Managed Service Column <システム運用コラム>

安全なテレワークを実現するための課題と対策

Category: 入門編

2021.05.28

目次

はじめに

感染症の拡大によってテレワークが注目されるようになりました。都市部の大企業などでテレワークが積極活用されている事例はあるものの、「IT技術者不足や費用の問題から、テレワークの導入は現実的ではない」と考える企業もまだまだ多いのではないでしょうか。
しかし「業務上可能であってもテレワークを導入していない企業」という印象を持たれてしまうと、企業イメージが低下することはおろか、従業員が働き方に不満を持つ可能性もあります。

この記事では、テレワークのメリットと課題、そして課題を解決する技術についてまとめてご紹介します。
※厳密には雇用・非雇用(自営)に関わらずテレワーク従事者は存在しますが、この記事では雇用の場合について記載しています。

テレワークとは

テレワークとは、IT技術を活用して時間や場所を問わずに働くことを言います。企業のテレワーク従業員は各社の就業規則に応じて、本来の勤務地へ通勤することなく働くことが可能です。

テレワークの種類は勤務する場所を基準に考えると、在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務に分けられます。

  • 在宅勤務 : 自宅を仕事場とする働き方です。
  • モバイル勤務(モバイルワーク) : カフェやホテル、客先のオフィス内、移動中の公共交通機関内など、場所にこだわらない働き方です。
  • サテライトオフィス勤務 : 所属先の事業所に属するオフィス以外の、レンタルオフィスやシェアオフィスなど、企業が契約したオフィス内で働きます。

日本におけるテレワーク従業員の勤務形態では、全勤務日がテレワークというケースもある一方で、1日のうちの一部を在宅勤務にしたり、週に1~2日出社し残りの日をテレワークにしたりするといった柔軟な働き方も活用されています。

企業のメリット:業務継続

地震や台風、新しい感染症などによって勤務地が非常事態となれば、業務が継続できない事態が起こり得ます。しかし企業がテレワークを導入していれば万一の事態が起こった際にも、安全な場所や地域で業務を継続することが可能です。

また大雨や大雪警報が発令された場合や、公共交通機関が計画運休する場合にも、テレワークが役立ちます。テレワークでの勤務とすることで、従業員が出社できないために業務が滞ってしまう事態を避けるだけでなく、従業員の身の安全も確保することができるでしょう。

企業のメリット:人材確保

テレワーク制度が設けられていれば、都市部の勤務地周辺だけでなく、地方に人材を求めることもできます。勤務場所と時間の融通がきくことにより、勤務地周辺以外に住むフリーランスや副業を行っている人に対しても採用活動を行うことができます。総務省でも、中小企業に対し円滑な人材確保の実現を目的として、テレワーク・サポートネットワーク事業を行っています。。

また、オフィスに通勤する従業員の中には、家族の育児や介護が必要となり、従来通り働きにくくなる人が増えることも想定できます。家庭の事情と仕事との両立が難しくなれば、従業員が離職する可能性も考えられます。
このような場合にも、テレワークによる柔軟な働き方が選択できることで、有能な人材の離職を防ぐことが可能です。それらに加え、結婚後や育児中・介護中もテレワークで働きやすい企業として認知されれば、入社を希望する人材の増加が見込めるだけでなく、企業イメージの向上も図れます。

従業員のメリット:生産性向上

従業員の生産性においても、テレワークにはメリットがあります。

たとえばテレワーク勤務となり出社の必要がなくなれば、通勤の時間と手間を省くことができるため、空いた時間を自己啓発や業務の準備、家族のケアなどに充てられます。毎日満員電車に乗ることや、交通渋滞のなか車で通勤することのストレスからも解放されることでしょう。
また従業員が自分自身のペースで集中して働けることで、作業効率の向上も期待できます。たとえば営業職であれば、「午前中は客先訪問、午後はモバイル勤務で会社へ報告、その後次の客先へ行った後に直帰」というような業務も可能です。

従業員のメリット:ワーク・ライフ・バランス向上

家族の育児や介護を抱えている人も、テレワークによって育児や介護の時間を確保できます。小さな子どもや要介護者がいるなか仕事をすることは容易ではありませんが、保育園や病院への送迎や万が一のときにすぐに駆け付けられることの安心感は大きいものです。

また従業員自身が病気や怪我で出社が困難である場合も、体調を考慮しながらテレワークで働くことが可能です。病気や怪我の具合によっては離職を視野に入れることも起こり得ますが、少しでも仕事を行えることで収入面での不安も解消されることでしょう。

テレワーク導入・運用時のシステム的な課題

テレワークには多くのメリットがありますが、導入や運用には情報システムとセキュリティに関する課題が伴います。それに加えて、従業員がネットワーク環境をはじめとする自身の作業環境を確保する必要も出てきます。

