目次
AWS、AzureのそれぞれのDaaSについて特徴とポイントを比較し最適な利用環境について解説します
働き方の多様化によりテレワークが普及し仮想デスクトップ基盤( VDI )を導入する企業が増えています。
一般的な VDI は自社がホスティングするサーバー上に仮想デスクトップ環境が構築されるシステムです。よって自社内やデータセンターに仮想デスクトップを展開するための設備を保有する必要があり初期投資が必要です。また運用面ではメンテナンスを自社で行うため運用コストやユーザの増減に合わせ再構築が必要になるケースもあります。
そこで今、注目されているのがクラウド環境を利用し VDI をサービスとして利用できる DaaS ( Desktop as a Service )です。 DaaS は初期投資費用を削減し、クラウドサービスのメリットを活かした柔軟で拡張性の高いサービスです。
本記事では DaaS についての解説と、 DaaS 市場においてトップシェアを誇る Amazon Web Services ( AWS )と Microsoft Azure が提供するそれぞれのサービスについてポイントを比較します。
1. DaaS( Desktop as a Service )とは
DaaS とは「 Desktop as a Service 」の略で、クラウド上に OS やソフトウェアなどのデータやデスクトップ環境を保存し、ネットワークを通じ手元のパソコンで操作ができるようにしたサービスです。場所を選ばない働き方と、自社からのデスクトップ環境一元管理という相反する両方を実現することができます。
また応用することで BCP 対策にも活用することができる為、近年利用が広がっています。DaaS のメリット
DaaS はあらゆるデバイス、あらゆる場所からデスクトップ環境へアクセスすることができるサービスです。従来のパソコン環境では、パスワードの管理、データへ対するセキュリティ、 OS のアップデートやパッチ適用など、さまざまなリスクが存在します。 DaaS はこれらのリスクをクラウド上にあるデスクトップ環境を一元的に管理することで解決することができます。
またユーザー側のパソコンは必要最低限の機能があれば十分であり、セキュリティ面においてもパソコンにデータが残らないので情報漏えいのセキュリティリスクを回避できます。
DaaS と VDI との違い
VDI は基盤となるハードウェア、ソフトウェア、ストレージ、ネットワーク機器などを自社で調達し環境を構築します。仮想化技術を提供するハイパーバイザーにより、仮想ホストを構築し、ホスト側のメンテナンスやクライアントからのアクセス管理などの運用も自社で行います。
それに対し DaaS は、サービス事業者が提供する環境を利用します。サービスとして提供されているので契約すればすぐにデスクトップ環境を利用することができます。デスクトップ環境のメンテナンスはサービス事業者の責任範囲において様々なリスク対策が講じられているため自社での設備維持費や運用工数を大幅に削減することができます。
VDI と DaaS はどちらも、ユーザーが仮想デスクトップにアクセスすると言う観点では同じですがこのように責任分界点に違いがあります。

2. AWS と Azure が提供するDaaSについて
近年、クラウドインフラの市場シェアでトップを占めているのが Amazon が提供する AWS ( Amazon Web Services )と Microsoft が提供する Azure です。 Synergy Research Group が発表した調査によると AWS 、Microsoft のシェアがそれぞれ 33 %、22 %であり、2 社の合計でクラウドインフラ市場のシェアは半分を占めています。本章では AWS と Azure が提供する DaaS についてそれぞれの特徴を紹介します。

