Managed Service Column <システム運用コラム>

VMwareのライセンス改定によるコスト影響について解説

Category: 実践編

2024.11.06

ライセンス改定によるコスト影響に対しユーザーがとるべき戦略的アプローチとは

2023 年 11 月に Broadcom が VMware の買収を完了し、各製品のポートフォリオやライセンス体系も大幅に変更となることから、既存ユーザーの間ではコストの負担増などが懸念されています。

そこで本記事では VMware ライセンス改定のコスト影響についての解説と、ライセンス改定に対するいくつかの戦略的なアプローチについて紹介します。

1. VMwareライセンス変更の経緯と背景

Broadcom による VMware の買収は、 2022 年 5 月に約 610 億ドルで発表された大型取引です。半導体業界では過去最大であったため、多くの注目を集めました。

Broadcom は、半導体ビジネスを維持しながら、ソフトウェアビジネスの売上を 50% にする経営方針を立てており、これらの買収は、 Broadcom にとってソフトウェア事業へ拡張するための足がかりとなっています。

買収によるVMwareライセンスの主な変更点

この買収によって具体的に何が変わるのでしょうか。主な変更点について以下の 4 つの観点で解説します。

ポートフォリオの簡素化

今回改定されたポートフォリオは、仮想化基盤を構築するソリューションとして「 VMware Cloud Foundation 」、「 vSphere Foundation 」、「 vSphere Standard 」、「 vSphere Essentials Plus 」の 4 つの製品にラインナップが簡素化されました。

ライセンス体系と課金体系

従来の永続ライセンスは廃止が発表されており、将来的には全てのライセンス体系についてサブスクリプション型のコア単位へ統一されることになりました。

お客様カテゴリに基づく購入エディション

ユーザー企業は「 Strategic 」、「 Corporate 」、「 Commercial 」に分類され、それぞれのカテゴリに応じて購入可能なライセンスのエディションが限定されます。

販売スケジュール

永久ライセンス製品のサポートおよびサブスクリプション更新の販売は 2024 年 2 月 4 日をもって終了となりました。サービス&サポート契約も 2024 年 2 月 4 日以降、永久ライセンス製品の更新をすることはできません。現状有効な契約に対しては、契約満了日までは引き続きサポートが提供されます。

2. VMwareライセンス改定のコスト影響

ここまで紹介した変更点は既存ユーザーに対して大きな影響があると言われています。その中でも、本章ではコストへの影響について解説します。

ライセンス体系がコア単位のサブスクリプションライセンスに変更

従来の CPU ソケット単位から、 CPU コア数に基づく課金へと変更されるため、多くのコアを搭載している場合は、ライセンスが高額になってしまう場合があります。

例えば以下の図のように従来の CPU ソケット単位が「 2 」であっても、 CPU コア数になるとライセンス数が「 32 」必要となるケースも存在します。

ライセンス体系がコア単位のサブスクリプションライセンスに変更

※参考:VMware新サブスクリプションライセンスについて

またサブスクリプションとなった場合、ライセンス期間が 1 年、 3 年、 5 年と有期となることから、継続的なライセンスコストが発生することになります。ただしサポートや vCenter もサブスクリプション内に含まれています。

ライセンス体系がコア単位のサブスクリプションライセンスに変更

※参考:VMware新サブスクリプションライセンスについて

会社規模によって購入できるライセンスが制限される

ユーザー企業は「 Strategic 」、「 Corporate 」、「 Commercial 」の 3 つに分けられ、それぞれ購入可能なライセンスが制限されます。

例として、「 Commercial 」の企業は vSphere Standard や vSphere Foundation 、 VMware Cloud Foundation などのライセンスを購入できます。しかし「 Strategic 」の企業は vSphere Foundation の機能で十分であっても、その上位の VMware Cloud Foundation の購入を求められてしまうケースが発生します。

お客様のカテゴリに基づく購入エディション

※参考:VMware買収による値上げ対策に「クラウドコスト見通しアセスメント」

中長期的な投資計画のコスト増、サポートコストの負担増

VMware の新たなライセンス体系では OEM ライセンスが廃止されたため、 vSphere を使う HCI (ハイパーコンバージドインフラ)製品の販売も停止されます。既存の HCI 製品の購入やアップグレードが難しくなり、ライセンス管理がより複雑になる可能性があることから、サポートコストの負担増も見込まれます。

3. VMwareライセンス改定に対する戦略的なアプローチ

これまで紹介したコストへの影響に対し、既存ユーザーはどのように対応するべきでしょうか。本章では戦略的なアプローチとしての対応をご紹介します。

各ベンダーの動向を見極める

ユーザーの反応として多いのが「基幹システムのリプレースに合わせて検討する予定で、それまでは現環境を引き続き利用する」、「費用対効果を見て VMware 製品を使い続けるか否かを決める」などです。コストの負担は増えますがすぐに移行できるものではないため、今は様子を見ながら継続するという考え方が多くなっています。

前述したとおり、販売スケジュールとしては、現在の製品や保守サービス期限満期まで利用できるため、その間に検討して方針を決めるアプローチです。

乗り換えを検討する

特定の機能や技術において優れている代替サービスへ乗り換えるアプローチです。移行先として人気のあるサービスが Hyper-V です。 Hyper-V は、 Microsoft Windows Server の Datacenter エディションにおいて無制限で仮想マシンを稼働させることができます。

また Microsoft にはクラウドサービスである Azure 環境で VMware 製品を稼働させる Azure VMware Solution サービスなども存在します。

オンプレミス環境でオープンソース製品と併用する(VMwareの利用を縮小)

オンプレミス環境でオープンソースと VMware 製品を併用して継続利用するアプローチです。 VMware 製品を最小限に縮小することでコスト負担を最小限にとどめられる可能性があります。

オープンソースの仮想化プラットフォームとしては Proxmox VE 、 oVirt などが挙げられます。コスト効率が良く、多様な機能を備えており、用途や環境に応じて選択が可能です。

ライセンス改訂にはメリットもある

今回の VMware のライセンス改定のように、サブスクリプションによる利用形態は、業界としても標準的です。

サブスクリプションライセンスは、初期費用を抑えながら、ソフトウェアのアップデートや定期的なセキュリティアップデートが提供されます。これにより新機能がリリースされた際も、継続的にイノベーションを享受できるメリットがあります。

4. まとめ

VMware のライセンス改定は、多くのユーザーにとって現在の使用状況を分析し、ライセンス選択の最適化と、コスト構造の再評価を促す大きな契機となっています。この改定を機に、長期的な視点での戦略的なアプローチに取り組んでみてはいかがでしょうか。

Tag: VMware

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