Azure Managed Service Column ＜Azure運用コラム＞Azure Data Boxとは？安価で安全なデータのクラウドへの移行について解説

大規模なオンプレミスのデータをクラウドへ移行するには？効率的な方法を解説

従来のオンプレミスからクラウドに移行する企業が増えていますが、ある程度以上の規模を持つ企業では、オンプレミスで保管しているデータの移行が大きな課題となっています。業務に支障を与えずにネットワーク経由でデータを移行するためには、事前の十分な検討と設計、専用のミドルウェアや広帯域なネットワークなどの準備が必要であり、大きなコスト負担となる場合があります。

Azure では、こうした悩みを解決するために、Azure Data Box というデータの物理配送サービスを提供しています。物理配送を行うことで、従来の移行方法と比較して安価で安全に大容量のデータ移行が可能となります。

本記事では、データの物理配送サービスの概要とメリットを踏まえ、Azure Data Box の概要と料金体系、注文方法、および適したユースケースについて解説します。

1. データの物理配送サービスとは

クラウドへデータを移行するためにはいくつか方法がありますが、そのひとつとして、データの物理配送を行う方法があります。まず、データの物理配送サービスとはどのようなものか、一般的なサービスの概要について解説します。

データの物理配送サービスとは

データの物理配送サービスとは、大量のデータを物理的なストレージデバイスに保存し、目的地に配送してデータを移行するサービスを指します。ネットワークを利用せず、大量のデータをクラウドへ移行することが可能です。一般的には、オンプレミスからクラウドへ移行する際に、オンプレミスにある大量のデータを移行する際に用いられます。有名なものとしては、Amazon Web Service（AWS）の AWS Snowball などがあります。

データの物理配送サービスのメリット

ネットワーク回線を用いて大量データの転送を行うと、ネットワーク帯域に大きな影響を与え、同じネットワークを利用するシステムやアプリケーションへの影響も大きくなります。また、帯域幅にもよりますが、移行に多くの時間が必要となり、結果的に大きなコスト負担となる可能性もあります。データの物理配送サービスでは、ストレージにデータを保存して物理配送するため、ネットワークに影響を与えず、リーズナブルに大量のデータを移行できるというメリットがあります。

2. Azure Data Box とは

マイクロソフトのクラウド、Azure でも Azure Data Box というデータの物理配送サービスを提供しています。ここでは、Azure Data Box の概要、料金体系、注文方法について解説します。

Azure Data Box の概要

Azure Data Box は、マイクロソフトが提供する、Azure 向けのデータ物理配送サービスです。頑丈なケースに内蔵したハードディスクに大量のデータを保存し、オンプレミスからクラウドへ物理配送することができます。

ケースのままオンプレミスのネットワークに接続し、SMB（Server Message Block）もしくは CIFS（Common Internet File System）を用いてデータを保存します。保存されたデータはケースの内部で AES という暗号方式を用いて暗号化され、Azure へアップロードされ次第デバイスから安全にデータが消去される仕組みとなっています。

Azure Data Box には下記のラインナップが用意されています。

Azure Data Box

100 TB の容量を備えた堅牢なデバイスで、標準の NAS プロトコルと一般的なコピーツールが使用されています。AES256 の暗号化を使ってデータ移動の安全性を高めています。

Azure Data Box Disk

USB/SATA インターフェイスを備えた 8 TB の SSD に、128 ビット暗号化が適用されます。ニーズに合わせてカスタマイズでき、最大 5 台 (合計 40 TB) のパックで提供されます。

Azure Data Box Heavy

堅牢な自己完結型のデバイスで、1 PB のデータをクラウドにリフトできるよう設計されています。

Azure Data Box Gateway

Azure との間でデータを転送するものですが、これは仮想アプライアンスとなっています。

Azure Data Box の料金体系

Azure Data Box の料金体系は、利用した分だけ課金される従量課金制（※1）となっています。サービス料金として、ラインナップごとに規定の単位日数に応じた料金に加え、延長日数分の料金及び配送料が必要となります。なお、Azure Data Box Disk は1日あたりのディスク使用料という形で課金され、Azure Data Box Gateway は月額性のサブスクリプション契約となります。

※参考1　Azure Data Box の価格

Azure Data Box の注文方法

Azure Data Box は、Azure Portal から注文することができます。Azure Portal より、リソースの作成で Azure Data Box を検索し、必要な情報を入力することで簡単に注文することが可能です。注文後、Azure portal から注文の状態を追跡することもできます。 なお、サービス利用にあたり、アカウントやサブスクリプションの種類、データセンターの要件などの前提条件（※2）があるため、公式サイトから事前に確認するようにしましょう。

※参考2　チュートリアル:Azure Data Box を注文する

3. Azure Data Box のユースケース

Azure Data Box は大量のデータを配送するサービスですが、どのような使い方が考えられるのでしょうか。ここでは、Azure Data Box の代表的なユースケースについて解説します。

オンプレミスからのデータ移行

Azure Data Box は、基本的に、ネットワーク接続が制限されていないシナリオで、40 TB を超えるサイズを持つデータを転送する場合に最適とされています。以下のようなシナリオで、Azure にデータをインポートする目的で使用することに向いています。

1回限りの移行

下記のような、オンプレミスにある大量のデータをAzureに移動するユースケースです。

• テープのメディアライブラリを Azure に移動し、オンラインメディアライブラリを作成する。
• VM ファーム、SQL Server、アプリケーションを Azure に移行する。
• HDInsight を使用して詳細な分析やレポートの作成を行うために、履歴データを Azure に移動する。

初期一括転送

Azure Data Box を使用して初期一括転送が実行された後に、ネットワーク経由で増分転送を行うユースケースです。

バックアップソリューションとの連携

バックアップ用のミドルウェアなど、バックアップソリューションと連携させて、最初に大量の履歴バックアップを Azure に移動するユースケースです。このような組み合わせでも Azure Data Box は役立ちます。

オンプレミスまたは別のクラウドサービスへの移行

クラウドからオンプレミス、または別のクラウドへデータを移行することも可能です。Azure Data Box 経由でデータをエクスポートして、移行先へデータを移送することができます。

ディザスタ・リカバリ（大規模災害対策）

Azure のデータのコピーを、災害対策環境など、遠隔地にある別環境へ復元する場合のユースケースです。本番環境の大量の Azure データが Azure Data Box にエクスポートされ、その後、マイクロソフトが迅速に Azure Data Box を配送し、短時間で別環境に復元することができます。

4. まとめ

大規模なオンプレミスのシステムをクラウドへ移行する場合、大量データの移行が大きな課題となります。現行システムの運用やネットワークへ負担をかけず、リーズナブルに移行するために Azure Data Box は役立ちます。Azure Portal から簡単に注文できますので、ぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。

Microsoft Azure を利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

Tag： Azure Data Box Azure移行

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