出典:グローバルのクラウドインフラ市場はAWS、Microsoft、Googleの寡占が強まり6割超に 2022年第1四半期の調査結果
AWS の DaaS「 WorkSpaces 」
Amazon WorkSpaces は 2014 年に発表されたマネージド型の仮想デスクトップサービスで、DaaS 市場においてはクラウド事業者としていち早くリリースされたサービスです。
WorkSpaces は初期費用が不要で月額の課金形態は固定料金、従量課金の 2 パターンあり用途に合わせて選択できます。最低利用台数がなく 1 台からはじめることができ、利用用途に応じた料金形態により柔軟に対応することができます。
また WorkSpaces は初めて利用するユーザ向けに 2 ヶ月間に限り、1 ヶ月あたり合計40時間までの無料利用枠が提供されています。
パソコンやタブレットなど、ユーザ側のデバイスを問わず利用可能です。各デバイスに専用のクライアントソフトをインストールして利用します。OS やデバイスに対応したクライアントソフトが Amazon の Web サイトで無償配布されています。また Web ブラウザかもアクセスが可能です。
AWS 接続サービス Direct Connect などを利用しオンプレミス環境との連携や、他 AWS サービスとの連携により、バックアップやセキュリティ機能なども拡張できます。
WorkSpaces は利用する OS のライセンスがバンドルされ利用料金に含まれています。また BYOL も可能であり、一連の Office 製品も利用できます。
※参考1 Amazon WorkSpaces Documentation
Microsoft の DaaS「 Azure Virtual Desktop( AVD )」
Azure Virtual Desktop ( AVD )は、2019 年に発表されたサービスであり、2021 年に Windows Virtual Desktop ( WVD )という名称から Azure Virtual Desktop に変更となりました。
AVD では管理コンポーネントのほとんどが Azure Portal で提供され、煩雑な管理やメンテナンスが不要です。通常ではクライアント OS は、仮想マシン 1 台に対して1人ですが、AVD ではマルチセッションで利用することができます。マルチセッションとは 1 台の仮想マシンで複数のユーザで利用することができる機能です。クラウド環境では仮想マシンの台数が多ければ利用コストの負担になりますが、マルチセッションで仮想マシンの台数を抑えることでコスト削減が可能です。
AVD はマイクロソフト製品の Office 製品と相性が良く、他社の DaaS の場合、一部機能が制限されるケースもありますが、AVD はサブスクリプション版の Microsoft 365 を追加料金なくそのまま持ち込み利用することが可能です。
さらに Microsoft 365 E5 シリーズのセキュリティ機能も AVD 上で利用でき DaaS 環境においてもセキュリティを強化できます。
※参考2 Azure Virtual Desktop(旧:Windows Virtual Desktop)とは?今こそ知りたい基本情報
3.AWSとAzureのDaaS比較
本章ではこれまでのそれぞれの DaaS の特徴を踏まえ2社のサービスを比較します。
比較項目 | AWS WorkSpaces | Azure AVD |
---|---|---|
利用できる OS | Amazon Linux WorkSpaces
Windows 10 ※ Windows 10 はデスクトップエクペリエンスとして Windows Server 2016 で実行するか Windows Server 2019 で実行するかを選択できます。 |
Windows 10 / 7 Windows Server 2019 / 2016 / 2012R2 Windows 11 ※プレビューで利用可能です。 |
接続方法 | Web ブラウザ 専用接続アプリ |
Web ブラウザ 専用接続アプリ |
配信方法 | デスクトップ配信 ※占有型です。 |
デスクトップ配信 アプリケーション配信 ※いずれもプール型に対応しています。 |
接続形態 | インターネット経由 VPN 経由 専用線( Direct Connect ) |
インターネット経由 VPN 経由 専用線( ExpressRoute ) |
プロファイル方式 | ファイルサーバー対応 | FSLogix 対応 |
課金形態 | 従量課金 固定料金にも対応 |
従量課金 |
ライセンス | サービスにバンドル済 BYOL にも対応 |
マイクロソフトのライセンスが必要 Microsoft 365 E3 / E5 / A3 / A5 / F3 等 |
マルチセッション | 非対応 | 対応 |
認証機能 | 別途サービス連携が必要 | 対応 |
Amazon WorkSpaces の特徴
AVD と比較すると、料金形態、ライセンスの柔軟性があり、パブリック(共用)なクラウド環境で VDI を導入したいユーザに向いています。
AVD の特徴
AVD はデスクトップ配信、アプリケーション配信ともにプール型、専有型のデスクトップ配信にも対応しています。それに加えマルチセッションや従量課金、認証機能として Azure AD の機能が一部無料で利用できるなど、他サービスとの連携を考慮すると自社向けにカスタマイズしたいユーザに向いています。
4. まとめ
ここまで DaaS についての概要と、2 社の DaaS ソリューションを比較、紹介しました。それぞれに特徴があり、一長一短であることから自社に合わせた導入の参考となれば幸いです。
前提として AWS も Azure もベースとなる利用料が異なります。またインターネット回線、専用回線、帯域なども回線事業者ごとの運用コスト等も考慮する必要があります。そのため費用の算出や、導入における具体的なアドバイスなど専門家へのご相談をお勧めします。
仮想デスクトップの導入について相談する



資料ダウンロード
課題解決に役立つ詳しいサービス資料はこちら

-
-
<VDI 導入ガイド> 安全なリモートワークを実現!Azure Virtual Desktop と AWS WorkSpaces の比較表・価格例付き!
本資料を読むことで、VDIの概要や導入時の注意点、代表的な DaaS である AWS WorkSpaces と Azure Virtual Desktop の違いを押さえることができます。
-
-
-
Azure導入支援・構築・運用サービス総合カタログ
Microsoft Azure サービスの導入検討・PoC、設計、構築、運用までを一貫してご支援いたします。
Azure導入・運用時のよくあるお悩み、お悩みを解決するためのアールワークスのご支援内容・方法、ご支援例などをご確認いただけます。
-
Microsoft Azureを利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

よく読まれる記事
- 1 Microsoft Purviewとは?概要や主な機能、導入するメリットを解説2023.09.11
- 2 Microsoft Entra IDとは? オンプレAD、Azure ADとの違いや機能、エディション、移行方法をわかりやすく解説2024.04.05
- 3 Azure Bastionとは?踏み台による仮想マシンへのセキュアな接続方法について解説2022.05.12
- 4 Azureネットワークセキュリティグループ(NSG)とは?特徴や設定時の注意点を解説2021.04.28
- 5 VDIに必要なWindows VDAライセンスとは?費用感、ライセンスの考え方について解説します!2022.08.10
Category
Contactお問い合わせ
お見積もり・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。