Azure Managed Service Column ＜Azure運用コラム＞Azure Arcとは？Azureでハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境を実現する方法を解説

企業のポリシーに合った最適なクラウドの構築方法とは？ Azure での実現方法を解説

AWS や Microsoft Azure などのパブリッククラウドが広く利用されるようになりました。パブリッククラウドはその俊敏性や拡張性など優れたメリットが多い反面、利用する企業の要求に柔軟に応じるカスタマイズを行うことは苦手という面もあります。

企業専用のクラウドであるプライベートクラウドやオンプレミスはそうした面を補うことができるため、複数のクラウドやオンプレミスを組み合わせて自社にとって最適なクラウドを構築する企業が増えています。マイクロソフトのクラウド「 Microsoft Azure 」では、複数のクラウドを組み合わせてマルチクラウドを構成するサービス、Azure Arc を提供しています。

本記事では、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドの概要について踏まえた上で、Azure Arc の概要、料金体系、機能などについて解説します。

1. マルチクラウド・ハイブリッドクラウドとは

クラウドは組み合わせによってさまざまな構成が考えられます。まず、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドの概要と必要性について解説します。

マルチクラウドとは

マルチクラウドとは、複数のクラウドサービスを組み合わせ、利用者にとって最適な環境を構成する形態を指します。例えば、AWS と Microsoft Azure を併用して 1 つのシステムを構成し、Azure 上で Azure AD によって ID 管理を行い、サービス提供を AWS で行うといった構成が可能です。

マルチクラウドの定義は企業やベンダーにより多少異なる場合がありますが、幅広く複数のクラウドを組み合わせることを意味しており、パブリックやプライベートなどクラウド実装モデルを問いません。パブリッククラウドを複数構成するケースもあれば、プライベートとパブリックを組み合わせるケースもあります。

ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドは、マルチクラウドと同様に複数のクラウドサービスを組み合わせることを意味していますが、こちらは AWS や Azure などのパブリッククラウドと、利用者専用のクラウド環境であるプライベートクラウドや、利用者自身が IT 資産を保有して運用するオンプレミスを組み合わせて最適な環境を構成することを指します。その意味ではハイブリッドクラウドはマルチクラウドの一種であると言えます。

マルチクラウド・ハイブリッドクラウドの必要性とメリット

パブリッククラウドは、いずれのベンダーについても俊敏性・拡張性に優れ、それぞれ特色があり、魅力的なサービスであることは間違いありません。しかし、パブリックやプライベートクラウドを単独で利用することに対しては下記のデメリットが考えられます。

• カスタマイズの幅が狭まる
• ベンダーロックインに陥る
• パブリッククラウドは運用やアップデートを自分の自由にできない
• 大規模故障・トラブルによる影響が大きい

複数のクラウドを組み合わせたマルチクラウドを構成することで、こうしたデメリットを軽減し、さまざまなクラウドの特色を活かした柔軟性に富んだシステムを構築することができます。

また、企業のセキュリティポリシーによって重要な業務データをクラウドに配置できないケースや、運用やアップデートを自分たちの自由に行いたいケースもあるかと思います。そうした場合は、ハイブリッドクラウドにすることで、パブリッククラウドの俊敏性や拡張性の恩恵を受けながら、重要データをプライベートやオンプレミスに配置するなどして機密性を確保することができるようになります。

このように、複数のクラウドを組み合わせることでその企業に合った柔軟な環境を作り出すことが可能です。

2. Azure Arc とは

Azure 上で、マルチクラウドやハイブリッドクラウドを構成する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、Azure が提供するマルチクラウドを実現するサービス、Azure Arc の概要と料金体系について解説します。

Azure Arc の概要

Azure Arc は、Microsoft Azure が提供する次世代のハイブリッドクラウドを構成するためのサービスで、2019 年 11 月に開催されたマイクロソフトのイベント「 Ignite 2019 」で初めて発表された比較的新しいサービスです。

Azure Arc は、Azure はもちろん、オンプレミスやマルチクラウド、エッジなどあらゆるプラットフォームに対して、Azure Resource Manager（ Azure のリソース管理）で一元管理を可能とした点が最大の特徴です。これにより、オンプレミスや他社パブリッククラウド、エッジで動作するサーバーや仮想マシンを Azure Portal から統合管理することが可能となります。従来のハイブリッドクラウドでは、パブリック、プライベート、オンプレミスはそれぞれで管理する必要があり、運用性に問題がありましたが、Azure Arc により一元管理を実現したことで、運用性が格段に向上しました。

Azure Arc の料金体系

Azure Arc 自体は基本的に無料で利用できます。Azure Arc で管理対象となる Azure サービスや、他社のクラウドサービス、オンプレミスやプライベートクラウドのインフラはそれぞれ利用料金や保守費用などが発生する形になります。

3. Azure Arc の主な機能

Azure Arc は、プラットフォームを問わずにマルチクラウド、ハイブリッドクラウド構成を実現するために、下記の機能を備えています。

• Azure Arc 対応サーバー
• Azure Arc 対応 Kubernetes
• Azure Arc 対応データサービス
• Azure Arc 対応 VMware vSphere （プレビュー）
• Azure Arc 対応サーバー上の SQL Server

Azure Arc 対応サーバー

Azure Arc 対応サーバーとは、仮想サーバー、物理サーバーを一元管理するための機能です。Azure 及び Azure 以外のクラウドサービスやオンプレミス、エッジなどでホストされている Windows OS と Linux OS の仮想サーバー・物理サーバーを、Azure 仮想マシンと同じように管理することができます。

Azure Arc 対応 Kubernetes

Azure Arc 対応 Kubernetes は、任意の場所で実行されている Kubernetes クラスターをアタッチして構成するための機能です。Azure Kubernetes Service やその他のクラウド、オンプレミスの Kubernetes サービスに接続して一元的に管理することができます。

Azure Arc 対応データサービス

Azure Arc 対応データサービスは、任意のインフラ上の Azure データサービスをあたかも Azure 上で動作しているように管理・利用するための機能です。オンプレミス、エッジ、パブリッククラウド上で Azure データサービスを実行できます。現在、次の Azure Arc 対応データサービスに対応しています。

• SQL Managed Instance
• PostgreSQL Hyperscale （プレビュー）

Azure Arc 対応 VMware vSphere （プレビュー）

Azure Arc 対応 VMware vSphere は、VMware vSphere のインフラを Azure で直接管理する機能です。VMware vSphere の仮想マシンの作成、開始/停止、サイズ変更、削除などのさまざまな管理操作を、Azure 仮想マシンと同じように Azure から直接実行することができます。

Azure Arc 対応サーバー上の SQL Server

Azure Arc 対応サーバー上の SQL Serverは、Azure からAzure の外部でホストされている SQL Server インスタンスを直接管理する機能です。

4. まとめ

クラウドやオンプレミスを単体で利用することは、ある意味では機能の柔軟性を犠牲にして、システムのガバナンスを確保し切れなくなるリスクを内在するということになります。複数のクラウドやプライベートクラウド、オンプレミスを柔軟に組み合わせて、システムに必要な柔軟性・運用性・ガバナンスを確保することを検討してみてはいかがでしょうか。

Tag： Azure Arc ハイブリッドクラウド

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