System Monitoring Column <システム監視コラム>

外形監視とは?サスティナブルな運用を支えるための監視方法

Category: 入門編

2022.07.11

〜外形監視の概要、他の監視との違い、導入メリットと代表的なツールを紹介〜

近年、様々なシステムがクラウド環境に移行され、SaaS(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)型と呼ばれる Web ブラウザで利用可能なクラウドサービスが普及しました。それに伴いサイバー攻撃の標的として Web サイト、Web アプリケーションを狙った攻撃が急増しているため、外部からの負荷攻撃、改ざん等の被害に遭っていないかの確認が非常に重要です。
またサイバー攻撃のみならず、システムの意図しない不具合が発生することで、表示遅延や応答不能状態になると、ビジネスに与えるインパクトは非常に大きなもとなりました。

このように Web サイト、Web アプリケーションで発生する様々な問題を一元管理することが出来るのが外形監視と呼ばれる監視手法です。外形監視は、パフォーマンスのモニタリングから障害の検知、検出、イベント管理による早期復旧が可能であり、関連する膨大な情報から傾向分析を行うことで予知保全の効果も期待できます。

今回はサスティナブルな運用を支える外形監視について、種類、仕組みを解説し、導入事例と代表的な監視ツールを紹介します。

1. 外形監視とは

外形監視とは、Web サイトや Web アプリケーションを、外部ネットワークから、実際の利用者が体感している Web サイトのダウンや応答時間の遅延をリアルタイムで把握することを目的とした利用者視点の監視です。

英語では「 Synthetic Monitoring 」と呼ばれています。統合監視、合成監視、合成モニタリングとも呼ばれています。外形監視には、Web 監視、Web サイト監視、URL 監視、HTTP 監視、Web シナリオ監視といった用語の意味合いも含まれます。

インターネットへのアクセスが当たり前となった現代、Web サイトの遅延を防ぎ、Web サイト、Web アプリケーションの利用をどれだけ快適に使用できるかが重要な要素です。

内部監視とは

外形監視の仕組みを解説する前に、内部監視について解説します。様々なシステム監視手法が存在しますが、監視手法を2つに大分すると、外部からの監視と内部からの監視が存在します。外形監視を理解するために、まずは内部監視について解説します。

死活監視

ICMP(Internet Control Message Protocol) というプロトコルを利用し、システムからの応答を得ることで、対象のシステムが存在するか、通信可能かといったシステムの「死活」を監視する手法です。

サービス監視

サービス監視についてはサービスごとに様々な手法が存在します。主なものとして、TCP/UDP プロトコルを利用し、対象のシステムの待ち受けポートの状態を確認することでサービスの稼働状況を監視する手法です。
またプロトコル(サービス)ごとに、監視用の擬似通信を行うことで、実際のサービスの状態を確認する手法や、システム側の内部プロセスを確認することで確認する手法も存在します。

リソース監視

SNMP(Simple Network Management Protocol) というプロトコルを利用し、対象システムの CPU、Disk、メモリなどの使用率、インターフェースの状態などリソースの状況を監視する手法です。継続的に値を取得し続けることで、可視化することできるため、ブラフィカルな監視ツールによく用いられるプロトコルです。

ここまで解説したこれらの内部監視は、外形監視と明らかに監視ポリシーが異なります。外形監視は外部からの「利用者視点」であるのに対し、内部監視は「システム視点」を把握することを目的とした監視です。利用者視点、システム視点の双方を考慮し、サスティナブルな Web サイト、Web アプリケーションを内部監視、外形監視を組み合わせて運用していくことが重要です。では次は外形監視について詳しく解説します。

2. 外形監視の種類と仕組み

外形監視を実現するための種類とそれぞれの仕組みについて紹介します。

SaaS 型ツール

クラウドサービスの普及により、近年は多種多様な SaaS 型ツールが提供されています。SaaS 型ツールの特徴としてサブスクリプション型の料金体系で、素早く導入することができ、運用の手間がかからない点があげられます。

