Managed Service Column <システム運用コラム>

VMwareの代替サービスは?仮想化ソリューションを徹底比較

Category: 入門編

2024.11.05

代表的な仮想化ソリューションの紹介と主要観点での比較

近年、VMware を中心とした仮想化ソリューションが注目されています。これには、物理サーバから仮想サーバへの移行による運用コストの削減や、リモートワークの増加に伴う、安全でスケーラブルな環境の需要の高まりなど、 IT インフラの効率化と柔軟性の向上が求められる時代背景があります。

本記事では VMware をはじめとする代表的な仮想化ソリューションについて、それぞれの特徴を紹介し、機能性、セキュリティ、コストなど主要な観点から比較します。

1. VMware仮想化ソリューションについて

VMware の仮想化ソリューションは、物理サーバやネットワークの仮想化、セキュリティソリューション、仮想デスクトップなど、実に幅広いレイヤの仮想化を実現します。近年ではクラウドコンピューティングの基盤としても活用され、 IT 運用の効率化や、 DX 推進にも寄与しています。

本章では VMware の強み、 VMware が提供する主要製品、近年の VMware の動向について解説します。

VMwareの強み(優位性)

VMware は仮想化技術のパイオニアとして 1999 年、初の製品である VMware Workstation を発表し、パーソナルコンピュータ上で複数のオペレーティングシステムを同時に実行できるようになりました。

2001 年には、企業向けのサーバ仮想化プラットフォームである VMware GSX Server と ESX Server をリリースし、これにより企業は物理サーバの統合とリソースの効率的な管理を実現できるようになりました。

VMware の優位性は、単なる仮想化にとどまらず、クラウドコンピューティングやネットワーク仮想化、セキュリティソリューションへと展開している点にあります。例えば、 NSX によるネットワーク仮想化は高度なセキュリティ管理を提供し、 IT 管理者にとって重要なツールとなっています。

また、 VMware Cloud Foundation は、オンプレミスとクラウド間の統合を容易にし、ハイブリッドクラウド戦略を支える基盤を提供しています。

さらに、仮想デスクトップインフラ( VDI )である Horizon は、リモートワークの拡大に伴うニーズに応え、柔軟かつ安全な働き方をサポートしています。これらの製品群は、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させ、変化に迅速に対応できる強固な IT インフラを構築することができます。

VMware が提供する主要製品

2023 年の買収により、VMware が提供する製品群は、「 vSphere Essentials Plus 」、「 vSphere Standard 」、「 vSphere Foundation 」、「 VMware Cloud Foundation 」の4つの製品ラインナップに簡素化されました。まずは VMware が提供する主要な4製品について解説します。

VMware vSphere Essentials Plus

小規模な仮想環境に最適化されたサービスで、コスト効率よく利用できます。 購入単位は 1 セットにつき 96 コアです。 2 セット /192 コアまで拡張が可能です。

利用可能なアドオンサービスは基本的な VMware vSphere 、 VMware vCenter のみですが、 vSphere 機能の vMotion 、 High Availability が利用できます。

VMware vSphere Standard

高い柔軟性から小規模、中規模の環境向けに最適なエディションです。 vSphere Essentials Plus での制限が解除され、仮想基盤上により多くの仮想マシンを追加できます。

vSphere Standard のライセンス単位は「コア単位」です。最小購入数は「物理 CPU あたり 16 コアライセンス」、サポートレベルはこれまでの VMware サポートと同様の内容の「 Production Support 」が提供されます。

高性能な CPU やコア数を搭載したサーバを活用して、パフォーマンスの高い仮想環境を構築できます。 利用可能なアドオンサービスは、 vSphere Essentials Plus と同様です。

VMware vSphere Foundation

vSphere による仮想化機能に加えて、 Kubernetes の統合管理プラットフォームである「 VMware Tanzu Kubernetes Grid 」と、マルチクラウド環境の運用を効率化する「 VMware Aria Suite Standard 」が含まれる、中規模から大規模な仮想向けエディションです。

vSphere Foundation では「 VMware vSAN 」をアドオンとして利用でき、ストレージ仮想化による HCI ( Hyper-Converged Infrastructure )を構成することも可能です。

