System Monitoring Column <システム監視コラム>

インベントリ管理とは?

Category: 入門編 監視ツール編

2022.06.02

〜IT資産管理だけじゃないインベントリ管理の概要、役割、メリット、ツールを紹介〜

近年DX化推進により、クラウドサービスやスマートデバイスが急速に普及しています。便利な反面、システムの多様化、複雑化により無駄も生じやすく、ライフサイクルも短いため適切な管理が課題と言われています。

このように企業が保有するパソコン、スマートデバイス、サーバー、ネットワーク機器、IoT機器、ソフトウェア、ライセンスなどIT資産の情報を管理することをインベントリ管理と呼びます。

近年のインベントリ管理は従来のIT資産であるハードウェア、ソフトウェア、ライセンスの管理に加え、クラウドサービス、サブスクリプションサービスの利用状況、またセキュリティ対策という観点から状態を管理するという点もインベントリ管理において重要な考慮事項になっています。

今回はインベントリ管理についての概要、メリット、課題、仕組みを解説し、代表的なインベントリ管理ツールを紹介します。

1. インベントリ管理とは

インベントリ管理とは、IT資産に関する情報を一元的に管理する仕組みです。英語のinventoryという言葉の意味は、資産や在庫などの「目録」、「資産台帳」、会計用語では「棚卸資産」を意味する言葉です。また「分布図」、「一覧」という意味もあるため、IT業界のみならず、物流業界、ゲーム業界、環境学、生物学、などでも幅広く使われている言葉です。

IT業界においてインベントリ管理はハードウェア、ソフトウェア、ライセンス、サポートの保有数、期限に加え、設置場所、利用部署、利用履歴、変遷など、資産の利用状況についての情報も含まれます。

インベントリ管理の歴史

元々、企業における「IT資産」の位置づけは、「機械設備」と同等でした。しかし半導体技術が大きく進化し、コンピュータの性能が飛躍的に進歩するスピードから、IT資産は短いライフサイクルで消耗されるようになりました。また仮想化技術が大きく進歩した2000年代後半からクラウドサービスが出現し、IT資産がモノからサービスへシフトする動きが見られIT資産におけるインベントリ管理が注目され始めました。

近年のインベントリ管理

近年ではクラウドサービスの利用や、サブスクリプションの利用など、契約形態も多様化し、スマートデバイスの進化から、ノートパソコンのみではなく、タブレット、スマートフォン、設備に組み込まれるIoT製品など、一人一台以上のデバイスを保持するケースや、あらゆるものがインターネットにつながることから、インベントリ管理対象は年々広がっています。

さらに、セキュリティ面において、管理対象のファームウェア、OSが最新の状態であること、セキュリティホールと呼ばれる弱点が放置されていないこと、ウィルス対策ソフトのバージョンが最新であること、などというようなこれら資産の状態を管理する機能に注目が集まっています。

このように従来の資産台帳や目録の役割に加え、最新の利用状況、セキュリティの対策状況を可視化する管理をインベントリ管理と呼びます。

2. インベントリ管理のメリット

インベントリ管理を適切に行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットを3つ紹介します。

IT資産運用の効率化によるコスト削減

インベントリ管理を適切に行うことで、無駄なコストや投資を削減することができます。よくある無駄なIT資産の利用例として以下のようなものが挙げられます。

  • 丼勘定でボリュームライセンスを購入している。
  • クラウドシステムをオンデマンドな従量課金で払い続けている。
  • 不要なパソコン、サーバー、ネットワーク機器が社内に放置されている。

このような無駄は一見小さな無駄に見えますが、積もれば大きな損失となります。このような無駄を見つけ適切に処理をする必要があります。

  • 無駄なライセンスは更新しない。
  • サブスクリプションへ切り替える。
  • クラウドサービスも利用期間を決めてリザーブド契約にする。
  • 管理されていない機器を撤去することで、省スペース、省エネルギーを実現する。
  • 無駄な機器を破棄することでセキュリティ管理の手間をも省くことができる。

このような対処方法の判断は、適切なインベントリ管理があってこそのものです。このように適切なインベントリ管理はIT資産運用の効率化・最適化に非常に役立ちます。

セキュリティの強化

近年のインベントリ管理はデバイスの状態を管理する機能も注目されています。OSのアップデートを行わない、最新バージョンではないソフトウェアを利用する、悪意もしくは脆弱性のあるソフトウェアのインストールする、などセキュリティリスクの高い状態のデバイスを検出し排除することができます。

このように資産としての扱いにとどまらず、デバイスの状態を把握することで、全体のセキュリティリスクを最小限に抑えることにつながります。

コンプライアンス及び内部統制の強化

万が一、ライセンスの不正利用など規約違反とみなされた場合、コンプライアンス違反による企業イメージ損失、賠償金の発生など、様々なリスクが生じます。近年では、クラウドサービスの普及により利用を開始するまでの手続きが簡単になっていますが、従来のIT資産同様、利用規約は存在します。コンプライアンス違反は知らなかったでは済まされません。

利用するIT資産、ITサービスが多いほどリスクが高いため、インベントリ管理を活用することで、コンプライアンス及び内部統制の強化に有効です。

3. インベントリ管理の課題

様々なメリットがあるインベントリ管理ですが、IT資産は管理するべき情報が多く、運用の難易度は高いと言えるでしょう。最適なインベントリ管理を行うための課題について紹介します。

インベントリ管理をどのようなツールで行うか?