簡易的な死活監視サービス、URL 監視に特化したサービス、多機能型の統合監視サービスの1つとして外形監視機能を提供しているサービス、外形監視に特化した高機能なサービスなどが存在します。

SaaS 型ツールはサービスごとに特色があるので、監視仕様を事前にしっかり確認する必要があります。

オンプレミス型ツール

自社で環境を用意して、サーバー構築し、オープンソースや商用版の監視ツールをインストールする方法です。自社の求める要件に合わせて柔軟にカスタマイズでき、商用版が提供されているものについてはサポートが付帯しているものもあります。

しかし自社で構築と運用する必要があるため、一定のスキル有した人材・体制の確保や自社の運用ルールの整備、可用性の確保などが必要となり、運用コストや技術的難易度が高くなるケースもあります。

MSP(Managed Service Provider) が提供する監視サービス

MSP とは Managed Service Provider の略です。システムの監視、運用を請け負う事業者のことを指します。

監視設計から障害時の一次対応、サービスによっては二次対応、再発防止までを引き受けることも可能です。またベンダーやクラウド・プロバイダへの問い合わせ代行、定期的なレポート、改善提案、予知保全に関わる提案など柔軟性の高い運用が特徴です。

MSP 独自の監視ツールを用いて、24 時間 365 日の有人対応であることから、利用者にあった最適な判断要件を臨機応変な対処するような高度な運用も対応できる可能性があります。

しかし運用稼働が安定化するまで、時間がかかる傾向があり、場合によっては運用コストが高くなるケースもあります。

外形監視の仕組み

ここまで紹介した通り、外形監視には SaaS 型、オンプレミス型、MSP 型があります。いずれの形であっても Web サイトや Web アプリケーションに一般の利用者と同じ視点でアクセスしてパフォーマンスを計測するという点は同様です。

外形監視は監視対象である Web サイトが配置されているネットワークの外からインターネットを介してアクセスする必要があります。そのため、Web サイトのネットワークとは別の場所に監視ツールを配置して監視を行なっています。

また利用者と同様の視点で計測するために、従来の Web サイト監視のようにページの応答だけではなく、対象の Web サイト、Web アプリケーションのスクリプトの実行、画像ファイル、CSS ファイルの読み込みなど一連の動作を計測しています。
例えば、日本国内から提供していて海外に多くの利用者が存在するサービスの場合、監視システムが日本国内にしかないと、その監視結果は海外の利用者のアクセス環境とは大きく異なるため、本来的な監視ができているとは言えません。

外形監視は、世界の主要都市や、実際の利用者がいる複数の地域から監視し、実際の利用者が感じている応答時間を監視しています。

3. 外形監視の活用メリット事例

外形監視を活用することで得られるメリットを紹介します。

障害の予兆を素早く検知できる

近年、クラウドサービスが普及したことでクラウド基盤、オンプレミス環境のハイブリッド環境も増加しました。その中で、システム全体が複雑化し、障害ポイントの切り分け、特定がしにくいといった課題が発生しました。通常の内部監視だけでは検知できない障害も増えています。

外形監視はあらゆる地域から、監視対象となる Web サービスのパフォーマンス状況把握、対象システムの API 稼働状況を複数の環境にまたがって導入することができます。特に SaaS 型サービスであれば素早い導入も可能です。
よって利用者よりも先に Web サイトの障害予兆に気づき対処できる可能性があります。場合によっては大規模障害につながる予兆をいち早く検知して対処できる予知保全も可能です。

様々なシナリオを設定し監視できる

Web サイトのシステムに問題はないのに、利用者から見た時の挙動がおかしいというケースは多々存在します。これは一時的な負荷や、改ざんなど、原因は様々です。

外形監視では Web アプリケーションにおける動作を「シナリオ」として監視することが出来ます。
例えば、ユーザー ID とパスワードでログインする、ショッピングカートに商品を入れる、予約サイトで予約をするなど、様々なシナリオを組み立てて、動作を監視することが出来ます。

