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クラウドの運用保守は何が違う?Azureで運用保守を行うメリットを解説
システムを安定運用するためには運用保守が重要ですが、運用と保守の違いはご存じでしょうか。また、クラウド時代の運用保守で気にしておくべきポイントはどのようなことでしょうか。
従来のオンプレミスでは運用と保守の境界線があいまいになっているシステムも多いですが、クラウドの運用と保守はある程度明確に線引きを行うことが可能です。
本記事では、運用と保守の違いとそれぞれに必要な機能と、クラウドにおける運用保守の考え方と代表的な機能について、マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」を例にとって解説します。
1. 運用保守とは
システムは作っておしまいではありません。システムを長期にわたって安定稼働させるために運用保守はとても重要ですが、運用保守とは具体的にどのようなものなのでしょうか。まず、運用保守の定義と必要な機能・作業について解説します。
1.1 運用保守とは
運用保守とは、システムが提供するサービスを安定的かつ継続的に提供することを目的として、システムを適切に操作・管理することを指します。運用保守には監視、バックアップ、メンテナンスなど多くの作業が必要ですが、システムで自動化できる作業は運用管理ツールやコーディング等によって自動化することが基本です。
1.2 運用と保守の違い
運用保守とひとくくりにされることが多いですが、実は運用と保守は異なるものです。ただし境界線が曖昧になっているケースが多く、運用と保守の業務を同じ部署、担当者が担っているケースも多いのが実情です。
1.2.1 運用
運用とは、システムを安定稼働させて継続的にサービスを提供するために行うシステムの操作や管理作業を指します。原則、設定変更などシステムの変更は行わず、決められたツールや手順を用いて、自動もしくは手動で、定期的もしくは不定期に決められた操作や管理作業を実行します。運用とは、システムを正しく稼働させるために実施しなくてはならない操作や作業ということになります。
1.2.2 保守
保守とは、システムを安定稼働させて継続的にサービスを提供するために行う変更作業を指します。アプリケーションやOS、ミドルウェアなどの不具合や障害発生時の修正・設定変更、パッチ適用やバージョンアップなどが対象です。言い換えると、保守とは、基本的に故障や不具合、経年劣化、ソフトウェアの変更など、作業の必要性がなければ実施が不要なものということになります。
1.3 運用保守で必要な機能と作業
運用保守で必要となる代表的な機能・作業は下記の通りです。下記を定められたタイミングで、自動もしくは手動で実施します。下記以外にも、アプリケーションの必要に応じた作業や、システム特有で必要となる作業が存在するケースもあります。
- 監視
- ログ収集・管理・分析
- バックアップ・リストア
- メンテナンス・アップデート
1.3.1 監視
監視とは、システムを構成するサーバーやネットワーク機器などのハードウェアや、OS、ミドルウェア、アプリケーションなどのソフトウェアの状態をチェックし、故障や不具合があればそれを通知する機能です。システムを安定稼働させるためになくてはならない機能です。
1.3.2 ログ収集・管理・分析
ハードウェアやソフトウェアが出力するログを収集・管理する機能です。一元管理することでトラブル発生時などに状況を確認しやすくしたり、リソースの使用状況やアクセス状況などを定期的に分析してシステムやサービスの改善に活かしたりすることができます。
1.3.3 バックアップ・リストア
バックアップは、システムが取り扱うデータベースやファイルなどの業務データや、システムそのものを物理的・論理的に離れたサーバーへ複製しておくことを指します。過去のデータを参照したい場合や、システムが故障した場合に復旧させることをリストアと呼びます。システムの「万が一」のために必要な機能です。
1.3.4 メンテナンス・アップデート
メンテナンス・アップデートは保守で行う作業です。ハードウェアやソフトウェアの不具合などが見つかった場合に更新を行う作業です。自動で更新できる場合もあれば、手動でシステムの停止が必要となる場合もあります。
2. クラウドで考慮するべき運用保守のポイント
最近、従来のオンプレミスからクラウドへ移行する企業が増えており、クラウド上で稼働するシステムの運用保守が必要となっています。次に、クラウドで考慮しておくべき運用保守のポイントについて解説します。
