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VMwareからAzureへの代表的な移行方式3選!移行ステップも解説

Category: 入門編

2025.08.22

移行方式を選定する際のポイントとは?

VMware は、 2023 年の Broadcom による買収を契機にライセンス体系が変更され、サブスクリプションモデルへの一本化が進められています。移行先として選定されることが多いのが Azure ですが、移行方式が複数あるためどの方式を選定するべきか迷うケースが多く見られます。

本記事では、 VMware から Azure への代表的な移行方式を 3 つ紹介します。移行方式を選定する際のポイントや移行ステップなども解説しますので参考にしてください。

1. VMwareからAzureへの代表的な移行方式3選

<VMwareからAzureへの代表的な移行方式3選>
VMwareからAzureへの代表的な移行方式3選

VMware 環境を Azure へ移行する際は、自社のシステム特性や移行の目的に応じて最適な移行方式を選ぶことが重要です。はじめに、代表的な移行方式を 3 つ紹介します。

クラウドの利点を最大活用する「PaaS再構築」

PaaS 再構築は、アプリケーションを仮想マシン単位で移行せず、 Azure の PaaS ( Platform as a Service )や AKS ( Azure Kubernetes Service )などを活用して再構築する方式です。

この方法のメリットは、スケーラビリティや自動化、耐障害性といったクラウドの特性を最大限に活用できる点です。一方で既存アプリケーションの構造見直しや再設計が必要となるため、開発・検証に工数とコストがかかります。

短期間で移行可能な「IaaSベースのLift & Shift」

IaaS ベースの Lift & Shift は、現行の VMware 仮想マシンをそのまま Azure 上の IaaS ( Infrastructure as a Service )へ移行する方式です。たとえば、 Azure Migrate や Azure Site Recovery ( ASR )などを活用することでシステムの構造を変更せずに迅速に移行できます。

Azure Migrate では、「評価」と「移行」の 2つの機能で Azure 環境への移行をサポートすることが可能です。Azure Site Recovery は、 DR ( Disaster Recovery )を実現できるサービスですが、物理サーバーや仮想マシンを Azure へレプリケーション(データ同期)することで、移行用途にも活用できます。

この方法のデメリットは、オンプレミスと同じ構成のまま移行するため、クラウド特有のメリット(スケーラビリティや可用性など)を活かしにくい点です。しかし、移行後に段階的にクラウドネイティブ化や PaaS 化を進めることで、クラウドの利点を取り入れられます。

VMware環境をそのままAzureへ移行できる「AVS」

Azure VMware Solution ( AVS )は、 Azure 上に VMware の仮想基盤をそのまま再現するサービスです。システムの互換性や運用変更によるリスクを最小限に抑えられ、ダウンタイムや再設計の工数を抑えられるメリットがあります。デメリットは、 IaaS よりもコストが高くなりやすい点です。

2. VMwareからAzureへの移行方式の選定ポイント

自社にとって最適な方式を見極めるには、自社の現状と将来の両面を見据えた意思決定が欠かせません。 VMware から Azure への移行方式を選定する際は、下記の 3 つを考慮する必要があります。

  • 自社の業務要件
  • 予算
  • クラウド戦略との整合性

それぞれのポイントを解説します。

自社の業務要件

業務アプリケーションの可用性要件や、稼働中の OS やミドルウェア、外部サービスとの連携状況を踏まえ、どの方式が最も適合するかを判断しましょう。

また、旧来の構成に強く依存したシステムやレガシーな仕様を持つ場合、構成変更の少ない Lift & Shift や AVS を選ぶことで、移行に伴うリスクを最小限に抑えることが可能です。

予算

移行方式によって初期構築費用とランニングコストは大きく異なるため、どれだけの予算があるのかも把握しておきましょう。たとえば、 PaaS 再構築は開発工数がかかる一方で、運用自動化によるコスト最適化が見込めます。

AVS の場合は、導入の手間はかかりませんが、月額コストが割高になるケースがあります。中長期的な視点で自社の予算と発生するコストを試算することが重要です。

クラウド戦略との整合性

自社が描く中長期的なクラウド化構想と、選定した移行方式が一致しているかも確認しましょう。たとえば、最終的にクラウドネイティブ化を目指す場合、初期は Lift & Shift で短期移行を行い、段階的に PaaS へと再構築していく戦略が現実的な選択肢となります。

将来的な方向性を踏まえ、段階的に移行できるように設計することが重要です。

3. 各移行方式のユースケース

上記で解説した選定ポイントを踏まえ、各方式がどのような企業やシステムに適しているのか、代表的なユースケースなどをまとめました。

どの方式を選定するべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

移行方式 向いている企業/システムの例
PaaS 再構築
  • スケーラビリティを重視する Web アプリや SaaS 事業者
  • 新規プロダクト向けシステム(モダンなアーキテクチャをゼロから設計しやすいため)
IaaS ベースの Lift & Shift
  • 短期間での移行が求められるプロジェクト
  • 既存の構成や設定を極力変更せずに移行したい業務システム
  • 当面は構成を維持しつつ、将来的にクラウドネイティブ化を目指す企業
AVS
  • VMware 環境を維持しつつ、そのまま Azure に移行したい企業
  • VMware 特有の構成やカスタム構成が多く、 IaaS や PaaS では再現が難しいシステム

4. VMwareからAzureへ移行するステップ

<VMwareからAzureへ移行するステップ>
VMwareからAzureへ移行するステップ

VMware から Azure へ移行する際は、下記の 4 ステップで進めていきましょう。

現状環境の棚卸しと要件整理

まずは、自社で現在運用している VMware 環境の詳細を正確に把握します。仮想マシンの数や、 OS ・アプリケーションの構成、使用しているリソース( CPU ・メモリ・ストレージなど)などを棚卸ししましょう。将来的な拡張や更新などを踏まえ、システムの要件を明確にすることが重要なポイントです。

移行方式の選定とPoC(概念実証)による検証

選定した移行方式( AVS や Lift & Shift 、クラウドネイティブ再構築など)に基づき、 Azure 上で PoC ( Proof of Concept )を実施します。移行対象の一部のシステムや仮想マシンを Azure 上でテスト的に稼働させ、パフォーマンスや互換性、運用負荷などを事前に確認しましょう。

PoCの結果を踏まえた上で、移行後の本番環境に向けたインフラ構築や追加検証を実施します。

本番環境への段階的な移行

検証結果をもとに本番環境への移行を進めていきます。業務への影響を最小限に抑えるために、一度にすべてのシステムを移行せずに段階的に進めることがポイントです。まずは影響の少ない業務システムから移行を開始し、運用上の課題がないかを確認した上で徐々に対象範囲を広げると良いでしょう。

Azure上での運用を開始

すべての対象システムを Azure 上に移行できたら、本番運用を開始します。Azure 環境での運用開始後は、運用手順やトラブル対応フローを整理しましょう。監視やログ収集、パフォーマンス分析などを自動化する仕組みを整えることが重要です。

5. まとめ

VMware から Azure へ移行する方式は、大きく下記の 3 つです。

  • クラウドの利点を最大活用する「 PaaS 再構築」
  • 短期間で移行可能な「 IaaS ベースの Lift & Shift 」
  • VMware 環境をそのまま Azure へ移行できる「 AVS 」

各移行方式にはメリット・デメリットがあるため、自社の業務要件や予算、クラウド戦略との整合性を踏まえて選定することが重要です。

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