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Azure CLIの概要、利用環境、活用事例、メリットについて解説します
DX化推進、働き方改革などを背景に、様々なクラウドサービスの利用、オンプレミス環境からクラウド環境への移行、統合が急速に進んでいます。
昨今、このようにクラウドサービスが身近になることで、最適なコストで運用するための管理が求められるようになりました。なぜならクラウドサービスは基本的に従量制の課金体系であるため、小さな無駄であっても、積み重なれば大きなコスト負担になりかねないからです。
Azureでは、運用作業を自動化、効率化できる管理ツールが用意されています。その一つがAzure CLI(Command Line Interface)です。現代のOSにおいてGUI(Graphical User Interface)環境が主流であるがゆえに、CLIは敬遠されがちですが、使いこなせば大変便利な効率化ツールになりえるのです。
本記事では、Azure CLIについて基本的な機能、できること、ユースケース、メリットについて紹介します。
1. CLIとは?
今回のテーマである、Azure CLIを解説する前に、まずは大前提となるCLIの概要について解説します。
CLIとはCommand Line Interface(コマンドラインインターフェイス)の略です。コンピューターが誕生した当初、すべての操作は文字を直接打ち込むことで、コンピューターに命令を出していました。この命令文(コマンドライン)が制御の窓口(インターフェース)となっていたことから、コマンドラインインターフェイスと呼ばれています。現在でも、あらゆるOSでこのCLIは実装されています。
CLIに対し、現在主流であるのが、Graphical User Interface(グラフィカルユーザーインターフェース)、通称GUIです。視覚的にコンピューターに命令を出すことができます。マウスで画面をクリック、またはタッチパネルでタッチ等、視覚的な対話でコンピューターを制御する手法です。
一見すればGUIですべてが事足りるように見えますが、CLIにしかできないことが数多く存在します。OSにダイレクトに命令するような細かい操作や、情報の取集、俊敏な応答などはCLIの方が優れています。 例えばコンピューターの診断などはCLIでないとわからないことが多く存在し、パフォーマンスやセキュリティ上のリスク有無、動作形跡のような追跡調査など、非常に重要で細かい情報を取得できます。
またCLIはコマンドを用いた一連の処理を文(スクリプト)として構成できるため、繰り返し処理を要する管理作業、プログラミング、自動化処理などにも向いています。CLIが現在でも重要なインターフェースとして使用され続けている理由はこのようなメリットがあるためです。
2. Azure CLIの概要
ここでは、Azureが提供する CLI機能である、Azure CLIについて解説していきます。Azure CLIは様々なAzureリソースに対して管理コマンドを実行するためのコマンドラインツールで、3つのCLIツールが用意されています。
Azure CLI
Pythonベースで開発され、Windowsユーザー向けのみならず、macOSおよびLinuxユーザー向けでも利用可能なCLIツールです。仮想マシンに対し頻繁に行う管理作業を省力化できることが特長です。ローカルのPython環境にAzure CLIを追加して利用します。
Azure PowerShell
PowerShellをベースに開発されたWindowsユーザー向けのCLIツールです。Windows PowerShellまたはPowerShell Coreにローカルインストールして利用します。
Azure Cloud Shell
Webブラウザベースで開発されたCLIツールです。ブラウザ上で利用するため、Azure PowerShell、Azure CLIのいずれも切り替えて利用可能です。また、テキストエディタ、ソース管理、ビルドツール、データベース接続ツールなどさまざまな補助ツールが利用できます。
このように、利用者が使い分けできるよう、環境に応じたCLIツールが用意されています。それぞれの詳しい機能については公式サイトにてご確認下さい。
※参考1 Azure CLIの概要
利用料金について
CLIツールの利用は無料で利用できます。Azure Cloud Shellについてはデータを維持するために必要となるAzure Filesへ格納したデータの量、ストレージ トランザクション、送信データ転送の量と種類、データ冗長オプションに応じて料金が発生するので注意が必要です。
こちらもご利用前には公式サイトにて詳細をご確認下さい。
※参考2 Azure Cloud Shellの価格
Azure CLIの利用方法
Azure CLIの利用を開始するには、ローカル環境にインストールが必要です。Microsoft社からは各OSに対応したインストーラー、リポジトリが公開されています。