VMware Cloud Foundation

サーバ、ストレージ、ネットワークの仮想化をメインとし、マルチクラウドの高度な管理を実現します。マルチクラウドを横断した一元管理が可能な、 IT インフラの運用を大幅に効率化できるエディションです。

VMware Cloud Foundation は「旧 VMware NSX 」を利用できる唯一のエディションであり、「 VMware Firewall 」もしくは「 VMware Firewall with ATP 」をアドオンすることで利用可能となります。

ライセンス単位などは「 vSphere Standard 」や「 vSphere Foundation 」と同様ですが、サポートレベルは上位の「 Select Support 」が提供されます。

VMware が提供する主要製品

近年のVMwareの動向

2023 年 11 月に Broadcom が VMware の買収を完了したことで、 VMware は四半世紀の歴史に幕を閉じ、今後は「 VMware by Broadcom 」のブランドで Broadcom が事業を運営することとなりました。

Broadcom による VMware の買収完了から、永続ライセンスを廃止することを正式発表し、今後の製品は、前述の通り、 4 つの製品ラインナップに簡素化されています。

ライセンス体系が変更されたことで、費用見積もりが変更になり、運用プロセス全体を再設計するとなると、かなりの工数がかかるでしょう。利用者の負担が増えるケースが想定され、脱 VMware の動きが見られています。

2. 他の主要な仮想化ソリューション

ここまで解説した通り、脱 VMware の動きが見られる中で、本章では代替サービスとして候補にあがる他の主要な仮想化ソリューションについて紹介します。

Microsoft Hyper-V

Microsoft Hyper-V は、 Microsoft が提供する仮想化プラットフォームで、主に Windows Server に統合されています。 Hyper-V は Windows 環境との高い互換性を持ち、 Active Directory や System Center などの管理ツールとスムーズに連携が可能です。

また、セキュリティ面では、仮想マシンの分離や Windows Defender 、セキュアブートなどの機能も提供します。コスト効率も高く、 Windows Server のライセンスに含まれているため追加コストが発生しません。

さらに、ライブマイグレーション機能により、ダウンタイムなしで仮想マシンを他のホストに移動でき、柔軟な運用を実現できることから、 Windows ベースの企業環境での利用が広がっています。

Microsoft Hyper-V

図版出典:Windows での Hyper-V の概要

KVM(Kernel-based Virtual Machine)

Linux カーネルに統合されたオープンソースの仮想化ソリューションであり、 Red Hat などの Linuxディストリビューションが採用しています。高いパフォーマンスと柔軟性が特徴です。

KVM は、 Linux のセキュリティ機能である SELinux や AppArmor といったセキュリティ機能を組み合わせることができます。また、スケーラビリティに優れ、大規模なクラウド環境でも利用されています。

管理ツールとしては、 libvirt ライブラリや Virt-Manager を使用することで、仮想マシンの作成や管理を容易に行えます。 KVM は Red Hat Enterprise Linux や Ubuntu など、多くの Linux ディストリビューションでサポートされており、広範なコミュニティによるサポートを受けることが可能です。

KVM(Kernel-based Virtual Machine)

図版出典:Kernel Virtual Machine

Citrix Hypervisor(旧XenServer)

Citrix Hypervisor (旧 XenServer )は、 Citrix が提供するオープンソースの仮想化プラットフォームで、デスクトップ仮想化( VDI )との統合が強みです。Xen プロジェクトをベースにしており、高いパフォーマンスと信頼性を提供することから、エンタープライズ環境で広く利用されています。

セキュリティ面では、仮想マシンの分離やデータ保護機能が強化されています。管理には、Citrixの XenCenter が使われ、直感的な GUI で仮想マシンの作成や管理を容易に行えます。

さらに、 Citrix Virtual Apps and Desktops と組み合わせることで、総合的な仮想デスクトップソリューションを提供します。これにより、企業の IT インフラを効率的に管理し、運用コストを削減することが可能です。

