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無償ツールで始める物理サーバーの仮想化移行
VMware Converter は VMware 仮想環境へ移行するための便利なツールであり、多くの企業で活用されています。
老朽化した物理サーバーのリプレースやサーバー統合による運用コスト削減など、 VMware Converter を使用してオンプレミスの物理サーバーを VMware の仮想環境に移行することで、多くの課題を解決できます。一方で、安全かつ確実に移行を進めるには、データ整合性やセキュリティ面での注意点を事前に把握しておくことが重要です。
本記事では、 VMware Converter の利用メリット、移行手順、注意点を解説します。
1. VMware Converterとは
VMware Converter とは、物理サーバーなどで稼動しているシステムを VMware 仮想化基盤に移行するためのツールで、主に以下の目的で利用されます。
- 老朽化した物理サーバーのリプレース
- 異なる仮想化プラットフォーム(例: Hyper-V )からの移行
- 本番環境を複製してテスト・開発環境を構築
正式名称は VMware vCenter Converter Standalone ですが、本記事では VMware Converter と記載します。
VMware Converterのメリット
移行ツールとして VMware Converter を使うメリットは以下のとおりです。
- VMware 製品との互換性や連携性が高く、安定した動作が期待できる。
- 稼働中の物理サーバーや仮想マシンを停止せずに変換処理を実行できる「ホットクローン」機能に対応しており、ダウンタイムを最小限に抑えて業務への影響を低減できる。
- VMware 公式ツールでありながら無償で利用可能。移行にかかるコストを削減できる。
対応している移行元環境の情報
最新の OS や非常に古い OS には対応していない可能性があります。サポートされる環境の情報源は以下のとおりです。
移行元環境:Supported Source Types
移行元 OS:Supported Operating Systems
2. VMware環境移行の基礎知識
VMware Converter を使用する際の、頻出用語や移行時の課題を解説します。
P2V、V2Vとは?
P2V 、 V2V は VMware 環境への移行時によく使われる用語です。P2V ( Physical to Virtual )とは、物理サーバー上のシステムを仮想環境へ移行することを指します。V2V ( Virtual to Virtual )は、仮想環境上の仮想マシンを、別種の仮想環境や同種環境の異なるホストへ移行することです。
VMware Converter は P2V 、 V2V の両方に対応しています。

VMware環境への移行ケースと課題
VMware 環境への移行には、オンプレミスの物理サーバーからの P2V や、 Hyper-V 環境からの V2V などがあります。移行時の課題と、 VMware Converter がそれらをいかに解決するかを見ていきます。
物理サーバーの互換性
VMware 環境ではハードウェアをエミュレートするため、移行元の物理サーバーで動作していた特定のドライバーが仮想マシン上で機能しない場合があります。
VMware Converter は、物理サーバーの情報を取得し、 VMware 環境で動作する仮想ハードウェア構成に変換します。これにより、ハードウェアの差異による動作不良のリスクを低減することが可能です。
Hyper-VからVMwareへのV2V変換
Hyper-V と VMware では仮想化アーキテクチャが異なり、ディスクイメージ破損などの問題が起こるおそれがあります。
VMware Converter は Hyper-V の仮想ディスク形式( VHD / VHDX )を VMware の VMDK 形式に自動変換する機能を持っており、移行に伴う問題発生のリスクを減らします。
ダウンタイム
多数のサーバーを移行する場合、全体のダウンタイムが長くなるおそれがあります。
VMware Converter はホットクローンをサポートしており、稼働中のまま移行することが可能です。これにより、ダウンタイムを大幅に短縮できます。
3. VMware Converterを使用した移行手順
オンプレミスの物理サーバーを VMware 仮想環境に移行するケースを例に、VMware Converter を使用した移行手順を解説します。
移行元情報の確認
移行元のデータ容量 < 移行先の空き容量であることを確認しましょう。移行元のネットワーク設定の記録と、移行元のバックアップ取得も実施しておきます。
VMware Converter のダウンロードとインストール
作業用 PC に VMware Converter をインストールします。作業用 PC と移行元、移行先が TCP/IP で通信可能であることを確認してください。

※参考:必要な VMware vCenter Converter ポート
VMware Converter は Broadcom のアカウントを取得することでダウンロードできます。
※参考:VMware vCenter Converter download
P2V ジョブの実行
VMware Converter を起動し、移行元マシンの IP アドレス、ユーザーアカウント、 OS を指定します。続いて、移行先 VMware 環境の IP アドレス、ユーザーアカウントを指定します。移行先のディスクサイズやメモリ容量の変更を行いたい場合はオプションを設定してください。
設定が完了したら P2V ジョブを実行します。
移行後環境の設定
移行先に VMware Tools をインストールし、記録しておいた移行元情報をもとにネットワーク設定を行います。
4. VMware Converterの利用上の注意点、トラブルシューティング
スムーズに VMware Converter を使用するための注意点と、トラブルに遭遇した場合の対処法を解説します。
ホットクローン移行の注意
頻繁にデータが更新されるデータベースサーバーやファイルサーバーなどは、変換中にデータの一貫性が保証されない可能性があります。そのようなシステムを移行する際は、ホットクローンを使用しないか、データ更新サービスを停止してから移行しましょう。
利用時のセキュリティリスク
移行元や移行先への接続に使用する認証情報が、 VMware Converter をインストールした作業用 PC のログファイルやメモリ上に平文で残る可能性があります。移行作業中のみ一時的に有効な認証情報を使用するか、作業完了後にパスワードを変更しましょう。
また、 VMware Converter に脆弱性が存在する場合、重大なセキュリティ事故となるおそれがあります。事故を防ぐためには、最新バージョンの使用とパッチの適用が重要です。
移行にまつわるトラブルシューティング例
移行時にエラーが発生した場合のトラブルシューティング手順は、エラーメッセージをもとに Broadcom サポートサイトで検索を行い解決策を得る、という流れです。
VMware Converter は作業状況がログファイルに記録されています。このログファイルの最後に近いエラーメッセージ、あるいは移行後の仮想マシンで表示されるエラーメッセージが解決策を探す鍵です。
例として、仮想マシンでエラーメッセージ “INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE” が表示された場合、 Broadcom サポートサイトで検索すると「変換時に STOP 0x0000007B INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE というエラー」というページが見つかります。ここに解決策が記載されているため、それに従って対応を行います。
※参考:Broadcom サポート
5. まとめ
VMware Converter を用いた物理サーバーの VMware への移行、利用上の注意点、トラブルシューティングなどを解説しました。本記事を参考に、安定した動作でスムーズな移行を可能とする VMware Converter を使って、オンプレミスの物理サーバーでの課題解決に役立てていただけると幸いです。
なお、昨今の VMware ライセンス体系の変更により、 VMware Converter 単体での有償サポート提供は終了しました。今後の運用や保守の継続性を見据えると、 VMware に限らず、ほかの仮想基盤やクラウド環境も移行先の選択肢として検討しておくとよいでしょう。
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Tag: VMware Converter
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