Category: 入門編
2020.10.10
目次
はじめに
ネットワーク上のサーバリソースを活用する「クラウド」と、自社で機器所有・運用をする「オンプレミス」は、どのような違いがあるのでしょうか。また、それぞれのメリットやデメリット、向き・不向きはどのような点にあるのでしょうか。
分かるようで分からない「オンプレミス」と「クラウド」の違いについて、コスト、調達期間、柔軟性、性能などの、さまざまな角度から比較します。これから新規システムを構築したい方や、自社システムの運用保守工数を見直したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
オンプレミスとは?
オンプレミスとは、「on-premise」という英語の日本語訳で、自社内で物理サーバを所有し、情報システムを構築・保守運用することを指します。「premise」は、家屋、建物、構内という意味です。
従来サーバを自社で所有し運用するのが当たり前でしたが、「クラウド」が登場したことで、2つを区別する言葉として、オンプレミスという呼び方が普及しました。オンプレミスでは、利用者が自社内に限られるので、クラウドのように幅広いユーザニーズに応える必要がなく、ネットワークやサーバーといった基盤に対しても自社特有の設定を自由に行える柔軟性の高さやカスタマイズのしやすさなどが特徴です。
クラウドとは?
クラウドとは、クラウド事業者が保有・提供するデータベース、ストレージ、アプリケーションなどを、ネットワーク経由で利用する仕組みのことです。オンプレミスとの大きな違いは、利用者が自社内にサーバーやネットワークなどの物理インフラ設備を保有しない点で、クラウドでは、必要な時に、必要な分だけサービスを利用することができます。
2000年頃から、自社インフラ設備の運用保守コストに悩む企業を中心に注目されはじめ、2018年には日本政府の情報システムについても、クラウド利用を第一候補に検討する基本方針(クラウド・バイ・デフォルト原則)が発表されました。
クラウドは、特性ごとに「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2つに分類できます。次項以降で、それぞれの特徴を解説します。
パブリッククラウド
パブリッククラウドとは、「パブリック」という言葉の通り、企業や個人など不特定多数のユーザが利用するクラウドサービスのことです。サービスの提供範囲に応じて、以下3種類に分類できます。
- SaaS
アプリケーションをネットワーク経由で利用できるサービス。代表例は、Salesforceや、Slack、Office365、G Suiteなど。 - PaaS
「Platform as a Service」の略で、サーバー、OS、ミドルウェアなどをネットワーク経由で利用する。代表例は、AWS の Lambda や Elastic Beanstalk、Azure の app service、GCP の AppEngine など。 - IaaS
サーバーやハードディスク、ファイアウォールなどのインフラ設備からネットワーク経由で利用する。代表例は、AWS の EC2、Azure の Virtual Machine、GCP の ComputeEngine など。
プライベートクラウド
プライベートクラウドとは、クラウド提供事業者の環境上に、自社専用のクラウド環境を構築する仕組みです。他者が利用しないために柔軟性が高く、従来のオンプレミスと同様にシステム設計・構築が可能なメリットがあります。
プライベートクラウドは、以下2種類に分類されます。
- オンプレミス型(所有型):自社でインフラ構築・運用を行う
- ホステッド型(利用型):クラウド事業者が提供するインフラサービスを利用する
オンプレミスとクラウドの違い・比較
コスト
オンプレミスの場合は、インフラ設備の導入検討~運用~破棄を自社で行う必要があり、莫大な費用がかかります。特にビジネス遂行に不可欠なシステム群(ミッションクリティカル)を守るために、強固なセキュリティ対策を行ったり、冗長構成にしたりと、インフラ費用や、高度なITスキルを持つ技術者登用コストは大きな負担です。
