Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Traffic Managerとは?DNSの基本とAzureでのDNS負荷分散の実現方法について解説

Category: 入門編

2021.10.13

企業のサービス品質を下支えするDNS負荷分散とは?機能とメリットを解説

システムで大量のトラフィックを処理するために、サーバーを並列化して負荷分散を行う場合がありますが、インターネット上の Web サイトに対するトラフィックを負荷分散するにはどのような仕組みが必要でしょうか。

その答えとなるのが DNS の仕組みです。インターネットの名前解決の仕組みを提供する DNS を応用することにより、宛先サーバーを振り分けて負荷分散を実現することが可能です。Azure が提供する DNS ベースの負荷分散サービスである Azure Traffic Manager では、インターネットに公開されている Web サイトや Web アプリケーションへの通信を、世界各国に存在する Azure リージョンへ負荷分散することができます。

本記事では、DNS や負荷分散の基礎を踏まえ、Azure Traffic Manager の概要や料金体系、機能とメリットについて解説します。

1. DNS と負荷分散

DNS と負荷分散は、一見関係ない技術のように見えますが、システムへのトラフィックを負荷分散する仕組みとして関係性があります。ここでは、DNS と負荷分散の基本について解説します。

1.1 DNS とは

DNS( Domain Name System )とは、インターネット上でドメイン名( www.example.co.jp など URL の一部)を管理・運用するために開発された技術です。DNS は「 example.co.jp 」などのドメイン名と IP アドレスを一意に紐づけたデータベースです。世界中に存在するデータベースが協調して、ドメイン名から IP アドレスを検索したり、メールアドレスから宛先のメールサーバーを検索したりすることができます。

1.2 負荷分散とは

負荷分散とは、システムの処理が特定のサーバーや機器に集中しないよう、同種のサーバーや機器を並列に複数用意して、負荷が均等になるよう処理を分散して割り当てる仕組みです。負荷分散を行うことで、システムの性能を向上させると同時に、サーバーや機器の並列化によりシステム全体の可用性を向上させることができます。

1.3 DNS でできる負荷分散

DNS にて負荷分散を行うイメージはあまり無い方も多いと思いますが、DNS ラウンドロビンという負荷分散方式が存在します。DNS ラウンドロビンとは、1 つのドメイン名に複数の IP アドレスを紐づけることで、クライアント( PC やブラウザなど)からのリクエストごとに順番に応答していく負荷分散方式で、DNS サーバーで実行されます。

DNS ラウンドロビンにより、複数のアプリケーションや Web サイトを用意して、DNS 技術を応用した負荷分散を実施することができます。

2. Azure Traffic Manager とは

DNS を利用した負荷分散は、オンプレミスでもクラウドでも実施することができます。ここでは、Microsoft Azure が提供している DNS ベースの負荷分散サービス、Azure Traffic Manager の概要と料金体系について解説します。

2.1 Azure Traffic Manager の概要

Azure Traffic Manager とは、Microsoft Azure が提供している DNS ベースの負荷分散サービスです。Azure Traffic Manager を利用することで、インターネットに公開されている Web サイトや Web アプリケーションへの通信を、世界各国に存在する Azure リージョンへ負荷分散することができます。負荷分散方式として下記 6 種類のルーティングを採用することができ、複数のルーティング方式を組み合わせて複雑な負荷分散を実施することも可能です。

  • 優先順位付け
  • 重み付け
  • パフォーマンス
  • 地理的
  • 複数値
  • サブネット

2.2 Azure Traffic Manager の料金体系

Azure Traffic Manager の料金体系は、受信した DNS の問い合わせ(クエリ)の数に基づく従量課金制(※1)となります。また、DNS によるサービス正常性確認を行う対象のアプリケーションや Web サイトにも課金されます。なお、毎月 10 億以上のクエリを受信する場合は割引となります。

※1 参考:Azure Traffic Managerの価格

3. Azure Traffic Manager の機能とメリット

DNS ベースの負荷分散は、Azure Traffic Manager 以外にも多くの企業がサービスを提供していますが、Azure を利用するメリットは何でしょうか。ここでは、Azure Traffic Manager の機能が持つ下記のメリットについて解説します。

  • アプリケーション可用性の向上
  • アプリケーションパフォーマンスの向上
  • ダウンタイムなしでのサービスメンテナンスの実現
  • ハイブリッドアプリケーションの結合
  • 複雑なトラフィック分散の実現

3.1 アプリケーション可用性の向上

Azure は世界各地に Azure リージョンを持っているため、グローバルレベルの可用性を誇っています。また、Azure Traffic Manager は監視対象の片方のアプリケーションや Web サイトのダウンを検知したら自動でフェールオーバーを行います。Azure の特色とフェールオーバーの機能を活かし、重要なアプリケーションや Web サイトに対して非常に高い可用性を提供することができます。

3.2 アプリケーションパフォーマンスの向上

Azure のグローバルレベルの分散配置により、アプリケーションや Web サイトを世界各地で実行することができます。Azure Traffic Manager は、世界各地の中から応答時間が最も短い拠点にトラフィックを誘導するため、アプリケーションや Web サイトの応答性を高めることが期待できます。

3.3 ダウンタイムなしでのサービスメンテナンスの実現

メンテナンスなどによりアプリケーションや Web サイトを停止する必要がある場合は、Azure Traffic Manager でもう片方のアプリケーションや Web サイトへトラフィックを誘導することができます。この機能により、ダウンタイムを発生させることなく、アプリケーションや Web サイトで定期的なメンテナンスを実行できます。

3.4 ハイブリッドアプリケーションの結合

Azure Traffic Manager は、オンプレミスなど、Azure 以外の外部エンドポイントをサポートしています。そのため、クラウドからオンプレミスへのフェールオーバー、もしくはその逆など、クラウドとオンプレミスをハイブリッドに活用した構成でも使用することができます。また、アプリケーションをオンプレミスからクラウドへ移行する際にも活用することができます。

3.5 複雑なトラフィック分散の実現

Azure Traffic Manager は 6 種類のトラフィックルーティングを選択できますが、複数のトラフィックルーティングを組み合わせて複雑なトラフィックルーティングを作成することが可能です。例えば、本番環境とテスト環境を混在させ、一部のトラフィックだけをテスト環境へルーティングするために「重みづけ」トラフィックルーティングを新たに組み入れることなどができます。

4. まとめ

EC サイトや SNS など、企業がサービスとして提供している Web サイトや、Web サイト上で動作するアプリケーションの性能や可用性は、サービスの品質に関わる重要なポイントです。DNS 負荷分散の仕組みは、大量のトラフィックを滞りなく処理し、メンテナンス実施時も極力サービスに影響を与えないために非常に重要です。

Azure が提供する DNS ベースの負荷分散サービスである Azure Traffic Manager は、こうした企業のサービス品質を下支えするマネージドサービスです。企業の事業活動をサービス停止などのリスクから守るためにも、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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Tag: Azure Traffic Manager DNS 負荷分散

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