Managed Service Column <システム運用コラム>

仮想マシンへシステム移行するメリット・デメリット

Category: 入門編

2020.10.11

はじめに

近年、コストのスリム化などを実現する手段の1つとして、「仮想マシン」が注目を集めています。
そこで今回は、仮想化や仮想マシンとはどういったものかを解説します。併せて、仮想マシンにシステムを移行するメリット・デメリットもご紹介します。仮想マシンへのシステム移行を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

仮想マシンとは

まずは、仮想化とはどういったものかを説明します。
仮想化とは、物理的環境にとらわれず、ハードウェア上のメモリやCPUなどを分割・統合する技術です。仮想化をすることにより、メモリやCPUなどリソースを実際の数以上に稼働しているように見せることができます。

そして、仮想マシンとは、この仮想化の技術を活用してコンピューターを動作させることを指します。1つのマシンを仮想的に複数作り出して動作させるため、サーバー仮想化と同義といえるでしょう。

仮想化されていれば、余ったリソースを最大まで仮想マシンに割り当て活用できるので、効率の良いハードウェア環境を作ることができます。

また、1つのハードウェア上に複数のOS環境を作ることも容易です。
開発したシステムをテストするために、LinuxとWindowsの両方の環境が必要になることはよくあります。とはいえ、これらの環境はテストに使用するだけで、そのまま永続的に使うわけではないため、ハードウェアを購入して用意するのはもったいないことでしょう。
仮想化であれば、必要な分だけリソースを切り出し、不要になったら消してしまえば良いので無駄にはなりません。

近年話題のクラウドは、この仮想環境の基盤となる物理サーバーに外部サービスを利用する形態が多く、AzureやAWSなども同様です。このタイプは物理的なハードウェアを自分で用意する必要がなく、契約で使用するリソースを決めることができます。
ゼロから自分でサーバー環境を作るよりも、楽に環境構築が可能となります。

システムをクラウドの仮想マシンに移行するメリット・デメリット

クラウドの仮想マシンに、システムを移行するメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

メリットとしては、次の2つが挙げられます。

リソースの最適化

仮想マシンを利用すると、複数のリソースを一元管理できます。それにより、あまり稼働していない余剰リソースを整理できるなど、リソースの最適化が可能になります。そのときの状況に合わせて、リソースを変えていけるのはクラウドならではのメリットといえるでしょう。

リソースを最適化するためのサービスも、クラウド基盤それぞれのものが用意されているので、そういったものを利用してリソースをコントロールすると失敗がありません。

障害への強化

クラウドの仮想マシンにすると、ハード起因の障害はあまり気にする必要がなくなります。クラウド基盤のサービスが停止するような一大事が起きない限りは問題ないので、考慮に含めることは稀です。

仮想マシンにバックアップのマシンを作っておけば、万が一稼働しているマシンに何かあったとしても安心です。すぐにバックアップ側が起動して、自動で切り替わるような設定にできるので、長時間のサービス停止を防げます。

デメリット

一方、デメリットには次の2つが挙げられます。

知識と技術が必要

仮想環境ごとに細かい設定方法や使えるサービスが異なり、設定するエンジニアは各基盤に精通していることが求められます。オンプレミスとは異なり、クラウド基盤側がどんどんとアップデートしていくこともあるので、常に最新状況もチェックしなければなりません。

また、自社に仮想化環境の知識・技術を持っている人がいない場合は、必要な教育や研修を提供したり、仮想化環境に精通した人材を確保したりしなければならないでしょう。そうなると、教育や採用に高いコストがかかることも考えられます。

極端に小規模または大規模の環境だとコストが高い

あまりにも小さな規模の環境だと、導入コストや運用コストが高くついてしまう可能性があります。ある程度の規模がないとコストメリットが出せないこともあるので、仮想マシンを導入する際は課金額の最低ラインを確認しておきましょう。
小さなシステムの小さな機能であれば、既存のサーバーにのせてしまうことを考えるのも良いでしょう。

逆に、極端に大規模な環境で、かつ稼働率が高いシステムでも運用コストが高くついてしまう可能性があります。高性能なサーバーの能力を最大限使い切るようなシステムで、常時大量のトラフィックを流すようなシステムの場合、高い性能の高額な仮想サーバーが必要になるのに加え、クラウドサービスによってはネットワークのトラフィック課金が高くなります。
サーバーの能力を常時100%使うことを要求する(リソースを余らせる場面がほとんどない)ようなシステムでは、オンプレミスの方にコストメリットがあります。

オンプレミスの構成をそのまま仮想環境に移行する際のメリット・デメリット

オンプレミスの構成を仮想環境にそのまま移行するメリットはもちろんありますが、なかにはデメリットといえるポイントもあります。

メリット

メリットとしては、次の2つが挙げられます。

コスト削減ができる

自社内で仮想マシンを用意すれば、それぞれのシステムで必要な分を無駄なく切り分けて使うので、余ったサーバーを遊ばせておくことがありません。それぞれのマシンで少しずつ余っていたリソースを集めて、新たにもう1システム分のリソースを生み出すことも可能です。リソースの最適化ができる分、コスト削減につながります。システムのどれかのリソースが足りなくなったときも拡張すれば対応完了となり、都度載せ替える検討をする必要がないのは管理コストの面からもありがたいポイントです。

また新システム構築ごとにハードウェアの調達を考えることも不要になります。仮想マシンの残りのリソースを確認しつつ、割り当てさえできれば、簡単に新システム用のハード環境を用意することができます。

運用が簡単になる

仮想マシン1つを見ることで上に載っているシステム全ての運用が可能となるので、それぞれのサーバーに管理ソフトをインストールしたり、設定を追加したりといった手間がありません。同じ管理ソフトを入れても、細かいバージョンや設定の差でレポートに差が出てしまうこともありますが、仮想マシンで一括管理すれば悩まされずに済みます。万が一の障害情報も一括で見られるので障害対応も早くなります。

デメリット

一方、デメリットは次の2つです。

そのままの移行を重視すると高コストになる

社内に散らばったシステムを仮想マシンに載せることだけを考えると、リソースが膨らみ結果的に高コストになってしまうこともあります。共通化できる部分がないか、削減できる部分がないかを移行のタイミングで検討しましょう。バックアップやログデータも積み重なれば結構な容量となります。システム構築当時の世代管理が実務と合っているかを見直す機会にすると失敗がありません。

移行時の心理的障壁が大きい

移行対象となるシステムの重要度が上がれば上がるほど、正常稼働しているシステムに手を入れたくないとの意見が出ます。万が一の事態でサーバーがストップしてしまうことを考えれば、仮想マシン上ですぐ復旧できる構成が可能であることを切り口に、仮想マシンへの移行を進めるのが得策です。

移行時もきちんと移行計画を立てれば、基本的なトラブルはなく移行することが可能です。移行リハーサルも欠かさず行い、想定されるトラブルには先に手を打っておきましょう。実際の移行時にトラブルが起きてしまった場合の切り戻しポイントまで明確になっていると、翌日の業務に支障が出ないことが分かり、心理的障壁を下げることができます。

おわりに

仮想マシンへのシステム移行はきちんと移行が完了すれば、リソースの最適化や障害への強化などの大きなメリットを生みます。一方で、専門知識が必要だったり、導入前には入念な計画立てが必要だったりと、適切に移行する難易度が高いともいわれています。

インフラの専門家も交えながら仕様をしっかりと理解したうえで、移行したいシステムの特性に合った方法での移行を検討、実行しましょう。

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Tag: 仮想化

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