エージェントレスで監視システムを実装できる

分散されたシステムやクラウド環境が主流の近年のシステムにおいては、監視エージェントを都度インストールすることは大変な手間です。

内部監視はエージェントが必要なケースが多いですが、外形監視はエージェントが不要です。その為、すぐに監視を実装し、対象のシステムを幅広く監視することが可能です。

しかし外形監視は、場合によって利用者からの本物のアクセスを邪魔してしまうケースもあります。頻度の高い外形監視を行った場合、意図的に高負荷や遅延を引き起こす「 Flood 攻撃」や、不正なスキャンツールで「ポートスキャン」されているのと似た状態になってしまうケースもありますので注意が必要です。

4. 外形監視ツールの紹介

代表的な外形監視ツール(サービス)を以下のポイントで紹介します。

  • a.特長
  • b.導入難易度
  • c.運用費用(サポート)

Mackerel

a.特長

Mackerel は株式会社はてなが提供する SaaS 型監視サービスです。代表的なコミュニケーションツール、Slack、Chatwork、Microsoft Teamsなど、利用ツールに合わせて柔軟に通知先を設定できます。複数のメトリックから計算された値や将来の予測値を監視する、AI機能を使って過去の傾向から異常を検知するなど高度なメトリック監視機能を有します。

b.導入難易度

SaaS 型監視サービスなので手軽に始めることが出来ます。また内部監視も含めたサーバー監視を行うためのエージェントも提供されています。

c.運用費用

監視対象のホスト数に応じてライセンスプランが存在します。外形監視は有料プランのみに提供されています。日本語によるサポートメニューも充実しており、様々な運用支援を受けることが出来ます。

Zabbix

a.特長

Zabbix はオープンソース系監視サーバーの代表的なソフトウェアです。標準的な監視、エージェントレス監視、Zabbix 独自の監視エージェントも提供されています。クラウド、オンプレミス環境にも対応しながら、Web 監視としての機能も充実しており、統合監視ツールとして活用することが出来ます。

b.導入難易度

オープンソースであるため、サーバー構築から初期設定、チューニングを実施する必要があります。Linux 系の知識、PHP、Apache、MySQL 等の知識も必要です。ソフトウェアのライセンスは無料ですが、人的な稼働コストが見込まれます。

c.運用費用

オープンソースであることから、ライセンス費用は無料です。しかしサーバー環境を維持するための費用は発生します。サポートについてはリリースから既に20年以上が経過し、ユーザーのコミュニティの規模も大きく、経験豊富なナレッジを無償で利用できます。しかし自力で利用する必要があるため、一定の知識、スキルが求められます。

Webシナリオ監視

a.特長

株式会社アールワークスが提供する監視サービスです。Webサイトを訪れるユーザが、Firefox、Chrome などのブラウザで行うのと同じ操作をシステムが実際のブラウザを使って再現し、ユーザの視点で Web サイトを監視できます。

また、画面遷移だけでなく、「画面スクロール」、三角のボタンを押して一覧を表示する「プルダウンリスト」からの選択や、複数の項目から1項目を選択する「ラジオボタン」の選択といったユーザの操作や、「購入金額の自動計算」、「座席位置の指定」といったプログラムの動作まで監視します。

障害検知時の通知は、Slack、Chatwork、LINE、自動音声通知、メールから選択できます。

b.導入難易度

監視サービス提供元が MSP なので様々な運用支援を受けることが出来ます。監視設定作業も依頼できるため、社内に技術者が足りない場合でも監視を始めることができます。

c.運用費用

シナリオ単位で料金が設定されています。またプランによって監視ポリシー、通知方法が異なります。

5. まとめ

外形監視について、基本的な概要、種類、仕組み、メリット、ツールについて紹介しました。近年、外形監視のニーズは非常に高まっています。最適な外形監視システムを構築し運用するためには、内部監視も含め監視要件を設計しましょう。また導入に当たっては専門家へ相談されることも推奨いたします。

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Tag: Webシナリオ監視 外形監視

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