対して、クラウド(パブリック、プライベート)は、自社でインフラ設備を所有せず、都度利用料を払う仕組みなので、オンプレミスよりも初期導入コストは抑えられる傾向があります。ただし、長期にわたってクラウドを利用する場合は、結果的にコストメリットを享受できない可能性がある点に注意が必要です。
コストだけを見て一概にどちらが良いということはなく、利用予定期間や、対象システムの特性に応じて、コスト計算をする必要があります。
調達期間
オンプレミスの場合は、自社で機器選定や調達を行います。また、調達後も構築作業に多くの時間が必要で、検討~利用開始まで数カ月かかることもあります。対して、クラウドの場合は、サービスを選択して申込をするだけなので、スピーディーに利用可能です。特に、パブリッククラウドの場合は、オンラインで即時導入が可能なものもあります。
柔軟性
オンプレミスは、自社のビジネス特性やセキュリティ要件に合わせて自由にカスタマイズが可能です。既存システムとのインターフェース連携やデータ共有がしやすいのもメリットでしょう。
ただし、オンプレミスでは利用状況に合わせて柔軟にリソースを追加したり、削除したりはできません。アクセス数が増えているのに、インフラ機器の性能・リソースが追い付いていなければ、画面表示速度の低下や、サービスダウンなどにつながる可能性がある点に注意します。
対して、パブリッククラウドの場合は不特定多数のユーザが共同利用するため、利用者側での設定変更には制限がかけられていることが多く、細かなカスタマイズを希望する場合には向きません。カスタマイズが必要だと事前に分かっているのであれば、プライベートクラウドの利用を検討しましょう。
オンプレミスでは、インフラ設備の確保や検証などの手順を踏む必要があり、気軽に新技術を試すことはできません。対して、クラウドでは、提供事業者が使用したい技術に対応していれば、簡単にサービスを利用できます。また、人工知能(AI)・ビッグデータなどの最新技術への対応も比較的容易です。
性能
オンプレミスは、自社の事業予測などを参考にインフラ設備を検討し、設備も占有できるので、性能面のメリットは大きいといえるでしょう。パブリッククラウドやプライベートクラウドの場合は、自社と離れたところにある設備をネットワーク経由で利用するため、条件次第では狙った性能が出ない可能性もあります。
オンプレミスとクラウドはどのように使い分ける?
開発やカスタマイズのしやすいオンプレミスと、調達やコスト面でのメリットが大きいクラウドは、導入したいシステム・ビジネス特性に合わせて、複数の観点から比較し、使い分けましょう。ここからは、オンプレミスとクラウドのそれぞれで、向き・不向きを解説します。
オンプレミスの利用が向く場合
独自のセキュリティ要件や、特殊な社内システムとの連携が必要な場合は、自社でカスタマイズのしやすいオンプレミスを選択します。特に個人情報や社外秘の機密情報を扱うシステムの場合、ネットワーク経由でのクラウド利用はセキュリティの懸念があります。
また、24時間365日で一定のパフォーマンスを保証することが求められるシステムの場合は、オンプレミスが向いているでしょう。
クラウドの利用が向く場合
初期構築時の費用や期間を抑えたい場合や、保守運用の手軽さを重視する場合は、クラウドの利用が向いています。お試しでシステム構築を進めたい場合や、IT技術者のスキル不足が顕在化しているのであれば、クラウドを検討しましょう。
また、国内外の複数拠点からアクセスしたり、外出先からモバイル端末で利用したりと、対象システムをネットワーク上に公開しておくことが必要な場合も、クラウド利用が向きます。最初から外部利用を想定しているクラウドであれば、「どこからでも手軽にアクセス可能」というメリットを十分に生かせるでしょう。
おわりに
オンプレミスとクラウドの違いを解説しました。「クラウドファースト」の流れが加速している現状がありますが、その一方でオンプレミスの良さが見直されている実態もあります。どちらが良い・悪いというものではなく、対象システムの特性に合わせて、適材適所に選択することが大切です。
また、オンプレミスとクラウド(パブリック・プライベート)を組み合わせて、良いとこ取りをした、「ハイブリッド」という考え方もあります。ぜひ検討してみてください。
Tag: クラウド・オンプレミス比較
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