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Proxmox Backup Server導入の進め方も5ステップで解説
Broadcom による VMware の買収を受け、多くの企業が仮想化基盤の構成や製品選定の見直しを迫られています。ライセンス体系の変更やサポート体制の不透明さを背景に、 VMware に依存しない OSS (オープンソースソフトウェア)製品への移行を模索する動きが加速し始めました。
こうした中で、 Proxmox VE は OSS でありながら高機能な仮想化基盤として注目されており、商用製品からの代替候補として導入を進める企業も増えています。Proxmox VEの採用にともない、あわせて検討されるのが、Proxmox VE のバックアップ・リストア専用のソリューションである Proxmox Backup Serverです。
本記事では、 Proxmox Backup Server の構成や特徴、商用製品との違い、導入方法などを整理し、企業が導入検討を進めるうえで必要な情報を体系的に解説します。
1. Proxmox Backup Serverとは
Proxmox Backup Server とは、仮想マシンやコンテナ向けに最適化されたオープンソースのバックアップソフトウェアです。「 Proxmox VE 」に特化して設計されており、 VM 単位のバックアップからファイル単位のリストアまで柔軟に対応できます。
商用バックアップ製品に比べてコスト負担が小さく、運用もシンプルであるため、 VMware 環境からの移行先として Proxmox VE を検討する中堅〜中小企業にとって、有力なバックアップ基盤として注目されています。
2. Proxmox Backup Serverの構成と機能
Proxmox Backup Server (以下、 PBS )の構成と主な機能について解説します。
Proxmox Backup Serverでのバックアップ構成

PBS でのバックアップは、大きく次の 3 つの要素で構成されています。
- バックアップ対象となるクライアント:「 Proxmox VE (仮想化基盤)」で動作している仮想マシン
- Proxmox Backup Server 本体:クライアントから送られてくるバックアップデータを受け取り、保存・管理を行う中核の役割を担う。
- バックエンドストレージ: PBS に蓄積されたバックアップデータが実際に保存される場所。
Proxmox Backup Serverの主な機能

PBS は OSS でありながら、商用バックアップ製品に匹敵する次のような機能を提供しています。
- 増分バックアップ:最初のバックアップはフルで取得し、 2 回目以降は変更分(差分)のみを保存する。これによりネットワークやストレージの負荷を抑えられる。
- 重複排除(デデュプリケーション):同一データを再保存せずに共通化することで、保存容量を大きく削減できる。
- Zstandard による高速圧縮:高い圧縮率と速度を兼ね備え、バックアップ時間の短縮とストレージの節約を両立する。
- 暗号化:クライアント側での暗号化により、バックアップデータの転送中・保存中のどちらも安全性を確保できる。
- ジョブスケジューリング:あらかじめ設定した時間に自動でバックアップを実行できるため、運用の手間が省ける。
PBS は、取得したバックアップを DR ( Disaster Recovery :災害復旧)サイト側の PBS へ同期することで、災害発生時にも DR 拠点から迅速なリストアが可能となるため、 BCP (事業継続計画)や災害対策の観点でも有効です。
3. Proxmox Backup Serverと商用バックアップ製品の違い
ここでは、商用製品と PBS を項目ごとに比較します。商用製品は VMware 環境のバックアップに使用されることの多い Veeam Backup & Replication を例とします。
項目 | 商用製品(Veeam Backup & Replication) | Proxmox Backup Server |
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ライセンスコスト |
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対応範囲 |
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GUIと操作性 |
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バックアップ管理 |
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サポート体制 |
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導入・運用ハードル |
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拡張性・連携性 |
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PBS は高機能な OSS である一方、社内に一定の技術知識や、適切な情報を調べて活用できるスキルが求められます。導入に際しては、 PoC (概念実証)を通じて自社の要件に合うかどうかを確認しながら、段階的に運用に乗せていくことが現実的です。
4. Proxmox Backup Serverの導入方法

PBS は高機能な OSS である一方で、環境に応じた適切な構成設計と事前検証が重要です。本章では、 PBS の導入方法を 5 つのステップで解説します。
ステップ1:バックアップ要件の整理
まずは、現在使用しているバックアップ製品・方式・保存先ストレージなどを棚卸しし、課題を明確化します。同時に、求めるリストア要件( RTO / RPO )、保存期間、ジョブ頻度、対応 OS などの条件を整理し、 PBS 導入にあたっての要件を定めます。
ステップ2:最小構成でのPVE+PBSにてPoCを実施
Proxmox VE (仮想基盤)+ PBS (バックアップ)という最小構成をテスト環境に構築し、バックアップ〜リストアの基本動作を検証します。検証対象には、業務に影響しない VM を選定し、保存容量・圧縮率・リストア速度などを確認します。
ステップ3:本番導入に向けた構成設計と運用方式の検討
PoC の結果をもとに、本番導入に向けた構成設計を行います。バックアップポリシー(保存世代・頻度)、保存先ストレージ( ZFS / NFS 等)、冗長構成の可否、リストア手順、監視・アラート体制などを定めます。
ステップ4:本番同等環境での事前検証
本番相当の規模・負荷を想定した環境で、 PBS の挙動とバックアップ運用の安定性を最終検証します。複数ジョブの同時実行時の動作や、障害時のリストアシナリオの確認もこの段階で行います。
ステップ5:本番環境への導入と運用開始
設計に基づいて本番環境へ PBS を導入し、段階的にバックアップ対象を適用します。運用開始後はログ・容量・失敗通知などを監視し、必要に応じてポリシーや構成を調整します。
5. まとめ
Proxmox Backup Server は、商用製品に依存せず高機能なバックアップ環境を構築できる有力な選択肢です。 OSS であるため導入には一定のスキルが求められますが、コスト削減と自由度の高さは大きな魅力でしょう。
導入前には PoC での検証を通じて、業務要件に合った構成と運用ルールを明確にすることが重要です。
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