Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Virtual Desktopのリージョン選択は重要?リージョン特性を踏まえた選択のポイントについて解説

Category: 入門編

2024.07.30

データの配置は重要?パフォーマンスや可用性、コンプライアンスを守れる方法を解説

Azure Virtual Desktop (以下、 AVD )は、リモートデスクトップ環境の構築と管理を効率化し、ビジネスの柔軟性と生産性を向上させる強力なツールです。しかし、最適なパフォーマンスとコスト効率を実現するためには、適切なリージョン選択が重要です。

本記事では、 Azure リージョンとは何か、リージョンの選択が与える影響から、リージョンの特性や選択のポイントまで詳しく解説します。

1. Azureのリージョン選択の重要性

Azure に限らず、パブリック・クラウドにはリージョンという考え方があります。ここでは Azure のリージョン選択の影響と重要性について解説します。

Azureリージョンとは

Azureリージョンとは

図版出典:Microsoft Partner Blog

Azure リージョンは、マイクロソフトが世界各地に設置しているデータセンターが配置されている地理的な領域を指します。それぞれのリージョンには、地理的に近接した複数のデータセンターが配置されており、ユーザーに高い可用性とパフォーマンスを提供するよう設計されています。 Azure のサービスを利用する際には、いずれかのリージョンを選択する必要があります。

リージョン選択が与える影響

Azure リージョンにはそれぞれ固有の特性があるため、 Azure の用途に応じた最適なリージョンを選択することが重要です。リージョン選択が与える影響は下記の通りです。

パフォーマンス

リージョン選択は、ユーザーの操作やアプリケーションの応答速度に直接影響を与えます。例えば、ユーザーがアジアにいる場合、アジアリージョンを選択することでレイテンシ(遅延)を最小限に抑え、快適な操作環境を実現できます。逆に、ユーザーから遠いリージョンを選択すると、通信距離が増加することによりレイテンシが高くなり、パフォーマンスが劣化する可能性があります。

可用性

リージョン選択が与える影響

災害対策やビジネス継続計画 ( BCP ) を考慮する際、地理的に離れた複数のリージョンを利用することでシステムの冗長性を確保できます。リージョン間でのデータレプリケーション等により、災害発生時のデータ損失を防ぎ、迅速な復旧を実現できます。

データ主権/コンプライアンス

各国や地域には、データの保管や処理に関する法規制が存在します。例えば、 EU では GDPR (一般データ保護規則)が施行されており、データの保管場所やアクセス権限について厳格な規制があります。データ主権やコンプライアンス要件を満たすためには、これらの規制に準拠したリージョンを選択することが必要です。

2. AVDのリージョンごとの特性

Azureは多くのリージョンを持っています。ここでは、 AVD のリージョン選択の影響とリージョンごとの特性について解説します。

AVDにおけるリージョン選択の影響

AVD も他のサービスと同様、デプロイする際にそれらを作成する Azure リージョンを指定する必要があります。なお、 AVD 自体は、特定の Azure リージョンに依存しないリージョン以外のサービスですが、使用する一部のデータは、 AVD デプロイ時に指定したリージョン内に保存されます。

AVDで使用するデータの保存先

AVD で使用するデータの保存先は下記の通りです。

顧客入力データ

顧客入力データとは、ホストプール名、アプリケーショングループ名などのユーザー設定情報を指します。これらのデータは、 AVD リソースをデプロイする際に指定したリージョンの地域に格納・保存されます。

顧客データ

顧客データとは、 AVD を利用するユーザーが作成するデータ(例:WordやExcelドキュメント等)やインストールしたアプリケーションなどを指します。顧客データは、 AVD サービス内に直接格納されませんが、仮想マシン名、アプリケーション名などのメタ情報は AVD をデプロイする際に指定したリージョンの地域に格納・保存されます。

なおユーザーが作成・インストールしたデータやアプリケーションは、 AVD のセッションホストとして作成した VM が使用するストレージ内に格納されるため、セッションホスト作成時に指定したリージョンに保存されます。

