目次
Azure HPC Cacheの基本機能、利用事例、導入までの手順について解説
クラウドテクノロジーの進化とともに、近年あらゆるシステムにおいてオンプレミス環境とクラウド環境の統合が進み、大規模データの処理、複雑なワークロードがハイブリッドな環境で処理されています。 特にハイパフォーマンスコンピューティング( HPC )のように、データ処理の実行を迅速かつ効率的に行うことのできるシステムは、科学、エンジニアリング、産業界において競争力を維持する上で、ますます重要性を増しています。
このような背景から Microsoft では Azure HPC Cache というキャッシュソリューションを提供しています。 Azure HPC Cache は、従来のストレージアーキテクチャにおけるボトルネックを克服し、データアクセスの効率を向上させるソリューションです。 HPC ワークロードのパフォーマンスを向上させ、計算時間を大幅に削減することができます。
本記事では、 Azure HPC Cache の基本機能、利用事例、導入までの手順について紹介します。
1. Azure HPC Cacheの概要
HPCとは
まずは大前提となるハイパフォーマンスコンピューティング( High-Performance Computing : HPC )について解説します。
HPC は、非常に高い処理能力と計算能力を持つコンピューターシステムで、大規模で複雑なワークロードを実行することができます。主に計算技術の分野で活用されているコンピューターで、科学研究やエンジニアリング、製造業、金融業界など、さまざまな分野で使われています。
近年ではクラウドプロバイダーや大規模なデータセンターが提供するクラウドベースの HPC サービスも増え、新しい発見や革新的な技術の開発、競争力の向上を目的とした利用が拡大しています。
Azure HPC Cacheとは
Azure HPC Cache は、オンプレミスと Azure 内の両方のストレージ上のデータを Azure 内で自動的にキャッシングする仕組みです。
Azure HPC Cache を使用することで、オンプレミスのネットワーク接続ストレージ ( NAS )や、 Azure のストレージサービスで発生する待機時間を効果的に削減し、 HPC のデータアクセスを高速化することができます。

図版出典:Microsoft公式サイト
Azure HPC Cache を利用することにより、データセンターに配置された既存のストレージにデータを保持できるので、セキュリティまたはコンプライアンス上の理由から、データをオンプレミスで保管しなくてはいけない要件がある場合も Azure のコンピューティングサービスを最大限に利用することができます。
すでに Azure ストレージサービスを利用しているユーザーにとっても、ファイルベースのワークロードを簡単に実行できるというメリットがあります。
Azure HPC Cache は、 Azure 内のファイルをキャッシュすることで、パイプラインをリフトアンドシフトするのに必要なパフォーマンスを実現し、クラウドコンピューティングのスケーラビリティを既存のワークフローで実現することができます。
2. Azure HPC Cacheの利用事例
Azure HPC Cache は、さまざまな業種でワークフローに取り入れられ、大規模かつ低遅延でアクセスする必要のあるケースにおいて大変有効なサービスです。主な利用事例を紹介します。
シミュレーションと解析
科学、エンジニアリング、製造業界などで行われるシミュレーションや解析ワークロードでは、大量のデータを高速に処理する必要があります。 Azure HPC Cache は、シミュレーションデータを高速にアクセスすることで、計算時間を大幅に削減し、シミュレーションの効率を向上させることができます。
バッチ処理
ビッグデータ処理やバッチジョブの実行時にも、多くのデータへのアクセスが必要となります。 Azure HPC Cache は、バッチ処理ジョブの実行を高速化し、データ処理のスループットを向上させることができます。
人工知能(AI)と機械学習(ML)
AI や ML モデルのトレーニングには、大量のトレーニングデータが必要です。 Azure HPC Cache は、データセットへのアクセスを高速化し、トレーニングプロセスの時間を短縮することができます。
大規模なVDI環境
VDI はユーザーが同時にアクセスするデータに対して高いパフォーマンスが求められます。 Azure HPC Cache を活用することで、 VDI 環境でのデータアクセスを高速化し、ユーザーエクスペリエンスを向上することができます。
ハイブリッドクラウド環境
オンプレミスの HPC クラスターと Azure クラウドを組み合わせたハイブリッド環境の場合、 Azure HPC Cache は、オンプレミスとクラウドの間でデータのシームレスな移行や共有を可能にし、ハイブリッド環境でのデータ管理を簡素化することができます。
- ※1 参考記事:
- Azure HPC Cache とは
3. Azure HPC Cacheの作成手順
ここからは Azure HPC Cache を利用開始するまでの作成手順を重要ポイントに絞って解説します。
手順1:基本設定
基本設定としてキャッシュのホストとなるサブスクリプションとリソース グループを選択します。加えてリージョン、対象となる仮想ネットワーク、サブネットの設定も行います。

