System Monitoring Column <システム監視コラム>

ITSMとは?

Category: 入門編 監視ツール編

2022.06.01

〜ITSMの概要、役割、効果、メリット、ツールの紹介〜

近年、DX化推進やクラウドサービスの普及により、ありとあらゆる場面においてITサービスが利用されています。現代の事業運営では、ITサービスを効率的に活用することが企業組織の成長を左右すると言っても過言ではありません。

このような時代背景からIT投資効果を最大化する「ITSM」(IT Service Management)が今あらためて注目されています。ITSMの導入は、安全性と信頼性の高いITサービスを提供し、満足度の高い安定したサービス供給に貢献します。さらにITサービスの効率化や有効活用が進めば、生産性の向上も期待できます。

しかし、ITSMは導入すればすぐに効果が出るというものではありません。ITSMの運用は継続的なプロセスで運用する必要があるため、一定以上のITスキルをもった人材が時間をかけて取り組む必要があります。今回はこのITSMについての基本的な知識、ITSMの活動内容、ITSMの管理ツールを紹介します。

1. ITSMとは

ITSMとは、IT Service Managementの略で「ITサービスマネジメント」、「ITサービス管理」と呼ばれています。事業運営に必要なITサービスの安定的な供給と、継続的な改善を管理するためのフレームワークです。

従来のITは「ITシステム管理」、「情報システム管理」と呼ばれ、システムの開発、構築、運用、情報管理にフォーカスし役割を担っていました。
DX化が推進され、クラウドサービスが普及する現代においては、より「ビジネス」や「サービス」にフォーカスしている点が特長です。

ITSMのフレームワークの中には様々な役割が定義されていますが、ここでは代表的な役割と言える3点、インシデント管理、変更管理、サービスデスクについて紹介します。

インシデント管理

通常のITサービスの停止、サービス品質の低下により、ビジネスの継続や、利用者に影響を与える事故をインシデントと呼びます。インシデント管理とは、事故によるビジネス影響を最小限とし、迅速にITサービスを復旧することを目的とした管理プロセスです。

具体的にはインシデント発生、解決、復旧、再発防止など一連のプロセスを定義し、より迅速なインシデント解決、収益損失の削減、ステークホルダーとのコミュニケーション向上などの効果が期待されます。

変更管理

変更管理はハードウェアやソフトウェアなどのITリソースに対し、追加、修正、削除を行い改善する管理プロセスです。変更管理の主たる目的は、変更が原因でサービスの継続に影響を与えないことにあります。一般的にモノ(ハードウェア)、ソフト、人が変わった時に事故が起きやすいと言われています。

ハードウェアの追加導入、オプション製品による拡張、修理交換、廃棄した場合などの変更、ソフトウェアであれば新しいソフトの導入、バージョンアップ、セキュリティパッチの適用も変更管理です。また変更管理には、担当者の変更や、役割の変更といった人的リソースの変更も含まれます。

サービスデスク

サービスデスクはサービス運営における幅広い業務を担う機能です。インシデントの発生からクローズまでの責任を負い、またITSMプロセス上で生じる情報発信も行っています。

近しい機能としてヘルプデスクという機能も存在します。ヘルプデスクは主に、お客様を助ける「トラブルシューティング」にフォーカスした機能です。

それに対し「サービスデスク」はITSMで定義されたインシデント管理、問題管理、変更管理、構成管理など多岐に渡るプロセスの連携をスムーズに行うための機能です。あらゆるプロセスのハブ機能を担っていることからサービスデスクは顧客満足度に影響を与える極めて重要な機能と言えるでしょう。

2. ITSMとITILの関連について

このようにITSMは様々なプロセスや機能をもち、ITサービスの安定的な供給と、継続的な改善、サービス品質維持、向上を管理するフレームワークであることがお分かりいただけたと思います。

ITSMに似たものでITIL(アイティル)と呼ばれるものがあります。混同されがちなので、簡単にITSMとITILの関連について解説します。

ITSMとITILの違い

ITSMは国際的な認証機関により「ISO/IEC 20000-1」と「ISO/IEC 20000-2」に定義されている世界基準のフレームワークです。このITSMの成功事例(ベストプラクティス)をドキュメント化したITIL (Information Technology Infrastructure Library)です。