診断データ

診断データは、 AVD サービスによって生成される、トラブルシューティング、サポート、サービスの正常性のチェックを行う場合に利用されるデータを指します。仮想マシン名、ホストプールの情報、接続したクライアントの場所や IP アドレスなどの情報が含まれており、こうした診断データは、次の 2 箇所に送信・保存されます。

 
  • AVD サービスのインフラが存在する、ユーザーに最も近い場所。
  • ホストプールがある場所。

リージョンごとの特性

AVD サービス内に保存される顧客データや、 AVD サービスが生成するデータは下記のリージョンに保存することが可能(※1)です。それぞれのリージョンの特徴は下表のとおりです。

リージョン パフォーマンス 可用性 コンプライアンス コスト
米国 (US) 高い 非常に高い GDPR 準拠不要、米国内データ主権 低め
ヨーロッパ (EU) 高い 高い GDPR 準拠必要、データ主権を尊重 中程度
イギリス (UK) 高い 高い GDPR 準拠、英国独自のデータ主権要件に対応 中程度から高め
カナダ (CA) 高い 高い PIPEDA (個人情報保護法)に準拠 中程度
日本 (JP) 非常に高い 高い APPI (個人情報保護法)に準拠 中程度
オーストラリア (AU) 高い 高い オーストラリアのプライバシー法に準拠 中程度
インド (IN) 高い 高い インドのデータ保護規制に準拠 低め

※1 参考:Azure Virtual Desktop のデータの場所

3. AVDのリージョン選択のポイント

最後に、 AVD リージョン選択のポイントについて解説します。

ビジネス要件に基づいたリージョン選択の基準

ビジネスの要件に基づいたリージョン選択の基準は下記の通りです。

パフォーマンスと可用性

ユーザーの物理的な位置に近いリージョンを選択することで、レイテンシ(遅延)を最小限に抑え、快適なユーザー体験が得られます。災害対策など可用性を高める場合は、地理的に離れた複数のリージョンを指定してシステムを冗長化させます。

データ主権/コンプライアンス

GDPR 等、各国の法規制に準拠するためには、その国や地域内で得られたデータは、その国や地域内のリージョンを選択する必要があります。ビジネスがデータ主権に関する規制を遵守することは重要です。

コスト

リージョンごとにリソース使用料金が異なります。例えば、米国やインドのリージョンでは他のリージョンに比べてコストが低い傾向があります。予算に応じてコスト効率の高いリージョンを選択することができます。

AVDのリージョンの設定手順とポイント

AVD のリージョンの設定手順と設定時のポイントは下記の通りです。

1. まず、 Azure ポータルにログインし、リソースグループを作成します。この時、リソースグループの名前とリージョンを指定する必要があります。

2. 次に、 AVD サービスでホストプールを作成します。ホストプールの作成時には、ホストプールの名前、リソースグループ、およびホストプールを配置するリージョンを指定します。

3. ホストプールが作成されたら、次にセッションホストを追加します。セッションホストの追加時には、仮想マシンのサイズ、数、 OS イメージを選択し、セッションホストを配置するリージョンを指定します。

4. 次に、ワークスペースとアプリケーショングループを作成します。ワークスペース作成時にも配置するリージョンを指定します。

5. 最後に、アプリケーショングループにユーザーを割り当てます。これにより、ユーザーが仮想デスクトップやアプリケーションにアクセスできるようになります。

4. まとめ

AVD のリージョン選択は、システムのパフォーマンス、可用性、コスト、そして法的なコンプライアンスに大きな影響を与えます。さらに、コスト効率の観点からも適切なリージョン選択が重要です。本記事の内容を参考に、自社のニーズに合った最適なリージョンを選択し、 AVD の導入を検討してみてはいかがでしょうか。ぜひ、専門家の助けを借りながら導入を検討してみてください。

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Tag: Azure Virtual Desktop

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