従業員の作業環境をどのように用意するのか

テレワークで従業員の生産性向上を図ろうとすれば、社内にいるときと同じ業務環境が必要となります。

従業員が普段から使っている端末を持ち帰って使用するのか、それとも仮想デスクトップなど新しい手段を導入するのか、また従業員の自宅にネットワーク環境があるか、なければ会社として補助するかどうかなど、さまざまな検討事項に伴い、従業員の作業場所の確認や機器調達が必要となってきます。

端末やネットワーク環境といった物理的な要素だけでなく、就業環境に即してテレワークに従事する際の心構えやルールを従業員に周知徹底することも必要です。

企業の情報漏えいの可能性への対策

テレワークにおいては、情報管理におけるリスク対策を行うことも重要です。

たとえば従業員が端末を自宅に持ち帰って作業する場合、端末の盗難・紛失の可能性は否めません。仮に、その端末に機密情報や顧客情報が含まれていれば、情報が漏えいする恐れがあります。また、セキュリティ対策が施されていないネットワーク環境下で社内システムへアクセスすることにも危険が伴います

ひとたび情報漏えいが起これば、企業の技術やノウハウが流出するとともに、企業への信頼も失われることで多大な損害を被ることになります。その一方でサイバー攻撃に対応するには、情報セキュリティに関する専門的な知識が必要です。

テレワークの導入にあたっては、従業員の作業環境の最適化とともに、情報セキュリティ対策が重要な課題となります。このようなテレワークの課題を解決する方法はいくつか存在します。4つの対策を、メリット・デメリットとともにご紹介します。

テレワーク対策その1:リモートデスクトップ

リモートデスクトップは手元の端末からインターネットを経由し、オフィスにある端末に対して遠隔操作する方式です。Windowsには標準でソフトウェアが備わっており、導入のハードルが低い点が特徴です。

メリット:オフィス内と同じ環境で作業できる

オフィスの端末が処理を行うため、業務に必要なソフトウェアが手元の端末にインストールされていなくても作業することが可能です。また基本的には手元の端末の性能に関わらず、オフィス内の端末の性能が高ければ問題なく操作できます。

メリット:利用者の端末にデータを保存しない

作業内容のデータは、リモートデスクトップで操作しているオフィスの端末に保存されることになります。手元の端末にデータが保存されないため、情報漏えいのリスクが低減されます。

デメリット:トラブル時は出社して端末を確認する必要がある

もしオフィス内の端末にアクセスできないなどのトラブルが起こり、遠隔地では対処できないと判断した場合は、オフィスへ出社して原因を探らなければなりません。オフィス内の端末の電源をONにしていたのに、オフィスの停電で電源がOFFになっていてアクセスできなかったというケースもあります。休日や出勤停止でオフィスが閉鎖されている場合は、業務自体が困難になるかもしれません。

デメリット:高速なネットワーク回線でないと業務に支障をきたす

自宅やカフェなどのネットワーク回線が遅い場合や、多くの従業員からのアクセスを同時に受ける企業側のネットワーク環境の性能が乏しい場合、業務内容によっては操作がしづらくなることがあります。必要でない機能をOFFにして通信データを減らすなどの設定である程度ネットワーク遅延を回避することもできますが、高速なネットワーク回線があればより根本的な解決策となります。

テレワーク対策その2:SaaS

業務で利用するシステムとしてSaaSといったクラウド上のサービスやアプリケーションを使用する方法もあります。元々の業務でSaaS を使っているのであれば、社内外で同様の作業ができます。

メリット:必ずしも高速なネットワーク回線でなくて良い

もちろんネットワーク回線が高速であれば、SaaSへのアクセス・レスポンスは早くなります。ただリモートデスクトップや仮想デスクトップ(後述)と比較すると回線速度による業務への影響は限定的であり、高速なネットワーク回線は必須とまではならないでしょう。

メリット:管理・運用コストが軽減できる

サーバーなどの設備、OSのバージョンアップ、セキュリティ対策など管理・運用は、クラウドサービスの事業者が行っています。自社で機器を用意しなくて済むため、情報システム部門の管理コストが軽減されます。

デメリット:インターネットを使うため、第三者によるアクセスの可能性がある

クラウドサービス事業者側でセキュリティ対策が行われているものの、インターネットを経由してサービスを使っている以上は、第三者によるアクセスの可能性はゼロではありません。またクラウド上の情報管理はユーザの責任であり、適切にアクセス権限を設定しておかないと誰でも機密情報が見られる状態になってしまいます

したがって事前にクラウドサービス事業者のセキュリティ対策や体制などを調査しておくことが求められます。またクラウドに保存する情報の選定や、アクセス権限の適切な設定も必要です。

テレワーク対策その3:仮想デスクトップ(VDI)

仮想デスクトップ(VDI)とは、サーバー上にデスクトップ環境を仮想化させたものです。利用者はサーバーにアクセスし、サーバーに用意されたデスクトップ環境を呼び出して使用することになります。