ITILは構成そのものがITSMの適切な管理を実現するためのテンプレートとなっており、世界基準として参考にされています。ITILは効率的に体系化されており以下の5つに分類されています。

  • サービス・ストラテジ
  • サービス・デザイン
  • サービス・トランジション
  • サービス・オペレーション
  • 継続的なサービス改善

それぞれの分類が担う機能、役割を簡単に紹介します。

サービス・ストラテジ(サービス戦略)

ITサービスを提供する際の戦略を検討する機能です。検討事項には、財務管理、需要管理、サービスポートフォリオ管理などが含まれます。

サービス・デザイン(サービスの設計)

戦略で決定した新しいサービスの提供や変更を、ITサービスの設計手法に基づき安全に本番環境に導入できるよう設計する機能です。サービスカタログ管理、可用性管理、キャパシティ管理、ITサービス継続性管理、サービスレベル管理、情報セキュリティ管理、サプライヤー管理などが含まれます。

サービス・トランジション(サービスの移行)

設計されたサービスを、本番運用に移行する機能です。検討事項には、移行の計画立案、変更管理、構成管理、リリースおよび展開管理、テスト、変更の評価、ナレッジ管理などが含まれます。

サービス・オペレーション(サービスの運用)

ITサービスを提供する機能です。イベント管理、インシデント管理、要求実現、 問題管理、アクセス管理、サービスデスク、技術管理、IT運用管理、アプリケーション管理などが含まれます。

継続的なサービス改善

ITサービスとそれを支えるプロセスの継続的な改善のための手法をまとめたものです。

このようにITILは、ITSMを詳細かつ幅広く網羅しています。しかしITILの内容は非常に具体的かつ詳細であり、あくまで成功事例として必要な範囲を参考にすることが推奨されています。

3. ITSMの導入効果とメリット

ITSMを導入することで得られる効果とメリットについて紹介します。

安定したITサービスの供給がもたらす満足度の向上

ITSMを導入することで様々なプロセスが一元的に管理されることで、ITサービスの品質向上が期待できます。また継続的な改善により、品質が維持、向上されることで、従業員の生産性も向上し、顧客へ対する満足度の向上も相乗効果も期待できます。

迅速な問題解決とインシデントの抜本的な解決

インシデント管理、問題管理、変更管理、構成管理と言った管理フレームワークにより、様々な情報がナレッジベースとして蓄積されます。このナレッジはサービスデスクにより関係部署、関係者へ展開され、インシデントを未然に防ぐ予知保全を可能にします。

属人的な運用の排除

ITSMの管理プロセスをナレッジ化することで、様々な手順を一元的に管理し、情報を展開することができます。そのことで、特定の人物しかできない運用を極力排除し、運用プロセスの効率化、自動化を実現するとともに、運用コストの削減も期待できます。

事業全体に対するマネジメントの一元管理に貢献

ITSMが網羅する管理項目は非常に広く多岐に渡ります。ITSMを活用し企業が提供するサービス及びその責任にフォーカスすることで、「ビジネス」の一元的なマネジメントの実現も効果として期待できるでしょう。

4. ITSMツールについて

ITSMツールは、ITサービスに関する様々な情報を管理し、安定したITサービスの提供、継続的改善を支援するツールです。現在市場には多くのITSM関連ツールが存在します。まずはITSMツールについて、選定のポイントを紹介します。

自社が求める管理範囲の特定と導入計画はあるか?

ITSMのフレームワークは多岐に渡るため、自社内におけるITサービスに対し、どの部分からITSMの考え方を導入していくか範囲を決め、いつまでにどこまで広げていくかの計画を立案することが重要です。

「パッケージ型」か「機能特化型」か?

