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クラウドを活用したDRサイト構築と運用の現実解
自然災害やシステム障害に備え、事業継続を支える「 DR サイト( Disaster Recovery )」の構築は、企業にとって欠かせない対策です。
しかし、従来のオンプレミス構成の DR サイトでは初期コストや運用負荷が課題となります。そこで注目されているのが、 Microsoft Azure の「 Azure Site Recovery 」を活用した構築・運用です。
本記事では、 DR サイトの基本から Azure を使った実現方法、運用時のポイントまでを解説します。
1. DRサイトとは?
DR サイトとは、災害などにより、普段使用している IT システムでの業務が実施困難になった際に、代替として使用する設備や施設を指します。
DR 対応としてはバックアップの遠隔保存も有効ですが、 DR サイトは単にデータを保存するだけでなく、業務を再開できる状態まで復旧可能な IT 環境を指す点で異なります。
DRサイト4つの方式
RTO (目標復旧時間)と RPO (目標復旧地点)の要件やコストによって、 DR サイトは大きく 4 つに分けられます。
方式 | RTO/RPO | コスト | 特徴 |
---|---|---|---|
コールド | 数日〜数週間 | 最も低い | IT インフラやデータは殆ど持たず、電源や空調など最低限の設備のみを準備。災害発生後に機器を設置してデータ復旧を行う。 |
ウォーム | 数時間〜数日 | コールドとホットの間 | 基本的な IT インフラがあり、データをレプリケーションしている。 |
ホット | 数分〜数時間 | 高い | 本番環境とほぼ同じ IT インフラがあり、データもほぼリアルタイムで同期している。 |
マルチ | ゼロに近い | 最も高い | 複数サイトに同等のシステムを用意し、全ての拠点を常時稼動させる「アクティブ/アクティブ」構成。あるサイトが停止しても、別のサイトで業務は継続される。 |
オンプレミスで構築する場合の課題3点
オンプレミスで DR サイトを構築する場合、以下のような課題があります。
高額なコスト
施設の確保、ハードウェア調達、電源や回線などのインフラ整備に多額の初期費用がかかります。また、ハードウェアの保守費用、通信費、電気代、施設維持費などの運用コストも必要です。
災害に対する脆弱性
DR サイト自体が災害に遭うリスクがあり、物理的な堅牢性や地理的分散性が重要となります。
スケーラビリティの限界
リソース増強が必要になった場合、ハードウェアの追加調達、設置に時間がかかり、迅速な対応が困難です。
2. Azure Site Recoveryとは?
クラウド上で DR サイトを構築・運用できるサービスに、 Azure Site Recovery( ASR ) があります。
Azure Site Recoveryのメリット3点
オンプレミスでの構築には無い、以下のメリットが得られます。
導入・運用コストを最小化
ハードウェア調達、施設の確保、インフラ整備が必要なく、高額な初期投資が不要です。ハードや施設の維持など Azure 側が行う運用が多くあり、運用コストも下げられます。
災害に対する堅牢性
Azure の持つ堅牢で地理的に分散化されたデータセンターを利用できるため、広域災害に強いと言えます。
高いスケーラビリティ
必要な規模のリソース増強がオンデマンドで実施できます。
Azure Site Recoveryのコスト
初期費用はゼロです。運用コストは、保護対象の数、ストレージ量、送信データ量に対して課金されます。
最初の 31 日間は無料で利用でき、 Azure のサイトで費用見積りの算出も可能です。
※参考:Azure 料金計算ツール
Azure Site Recoveryの適用が難しいシステムには注意が必要
RPO がほぼゼロ、あるいは RTO が数分以内など、極めて厳しい RPO/RTO 要件のシステムはマルチ方式が適しています。ASR はウォーム方式なので、このような即時性の高い要件への対応は難しいです。
レガシーなデバイスやドングルなど、 Azure 上で利用できないハードウェアに依存するシステムも ASR では構築できません。
3. Azure Site Recoveryを用いたDRサイト構築
DR サイト構築で重要となる事前設計のポイントと、構築手順のベストプラクティスを解説します。
設計のポイント
