の画像が必要と考えておきましょう。

リソース作成

次に、以下の手順でリソースを作成します。

  1. Azure ポータルで、 Custom Vision を開く
  2. 「作成」ボタンをクリックする
  3. リソース名を入力する

プロジェクト作成

次に、以下の手順でプロジェクトを作成します。

  1. 「新しいプロジェクト」を選択する
  2. 名前や説明、ドメイン(どのような業種に用いるか)、分類タイプを入力する

画像のアップロード

用意した画像にラベルをつけてアップロードします。タグをつけておくと「この画像は何の画像か」を記録することが可能です。手順は以下の通りです。

  1. 「画像の追加」を選択する
  2. タグを入力して「アップロード」ボタンを押す

トレーニング(学習)

アップロードした画像を用いてモデルが学習を行います。

「トレーニング」ボタンを押すだけで学習が開始されます。画像枚数によって学習にかかる時間は異なり、画像が多いほど長くなります。最低限の枚数でも数分は見込んでおきましょう。

評価

実際にモデルに画像を分類させ、正しく分類されているかどうかを確認します。

分類の結果は精度、再現率がパーセンテージで表示されます。パーセンテージが低く表示される場合は画像を増やして再度学習を行い、精度を高める取り組みが必要です。

※参考:クイックスタート: Custom Vision ポータルを使用して画像分類モデルを構築する

7. まとめ

Azure AI Custom Vision は 画像認識に特化した AI モデルを構築できるサービスです。クラウドサービスのメリットを活かせるほか、初心者でも簡単に Web 上のわかりやすい画面でモデル構築ができます。

Microsoft Azureの豊富なリソースを使えるメリットもあり、今後も多くのユースケースが出てくることが期待されます。

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