Citrix Hypervisor

図版出典:Citrix Hypervisor

Proxmox Virtual Environment(Proxmox VE)

KVM と LXC コンテナを統合したオープンソースの仮想化管理プラットフォームです。シンプルで直感的な Web ベースの管理インターフェースを提供し、仮想マシンとコンテナの作成、管理、監視を容易に行えます。

高可用性を実現するためのクラスタリング機能や、フェンスデバイスによる自動復旧機能を備え、さらには分散ストレージのサポートにより、スケーラブルで信頼性の高いストレージソリューションを提供します。

セキュリティ面では、ファイアウォールや認証機能が充実しており、安全な仮想化環境を構築できます。また、オープンソースコミュニティの活発なサポートがあり、コスト効率の高いエンタープライズソリューションとして利用されています。

Proxmox Virtual Environment(Proxmox VE)

図版出典:Proxmox Virtual Environment

3. VMwareと他の仮想化ソリューションの比較

ここまで解説した仮想化ソリューションを、VMwareを含め、パフォーマンス、管理機能、高可用性、セキュリティ、コスト、互換性とサポート、ライセンスモデル、ユースケースの観点から比較します。

パフォーマンス

VMware 高いパフォーマンスを提供し、エンタープライズ向けに最適化され、多くの最適化機能が備わっています。
Microsoft Hyper-V 特に Windows 環境でのパフォーマンスが良好です。 Microsoft 製品との統合により、効率的なパフォーマンスを発揮します。
KVM Linux 環境で優れたパフォーマンスを提供し、クラウドプロバイダーで広く使用されています。ハードウェアへの直接アクセスが可能です。
Citrix Hypervisor 高いパフォーマンスを提供し、特に VDI に強みを持ちます。
Proxmox VE KVM と LXC を統合し、効率的なリソース管理が可能です。オーバーヘッドが少なく、高いパフォーマンスを実現します。

管理機能

VMware 直感的で強力な管理ツールを提供し、包括的なエンタープライズ向け機能を持ちます。
Microsoft Hyper-V Windows Server と統合された管理ツール( Hyper-V Manager、System Center )を提供します。
KVM 基本的な管理機能を提供し、 Libvirt や Virt-manager などのツールで拡張が可能です。商用ソリューションに比べるとやや操作性に欠けます。
Citrix Hypervisor Citrix のエコシステムと統合された管理ツール( XenCenter )を持ちます。
Proxmox VE シンプルな Web ベースの管理インターフェースで、仮想マシンとコンテナを容易に管理できます。複雑なエンタープライズ用途にはやや不足する部分もあります。

高可用性

VMware 高可用性機能( HA、FT )が充実しており、企業向けの信頼性を提供します。
Microsoft Hyper-V クラスタリングによる高可用性とフェールオーバーをサポートします。
KVM 外部ツールやクラスタリングソフトウェアと組み合わせて高可用性を実現します。しかし、構築に手間がかかる場合があります。
Citrix Hypervisor 高可用性機能が標準で提供され、特に VDI で効果的です。
Proxmox VE クラスタリングとフェンスデバイスによる自動復旧をサポートし、迅速なフェールオーバーを実現できます。

セキュリティ

VMware 高度なセキュリティ機能を持ち、エンタープライズ向けのセキュリティ要件に対応します。
Microsoft Hyper-V Windows のセキュリティ機能( Credential Guard など)を活用できます。
KVM SELinux や AppArmor などの Linux セキュリティ機能で、高度なセキュリティを実現できます。
Citrix Hypervisor セキュリティ機能が充実しており、特に VDI 環境でのセキュリティ管理の強化が可能です。
Proxmox VE ファイアウォールや認証機能が充実しており、安全な仮想化環境を構築できます。

