Managed Service Column <システム運用コラム>

Cockpitとは?仕組みとメリット、ProxmoxやoVirtへの段階的導入のポイントを解説

Category: 入門編

2025.08.23

CLI 運用からの脱却、Linuxサーバー管理を「見える化」する GUI ツールの実力とは

OSS (オープンソースソフトウェア)による仮想化基盤を検討する企業にとって、 KVM ( Kernel-based Virtual Machine )の導入と運用が大きなテーマとなっています。しかし CLI ベースの操作は専門知識を要するため、属人化の懸念があります。

そこで注目されるのが Cockpit です。 Cockpit は RedHat が開発する Linux サーバー向けの GUI 管理ツールであり、 KVM 環境を GUI で可視化・操作可能にします。 Proxmox や oVirt といった統合型仮想化管理プラットフォームに比べて導入が容易な点も魅力です。

本記事では、Cockpit の仕組みや主な機能、 Proxmox や oVirt との違い、段階的な導入方法について解説します。

1. Cockpitとは

<CockpitでKVMを管理する基本構成>
CockpitでKVMを管理する基本構成

OSS ベースの仮想化環境において、 Cockpit は軽量かつ実用的であり、導入が容易な管理ツールとして知られています。まず Cockpit の概要と導入メリットについて解説します。

Cockpitとは何か

Cockpit は、 RedHat を中心に開発されている、 Linux サーバー向けの Web ベースの GUI 管理ツールです。主要なディストリビューション( RHEL 、CentOS Stream 、 AlmaLinux など)に対応し、軽量な Web UI でシステムの状態監視や各種設定、仮想マシン管理などが行えます。インストールは OS のパッケージマネージャから可能で、設定後は Web ブラウザでアクセスするだけで即利用可能となります。

Cockpit の最大の特徴は「既存の Linux 環境をそのまま使える」点にあります。仮想化管理用サーバーを構築する必要がなく、既存のサーバーに導入するだけです。また、複数ノードを Cockpit から一括監視できるため、小規模な KVM 構成から、徐々に拡張していくフェーズにも適しています。

Cockpit導入のメリット

Cockpit を導入することで、以下のようなメリットが得られます。

CLI からの脱却と属人性の排除

KVM の運用は基本的に CLI で行われるため、管理が煩雑で属人化しやすいといえます。 Cockpit は GUI により誰でも基本的な運用が可能となり、スキル格差による運用管理のリスクを軽減できます。

既存環境への導入が容易

Cockpit は追加の OS を必要とせず、既存の Linux サーバーにインストールするだけで利用できます。たとえば RHEL 系ディストリビューションでは、数コマンドで導入が完結します。

軽量で拡張可能な設計

Cockpit はシステムリソースへの負荷が小さく、最小構成での運用にも適しています。さらに、必要に応じて KVM 管理・ストレージ管理などの拡張モジュールを追加できます。

複数ノードの一元管理が可能

単一ノードの管理にとどまらず、 Cockpit から他の Linux ノードを登録し、複数台を Web UI 上でまとめて監視・操作できます。中小規模の仮想化構成において、簡易的な統合管理環境を構築できます。

2. Cockpitの主な機能と利用シーン

Cockpit は単なる GUI ツールではなく、 KVM 仮想化を含む、 Linux システム運用に必要な基本機能を Web UIにより網羅的にカバーしています。ここでは Cockpit の主要機能と、具体的な利用シーンについて紹介します。

Cockpitの主な機能

<Cockpitの主要機能>
Cockpitの主要機能

システムリソースの確認

CPU ・メモリ・ディスクの使用状況、サーバーの負荷状況をリアルタイムで可視化します。グラフ表示により傾向の把握が容易となります。

サービス管理とログ確認

GUI 上からサービスの一覧表示および、任意のサービスの再起動・停止・ステータス確認が可能です。サービスログや OS のシステムログも Web 上から簡単に確認できます。

