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素早く簡単に仮想化基盤を構築する方法とは?クラウドとも連携できるサービスを紹介
従来のオンプレミスに代わり、クラウドを導入する企業が増えています。しかし、中には企業のセキュリティポリシーや扱うデータの機密性レベルによっては全てをパブリッククラウドに置き換えることができない企業もあります。
そうした企業ではオンプレミスでシステムを構築する際にHCIを導入するケースが増えています。HCIとは、シンプルな構成でサーバーの仮想化を実現するアプライアンス製品です。サーバー仮想化を今までより簡単に実現できる手段として注目を集めています。
マイクロソフトのクラウド、Microsoft Azureでは、Azure Stack HCIという事前検証済みのHCIソリューションを提供しています。本記事では、HCIの概要と特徴を押さえた上で、Azure Stack HCIのサービス内容とメリット、ユースケースについて解説します。1. HCIとは
HCIとは、よりシンプルな仕組みで簡単に仮想化を実現するための技術ですが、具体的にどのようなものでしょうか。まず、HCIの概要について解説します。
HCIとは
HCIとは、Hyper-Converged Infrastructureの略語で、SANやNASなどの外部ストレージを使用せずに一般的なx86サーバーを統合してサーバーの仮想化を実現するアプライアンス製品を指します。
従来の「3Tier型」の仮想化インフラは、サーバー、SANスイッチ、ストレージといったハードウェアを個別に設置・接続し、動作試験を経て提供していました。3Tier型は構成の柔軟性がメリットではあるものの、短期導入や拡張作業が難しく、製品ごとの管理ツールを使い分ける点がデメリットでした。HCIでは、SDS(Software Defined Storage)と呼ばれるストレージ仮想化機能により、複数のx86サーバーの内蔵ストレージを束ねて仮想的な共有ストレージを構成することで、外部ストレージやSANスイッチなどを排除してシンプルな構成を実現しています。
また、統合的な管理ツールにより一元管理することができるなど、3Tier型のデメリットを補う構成になっています。代表的なHCI製品として、NutanixやVMwareのvSANなどがあります。
HCIの特徴
HCIの特徴として下記が挙げられます。
- 構成がシンプルなため省スペースでメンテナンス性が高い
- オールインワンのため初期導入が簡単
- 増設が簡単で拡張性が高い
構成がシンプルなため省スペースでメンテナンス性が高い
HCIは、小型のx86サーバーを数台収納する構成のハードウェアです。SANスイッチや場所を取るストレージ装置が不要であるため、ラックスペースが不要となり、また電気代や空調代の費用の削減に繋がるメリットもあります。
オールインワンのため初期導入が簡単
HCIは、一般的に各ベンダーでサーバー、内部スイッチなどのハードウェアや、OSなどのソフトウェアを1つのラックに集約し、OSパッチ等の最新化を行い、動作検証を行った上で出荷します。既に動作検証で信頼性の高いパッケージとして導入されるため、初期導入を素早く簡単に行うことができます。
増設が簡単で拡張性が高い
HCIのサーバーには、CPU・メモリ・内蔵ディスクが搭載されており、サーバー単位で増設することが可能です。拡張時にSANスイッチやストレージ装置の設定変更が不要になるため、必要な分だけサーバーを増設し、簡単に拡張することができます。
2. Azure Stack HCIとは
Azureでは、オンプレミスでAzureのサービスを利用するためにHCIを提供しています。ここでは、Azure Stack HCIの概要と料金体系について解説します。
Azure Stack HCIの概要
Azure Stack HCIとは、Azureでハイブリッド・クラウドを実現するためのAzure Stackファミリのひとつとして2019年に追加されたHCIソリューションです。
各ハードウェアメーカーが事前検証済みのHCIハードウェア上で、WindowsまたはLinuxのゲストOSを、仮想化基盤Hyper-Vの仮想マシンとしてデプロイすることができます。
このHCIハードウェアに、Azureがサービスとして提供するHCI専用のOSを搭載し、記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct、S2D)やネットワークコントローラーといったWindows Serverの役割を用いて、仮想ストレージや仮想ネットワークを実現しています。
