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Kubernetesネイティブな環境の特徴も詳しく解説
近年、クラウド技術の進化と共にコンテナを活用したシステム運用が普及しています。特に Kubernetes はコンテナオーケストレーションツールとして、多くの企業に導入されています。
その中で注目されているのが「Kubernetes ネイティブ」という設計思想です。Kubernetesの特性を活かしてシステムを構築・運用する考え方を取り入れることで、よりスケーラブルで柔軟なシステムを構築することが可能です。本記事では、 Kubernetes ネイティブの概要やメリット、設計時のポイントについて解説します。
1. Kubernetesネイティブとは?
Kubernetes ネイティブとは、 Kubernetes 上で最適に動作するアプリケーション・インフラ設計です。単に Kubernetes クラスター上にアプリケーションを配置するだけではなく、 Kubernetes の機能を最大限に活かして設計・運用するのが特徴です。これにより、スケーラブルかつ柔軟なシステムを構築できます。
クラウドネイティブとの関係性
クラウドネイティブは、クラウド環境を前提としたアプリケーション設計の考え方です。一方、 Kubernetes ネイティブは、クラウドネイティブ設計の中でも特に Kubernetes に特化して最適化を行う手法となっています。つまり、クラウドネイティブの中の一カテゴリとして位置付けられます。
Kubernetesネイティブのメリット
Kubernetes ネイティブなシステムを実現することで、下記のメリットを享受できます。
スケーラビリティが向上する
Kubernetes には、 HorizontalPodAutoscaler (HPA)や VerticalPodAutoscaler (VPA)などのオートスケーリング機能 があります。これらを活用することで、負荷の増減に応じてリソースを自動で調整でき、パフォーマンスとコスト効率を両立させることが可能です。
クラウドベンダーに依存せずに同じシステム環境を再現できる
Kubernetes ネイティブな設計はプラットフォーム非依存であるため、Azure・AWS・GCPなどマルチクラウド環境やオンプレミスでも同一構成で運用できます。これにより、 移行性・再現性の高い、一貫したシステム環境を構築することが可能です。
運用を自動化できる
Kubernetes にはオペレーターパターンと呼ばれる仕組みがあり、データベース管理やアプリケーション更新を自動化できます。これにより、人的リソースの削減や管理精度の向上が期待できます。
CI/CD(継続的デリバリー)を容易に実施できる
Kubernetes ネイティブなCI/CD パイプラインでは、アプリの自動デプロイやロールバックを容易に実現できます。迅速なリリースと安定した運用を実現できます。
下記で Kubernetes ネイティブな CI/CD について詳しく解説していますので参考にしてください。
※参考:KubernetesネイティブなCI/CDとは?適したツールも紹介
2. Kubernetesネイティブな環境とは?
Kubernetes ネイティブな環境とは、 Kubernetes の機能を活用し、アプリケーションやインフラを構築・運用する環境を指します。ここでは、 Kubernetes ネイティブな環境の特徴をアプリケーション面とインフラ面に分けて解説していきます。
Kubernetesネイティブなアプリケーションの特徴
Kubernetes ネイティブなアプリケーションの特徴は下記のとおりです。
マイクロサービスアーキテクチャを採用している

図版出典:Microsoft公式サイト
アプリケーションを複数の小さな独立したサービス(マイクロサービス)に分割し、それぞれが連携して動作する設計手法です。たとえば、 EC サイトなら「注文管理」「在庫管理」「決済処理」などを個別のマイクロサービスとして運用し、必要なサービスだけをスケールアップすることが可能です。
Kubernetes を活用すれば、マイクロサービスの管理や運用負担を軽減でき、効率的かつ柔軟な運用を実現できます。
コンテナ化を前提としている
Kubernetesネイティブなアプリケーションでは、アプリケーションやその実行環境をコンテナ化して運用することが前提となります。
コンテナ化を行うことで、ローカル環境・本番環境・クラウド間で同じ環境を再現でき、開発から本番稼働までの一貫性を保てるようになります。Kubernetesはコンテナのオーケストレーションに最適なプラットフォームであるため、コンテナのスケーリングや管理が容易となり、運用効率が向上します。