図版出典:Microsoft公式サイト
手順2:キャッシュの設定
[キャッシュ] ページで、作成するキャッシュの種類とサイズを指定します。キャッシュには標準( Standard )と premium の2種類あります。
標準キャッシュは、一般的なAzure HPC Cacheシステムで、スループット値を選択した後で、複数のストレージサイズから選択でき、サポートされているストレージターゲットであればアタッチできます。
Premium キャッシュは、最高パフォーマンスのファイルサービス用に設計されています。 高スループットのストレージデバイスを使用し、価格構造、静的キャッシュ容量が異なるため、一時的に停止できません。

図版出典:Microsoft公式サイト
手順3:暗号化の設定
キャッシュストレージで使用する暗号化キーを設定します。[ Disk encryption keys ](ディスク暗号化キー)の設定項目で自身の Azure Key Vault の情報を入力します。

図版出典:Microsoft公式サイト
作成が完了すると、新しい Azure HPC Cache インスタンスへのリンクが表示され、サブスクリプションの [リソース] リストに作成したキャッシュが表示されます。

図版出典:Microsoft公式サイト
手順4:ストレージターゲットの追加
ストレージターゲットは、データが保持される場所になります。 Azure NetApp Files 、物理 NetApp アプライアンス、 EMC Isilon アプライアンス、 Linux ストレージサーバーなどのように、Azure HPC Cache によってサポートされるストレージが対象です。必要な情報を設定します。

図版出典:Microsoft公式サイト
手順5:名前空間の設定
ストレージ ターゲットを作成したら、そのターゲットの名前空間パスを作成します。クライアントコンピューターは、バックエンドストレージに直接接続するのではなく、これらの仮想パスを使用してキャッシュを介してファイルにアクセスすることになります。

図版出典:Microsoft公式サイト
手順6:Azure HPC Cache をマウント(接続)する
作成されたキャッシュには、NFS クライアントから単純な mount コマンドでアクセスできます。このコマンドにより、 Azure HPC Cache 上の特定のストレージターゲットパスを、クライアントマシンのローカルディレクトリに接続することができます。
Azure Portal ではマウント手順ユーティリティを使用することができ、CLI操作が苦手であっても簡単に接続を行うことができます。

図版出典:Microsoft公式サイト
以上、 Azure HPC Cache を利用開始するまでの作成手順を重要なポイントに絞って紹介しました。細かい部分については公式サイトのチュートリアルをご参照下さい。
- ※2 参考記事:
- Azure HPC キャッシュを作成する
- ストレージ ターゲットを追加する
- 集約された名前空間を設定する
- Azure HPC Cache をマウントする
- ※3 参考記事:
- ※4 参考記事:
- ※5 参考記事:
4.まとめ
本記事では Azure HPC Cache について機能、利用事例、利用開始までの手順について解説しました。 Azure HPC Cache. は HPC 環境において、膨大なデータセットの処理や複雑な数値計算を効率的に行うためのテクノロジーとして活用されています。 昨今の利用事例からも今後ますます重要性を増していく分野のサービスとして注目されています。
Azure の導入を相談したい


資料ダウンロード
課題解決に役立つ詳しいサービス資料はこちら

-
-
Azure導入支援・構築・運用サービス総合カタログ
Microsoft Azure サービスの導入検討・PoC、設計、構築、運用までを一貫してご支援いたします。
Azure導入・運用時のよくあるお悩み、お悩みを解決するためのアールワークスのご支援内容・方法、ご支援例などをご確認いただけます。
-
Microsoft Azureを利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

Tag: Azure HPC Cache
よく読まれる記事
- 1 Microsoft Purviewとは?概要や主な機能、導入するメリットを解説2023.09.11
- 2 Microsoft Entra IDとは? オンプレAD、Azure ADとの違いや機能、エディション、移行方法をわかりやすく解説2024.04.05
- 3 Azure Bastionとは?踏み台による仮想マシンへのセキュアな接続方法について解説2022.05.12
- 4 Azureネットワークセキュリティグループ(NSG)とは?特徴や設定時の注意点を解説2021.04.28
- 5 VDIに必要なWindows VDAライセンスとは?費用感、ライセンスの考え方について解説します!2022.08.10
Category
Contactお問い合わせ
お見積もり・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。