Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Virtual Desktop(旧:Windows Virtual Desktop)とは?今こそ知りたい基本情報

Category: 入門編

2024.11.18

AVDのメリットや要件、料金、Windows365との違いを理解しよう

災害や感染症の流行などの影響でリモートワークの機運が高まる昨今、Azure Virtual Desktop(旧: Windows Virtual Desktop )について耳にする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。

Azure Virtual Desktop( AVD ) とは、簡単にいうと「クラウドを用いた仮想デスクトップ環境」を提供するサービスの 1 つです。予期せぬ事態が起こった際の事業継続に備え、導入を始めている企業も多い AVD。その概要を把握し、現状の課題解決に向け導入の検討を始めてみてはいかがでしょうか。

1. Azure Virtual Desktop の概要

Azure Virtual Desktop(以下、AVD )とは、Microsoft 社が提供する DaaS です。Azureを用いており、仮想デスクトップ環境の構築が容易になります。

DaaS( Desktop as a Service )とは、仮想デスクトップ環境をクラウドで提供するサービスです。

仮想デスクトップ環境を自社で構築する場合、ユーザーからのアクセスを受けるためのゲートウェイ、ユーザーの接続を管理するブローカーといった管理用ソフトウェアの準備が必要ですが、DaaSでは、これらの機器やツールがクラウド側で用意されています。また仮想デスクトップ環境の運用も、クラウドベンダーへ一任することができます。

2. AVD の利用イメージ

AVD 利用イメージ
AVD 利用イメージ
  • 業務端末にはデータを残さないため、情報漏洩のリスクを低減できます。
  • 仮想デスクトップ環境にはインターネット経由で接続。多要素認証も設定可能です。
  • 仮想デスクトップ環境と業務システムには閉域網( ExpressRoute )や VPN 接続でアクセスできます。

AVD を活用することで、安全なデスクトップ環境を管理負荷を抑えながら提供することができます。

リモートワークへの対応

社内・社外を問わず共通のデスクトップ環境へアクセスでき、オンプレミスのファイルサーバーや業務システムを利用できます。VPN を用いて、オンプレミス環境にあるデータを利用することも可能です。多要素認証や条件付きアクセスポリシーと組み合わせることで、セキュリティを高めることができます。

他にも、マイクやカメラを用いた Web 会議の実施も可能など、AVD はリモートワークとの相性も非常に良好です。

海外拠点のクライアント端末の管理

海外拠点にも国内と同じデスクトップ環境を提供できます。AVD 経由でつなぐことで Azure の高速バックボーンを経由した国内への接続が可能になります。また、海外拠点のクライアント端末のセキュリティ対策を含めた端末の設定が一元管理でき、セキュリティの向上と端末のメンテナンス負荷を下げることができます。

災害対策

災害やシステム障害が発生した場合でも、 AVD であれば Azure のデータセンターに仮想デスクトップ環境が保存されているため、データを安全に保護しつつ業務の継続性を確保できます。オフィスが使えなくなっても、自宅や安全な場所から普段と同じデスクトップ環境を利用することが可能です。

BYODへの対応

従業員が個人のデバイスを利用して業務を行う BYOD ( Bring Your Own Device )を導入する場合、セキュリティ面が課題となることが多いです。 AVD を利用すれば私用デバイスにデータを保存する必要がないため、情報漏えいのリスクを大幅に減らせます。

従業員は自分の使い慣れたデバイスから安全に業務を行うことができ、企業側も貸与するデバイスの調達や管理コストを削減できます。

開発・テスト環境としての利用

AVD は開発環境・テスト環境を迅速かつ効率的に準備するためのツールとしても利用できます。必要なリソースを一時的に利用でき、プロジェクトが終了したらすぐに削除できるためリソースの無駄が少ないです。スペックの選択肢も幅広いため、複数のバージョンの環境を並行して管理することも可能で、開発プロジェクトの多様なニーズに対応できます。

3. AVD 導入のメリット

AVDは導入の手軽さや、Microsoft が提供しているからこそできるコスト削減に大きなメリットがあります。また、データ保護や端末管理の負荷軽減など、システム管理者の負担を減らすことができます。

コストを抑えられる

運用コストが低いのが、AVD の特徴です。VDI を動かす仮想マシンのリソースをユーザーで共有するマルチセッション接続が可能です。料金体系は仮想マシンの台数を元に計算される仕組みになっているため、複数ユーザーで仮想マシンをシェアすれば、利用料金を低く抑えることができます。

また使用時間に沿って課金される従量課金制を採っているため、“xx時以降は使わない”など使用時のルール次第でコストの節約が可能です。

既存のライセンスを活用できる

Windows 10 E3 以上、Microsoft 365 E3 以上のライセンスがあれば AVD を利用できます(詳細は後述)。AVD 用に新しくライセンスを取得する必要はなく、別途ライセンスが必要となる他の DaaS と比較し大幅なコスト削減が実現できます。

