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データの配置は重要?パフォーマンスや可用性、コンプライアンスを守れる方法を解説
Azure Virtual Desktop (以下、 AVD )は、リモートデスクトップ環境の構築と管理を効率化し、ビジネスの柔軟性と生産性を向上させる強力なツールです。しかし、最適なパフォーマンスとコスト効率を実現するためには、適切なリージョン選択が重要です。
本記事では、 Azure リージョンとは何か、リージョンの選択が与える影響から、リージョンの特性や選択のポイントまで詳しく解説します。
1. Azureのリージョン選択の重要性
Azure に限らず、パブリック・クラウドにはリージョンという考え方があります。ここでは Azure のリージョン選択の影響と重要性について解説します。
Azureリージョンとは

Azure リージョンは、マイクロソフトが世界各地に設置しているデータセンターが配置されている地理的な領域を指します。それぞれのリージョンには、地理的に近接した複数のデータセンターが配置されており、ユーザーに高い可用性とパフォーマンスを提供するよう設計されています。 Azure のサービスを利用する際には、いずれかのリージョンを選択する必要があります。
リージョン選択が与える影響
Azure リージョンにはそれぞれ固有の特性があるため、 Azure の用途に応じた最適なリージョンを選択することが重要です。リージョン選択が与える影響は下記の通りです。
パフォーマンス
リージョン選択は、ユーザーの操作やアプリケーションの応答速度に直接影響を与えます。例えば、ユーザーがアジアにいる場合、アジアリージョンを選択することでレイテンシ(遅延)を最小限に抑え、快適な操作環境を実現できます。逆に、ユーザーから遠いリージョンを選択すると、通信距離が増加することによりレイテンシが高くなり、パフォーマンスが劣化する可能性があります。
可用性

災害対策やビジネス継続計画 ( BCP ) を考慮する際、地理的に離れた複数のリージョンを利用することでシステムの冗長性を確保できます。リージョン間でのデータレプリケーション等により、災害発生時のデータ損失を防ぎ、迅速な復旧を実現できます。
データ主権/コンプライアンス
各国や地域には、データの保管や処理に関する法規制が存在します。例えば、 EU では GDPR (一般データ保護規則)が施行されており、データの保管場所やアクセス権限について厳格な規制があります。データ主権やコンプライアンス要件を満たすためには、これらの規制に準拠したリージョンを選択することが必要です。
2. AVDのリージョンごとの特性
Azureは多くのリージョンを持っています。ここでは、 AVD のリージョン選択の影響とリージョンごとの特性について解説します。
AVDにおけるリージョン選択の影響
AVD も他のサービスと同様、デプロイする際にそれらを作成する Azure リージョンを指定する必要があります。なお、 AVD 自体は、特定の Azure リージョンに依存しないリージョン以外のサービスですが、使用する一部のデータは、 AVD デプロイ時に指定したリージョン内に保存されます。
AVDで使用するデータの保存先
AVD で使用するデータの保存先は下記の通りです。
顧客入力データ
顧客入力データとは、ホストプール名、アプリケーショングループ名などのユーザー設定情報を指します。これらのデータは、 AVD リソースをデプロイする際に指定したリージョンの地域に格納・保存されます。
顧客データ
顧客データとは、 AVD を利用するユーザーが作成するデータ(例:WordやExcelドキュメント等)やインストールしたアプリケーションなどを指します。顧客データは、 AVD サービス内に直接格納されませんが、仮想マシン名、アプリケーション名などのメタ情報は AVD をデプロイする際に指定したリージョンの地域に格納・保存されます。
なおユーザーが作成・インストールしたデータやアプリケーションは、 AVD のセッションホストとして作成した VM が使用するストレージ内に格納されるため、セッションホスト作成時に指定したリージョンに保存されます。
診断データ
診断データは、 AVD サービスによって生成される、トラブルシューティング、サポート、サービスの正常性のチェックを行う場合に利用されるデータを指します。仮想マシン名、ホストプールの情報、接続したクライアントの場所や IP アドレスなどの情報が含まれており、こうした診断データは、次の 2 箇所に送信・保存されます。
- AVD サービスのインフラが存在する、ユーザーに最も近い場所。
- ホストプールがある場所。
リージョンごとの特性
AVD サービス内に保存される顧客データや、 AVD サービスが生成するデータは下記のリージョンに保存することが可能(※1)です。それぞれのリージョンの特徴は下表のとおりです。
リージョン | パフォーマンス | 可用性 | コンプライアンス | コスト |
---|---|---|---|---|
米国 (US) | 高い | 非常に高い | GDPR 準拠不要、米国内データ主権 | 低め |
ヨーロッパ (EU) | 高い | 高い | GDPR 準拠必要、データ主権を尊重 | 中程度 |
イギリス (UK) | 高い | 高い | GDPR 準拠、英国独自のデータ主権要件に対応 | 中程度から高め |
カナダ (CA) | 高い | 高い | PIPEDA (個人情報保護法)に準拠 | 中程度 |
日本 (JP) | 非常に高い | 高い | APPI (個人情報保護法)に準拠 | 中程度 |
オーストラリア (AU) | 高い | 高い | オーストラリアのプライバシー法に準拠 | 中程度 |
インド (IN) | 高い | 高い | インドのデータ保護規制に準拠 | 低め |
※1 参考:Azure Virtual Desktop のデータの場所
3. AVDのリージョン選択のポイント
最後に、 AVD リージョン選択のポイントについて解説します。
ビジネス要件に基づいたリージョン選択の基準
ビジネスの要件に基づいたリージョン選択の基準は下記の通りです。
パフォーマンスと可用性
ユーザーの物理的な位置に近いリージョンを選択することで、レイテンシ(遅延)を最小限に抑え、快適なユーザー体験が得られます。災害対策など可用性を高める場合は、地理的に離れた複数のリージョンを指定してシステムを冗長化させます。
データ主権/コンプライアンス
GDPR 等、各国の法規制に準拠するためには、その国や地域内で得られたデータは、その国や地域内のリージョンを選択する必要があります。ビジネスがデータ主権に関する規制を遵守することは重要です。
コスト
リージョンごとにリソース使用料金が異なります。例えば、米国やインドのリージョンでは他のリージョンに比べてコストが低い傾向があります。予算に応じてコスト効率の高いリージョンを選択することができます。
AVDのリージョンの設定手順とポイント
AVD のリージョンの設定手順と設定時のポイントは下記の通りです。
1. まず、 Azure ポータルにログインし、リソースグループを作成します。この時、リソースグループの名前とリージョンを指定する必要があります。
2. 次に、 AVD サービスでホストプールを作成します。ホストプールの作成時には、ホストプールの名前、リソースグループ、およびホストプールを配置するリージョンを指定します。
3. ホストプールが作成されたら、次にセッションホストを追加します。セッションホストの追加時には、仮想マシンのサイズ、数、 OS イメージを選択し、セッションホストを配置するリージョンを指定します。
4. 次に、ワークスペースとアプリケーショングループを作成します。ワークスペース作成時にも配置するリージョンを指定します。
5. 最後に、アプリケーショングループにユーザーを割り当てます。これにより、ユーザーが仮想デスクトップやアプリケーションにアクセスできるようになります。
4. まとめ
AVD のリージョン選択は、システムのパフォーマンス、可用性、コスト、そして法的なコンプライアンスに大きな影響を与えます。さらに、コスト効率の観点からも適切なリージョン選択が重要です。本記事の内容を参考に、自社のニーズに合った最適なリージョンを選択し、 AVD の導入を検討してみてはいかがでしょうか。ぜひ、専門家の助けを借りながら導入を検討してみてください。
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