コスト

VMware 高性能で豊富な機能を提供するが、ライセンスコストは高めです。近年の買収による製品サービスの刷新に伴いコストが増加する傾向にあります。
Microsoft Hyper-V Windows Server のライセンスに含まれているため、追加のコストがかからないケースが多く、コスト効率良く利用する事ができます。
KVM 完全にオープンソースで、ライセンスコストはかかりません。ただし、管理ツールやサポートに関しては別途コストが発生します。
Citrix Hypervisor 基本機能は無料で利用可能です。サポートや追加機能にはコストがかかります。
Proxmox VE 基本機能は無料で利用可能です。サポートや追加機能にはコストがかかります。

互換性とサポート

VMware 幅広いハードウェアとソフトウェアに対応しており、強力なエコシステムとサポート体制があります。
Microsoft Hyper-V Windows 環境との互換性が高く、 Microsoft による公式サポートが提供されます。
KVM 多くの Linux ディストリビューションで利用可能で、幅広いハードウェアに対応しています。オープンソースコミュニティによるサポートがあります。
Citrix Hypervisor Citrix のエコシステムと統合されており、公式サポートも利用可能です。
Proxmox VE 幅広いハードウェアと互換性があり、オープンソースコミュニティおよび商用サブスクリプションによるサポートがあります。

ライセンスモデル

VMware 商用ライセンスモデルで、機能に応じた異なるライセンスプランが提供されます。
Microsoft Hyper-V Windows Server の一部として提供されており、 Windows Server のライセンスに含まれます。
KVM GPL ( GNU General Public License )で提供されるオープンソースソフトウェアです。
Citrix Hypervisor 基本的な機能は無料で提供されており、商用ライセンスもオプションで提供されます。
Proxmox VE AGPL ( GNU Affero General Public License )で提供されるオープンソースソフトウェアで、商用サブスクリプションもあります。

ユースケース

VMware エンタープライズ環境での大規模な仮想化インフラストラクチャに最適です。高度な管理機能や高可用性機能が必要な企業で多く使用されています。また、異なる OS やアプリケーションの共存が求められる複雑な環境にも適しています。
Microsoft Hyper-V Windows Server 環境と密接に統合された仮想化が必要な場合に適しています。 Windows 中心の IT インフラを持つ企業や、中小規模の仮想化プロジェクトでよく利用されています。 Hyper-V はコスト効率が良いため、コスト制約のあるプロジェクトにも向いています。
KVM Linux 環境での仮想化に最適です。クラウドプロバイダーやデータセンターで広く利用されており、スケーラブルな仮想化ソリューションが求められる場合に適しています。オープンソースの利点を活かし、カスタマイズ可能な環境を構築する際に有効です。
Citrix Hypervisor VDI に特化した環境で強みを発揮します。リモートワークを支援するための仮想デスクトップの展開や、アプリケーション仮想化を必要とする企業で利用されています。
Proxmox VE 仮想マシンとコンテナを統合して管理したい場合に適しています。中小企業や個人のITプロジェクトで人気があり、コストを抑えつつ、柔軟でスケーラブルな仮想化環境を構築したい場合に利用されています。また、バックアップや高可用性が求められる環境でも活用されています。

比較のまとめ

VMware Microsoft
Hyper-V
KVM Citrix
Hypervisor
Proxmox
VE
パフォーマンス
管理機能
高可用性
セキュリティ
コスト
互換性とサポート
パフォーマンス: ◎=高い、◯=普通、△=低い
管理機能: ◎=非常に良い、◯=良い、△=不足している
高可用性: ◎=非常に高い、◯=高い、△=標準
セキュリティ: ◎=非常に高い、◯=高い、△=標準
コスト: ◎=非常に低い、◯=低い、△=高い
互換性とサポート: ◎=非常に高い、◯=高い、△=標準

4. まとめ

VMware は豊富な機能セットと高い信頼性から、多くの企業に利用されていますが、 Broadcom の VMware 買収により、ライセンス体系や製品ポートフォリオが大幅に変更となり、利用者への負担が増える可能性があることから、脱 VMware の動きが今後も加速してくると思われます。

仮想化ソリューションの選択は、組織のニーズや規模、予算に大きく依存します。複数の要因を総合的に考慮して決定する必要があり、それぞれのプラットフォームが持つ特性を理解し、組織の目的に最も合致する選択を行いましょう。

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