仮想マシン(KVM)の管理

KVM ベースの仮想マシンを作成・起動・停止・削除できます。ストレージの割り当て、 NIC 設定など基本操作が可能です。

ストレージ管理

LVM や RAID の構成も可能です。ディスク使用状況やマウント状態、ファイルシステムの確認・設定変更ができます。

ネットワーク管理

ブリッジ構成の編集、 NIC の有効化/無効化、 IP アドレス設定などが GUI で実施でき、仮想マシンとの連携も想定されています。

パッケージとアップデート管理

OS の更新状況を可視化し、セキュリティパッチやパッケージ更新の有無を通知・実行可能です。

Cockpitの具体的な利用シーン

Cockpit の真価が発揮されるのは、 Linux のコマンド操作に不慣れな担当者がサーバーの運用管理を行う場面です。少人数で複数のサーバーを管理しているような場合、運用管理作業の標準化を図る手段として有効です。

また、オンプレ環境で仮想化技術を試したい際に、 Cockpit を使えば容易に GUI による管理操作を体験できます。

Cockpitによる仮想化管理でできること・できないこと

Cockpit は汎用性が高い反面、以下のような限界もあります。

Cockpit でできること

  • 1台または少数の KVM ホストを GUI で管理
  • サーバーの基本状態監視とメンテナンス
  • シンプルな仮想マシン運用(単体での運用)

Cockpit でできないこと

  • 仮想マシンのライブマイグレーション
  • クラスタ構成、 HA 、自動フェイルオーバー
  • 仮想マシンの集中監視や統合リソーススケジューリング など

このように、 Cockpit はあくまで単体サーバーまたは簡易的な用途に最適化された軽量な管理ツールであり、大規模な仮想化基盤運用には向いていません。

3. Cockpit と他ツールとの違いと段階的導入方法

Cockpit は KVM を GUI で操作できる点で Proxmox や oVirt と共通しますが、管理範囲や用途は大きく異なります。ここでは Cockpit と他ツールと比較しつつ、段階的な導入方針について解説します。

Proxmox・oVirt と比較したCockpitの位置づけ

Proxmox や oVirt は、仮想マシンの統合管理、クラスタ構成、 HA やライブマイグレーションなどに対応する本格的な仮想化統合管理プラットフォームです。対して Cockpit は、単体の Linux サーバー上で KVM 仮想マシンを扱える GUI ツールであり、クラスタ全体を制御する仕組みは持ちません。あくまで軽量かつ簡易的な運用管理ツールです。

Cockpitで始めProxmoxやoVirtへつなげる段階的な導入

<CockpitからProxmox・oVirtへの段階的移行>
CockpitからProxmox・oVirtへの段階的移行

OSS ベースの仮想化基盤を目指す企業にとって、 Cockpit は「仮想化を自社でどこまで扱えるか」を見極めるためのスモールスタートとして有効です。 KVM 環境を既存 Linux に導入し、まずは Cockpit で仮想マシンの作成や運用を試すことで、自社の運用スキルやリソース適性を見極められます。

その上で、より高度な管理が必要と判断された場合に、 Proxmox や oVirt などへステップアップする、という導入戦略が現実的です。

いきなり Proxmox や oVirt を導入して現場を混乱させるリスクを避けつつ、仮想化運用のノウハウを社内に蓄積していく合理的なアプローチといえます。

4. まとめ

本記事では、 Cockpit の基本的な仕組みや KVM との連携機能、 Proxmox や oVirt との違い、そして段階的な仮想化導入手順について解説しました。 Cockpit は、 OSS 仮想化への第一歩として、既存 Linux 環境を活かした小規模な導入に最適な選択肢です。

Rworks では、 Cockpit を含む KVM ベースの仮想化環境に関する技術評価や導入支援を通じて、 OSS 基盤へのスムーズな移行を後押ししています。商用仮想化製品からの移行や、次期インフラ構成の見直しを検討する際は、ぜひ Rworks をパートナーとしてご活用ください。

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