PoCを実施して効率的なシステム導入を実現しよう
PoC ( Proof of Concept )とは概念検証と呼ばれる、新規技術やシステムを導入する際に実現可能性を検証する活動です。 PoC により検証を行い、導入実現性の確認や関係者間での合意形成ができます。 PoC を実施する際には検証計画を立て、何を検証するかを明確化し、事実にもとづいた結果を共有することが重要です。本記事では PoC の概要、メリット、実施手順、実施時の注意点について解説します。
1. PoC(Proof of Concept)とは
PoC とは、新規技術やシステムを導入する際に、実現可能性や有効性を評価する取り組みを指します。技術的な動作確認だけではなく、ビジネス面での有用性や投資判断の材料としても重要です。目的を明確にした検証計画を立て、関係者間で事実にもとづいた結果を共有することで、合意形成やリスク低減につながります。ただし、 PoC はあくまで検証段階であり、本格導入や実運用を保証するものではありません。
2. PoCのメリット
PoC には、システム導入前のステップとして技術面、コスト面、関係者合意の面で多くのメリットがあります。
実現可能性の確認
PoC では、導入予定の技術やシステムが実際に動作するか、目的を達成できるかを事前に検証できます。たとえば、既存システムで実現している機能が新システム側にもあるのか、ギャップがどこにあるのかを明確にできます。検証により、本番導入前に技術的な問題点や制約を把握し、計画の精度を高めることが可能です。
関係者の合意形成
PoC で得られた結果を示すことで、経営層やプロジェクトメンバー、顧客との認識のすり合わせができます。実際の検証により検証対象のシステムを体感し、業務に照らし合わせて意見を集約できるためです。検証によって得られた数値や実機操作にもとづいた意思決定が可能なため、導入に向けたスムーズな合意形成を行えます。
リスクを事前に把握・低減
PoC で事前に検証することで、機能不足や互換性問題、性能不足などのリスクを事前に把握できます。 PoC を実施しない場合、システム開発の途中で問題が顕在化した際に、追加開発のために必要な工数の増加、プロジェクト期間の延長といった事態を招くおそれがあります。あるいは、効果を得られないことに気づき、システムの導入そのものを中止する事態になりかねません。 PoC の実施により、こうしたリスクを低減できます。
不要な投資や手戻りコストの抑制
PoC によってリスクを低減させることで、コスト削減につながります。 PoC を実施せずにシステム導入を進めた場合、リスクが顕在化した際の手戻りに莫大なコストがかかるためです。 PoC で早期に課題を抽出すれば不要な開発をせずに済み、万が一導入を見送ることになった場合でも無駄な投資を回避できます。
新技術の習得や理解促進に役立ち、導入後の定着を支える
PoC は実際にシステムを構築・操作する過程で、新しい技術やツールの理解、習得にもつながります。 PoC をしない場合、システムへの理解不足により機能を活かしきれないおそれがあります。 PoC の中で知識を蓄積することで、導入後の運用・保守にも活かせるでしょう。
3. PoCの実施手順
PoC の実施手順は大きく以下の6つに分けられます。
1. 目的・スコープの明確化
PoC を実施する際は、何を検証するのか、どの範囲をスコープにするのかを事前に定義することが重要です。目的が明確でない場合、 PoC のゴールがわからなくなり、 PoC を延々と続ける状況、いわゆる「 PoC 疲れ」や「 PoC 貧乏」に陥りかねません。成功基準や評価指標をあらかじめ設定し、 PoC の範囲を明確にすることで、効率的な検証が可能です。
2. 検証計画の策定
目的とスコープにもとづき、検証項目、検証手順、必要なリソースを計画します。必要なリソースにはハードウェア、ソフトウェア、人員が含まれます。必要に応じて、ハードウェアやソフトウェアの提供、エンジニアの手配をベンダーに依頼することもひとつの方法です。スケジュールや自社の担当者、評価方法の明確化、測定ツールの使用も計画に組み込み、実施の準備を整えます。
3. 検証環境の構築
小規模な検証環境を構築します。必要なサーバーやネットワーク、ソフトウェアをセットアップし、テストデータやユーザーシナリオを準備しましょう。簡易的な環境ではあるものの、本番環境の要件を踏まえたシステム構成、インフラ基盤、システム機能の実装を意識します。検証環境の構築には PoC 担当者や関係者の参画が不可欠ですが、必要以上に人員を投入するとコストや調整負担が増えるため、適切な規模で進めることが重要です。
4. 検証の実施
検証計画にもとづき、実際に技術やシステムを操作してテストします。機能確認のほか、計測ツールやログも駆使して、性能、可用性、互換性、操作性などを検証しましょう。システム担当者のみで検証を実施した場合、ビジネス面の視点が漏れやすくなる点に注意が必要です。検証計画ではシステム担当者だけではなく、ビジネス要件を判断できる業務担当者のアサインも意識しましょう。
5. 結果の評価・分析
実施した検証結果を整理し、成功や失敗の判断や課題点を明確化します。評価と分析は検証計画にもとづき、漏れなく実施することが重要です。問題があれば原因を分析し、改善策や次のステップへのアクション(本番導入時の考慮事項や追加検証)を検討します。
6. レポート作成・関係者への共有
PoC の検証計画をもとに、目的、手順、結果、課題、提案などをまとめたレポートを作成します。レポートは関係者に共有し、本番導入の可否や方向性に関する合意形成を行いましょう。恣意的なレポートとせず、検証結果を客観的にまとめて共有することが重要です。
4. PoCを成功させるためのポイント
PoC を実施する際は、いくつか注意すべき点があります。ここでは、 PoC を成功させるためのポイントを解説します。
期間・コストをあらかじめ決めておく
PoC は本番導入と違いあくまで検証であり、短期間かつ限られたコストのなかで実施することが重要です。期間や予算を明確にしないと、検証が長期化してコストが膨らみ、 PoC 本来の目的から外れてしまいます。長くても3ヶ月を目途に実施するなど、期間を区切って PoC を進めることが重要です。
関係者を巻き込み、合意形成を得る
PoC の成果をもとに本番導入の判断を行うため、早い段階から多くの関係者を巻き込み、目的や評価基準を共有して PoC への参加を促すことが重要です。合意形成を欠いたまま進めると、 PoC の結果が出ても導入可否の判断が曖昧となり、システム導入が停滞するリスクがあります。 PoC 実施時には主要な関係者を巻き込み、共通認識をもつように働きかけましょう。
セキュリティ・ライセンスを考慮する
PoC 環境では、疑似データのほか、本番に近いデータや構成を使う場合があります。そのため、情報漏えいや不正利用のリスクを考慮し、十分なセキュリティ対策をとることが重要です。さらに OSS や商用ソフトを利用する場合は、ライセンス遵守や利用規約違反がないかを事前に確認しておく必要があります。
PoC結果は本番の成功を保証するものではないと理解する
PoC はあくまで小規模な検証であり、全ての本番要件を網羅できるわけではありません。 PoC で期待する結果を得られたとしても、本番では負荷が大きくなり、スムーズに導入できないケースもあるためです。関係者に対して、 PoC はあくまで判断材料のひとつである点を説明することが重要です。
5.まとめ
PoC はシステム導入時に実現性を検証するために実施されます。 PoC を行うことで実現性のほか、機能検証やフィットギャップを確認でき、関係者の合意形成を図れます。
PoC を実施する際は目的やスコープを明確にし、実施計画を立てたうえで検証を行うことが重要です。
Rworks 社は、 PoC の計画や実施に関する深い知見と経験があります。 PoC を実施する際は、ぜひ一度ご相談ください。
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