Windowsベースの環境であれば、インストーラーをダウンロードし、実行することでインストールが完了します。 インストール後、PowerShellターミナル画面から、Azureアカウントへのログインが必要です。「az login」コマンドを入力することで、認証としてブラウザ上でAzureへのサインイン画面が立ち上がります。サインイン後、Azure CLI側のログインも行われます。
詳しいインストール手順については公式サイトをご確認下さい。
※参考3 Azure CLIをインストールする方法
3. Azure CLIでできること
それでは実際にAzure CLIでは何ができるのでしょうか?ここでは、基本的なコマンド(命令文)として代表的なものを紹介します。
コマンド構文は「az」から始まり、さまざまなパラメーターを付加して詳細な設定が可能です。 コマンドには規則性があり、基本文に対し、オプションを付加することで詳細命令を組み立てていく仕組みです。
※参考4 一般的な Azure CLI コマンド
az vmコマンド(仮想ホストへ対するコマンド)
- az vm create
- 仮想マシンを作成します。
- az vm delete
- 仮想マシンを削除します。
- az vm list
- サブスクリプションのすべて仮想マシンの一覧を取得します。
- az vm list –show-details
- 「–show-details」オプションをつける事でさらに詳細の情報を取得します。
- az vm restart
- 仮想マシンを再起動します。
- az vm stop
- 仮想マシンを停止します。
az resourceコマンド(Azureリソースへ対するコマンド)
- az resource create
- Azureリソースを作成します。
- az resource delete
- Azureリソースを削除します。
- az resource list
- 使用可能なリソース一覧を取得します。
- az group list
- 使用可能なリソースグループ一覧を取得します。
便利な管理系コマンド
- az account
- Azure サブスクリプション情報を管理します。
- az billing
- Azure 課金、請求情報を管理します。
- az configure
- Azure CLIの構成情報を対話型で管理します。
ここで紹介したコマンドはごく一部にすぎません。CLIで出来る事をイメージ頂くために主要なコマンドのみご紹介しました。これ以外にも様々な操作を行うコマンドが用意されています。詳しいコマンド構文、オプション等については公式サイトのコマンドリファレンスでご確認下さい。
4. Azure CLIのメリット
ここまで、CLIによる操作がイメージできる程度のごくわずかなコマンド事例を紹介しました。GUI環境に慣れてしまうとあまり意識することはありませんが、CLIでは高度な運用管理のアイデアを実現することができます。
AzureにはGUI管理コンソールとしてAzure Portalがあり、このポータルによってほとんどの管理機能を実行することができます。Azureに限らずあらゆるシステムでGUIは専門的な技術知識がなくても多くの人が利用でき、汎用性に優れていると言えるでしょう。
しかし、開発、運用の負荷を見直し、生産性向上を目的とするならば、CLI環境が大変有効です。そのCLIのメリットを紹介します。
手順や仕様の変更がない
GUI管理コンソールであるAzure PortalはUI(ユーザーインターフェース)が頻繁に更改されます。そのことで手順や仕様も変わり、昨日までできていたことが同じ手順でできなくなる可能性があります。
その点、Azure CLIはUIが変更されることはほぼありません。コマンドラインのスクリプトを変更する手間も発生しないことから、管理上のメンテナンス負担を最小限にすることができます。
人為的ミスの削減
専門的な技術知識がなくても多くの人が利用できるAzure PortalのようなGUI環境では「直感的操作」が可能なことから、うっかりクリックしてしまうなど、人為的ミスが起こりやすい環境と言えます。しかしCLI環境であれば、命令文による制御で人間の直感的操作は一切ないことから、人為的ミスの削減を期待できます。
Azure最新機能のいち早い利用
Azureの最新機能は、まずAzure PowerShellで利用可能となり、数カ月程度のタイムラグを挟んでAzure Portalに反映されることがほとんどのため、いち早くAzureの最新機能を試すことができます。
5.まとめ
本記事では、一般的なCLI、GUIについての違い、Azure CLIの 概要、料金、インストール方法、代表的なコマンド、メリットについて紹介しました。
Azureのようなクラウドサービスは、これまでの10年でオンプレミス環境からの移行が進みました。今後も移行、統合は進みますが、これからの10年は上手にクラウドを管理するフェーズに入ったと言えるでしょう。コスト、効率、生産性、セキュリティなど様々な要素を考慮し、上手に使いこなす必要があります。
CLI利用にご不安な点があれば、気軽に専門家にご相談の上、利用をご検討ください。
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