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VirtualBoxとは?VMware代替を見据えたPoC環境としての活用と今後の選択肢

Category: 入門編

2025.08.04

脱VMwareに向けて手軽に試せる仮想化技術、VirtualBoxの使い道

VMware製品のライセンス改訂により VMware の代替として多くの企業が選択肢を探る中、 PoC や検証に適した VirtualBox に関心が高まっています。VirtualBox は無償の仮想化ツールであり、検証やテストなど PoC 活用の第一歩として有力な選択肢です。

本記事では、 VirtualBox の特徴やユースケース、本番環境での運用における限界を整理し、本番環境での運用を見据えた OSS ・商用・クラウドなどの選定ステップを紹介します。

1. VirtualBoxとは

VirtualBox は Oracle 社が開発したオープンソースの仮想化ソフトウェアです。Windows macOS 、Linux などのホスト OS 上で動作し、 1 台の PC 上に複数の仮想マシンを作成できます。それぞれの仮想マシンには Linux や Windows などのゲスト OS をインストールして、個別のプロセスとして実行することができます。

VMwareとの違い

VirtualBox とよく比較される仮想化製品に、 VMware vSphere ( ESXi )があります。

構成要素 概要
仮想化の種類 ホスト型( Type 2 )
OS上で動作する仮想化ソフト
ベアメタル型( Type 1 )
物理サーバに直接インストールして動作する仮想化ソフト
ライセンス 無償 有償
可用性 本番環境での運用に適した機能がない vMotion や 高可用性( HA ) 構成などの機能がある

VirtualBox は豊富な OS 対応やクロスプラットフォーム性、オープンな開発コミュニティを背景に、無料ながら実用性の高い仮想環境を提供し、多くのユーザーに支持されています。

メリット

VirtualBox には以下のメリットがあります。

項目 内容
無償で利用可能 コストをかけずに仮想環境を構築できるため、導入ハードルが低い
多様なホスト OS に対応 Windows 、 macOS 、 Linux で利用できる
多様なゲスト OS に対応 Linux 、 Windows など幅広いゲスト OS の仮想マシンを作成できる
スナップショット機能 差分ディスクにより仮想マシンの状態を保存・復元できるため、開発やテスト用途に使いやすい
柔軟な仮想ネットワーク環境 様々なタイプを選択できる
  • 仮想マシンが物理 LAN に接続できるブリッジ
  • ホストPC及び同一ネットワーク上の仮想マシン間で通信できるホストオンリー

VirtualBox は開発者やIT技術者、学生などが手軽に仮想化を体験し、学習・検証を行うための強力なツールとして利用できます。

<VirutualBox の柔軟な仮想ネットワーク構成>
VirutualBox の柔軟な仮想ネットワーク構成

2. VirtualBoxの利用シーン

VirtualBoxの機能やメリットを活かせる代表的な利用シーンには、次のようなケースがあります。

PoC 用途としての利用

VirtualBox は、 PoC ( Proof of Concept :概念実証)環境の構築に有効です。特に新しいシステムやアプリケーションの導入に際して、まずは小規模な仮想環境で、 OS との互換性チェックや動作検証に利用できます。

VirtualBox は、物理サーバーや専用インフラを準備する必要がなく、手元の PC にインストールして、数クリックで仮想マシンを立ち上げ、即座に検証が可能です。

開発環境や学習用の仮想マシンとして活用

VirtualBox は学生や実務経験の浅いエンジニアが学習目的で利用するケースにも適しています。無料で利用できることから、期間限定で自由に使える環境を利用でき、高い学習効率が見込めます。

なお、異なる構成の仮想マシンを同時に管理できるため、テストやデバッグに幅広く活用できます。スナップショット機能を使えば、障害発生時にも簡単に元の状態に戻すことができるため安心して検証や学習に集中できます。

3. VirtualBoxの本番環境での運用における課題

VirtualBox は無料で仮想環境を試せる機能が充実していますが、本番環境での運用には適していないとされる理由がいくつかあります。

商用サポートがない

VirtualBox は商用サポートが提供されていません。障害発生時は自力で公式ドキュメントやコミュニティフォーラム、 出力ログなどから原因を特定・解決する必要があります。