メリット:情報システム管理者がセキュリティ対策を一元化できる

OSやソフトウェアのインストール・アップデートは、サーバー内のデスクトップ環境すべてに適用させることができます。それらの作業は情報システム管理者が一手に担えるため、端末1台1台にセキュリティ対策を施す場合と比べて、対処が容易になります。

メリット:利用者の端末にデータを保存しない

仮想デスクトップは利用者の端末に画面が転送されますが、実際の作業はサーバー上で行われます。作業データも利用者の端末ではなくサーバー内に保存されるため、ヒューマンエラーなどによる情報漏えいのリスクが軽減します。

デメリット:環境を構築する必要がある

仮想デスクトップ環境構築には、利用者の人数や使用するソフトウェアなどを調査し、適切なスペックを持つサーバーを構築しなければなりません。企業の規模によっては、環境構築に時間がかかる場合があります。

デメリット:利用中にアクセスが遅くなる場合がある

企業側のサーバーやリモートデスクトップと同様に企業側のネットワークの性能によって、レスポンスが遅くなる場合があります。特に始業時などのアクセスが集中する時間帯は、一部の利用者が業務を行えなくなる恐れもあります。一方でサーバーの性能向上は容易には行えず、コストと時間がかかります。

テレワーク対策その4:DaaS

DaaS(Desktop as a Service)は、仮想デスクトップ(VDI)がクラウドサービスとして提供されるものです。DaaSの代表的な製品としてはAWSの「WorkSpaces」 、Microsoftの「Windows Virtual Desktop(WVD)」などが挙げられます。

DaaSは環境によって大まかに、下記の3つに分けられます。

  • プライベートクラウドDaaS……企業独自のクラウド環境で行うDaaS
  • バーチャルクラウドDaaS……IaaSやSaaSで構築されたクラウド環境で行うDaaS
  • パブリッククラウドDaaS……不特定多数の企業と同じ環境を使うDaaS

メリット:社外からでも社内のシステム情報にアクセスできる

ネットワークの要件が合えば、社外から社内の情報システムにアクセスできます。またリソースを柔軟に増減できるので、テレワークをする利用者の数が増えても容易に対応が可能です。

メリット:管理・運用コストが削減できる

DaaSはクラウド上にサーバーを構築するため、自社で機器を用意する必要はありません。サーバーの管理・運用もクラウドサービスを提供する事業者が担当することになり、管理コストを削減できます。

メリット:セキュリティ面が優れている

セキュリティ対策や障害対応もクラウドサービス側の管轄です。多様化するサイバー攻撃に対応するには専門知識と豊富な経験が必要になりますが、それらをクラウドサービス側に一任できます。ただしクラウドに重要な個人情報や機密情報を置く場合には、事業者との細かい調整が必要となります。

メリット:導入まで時間がかかる可能性がある

プライベートクラウドDaaSの場合は、クラウド上にサーバーを構築するなど、導入までに時間がかかる可能性があります。専門知識を有する技術者が必要となるため、社内に技術者が不足している場合はDaaSの導入支援を行っている企業と共に導入を検討するのが現実的です。その場合にDaaSを選ぶなら、導入・運用が比較的容易なパブリッククラウドDaaSが望ましいでしょう。

テレワークの課題対策におすすめのサービス

このようにテレワーク導入にまつわる課題の対策には、さまざまなものがあります。主なパブリッククラウドはDaaSを提供していますが、ここでは MicrosoftのDaaSである「Windows Virtual Desktop(WVD)」をご紹介します。WVDには、下記のようなメリットがあります。

WVDのメリット:低コスト

WVDを利用するためには、Microsoft Azureのストレージや仮想マシンといった「ユーザー管理プレーン」と呼ばれる機能の利用料金が必要です。ほかにライセンスが必要ですが、OSのライセンスを既に保持していれば追加費用は不要となります。したがって他のDaaS製品を使用する場合と比べて低コストとなることが見込めます。

WVDのメリット:Microsoftならではの導入しやすさ

仮想デスクトップ(VDI)であれば、設計から開発まで長い期間を要します。一方でWVDの場合はAzure Portalの画面で、既存のデスクトップ環境を移行させるといったように、比較的容易に導入することが可能です。

WVDの基本情報

WVDについての詳しい情報は、以下の記事をご参照ください。

Windows Virtual Desktop(WVD)とは?今こそ知りたい基本情報

まとめ

今後も企業が、新たに災害や感染症などの影響を受ける可能性は大いにあり、またそれらの影響が長引くことも否めません。非常事態においても円滑に業務が継続でき、企業が存続できるかどうかは、テレワークを適切に導入できているかにかかっています。
もしまだテレワークを導入していない場合は、国の制度やテレワーク導入支援をしている企業の手も借りながら、具体的に対処方法を考えていきましょう。

また、WVD を利用することで、仮想デスクトップ導入時の課題をどう解決するのか、具体的な構成例とその構成のメリットを解説した記事もあわせてご参照ください。

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