端末からの情報漏えいリスクの低減

ローカル端末とのデータのやり取りを制御できる他、多要素認証や監査ログといったセキュリティ対策が施されており、情報漏えいのリスク低減が期待できます。

クライアント端末の管理、メンテナンス負荷の低減

端末 1 台ごとに管理を行い、適切な状態に保つことは大変な手間がかかります。AVD では、セキュリティ対策を含めた端末の設定が一元管理できます。このため各端末のメンテナンスの手間も軽減でき、ひいては管理コストや人的負荷を下げることができます。

スケーラビリティ・柔軟性が高い

AVD は、クラウドの利点を活かしたスケーラビリティと柔軟性を提供します。従業員の数や業務の繁忙期に応じてリソースを簡単に増減できるため、事業の成長や変動に合わせた運用が可能です。

アドオンで機能を拡張できる

AVD は、 Azure のほかのサービスやサードパーティ製のツールをアドオンとして機能を簡単に追加・連携できる点も大きなメリットです。たとえば Azure Security Center や Azure Monitor を組み合わせることで、セキュリティ機能や監視機能を強化できます。

また、 VDI 製品として定評のある Citrix 社や VMware 社の製品の機能を組み合わせて、より便利に活用することも可能です。

4. AVD を利用するための要件

ここからは、AVD を利用するために必要となる主な環境や要件をご紹介します。

ライセンス

Windows 10 および 11 の仮想化の場合、ライセンスは下記いずれかのものがユーザーの数だけ必要となります。

  • Microsoft 365 E3 、 E5 、 A3 、 A5 、 F3 、 Business Premium 、 Student Use Benefit
  • Windows Enterprise E3 、 E5
  • Windows Education A3 、 A5
  • ユーザーあたりの Windows VDA

Microsoft Azure サブスクリプション

AVD は Microsoft Azure をクラウド基盤としているため、Azure サブスクリプションが必要です。

リソース

AVD では Azure AD の認証が必要で、他のサービスでアカウント情報を保持している場合、そのアカウント情報を Azure AD と同期させる必要があります。

オンプレミス環境で利用している Active Directory Domain Service を引き続き利用したい場合は、オンプレミスのサーバー上で稼働する接続ツール Azure AD Connect でAzure AD とアカウント情報の同期を取ることになります。

仮想デスクトップから社内システムへアクセスする
仮想デスクトップから社内システムへアクセスする

Azure Active Directory Domain Service を利用する場合も Azure AD が必要となりますが、両者はデフォルトで同期されます。

サポートされているリモートデスクトップクライアント

接続元のリモートデスクトップクライアントは、下記が対象となっています。

  • Windows デスクトップ
  • Web ブラウザ
  • Windows デスクトップ
  • Android
  • macOS
  • Microsoft Store クライアント
  • Linux デバイス

サポートされている OSイメージ

OSのイメージは、下記が対象となります。

  • Windows 11 Enterprise マルチセッション
  • Windows 11 Enterprise
  • Windows 10 ( Enterprise マルチセッション)
  • Windows 10 Enterprise
  • Windows Server 2022
  • Windows Server 2019
  • Windows Server 2016

5. AVD の構成要素と責任範囲

AVD の構成要素は、Microsoft が管理するものと、ユーザーが管理するものに分かれます。

AVD の構成要素と責任範囲
AVD の構成要素と責任範囲

図版出典:https://docs.microsoft.com/ja-jp/learn/modules/m365-wvd-intro/3-how-windows-virtual-desktop-works

Microsoft の管理下にあるもの

Microsoft が管理する要素は下記です。ユーザーは端末からこれらを経由して AVD にアクセスすることになります。

  • Web アクセスサービス(Web クライアント):AVD を利用するための Web ブラウザ
  • リモート デスクトップ診断:ユーザーの利用状況の監視や、障害が発生している箇所の特定
  • ツール:AVD の管理ツール Azure Portal の提供
  • 接続ブローカー:ユーザーの接続管理
  • 負荷分散:仮想マシン全体のセッションの負荷分散
  • ゲートウェイ:クライアント端末と AVD(仮想マシン)との接続確立

ユーザーの管理下にあるもの

ユーザーが管理するものは、仮想マシンやイメージなど実際に利用するもの、また管理に必要なネットワーク、アカウント情報などです。

デスクトップやリモートアプリ

  • デスクトップ環境
  • アプリケーション
  • 仮想マシンを構成するためのイメージ

管理とポリシー

  • ユーザープロファイル:ユーザーごとのデスクトップ環境の情報。Azure Files のようなストレージに保管される
  • 仮想マシンの規模の管理:仮想マシン(セッションホストVM )のサイズ、ホストプールを作成するための負荷分散の深さまたは幅。これが、拡大縮小のための自動化ポリシーに構成される。
  • ネットワークポリシー:インターネットやイントラネットから AVD にアクセスするための接続形態
  • ユーザーの管理:Active Directory もしくは Azure Directory Domain Service(Azure AD DS)を用いて、ユーザーのリソースへのアクセスを管理する

