目次
イベント駆動型アーキテクチャとは?サービスのパフォーマンスを向上させる方法を解説
近年、デジタル化とリアルタイム性がビジネスに大きな影響を与えています。こうした中、特定のイベントに対応して自動的に処理を行う「イベント駆動型アーキテクチャ」の重要性が注目されています。Azure Event Grid は、このアーキテクチャを実現するためのサービスで、大量のイベントをスケーラブルに処理することができます。
本記事では、イベント駆動型アーキテクチャの概要を解説し、その上で Azure Event Grid の概要、主な機能、料金体系、利用シーンについて解説します。
1. イベント駆動型アーキテクチャとは
アプリケーションを任意のタイミングでリアルタイムに動作させるための方法のひとつに「イベント駆動型アーキテクチャ」という仕組みがあります。まず、イベント駆動型アーキテクチャの概要について解説します。
イベント駆動型アーキテクチャの概要
イベント駆動型アーキテクチャ( Event-Driven Architecture、EDA )は、特定のイベントが発生した際に自動的に処理を行うモデルを指します。ここで言う「イベント」とは、ユーザーの操作、システムのステータス変更、外部からの信号など、何らかの状態変化を指します。このイベントがトリガーとなり、特定のアクションやプロセスが起動されます。
たとえば、ユーザーが Web サイトに新規登録した時、自動的にウェルカムメールが送信される、のがイベント駆動型の一例です。
イベント駆動型アーキテクチャのメリット
イベント駆動型アーキテクチャの最大のメリットは、リアルタイム性とスケーラビリティです。イベント駆動型アーキテクチャでは、任意のイベントが発生した瞬間に即座に反応し、必要な処理を行うことができます。これにより、システム全体のレスポンスが向上し、ユーザーエクスペリエンスの改善につながります。
また、高いスケーラビリティにより、大量のイベントを効率的に処理することが可能です。個々のイベントは独立して処理されるため、イベントの数が増えてもシステム全体のパフォーマンスに影響を与えにくいというメリットがあります。
イベント駆動型アーキテクチャの概要の利用シーン
イベント駆動型アーキテクチャは様々なシーンで利用されます。 IoT ( Internet of Things )デバイスの管理では、センサーからのデータをリアルタイムに収集・分析し、異常検知や予測メンテナンスなどを行います。
また、マイクロサービスの連携においても活用されます。サービス間でイベントを共有することで、各サービスは他のサービスの状態を気にせず、自身のタスクに集中することができます。
さらに、サーバレスアーキテクチャでは、リソースの使用量に応じて自動的にスケールアップ・ダウンするため、イベント駆動型アーキテクチャが不可欠です。
2. Azure Event Gridとは
イベント駆動型アーキテクチャのアプリケーションを実装するために、 Azure では、Azure Event Grid というサービスを提供しています。ここでは、 Azure Event Grid の概要と料金体系について解説します。
Azure Event Gridの概要
Azure Event Grid は、Azureが提供するイベント駆動型アーキテクチャを実現するためのサービスです。 Azure Event Grid は、 Azure のストレージサービスや Event Hub 、 IoT Hub など、さまざまなイベントソース(イベントの発生元)から発生する大量のイベントを取り扱い、それらを対象のサービスやアプリケーションにルーティングします。
これにより、特定のイベントの発生に応じて瞬時に反応するリアルタイムなアプリケーションを作成したり、大量のイベントを効率的に管理したりすることが可能になります。
Azure Event Gridの主な機能
Azure Event Grid が備える主な機能は下記の通りです。
- イベントルーティング
- 高いスケーラビリティ
- 保証された配信
- シンプルな統合
イベントルーティング

図版出典:Microsoft公式サイト
Azure Event Grid は、発生したイベントを迅速に対象のサービスやアプリケーションにルーティングする機能を備えています。これにより、リアルタイムの反応と処理が可能となります。下記は、 Azure Event Grid が扱うイベントに関する概念の説明です。
- イベント – 発生内容
- イベント ソース – イベントの発生元。
- トピック – 公開元がイベントを送信するエンドポイント。
- イベント サブスクリプション – イベントを (ときには複数のハンドラーに) ルーティングするエンドポイントまたは組み込みメカニズム。 サブスクリプションは、受信イベントをインテリジェントにフィルター処理するために、ハンドラーによっても使用されます。