従来、インベントリ管理のような目録、台帳管理は、Excelなどのファイルを利用し、手作業で更新が行われることが一般的でした。しかし管理する対象や項目が多く手作業では限界があります。

近年ではインベントリ一覧の自動作成ツールの利用も普及しました。このように便利なツールもありますが、利用するためにはエージェントのインストールが必要であったり、収集できる情報がツールによって違いがあったりします。

また高機能なツールはコストも高くなる傾向があります。自社の管理方針を定め、自社に適したインベントリ管理ツールを選定することが必要です。

インベントリ情報をどのように維持するか?

インベントリ一覧を作成しても更新しながら最新の状態を保つことの方が難しいと言えるでしょう。当然、手動では管理者の管理稼働が大きな負荷になります。できることを可能な範囲で行う運用にとどめてしまった場合、インベントリ管理のメリットを享受できないばかりか、リスクが生じる可能性もあります。

インベントリ管理で管理するデータは、IT資産の保有数や期限だけではなく、設置場所や利用者、利用履歴など、資産の活用状況についての情報も含まれます。またどの端末に、どのソフトウェアがインストールされ、どのようなライセンス状態で、セキュリティ状態がどうかまで、関連する情報を紐づけてほぼリアルタイムで管理する必要があります。

このようにインベントリ管理は定期的に情報収集取得する必要があることから、インベントリ管理ツールの導入は必須と言えるでしょう。

4. インベントリ管理ツールで取得できる情報

一般的にインベントリ管理ツールではどのような情報を取得できるのでしょうか。まずはインベントリ管理ツールで取得できる情報について紹介します。

※ここで紹介するインベントリ管理で取得可能な値は汎用的に用いられる情報です。

ハードウェア情報

  • コンピュータ名
  • ハードウェアのファームバージョン
  • CPU
  • メモリ容量
  • ディスク容量
  • IPアドレス(位置情報)

ソフトウェア情報

  • OS(リビジョン)
  • OSアップデートの適用状況
  • インストールしたアプリケーション
  • アンインストールしたアプリケーション
  • ウィルス対策ソフトの更新状況

アップデート情報

  • メーカーからのOSやソフトウェアのアップデート情報
  • デバイスへのアップデートプログラムの配布状況
  • デバイスへの適用状況

ライセンスの管理

  • ライセンスの適用状況
  • ライセンスの利用状況
  • ライセンスの有効期限

Syslog管理

  • アプリケーションの起動状況
  • ファイル操作状況
  • 外部ネットワークとの接続状況

不正や障害検出管理

  • 不正なネットワークへの接続検知
  • 不正な振る舞い検知
  • 死活監視による障害検知

このようにインベントリ管理ツールは、ありとあらゆる情報を収集することができます。また管理対象のデバイスに対し、エージェントソフトウェアをインストールすることで、すぐに利用開始できるため導入は容易ですが、管理台数などが多い場合のサポート体制などは比較検討の要素と言えるでしょう。

5. 代表的なイベントリ管理ツール

ここからは下記の比較ポイントで、代表的なインベントリ管理ツールを3点紹介します。

  • a.特長
  • b.運用コスト

SKYSEA Client View

a.特長

Sky株式会社が提供するIT資産管理ツールです。IT資産管理の機能に加え、テレワークでの運用支援機能や、標的型攻撃やランサムウェアなどのサイバー攻撃に対する多層防御機能を搭載し、他社製品との連携機能も充実しており、各社パブリッククラウド環境との連携の多さも特長です。

b.運用コスト

利用機能、利用台数に応じ、ライセンスプランにより提供されます。「誰でも使える」をコンセプトに設計された管理画面と、運用代行、サポート体制も充実しています。

※参考1 SKYSEA Client View

LanScope Cat

a.特長

エムオーテックス株式会社が提供するIT資産管理ツールです。内部不正対策、外部脅威対策などのセキュリティ対策機能も含め一つに集約した統合管理ツールです。業界トップシェアで豊富な導入実績が特長です。

b.運用コスト

利用機能、利用台数に応じ、パッケージプランにより提供されます。機能をオプションとして個別に購入が可能です。OS問わず海外のPCも管理できることから管理コンソールも英語表示に対応しており、運用代行、サポート体制も充実しています。

※参考2 LanScope Cat

Pandora FMS

a.特長

Pandora FMS は、元々オープンソースの統合監視ツールです。有償版でエンタープライズ向けのインベントリ管理機能が提供されています。基本的なインベントリ管理機能に加え、構成管理も充実しており、カスタムスクリプトなどを用いた詳細なチューニングが可能です。

b.運用コスト

利用機能、利用台数に応じ、ライセンスプランが用意されています。機能と費用のバランスに優れた製品で日本語によるサポート体制も充実しています。

※参考3 Pandora FMS

6. まとめ

インベントリについて、基本的な概要、メリット、課題を解説し、ツールについて紹介しました。インベントリ管理はIT資産管理の役割にとどまらず、デバイスの状態を管理し、セキュリティ対策としても有効です。インベントリ管理は自社の管理方針に基づくツールの選定が重要です。導入に当たっては専門家へ相談されることも推奨いたします。

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