6. Windows 365との違い

Windows 365 とは、 2021 年にリリースされたサービスで、 Azure 上に展開されたクラウド PC のことです。具体的には、手元のデバイスからクラウド上の仮想マシンで展開されている Windows OS にインターネット経由でアクセスし、遠隔で利用します。

Windows 365 も AVD もクラウド上のデスクトップ環境にアクセスして利用するため、混同されることが多いです。しかし、両者には次のような違いがあります。

セッション方式

AVD は複数のユーザーでリソースを共有するマルチセッション方式であるのに対し、 Windows 365 は一人のユーザーがリソースを占有するシングルセッション方式です。シングルセッション方式の方が安定したパフォーマンスが期待できますが、コスト効率はマルチセッション方式の方が優れています。

カスタマイズ性

AVD は自社の要件に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。一方で Windows 365 は、シンプルな管理とセットアップを重視しているため、基本的なカスタマイズは可能ですが、 AVD ほどの柔軟性はありません。

ターゲット

AVD は、大規模な企業や高度なカスタマイズが必要な組織をターゲットとしています。一方で Windows 365 は、導入や設定にかかる手間がほとんどないことを特徴としているため、手軽に VDI を導入したい中小企業や専門知識を持つ人材が不足している企業をターゲットとしています。

料金体系

AVD は利用した分だけ料金が発生する従量課金制で、リソースの増減に応じてスケーラブルにコストを最適化できます。そのため、特に大規模な環境や変動の多い環境でのコストパフォーマンスが高いです。

これに対して Windows 365 は月額固定料金制で、ユーザーごとに固定の料金が設定されます。柔軟性は低いですが、コストの見通しが立てやすく、長時間かつ頻繁に利用する場合に適しています。

上記を踏まえると、大規模な環境での利用やコストパフォーマンス、高度なカスタマイズが求められる場合は AVD が適しています。一方で運用管理負担をできるだけ減らしたい、複雑な要件がない、小規模な環境で利用する場合には Windows 365 が適しているといえるでしょう。

7. AVDの強み

次に、他社の DaaS と比較した時の AVD の特徴や強みについて解説します。

Windows 10/11のマルチセッションが可能

<シングルセッションとマルチセッションの違い>
マルチセッション機能図解

AVD の大きな強みの一つは、 Windows 10/11 のマルチセッション機能が利用できる点です。他社の VDI ソリューションや Windows 365 では、シングルセッションでしか Windows 10/11 環境を利用できません。 AVD であれば企業はリソースを効率的に利用でき、コスト削減に大きな効果が期待できるでしょう。

Microsoft製品との相性が良い

Microsoft 製品とシームレスに連携できることも大きな特徴です。たとえば AVD では Microsoft 365 アプリケーション( Word 、 Excel 、 Outlook など)のパフォーマンスが最適化されているため、仮想デスクトップ上でもスムーズに動作します。

また Microsoft Entra ID (旧 Azure Active Directory )を利用するため、ユーザー認証やアクセス制御が強固で、高いセキュリティが確保された環境での運用が可能です。

8. AVDの導入が適している企業

ここまで紹介したような AVD の特徴を踏まえると、具体的に次のような条件に当てはまる企業は AVD を導入することで高い効果を得られる可能性が高いといえます。

  • リモートワークや BYOD を推進する企業
  • Microsoft 製品を多く使用している企業
  • セキュリティを重視する企業
  • IT リソースを最適化したい企業
  • グローバルに複数の拠点を持つ企業

上記のような企業は、 AVD の持つ柔軟性やセキュリティの高さ、スケーラビリティを活かすことで、業務の効率化やコスト削減を実現しやすいです。

9. AVD の料金

AVD の料金は、下記の要素によって変わります。

  • 利用ユーザー数
  • ホストプールタイプ(シングルセッション/マルチセッション)
  • 仮想マシンの必要なスペック
  • OS のディスク( HDD / SSD )
  • Windows 10 のライセンス
  • その他オンプレミスとの接続( VPN や Express Route による接続)、オプションの有無など

月額料金は、Microsoft のサイトで見積もりを確認できます。詳しくは公式サイトをご参照ください

必要なライセンス数についても、Microsoftが公表している資料が参考になります

AVD 価格シミュレート

また、AVD 価格シミュレートを記載した「<VDI 導入ガイド> 安全なリモートワークを実現!Azure Virtual Desktop と AWS WorkSpaces の比較表・価格例付き!」もご参照ください。

まとめ

この記事では、Azure Virtual Desktop についての基礎知識から利用料金に関することまでをご紹介しました。
Microsoftのデスクトップ仮想化サービスである AVD は、スムーズな導入やコスト低減が可能といったメリットがあります。リモートワーク推進や、情報管理部門の負荷軽減にも役立ちます

VDIの概要や導入時の注意点、代表的な DaaS である AWS WorkSpaces と Azure Virtual Desktop の違いをホワイトペーパーにまとめました。下記よりご請求いただけます。ぜひお役立てください。

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