2.1 クラウドで考慮するべき運用保守のポイント
基本的に、オンプレミスでもクラウドでも運用保守の考え方や必要な機能・作業については変わりません。ただし、クラウドを利用する際は、共同責任モデル(責任共有モデル)を意識する必要があります。
オンプレミスではシステムを構成するハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの全てがユーザー側の責任となりますが、クラウドでは、責任の一部をクラウドベンダー側が持つことになります。IaaS、PaaS、SaaSそれぞれで責任範囲が異なりますが、クラウドベンダー責任範囲内のサービスレベル(障害発生時の対応内容、メンテナンスの内容、頻度など)が、ユーザー側の運用保守の要求・要件を満たせているかどうか事前に確認することが重要です。
2.2 Azureにおける運用保守のメリット
マイクロソフトが提供するクラウド「Azure」は、IaaSからSaaSまで含めた総合的なクラウドサービスです。運用保守においてAzureを選択するメリットは、共同責任モデルにおけるAzure側の責任範囲(※1)においてはユーザー側で保守を行う必要がないことです。
特にサーバー、ネットワーク、ストレージなどのインフラ部分の保守が不要となることにより、保守作業のミスを気にする必要もなく、その分の保守費を削減することができます。ユーザーはインフラを気にすることなく、独自に導入したソフトウェアやアプリケーションの運用保守に集中することが可能です。
※1 参考:Microsoft Docs クラウドにおける共同責任
3. Azureにおける運用保守に必要な機能とサービス
Azureが提供している運用機能(マネージドサービス)の概要を解説します。Azureでは、ユーザー側の責任範囲における運用保守作業を、これらAzureのサービスを活用することで実現することが可能です。
3.1 監視機能
3.1.1 Azure Monitor
Azure Monitorは、Azureの統合監視ソリューションです。Azureの仮想マシンやネットワークなど、Azureのサービスの状態を監視し、異常が見つかった場合は通知を行います。
3.1.2 Application Insight
Application Insightは、Webアプリケーション向けの監視サービスです。HTTP応答や画面遷移の監視によりWebアプリケーションが提供するサービスの正常性を監視します。
3.1.3 Network Watcher
Network Watcherは、Azure仮想ネットワーク内の監視、診断などを行うサービスです。仮想マシン、仮想ネットワーク、ロードバランサーなどの監視・診断を行います。
3.2 ログ収集・管理・分析機能
3.2.1 Log Analytics
Log Analyticsは、Azureのログ分析ツールです。Azureクラウドはもちろん、オンプレミス環境も含めて統合的にログや統計情報の収集・管理・分析を行います。
3.3 バックアップ・リストア機能
3.3.1 Azure Backup
Azure Backupは、Azure内に保存したデータのバックアップ・リストアを行うサービスです。Azure仮想マシンやAzure Files、SQL Serverなどに格納されているデータのバックアップとリストアが可能です。
3.3.2 Azure Site Recovery
Azure Site Recoveryは、ディザスタ・リカバリ(大規模災害復旧)用のサービスです。仮想マシン・物理マシンの保護と遠隔地への自動データ同期によるディザスタ・リカバリを実現します。
4. まとめ
システムを安定運用するためには運用保守が重要ですが、運用保守は大きなコスト負担にもなります。近年はクラウドの浸透により運用保守の負担が軽減されているため、サービスの向上のための活動に目を向ける企業も増えています。自社のサービス向上を見据えて、Azureの導入を検討してはいかがでしょうか。
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Tag: Application Insight Azure Backup Azure Monitor Azure Site Recovery Azure運用管理 Log Analytics Network Watcher
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