Managed Service Column <システム運用コラム>

VMwareの移行先はどうする?候補の比較や選び方を解説

Category: 入門編

2025.08.03

OSSからクラウドまで、自社に最適な移行先を考える

VMware のライセンス体系や価格の改定を受け、運用コストや将来性に課題を感じる企業が増えています。特に中小〜大企業では、コスト上昇やライセンス契約の複雑化が負担となり、仮想基盤の見直しを進める動きが加速しています。

こうした背景から、 Proxmox 、 Hyper-V 、 Nutanix 、 Azure 、 AWS といった代替手段への関心が高まっています。本記事では、 VMware の主要な移行先候補を比較した上で、企業規模や業務要件に応じた選定のポイントを解説します。

1. VMwareからの移行を考える背景

<VMwareの旧ライセンス体系と新ライセンス体系の比較>
VMwareの旧ライセンス体系と新ライセンス体系の比較

VMware を利用してきた企業が移行を検討する最大の理由は、ライセンス体系と価格の変更です。 Broadcom 社による買収以降、 VMware の提供モデルは主に以下の点で大きく変わりました。

  • 永続ライセンスの終了とサブスクリプション化
  • 製品ラインアップの統合
  • お客様カテゴリに基づく購入エディションの制約

これにより、従来のコスト感覚では予算内に収まらないケースが増え、継続利用を断念せざるを得ない状況も出てきています。ライセンス管理が複雑になることで、サポートコストの負担増も見込まれるでしょう。サポートや開発体制の変化により、将来的な安定性・柔軟性に不安を感じる企業も多いです。

さらに近年ではオンプレミスとクラウドのハイブリッド運用や、セキュリティ強化、 BCP (事業継続計画)対応といったインフラ要件が多様化しており、これを機に IT 基盤全体を見直す動きが増えています。

仮想化基盤の選定は、単なる製品の置き換えではなく、今後の運用効率・成長性を左右する重要な経営判断になっています。

2. VMwareの移行先候補の比較

<移行先候補のカテゴリ別整理(OSS・商用・クラウド)>
移行先候補のカテゴリ別整理(OSS・商用・クラウド)

VMware からの移行先は、 OSS 、商用、クラウドサービスとさまざまな選択肢があります。ここでは、代表的な製品についてまとめました。

製品 / サービス カテゴリ 概要 メリット デメリット
Proxmox VE OSS Linux ベースの無料仮想化プラットフォーム。 KVM と LXC を統合し、 Web 管理も可能。
  • ライセンス費用不要
  • 軽量で省リソース
  • Linux 環境に強い
  • 商用サポートが限定的
  • CLI 操作が必要な場面もある
oVirt OSS KVM ベースの仮想化プラットフォームで、 Web UI 管理が可能。 Red Hat Virtualization のベース技術。
  • Web UI での直感的な操作が可能
  • Red Hat / CentOS などとの親和性が高い
  • スナップショット、ライブマイグレーションなどエンタープライズ機能も充実
  • Red Hat 系 OS 以外では構築に手間がかかる
Xen / Xen Project OSS ハイパーバイザー型の仮想化技術。クラウドや組み込み用途にも実績あり。
  • 仮想化オーバーヘッドが少なく、軽量
  • 組み込み用途やセキュリティ重視の環境に強い
  • Citrix などの商用サポートもあり
  • 学習コストが高く、導入・運用が難しい
  • 管理ツールがやや古く、使いにくいものが多い
Hyper-V 商用 Windows Server に標準搭載されている仮想化機能。既存資産と連携しやすい。
  • Windows 資産との親和性が高い
  • 初期導入コストを抑えられる
  • 高度な仮想ネットワーク構成に限界がある
  • Linux 環境には不向き
Nutanix AHV 商用 Nutanix 製品に標準搭載される KVM ベースの仮想化基盤。追加ライセンスなしで利用可能。
  • HCI (Hyper-Converged Infrastructure:ハードウェア・仮想化・ストレージを一体化した統合基盤)構成で統合管理が可能
  • 運用負荷を軽減できる
  • AHV 単体では導入不可
  • ベンダーロックインのリスクがある
Virtuozzo 商用 軽量コンテナ仮想化( VZ )と KVM を統合した商用仮想化基盤。リソース効率に優れる。
  • コンテナ仮想化によりリソース効率が非常に高い
  • GUI 管理ツールが用意されており導入が比較的容易
  • AHV や Proxmox に比べると採用実績が限られる
  • 一部機能は商用ライセンスでしか利用不可
Microsoft Azure クラウド Microsoft が提供するパブリッククラウド。 Windows / Linux 仮想マシンや各種サービスを提供。
  • 初期投資を抑えられる
  • BCP 対策に強い
  • Microsoft 製品と親和性が高い
  • 長期運用ではコスト増の可能性がある
  • クラウド特有の運用知識が必要
Amazon Web Services(AWS) クラウド Amazon が提供するパブリッククラウド。 EC2 など仮想マシンのほか、先進的な機能が豊富に揃う。
  • グローバル展開や高可用性に対応
  • 先進的な機能が豊富
  • 複雑な課金体系
  • クラウド特有の運用知識が必要