Kubernetesネイティブなインフラ環境の特徴
次に、インフラ面での Kubernetes ネイティブな特徴を紹介します。
サービスメッシュを活用している

図版出典:Microsoft公式サイト
サービスメッシュは、マイクロサービス間の通信を最適化する技術です。従来のマイクロサービス環境では、認証やロードバランシング、暗号化などの通信制御をアプリケーション側で実装する必要がありました。
サービスメッシュを導入すれば、これらの機能を Kubernetes のネットワーク層で統一管理でき、管理を効率化できます。
Helmによるパッケージ管理を実施している
Helm は、 Kubernetes 向けのパッケージ管理ツールで、Kubernetes リソースを効率的に管理・デプロイするために使用されます。Helm を使用すれば、複雑な Kubernetes リソースを「 Helm Chart 」としてパッケージ化し、再利用可能な形で簡単にデプロイ・管理できます。
3. Kubernetesネイティブ環境を設計する際のポイント
Kubernetes ネイティブ環境を設計する際のポイントは下記の4つです。
- Kubernetes の基本機能を最大限に活用する
- CI/CD パイプラインを構築し、デプロイを自動化する
- 運用のしやすさを考慮し、監視とセキュリティを強化する
- マルチクラウド・ハイブリッドクラウド対応を意識する
それぞれのポイントを詳しく解説します。
Kubernetesの基本機能を最大限に活用する
Kubernetes には、アプリケーションを効率的に管理する機能が多く搭載されています。たとえば、下記の機能を活用することで、運用の手間を減らし、スケーラブルな環境を構築できます。
機能 | 役割 |
---|---|
Deployment | アプリケーションを自動管理(スケール、ローリングアップデート)する |
Horizontal Pod Autoscaler(HPA) | 負荷に応じてPodの数を自動調整する |
Vertical Pod Autoscaler(VPA) | Podのリソース(CPU・メモリ)を動的に調整する |
CI/CDパイプラインを構築し、デプロイを自動化する
Kubernetes では、アプリの更新頻度が高くなるため、手動でのデプロイは非効率といえます。CI/CD パイプラインを導入することで、ビルドからテスト、デプロイまでを自動化でき、更新ミスやデプロイ漏れを防止することが可能です。
運用のしやすさを考慮し、監視とセキュリティを強化する
Kubernetes ネイティブ環境では、システムの状態をリアルタイムで監視し、異常を早期に検知することが重要です。たとえば、 Prometheus や Grafana を使えば、 Pod の CPU ・メモリ使用率をリアルタイムで可視化できます。これにより、リソース不足や異常値をすばやく検知し、対応の遅れを防止することが可能です。
Kubernetes ネイティブ環境では、 RBAC ( Role-Based Access Control )を利用することで、アクセス権限をきめ細かく管理できます。特定のユーザーやサービスアカウントにのみ許可を与え、権限の乱用を防止することが可能です。
さらに、ネットワークポリシーを設定して、Pod間通信を制御することもポイントです。不要なトラフィックをブロックし、ネットワークセキュリティを強化できます。
マルチクラウド・ハイブリッドクラウド対応を意識する
マルチクラウド環境では、 Kubernetes Federation を活用することで、複数の Kubernetes クラスターを統一管理できます。AWS や Azure 、 GCP といった異なるクラウドでも同じ Kubernetes 環境として運用できるため、一貫した管理が可能です。
ハイブリッドクラウド環境では、オンプレミスとクラウドの Kubernetes クラスターを統合管理できるツールを活用することがポイントです。代表的なツールは、 OpenShift や VMware Tanzu などが挙げられます。
4. まとめ
Kubernetes ネイティブは、 Kubernetes 上で最適に動作するアプリケーション・インフラ設計です。Kubernetes の機能を最大限に活かして設計・運用することで、スケーラブルかつ柔軟なシステムを構築できます。
Kubernetes の導入・運用に課題を感じている場合、アールワークスの「Kubernetesサポート」に相談するのも有効な選択肢となります。ぜひお気軽にご相談ください。
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