全てのITSM管理機能を網羅した「パッケージ型」か、特定の課題を解決できる「機能特化型」の2種類があります。「機能特化型」の例では、インシデント管理、問題管理、構成管理を効率化するチケットシステムや対応履歴管理に活用できるFAQツールなどがあげられます。順次導入していく場合、このように特化型が効率的ですが、導入コストや機能の重複が生じるリスクもあります。

使い続けることのできるツールを選定する

ITSMツールはすぐに効果は見えず一定期間継続して運用することで費用対効果が見えてきます。そのため、利用者の操作性、機能の改修、日本語サポートの有無など、使い続けるための機能は重要な選定ポイントです。面倒、使いづらい、分かりにくいなど、利用者が敬遠してしまうツールは本質的なナレッジ蓄積を阻害する要因につながります。

カスタマイズの範囲を確認し、自社運用(内製化)と外部委託を検討する

ITSMツールではカスタマイズの柔軟性を売りにしているものがありますが、初めから自社の運用に適合させることは難易度が高いといえるでしょう。徐々にカスタマイズをしながら最適化するべきです。

その際、自社運用だけだとツールのカスタマイズがブラックボックス化してしまう可能性もあるため、外部委託も念頭に置きながら、導入計画を立案することも重要です。

ビジネススピードに適応できるか?

ITSM自体が「ビジネス」や「サービス」にフォーカスしていることから、ITSMツールの運用も、前提として事業スピードに合わせる必要があります。ITSMツールが原因で事業が遅延してしまっては本末転倒です。

ビジネススピードに適応させるために、いきなり大規模に導入するより、アジャイル的な開発アプローチを用いて、機能の一部に絞る、導入範囲を小規模に絞るなど、小さく初めて大きく育てる発想が適応しやすいと言えるでしょう。

ITSMツール紹介

ここまでツール選定のポイントをご紹介してきましたが、自社の目的に合うツールを選定することが重要です。またその目的を達成するための導入計画や予算も十分に考慮する必要があります。

ITSMツールは必ずしも1つである必要はありません。目的ごとに異なるツールを組み合わせて導入するのも良いでしょう。

ここではITSMツールの「a.特徴」「b.運用コスト」の2つの比較ポイントで紹介します。

ServiceNow

a.特長

2004年にアメリカで創業した会社で、オンプレミスが主流だったころから、ITSMに注目していました。現在ではクラウド型のITサービスマネジメントツールを提供しています。このツールはITIL に沿って設計されているため、運用プロセスの標準化、自動化に活用することができITサービスの統合管理を実現できます。情報を一か所に集約するサービスデスクとして強力に機能するツールと言えるでしょう。

b.運用コスト

クラウドサービスであるため、利用者のアカウント数に応じ料金プランが用意されています。近年では国内での導入事例も増え、サポート体制も充実しています。

※参考1 ServiceNow

REDMINE

a.特長

REDMINE(レッドマイン)は2006年からオープンソースで提供されるWebベースのプロジェクト管理ソフトです。全体的にはプロジェクトを管理するためのありとあらゆる機能が実装されていますが、ITSMツールとしても活用することができます。例えばインシデント管理、問題管理などの対応をチケットシステムで管理するなどが可能です。

b.運用コスト

オープンソースであるため、ソフトウェアライセンスは不要です。歴史もあり人気のあるオープンソースソフトであることからユーザーコミュニティも非常に充実しています。

また有償でサポートしてくれるSI企業なども多いため、ITSM初心者から経験者まで幅広く対応できるツールと言えるでしょう。

※参考2 REDMINE

Pandora FMS

a.特長

Pandora FMS はオープンソースの統合監視ツールです。ITSMとしての機能も搭載しています。インシデント管理、問題管理に活用できるチケット機能や、システム変更管理、IPアドレス管理機能を搭載しています。監視と統一された環境に統合することで、監視と連携して活用することができます。

b.運用コスト

利用機能、利用台数に応じ、ライセンスプランが用意されています。機能と費用のバランスに優れた製品です。日本語によるサポート体制も充実しています。

※参考3 Pandora FMS

5. まとめ

ITSMについての概要、ITILとの違い、メリット、ツール選定のポイント、ツールについて紹介しました。ITSMは単に管理プロセスの集合体ではありません。それぞれのプロセスが組み合わさって、ITサービスの品質向上、顧客満足の向上に結び付けることで、企業が営む事業運営を支えるシステムと言っても過言ではありません。

近年ではITが社会、経済を支える重要インフラとなりました。またDX化推進によりクラウドサービスも大きく進化しています。そのことで企業のリソースは「ビジネス」や「サービス」によりフォーカスすることが可能となりました。そんな今だからこそITSMのフレームワークが注目を集めているのです。ITSMは自社の経営方針に基づく導入と運用が必須です。高度なITスキルを要するケースもあるため、導入や運用に当たっては専門家へ相談されることも推奨いたします。

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