System Monitoring Column ＜システム監視コラム＞APMとは？アプリケーションのパフォーマンスを維持するための仕組みを解説！主要なAPMツールも紹介

ユーザー満足度を高め、サービスからの離脱を防止するには？最新の仕組みを解説

サービスの品質を確保しつつシステムを安定稼働させるためには、インフラやアプリケーションが適切に動作しているかどうかを監視することが重要です。特に、アプリケーションをサービスとして提供している企業にとって、ユーザーの満足度を高めるためにはアプリケーションのパフォーマンスを維持することが必須であると言えます。

APMは、アプリケーションの稼働状況やパフォーマンスを管理・監視する技術で、アプリケーションのトラブルを早期発見し、パフォーマンスの悪化を防ぐために役立つ仕組みです。

本記事では、APMの概要と重要性について解説し、国内の主要なAPMツールについて紹介します。

1. APMとは

APMという言葉について聞きなれない人も多いかもしれません。まずはAPMの概要と重要性、APMに求められる機能について解説します。

APMとは

APMとは、Application Performance Managementの頭文字をとった略語で、日本語では「アプリケーションパフォーマンス管理」「アプリケーション性能管理」などと訳されます。APMはアプリケーションやシステムの稼動状態を利用者側の視点から管理・監視し、パフォーマンス（性能）に関する問題点の把握や原因究明などを素早く行うための仕組みです。

APMを導入することで、アプリケーションレベルでシステム全体の稼働状況を管理することができ、パフォーマンスの悪化や不具合が起こり得る状況を予兆の段階で察知し、未然に防ぐことが可能になります。

APMの重要性

アプリケーションは、システムやサービスの利用者が直接利用するため、パフォーマンスの悪化は、ユーザーの満足度にもダイレクトに影響します。特にWebを介したアプリケーションをサービスとして提供している企業は、ビジネスそのものの成否に大きく影響する可能性があると言えます。

従来のネットワークやサーバーの状態、アプリケーションのログなどを監視する方式も、システム・サービスの安定稼働のためには必要な仕組みです。しかし、アプリケーションのパフォーマンスが悪化しても、それぞれは問題なく稼働しているケースもあるため、迅速な検知や原因の究明が難しいという課題がありました。APMは、あくまでアプリケーションの動作・パフォーマンスを直接監視するため、このような課題を解決することができます。

APMに必要な機能

APMはガートナーの定義によると下記の機能を備えている必要があるとされています。

• デジタルエクスペリエンス監視（DEM）
• アプリケーション・ディスカバリー/トレース/診断（ADTD）
• IT運用のための人工知能（AIOps）

デジタルエクスペリエンス監視（DEM）

デジタルエクスペリエンス監視（DEM）とは、ガートナーが提唱している新しいカテゴリで、アプリケーションとユーザーの対話・体験品質（Digital Experience）を監視する機能と定義されています。ユーザーが実際にアプリケーションやサービスを利用する中で体験するパフォーマンスや稼働率などのモニタリングを行う機能です。

アプリケーション・ディスカバリー/トレース/診断（ADTD）

アプリケーション・ディスカバリー/トレース/診断（ADTD）とは、アプリケーションを構成する複数のサーバー間の関係性を把握・管理し、トランザクションをマッピングして問題を検出し、解決を支援する機能です。

IT運用のための人工知能（AIOps）

IT運用のための人工知能（AIOps）とは、ビッグデータと機械学習機能を組み合わせてIT運用の自動化・効率化をサポートする機能です。APMでは、パフォーマンスやイベントのパターンなどを自動検出し、時系列でイベントデータの異常の検出や、アプリケーションのパフォーマンス問題の根本原因の特定を可能とします。

2. APMのメリット・デメリット

APMはサービスのパフォーマンスを直接監視することでユーザーの満足度確保が期待できる仕組みであると言えますが、具体的なメリット・デメリットについて見ていきましょう。