本番環境では、一般的に障害発生時に迅速かつ確実に対応できる体制が必要です。商用サポート体制がないということは、特に業務システムや基幹系システムを仮想環境上で運用する場合、安定性・信頼性の観点から大きなリスクとなります。

大規模な仮想化基盤には不向き

VirtualBox は、複数台の物理ホストをまたいだ分散運用やクラスタ管理に対応していません。そのため企業や組織が仮想マシンを多数管理したり、可用性・冗長性を確保したりすることが難しく、サービス設計上の制約となります。

たとえば、以下のような機能が VirtualBox では利用できません。

  • ライブマイグレーション機能がない:仮想マシンの無停止移動ができない
  • スケーラビリティが限定的:管理ツールや自動化機能が乏しく、大規模環境に向かない
  • クラスタリングや HA 構成が組めない:障害時の自動切り替えができない

よって VirtualBox は本番環境で利用するのではなく、開発・検証・学習といった小規模な用途での利用に適しています。

<ライブマイグレーション>
ライブマイグレーション

4. VirtualBoxで試した後に最適な仮想化環境を選択するというアプローチ

VirtualBox は、仮想化の導入を検討する最初のステップとして有効なツールです。VirtualBox での PoC を起点として、段階的に最適な仮想基盤を選定するアプローチを以下に記載します。

<VirtualBox利用による最適な仮想化環境への移行ステップ>
VirtualBox利用による最適な仮想化環境への移行ステップ

ステップ 1 : VirtualBox で PoC を実施し、要件を整理する

VirtualBox を使った PoC で「必要となる機能」「発生しうる課題」「リソース要件」などの洗い出しから始めます。VirtualBox を使えば、コストを抑えつつ仮想化の基礎検証を行いながら、本番環境に必要な機能や課題の明確化が可能です。

ステップ 2 :本番環境に必要な機能を洗い出す

ステップ 1 の結果から、本番環境での運用に必要な機能をリストアップします。例として以下の機能の要否を整理します。

  • HA による障害時の自動復旧と冗長構成
  • 仮想マシンのライブマイグレーションによるホスト PC の無停止メンテナンス
  • バックアップ・リストア機能とスナップショットによる復旧
  • 仮想マシンのテンプレート管理と複製機能による環境構築の効率化
  • セキュリティ機能(アクセス制御・監査ログなど)によるサイバー攻撃の防御
  • 運用自動化・監視機能による保守運用のコスト削減

想定されるシステム規模や運用条件、可用性を踏まえて、要件を明確にしておくことが重要です。これにより、仮想化環境の選定に必要な機能面の基準を整理しやすくなります。

ステップ 3 :運用体制やスキル・コスト条件を確認する

仮想化環境は導入後の運用・保守も視野に入れて選定する必要があります。

機能要件だけでなく、運用面や費用面も考えた選定基準が必要です。運用面ではチーム内のスキルセット、サポート体制、将来的なスケールアップの見通しなども踏まえ、選定基準を整備しましょう。

費用面においてもライセンス、ベンダーサポート、ランニングコストなど、予算に合わせた選択をすることになります。

ステップ 4 :要件に応じて最適な仮想化環境を選定する( OSS ・商用系・クラウド)

整理した選定基準を基に、自社に最適な仮想化プラットフォームを選定します。主な選択肢は以下があります。

  • OSS
    – Proxmox VE
    – KVM + libvirtなど
  • 商用製品
    – Microsoft Hyper-V
    – Nutanix AHV
  • クラウド
    – Amazon EC2(AWS)
    – Azure Virtual Machines
    – Google Compute Engine(Google Cloud)など

ステップ 5 :段階的な移行プランを設計、既存環境と並行稼働しながら本番化を進める

PoC で検証済みの構成をベースに、新しい仮想化基盤を構築し、十分な検証を行います。移行の際は新旧環境を並行稼働させ、段階的に切り替えることで、業務影響を最小限に抑えることができます。

5. まとめ

VirtualBox は、無償かつ扱いやすい仮想化ツールとして、 PoC や開発、学習用途に最適な選択肢です。一方で、本番環境や大規模な仮想化基盤には適していないため、 仮想化導入の第一歩として活用するツールと位置づけるのが適切です。

クラウド移行や脱 VMware に向けた取り組みを始める際には、ぜひ弊社にお問い合わせください。

Tag: VirtualBox

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