全てのシステムを闇雲に DR サイト化しても効果は薄く、事前に考慮しておくべき点がいくつかあります。
- ビジネス継続に不可欠なシステムを特定し、それぞれに対して適切な RTO/RPO を定義する。
- RPO の要件に合わせて、復旧ポイントの保持期間やスナップショットの取得頻度を定義する。
- アプリケーションの依存関係を考慮して復旧順序を定義する。(例: DB サーバー → アプリケーションサーバー → Web サーバー)
構築のベストプラクティス
構築の手順と、各手順での重要ポイントを解説します。
Azure環境の準備
レプリケーションデータ、復旧計画などを一元管理するための Recovery Service コンテナを作成します。格納先ストレージの冗長性は下記の 3 つから選択でき、それぞれ可用性とコストに違いがあります。用途に応じて、必要な可用性・コストとのバランスを考慮し、冗長性を選択してください。
冗長性の選択肢 | 概要 | 可用性 | コスト |
---|---|---|---|
geo | 地理的に離れた地域にもデータを複製 | 高 | 高 |
ゾーン | 同一リージョン内の複数ゾーンに保存 | 中 | 中 |
ローカル | 同一データセンター内で保存 | 低 | 低 |
レプリケーションの実装
レプリケーションを管理する構成サーバーをオンプレミスに構築します。構成サーバーが停止すると、データレプリケーションやフェールオーバーが実行できなくなるため、その可用性には十分留意しましょう。
保護対象となるオンプレミスのサーバーにモビリティサービスをインストールします。互換性の問題が発生する可能性があるので、事前に前提条件を確認しましょう。
初回レプリケーションを実行します。データ量によって長い時間がかかり、帯域幅を圧迫するため、ビジネスへの影響を考えて計画的な実施が必要です。
復旧計画の作成
フェールオーバー時の起動順序、 IP アドレス変更などのスクリプト自動実行を定義する復旧計画を作成します。フェールオーバー手順の自動化により RTO を大幅に短縮できる可能性がありますので、入念な検討をお勧めします。
フェールオーバーテストの実施
テストを実施し、復旧計画や手順に不備がないかを確認します。
4. Azure Site Recoveryを用いたDRサイト運用
運用上の留意点と併せて、特に気になると思われるコスト面の工夫を解説します。
運用上の留意点
DR サイトは通常時には使用しないため運用が疎かになりがちです。いざという時に利用できない事態にならないよう、以下の点に留意しましょう。
- Recovery Service ダッシュボードや Azure Monitor を利用してレプリケーションの状態を常に監視する。
- 復旧計画の見直しとフェールオーバーテストの定期的な実施を運用計画に組み込む。
- プライマリサイトのハードウェア構成変更や、アプリケーションのバージョンアップ、パッチ適用などが DR サイト側に反映されていることを確認する。
コストを抑える工夫
ASR はフェールオーバー実施有無にかかわらず運用コストが発生します。その中で、レプリケーションデータのストレージ費用、データ転送費用を抑える工夫があるので紹介します。
- データディスクの中に DR サイトでは不要なもの(例: 一時ファイル、テストデータ)があれば、レプリケーション対象から除外することでストレージ費用とデータ転送費用を削減できる。
- レプリケーション先のディスクとして、より安価なストレージを選択できないか、 RPO やフェールオーバー時の性能要件とのバランスを見ながら検討する。
- RPO 要件を満たしつつ必要最小限の復旧ポイント数に設定することで、スナップショットの容量を減らし、ストレージ費用を削減できる。
5. まとめ
クラウドの恩恵を受けられ、必要なコストや構築・運用のポイントが明確な Azure Site Recovery は、優れた DR サイト構築ソリューションです。
DR サイトは「事業の継続」という経営上重大な課題に関するものです。より万全を期すなら、ノウハウや実績のあるベンダーの協力を得るとよいでしょう。
Rworks は、豊富なシステム構築・運用実績により、企業の課題に応じた技術支援・PoC・運用支援が可能です。ぜひご相談ください。
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Tag: DRサイト
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