APM導入のメリット

APM導入のメリットは下記の通りです。

• パフォーマンス悪化の迅速な検知と対処を支援
• ユーザーの離脱防止と満足度向上

パフォーマンス悪化の迅速な検知と対処を支援

APMは、アプリケーションやサービスのパフォーマンスをユーザー側の視点から監視する仕組みです。そのため、ユーザーの満足度に影響を及ぼすパフォーマンスの問題を迅速に検知・対処することができます。

ユーザーの離脱防止と満足度向上

アプリケーションやサービスのパフォーマンス悪化は、ユーザーの満足度にダイレクトに影響する問題です。最悪の場合、サービスからのユーザー離脱を招く可能性もあります。APM導入により、パフォーマンスの問題を迅速に対処することで、結果として顧客満足度を確保し、ユーザー離脱防止に役立ちます。

APM導入のデメリット

APM導入のデメリットは下記の通りです。

• コスト負担

コスト負担

APMを導入するためには、基本的にAPMツールの導入が必要なため、コスト負担が発生します。APMツールは、小規模向けのものから、AIOps実現のためにAI（人工知能）が導入されるようなエンタープライズ向けの高価なツールまでさまざまなツールが提供されています。サービスの規模や予算に合った適切なツールを選定することが重要です。

3. 主要なAPMツール

APMの機能を実現するためにはAPMツールの導入が必要です。APMツールはさまざまなベンダーが開発・提供していますが、主要なAPMツールの概要と特徴について紹介します。

Dynatrace

Dynatraceは、米国のDynatrace社が提供しているエンタープライズ向けのAPMツールです。独自のAI機能を備えていることが特徴で、ユーザー視点で、システムの監視と分析を自動的に行うことで、短時間かつ確実にパフォーマンス問題のボトルネックを発見することができます。

また、アクセス元の国や地域、ユーザーが利用している端末、Webブラウザにまでわたって認識することができるため、どの時点で障害が発生しているのか、原因は何かを迅速に特定することが可能です。

New Relic APM

New Relic APMは、米国のNew Relic社が提供しているSaaS型のAPMツールです。Webアプリケーションやモバイルアプリケーションのリアルタイム監視を得意としており、スタートアップからエンタープライズまで幅広い企業で導入が進んでいます。

フロントエンドからインフラ監視まで、アプリケーションに関する全レイヤーをカバーすることが可能です。

Datadog APM

Datadog APMは、米国のDatadog社が提供しているSaaS型のAPMツールです。Datadogは従来からインフラ、ミドルウェアの監視サービスを提供していましたが、2017年にDatadog APMを正式リリースし、1つの監視サービスと1つのエージェントでインフラからアプリまでまとめてモニタリングできるようになりました。

エージェントをインストールするだけで簡単に導入でき、Java、.NET、PHP、Node.js、Ruby、Python、Go、C++ など多くの言語に対応していることが特徴です。

Pandora FMS

Pandora FMSは、OSSベースの監視ツールで、監視・通知・グラフ表示・インシデント管理など運用監視に必要な機能をオールインワンパッケージで提供している製品です。数千台規模の監視対象を一元管理できるメタコンソールや、監視システムのHA構成や分散監視など、大規模環境向け機能が充実しています。基本的には統合監視ツールですが、APM機能も備えており、アプリケーションログ、レジストリ、CLI、DB、APIから情報を直接取得することができます。

このように、ソースから直接情報を取得することで、アプリケーションのパフォーマンスの問題を迅速に発見することが特徴です。

また、カスタムレポート機能により、サービスやアプリケーションの稼働状況を詳細に評価するためのSLAレポートを出力することもできます。

4. まとめ

アプリケーションをサービスとして提供している企業にとって、サービスからの離脱防止のためにユーザー満足度を維持・向上することが重要な課題です。APMツールはスタートアップ向けからエンタープライズ向けまでさまざまなツールが提供されていますので、サービスの規模・重要性・予算にあったツールを選定することが重要です。

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