3. 【企業規模・業務要件別】移行先の選び方

<4パターンそれぞれに適した移行先>
4パターンそれぞれに適した移行先

VMware の移行先は、単にスペックだけを比較するのではなく、自社の IT スキルや業務特性、将来の成長戦略を踏まえて検討すべきです。ここでは代表的なパターン別に、適した移行先の例を紹介します。

パターン1:コストを重視する小規模企業の場合

コスト重視でシンプルな運用を求める企業には、以下のような OSS 系の選択肢が有力です。

  • 移行先: Proxmox VE 、 oVirt 、 Xen
  • ポイント:ライセンス費用ゼロで仮想環境を構築できます。 Linux に一定の知見があれば、コストを抑えた運用が可能です。
  • 注意点:基本的に無償で利用可能ですが、充実したサポート体制や高度な管理機能を求める場合は、有償プランの導入も検討が必要です。

パターン2:主にWindowsを使用する中小企業の場合

Windows 環境との親和性を重視する場合は、次のような選択肢が考えられます。

  • 移行先: Hyper-V 、 Virtuozzo
  • ポイント:Hyper-V は既存の Windows Server ライセンス資産を活用でき、初期導入のハードルが低いことが特長です。 Virtuozzo は Windows と Linux の混在環境に対応しています。 GUI での一元管理が可能なことや、商用サポートも魅力です。
  • 注意点:Linux やクラウドと連携するには事前の設計が重要です。

パターン3:統合管理と拡張性を重視する中堅企業の場合

複雑化する IT 環境を一元管理したい中堅企業には、以下のような統合型ソリューションが適しています。

  • 移行先:Nutanix AHV 、 Virtuozzo
  • ポイント:Nutanix は HCI による高可用性と一元管理が可能です。 Virtuozzo も仮想化・ストレージ・コンテナ管理を統合でき、構成次第で HCI 同等の環境を実現できます。
  • 注意点:初期導入コストが高いため、 ROI (投資対効果)や TCO (総保有コスト)を試算した上で判断すべきです。

パターン4:リモート対応やBCP対策を重視する複数拠点を持つ企業の場合

多拠点運用や災害対策の観点から、クラウド基盤への移行を視野に入れるケースもあります。

  • 移行先:Microsoft Azure 、 AWS
  • ポイント:柔軟な拡張性や拠点間連携、 BCP 対策に強みがあります。 Microsoft Azure であれば AD ( Active Directory )など、 Microsoft 製品との親和性も高いです。
  • 注意点:ネットワーク設計や ID 管理など、クラウド特有の知識と運用スキルが求められます。

4. まとめ

VMware の価格や契約変更により、多くの企業が仮想基盤の見直しを迫られています。移行先は Proxmox や Hyper-V などの低コストな選択肢から、 Nutanix のような HCI 、 Azure や AWS といったスケーラブルなクラウドまで多岐にわたります。

そのため、自社の業務要件・体制・成長戦略に応じて最適な選択を行うことが重要です。現状把握から構成提案、運用支援まで一貫して任せられるパートナーを活用することで、安全かつ現実的な移行が実現できるでしょう。

Rworks は、移行候補の比較検討から、コストや移行難易度の見える化、サービス品質を維持する構成案の提案までを一貫して支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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