- イベント ハンドラー – イベントに反応するアプリまたはサービス
高度なイベントフィルタリング
Azure Event Grid は、特定の種類のイベントのみを選択(フィルタリング)して送信することができます。これにより、特定のエンドポイントへ送信するイベントを精密にコントロールすることができます。
高いスケーラビリティ
Azure Event Grid は高いスケーラビリティを持っています。 Azure クラウドが提供する高いスケーラビリティにより、一度に発生する大量のイベントに対してパフォーマンスを落とすことなく、効率的に処理することができます。
保証された配信
Azure Event Grid は、送信に失敗したイベントに対して一定時間後に再送を試みるリトライメカニズムを備えています。これにより、重要なイベントが確実に配信されることが保証されます。
シンプルな統合
Azure Event Grid は、 Azure Functions 、 Logic Apps 、 Azure Automation 、 WebHooksなど、 Azure 内外の多数のサービスとシームレスに統合することができます。Azure Event Gridの料金体系
Azure Event Grid の料金は、発行されたイベントに対して実行される操作の数に基づく従量課金制となっています。 1 ヶ月間に実行される操作の数が 1 万件以下の場合、 Azure Event Grid は無料で利用できます。 1 万件を超える操作を実行する場合、超過分に対して課金される仕組みとなっています。
詳細な料金体系については、 Microsoft Azure の公式サイトを参照してください。
- 参考記事:
- Event Gridの価格
3. Azure Event Gridの利用シーン
Azure Event Grid を活用したイベント駆動型アーキテクチャはどのようなシーンで利用できるのでしょうか。ここでは、 Azure Event Grid の代表的な利用シーンについて解説します。
- サーバレスアプリケーションの連携
- ワークフロー自動化
- アプリケーションの統合
サーバレスアプリケーションの連携

図版出典:Microsoft公式サイト
Azure Event Grid は、 Azure Functions や Logic Apps などのサーバレスアプリケーションとの統合が容易です。これにより、イベント発生時に自動的に特定の処理を行う、といったイベント駆動型のアプリケーションを作成することができます。
例えば、 IoT デバイスのセンサー情報をリアルタイムに処理することによる異常検知や予測メンテナンスの実現や、 SNS へ投稿されたツイートをリアルタイムに取得し、行動分析を行うことができます。
ワークフロー自動化
Azure Event Grid は、特定のイベント発生時に自動的にタスクを実行する、といったワークフローの自動化にも活用できます。例えば、新しいドキュメントがストレージにアップロードされた際に、自動的にそのドキュメントを解析する処理を行う、などの処理が可能です。
アプリケーションの統合
アプリケーションの統合は、異なるアプリケーションやサービスが互いに連携して動作することを指します。 Azure Event Grid を使用すると、このアプリケーションの統合を容易に行うことができます。
例えば、イベントが発生した際、 Azure Event Grid は自動的にそのイベントを適切なエンドポイント( Azure Functions 、 WebHooks など)に送信します。そして、そのエンドポイントではイベントに応じた特定の処理が行われます。
4. まとめ
本記事では、イベント駆動型アーキテクチャの概要と Azure Event Grid の概要とメリット、そして Azure Event Grid の概要、機能、主な利用シーンについて解説しました。 Azure Event Grid を活用することで、特定のイベントに対して迅速な処理を行うアプリケーションを簡単に実装できます。これにより、システム全体のパフォーマンス向上と、ユーザーエクスペリエンスの改善にもつなげることが可能です。ぜひ専門家の支援を受けながら、 Azure Event Grid を活用したアプリケーション開発に役立ててみてください。
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Tag: Azure Event Grid
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