基本的にAzure VMやAzure PortalなどAzureのIaaS/PaaSサービスを使用することはできないため、Windows Admin Centerを利用してHCIの管理を行う必要がありますが、Azure Arcを利用して、Azureクラウドとハイブリッド・クラウドとして統合管理することが可能です。
Azure Stack HCIの料金体系
Azure Stack HCIの料金体系は、物理コアごとに月単位のサービス料金がかかる月額制となっています。なお、HCIのハードウェアは別途購入が必要となることに留意が必要です。
※参考1 Azure Stack HCIの価格
3. Azure Stack HCIのメリット
Azure Stack HCIは、HCIとしての特徴を一通り備えており、それに加えて、Azureと接続することも可能です。ここでは、Azure Stack HCIのメリットについて解説します。
高い信頼性・拡張性と省スペース化の実現
Azure Stack HCI は、HCIとしての特徴・機能を一通り備えています。
HCIの特徴である省スペース化や高い拡張性、スモールスタートで簡単に設置できる導入の簡易性、そして事前検証済みのハードウェアを使用することによる高い信頼性を備えています。
Azureと接続することでAzureのサービスを利用できる
Azure Stack HCIは、導入にあたってAzureクラウドとの接続が前提となっています。
Azureと接続することで、Azure MonitorやAzure BackupなどAzureの一部のサービスを利用することができます。また、Azure Arcを使用することにより、Azure PortalによるAzureクラウドとHCIの一元管理も可能です。
4. Azure Stack HCIのユースケース
Azure Stack HCIを活用するにはどのような利用シーンが考えられるでしょうか。最後に、Azure Stack HCIのユースケースについて紹介します。
エンタープライズ向け高信頼性仮想化基盤
Azure Stack HCI には、仮想化ベースのセキュリティ (VBS) のサポートが組み込まれているため、大規模でセキュリティ要件の厳しいシステムにも対応することができます。VBSでは「仮想保護モード」と呼ばれる機能が実装されており、仮想マシン内部に外部からのアクセスをブロックする専用のメモリ空間を作り出し、セキュアなデータ処理などをこのメモリ空間で実行することで、脆弱性リスクを大幅に削減することができます。
大規模なVDI(仮想デスクトップ)基盤
Azure Stack HCIは、大規模なVDI基盤としても適しています。高いセキュリティを確保しつつ、高い拡張性と可用性を実現できるHCIは、社員数の多い大企業など大規模なVDI環境の構築に向いています。
AKSを利用したコンテナ基盤
Azure Stack HCIを使ってコンテナ基盤を構築することができます。Azure Stack HCIではAzure Kubernetes Service (AKS)がサポートされているため、AKSによるコンテナ環境を構築することが可能です。
もし、物理コンポーネントに局所的な障害が発生した場合は、Kubernetesクラスターノードとして機能する仮想マシンの自動フェイルオーバーが行われ、可用性が確保されます。
災害対策用環境(ディザスタ・リカバリ環境)
Azure Stack HCI のストレッチクラスター機能を使用することで、遠隔地にあるバックアップサイトへのディザスタ・リカバリを構成することができます。記憶域レプリカを利用して、それぞれの物理サイト内にあるHCIの記憶域ボリューム間でデータのレプリケーションを行い、データをバックアップサイトへ同期します。災害発生時は、Hyper-Vのライブマイグレーション機能により、バックアップサイトへシームレスに仮想OSを移動することができます。
5. まとめ
セキュリティポリシーや、取り扱うデータの種類によってはパブリッククラウドではなくオンプレミスを選択せざるを得ない場合があります。そうした企業では、シンプルで簡単に導入でき、高い拡張性・可用性を備えているHCIは有効なソリューションになり得ます。こうしたHCIのメリットに加え、クラウドと接続することでAzureのサービスを有効利用できるAzure Stack HCIの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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