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イベント駆動型開発とは?サーバーレスで実現する迅速な処理と低コスト運用
クラウド技術の進化により、システム構築の手法も大きく変わりつつあります。その中でも注目されているのが「 FaaS ( Function as a Service )」と呼ばれるサービスモデルです。アプリケーション開発者は、インフラの構築や管理から解放され、関数単位でコードを書くだけで即座に処理を実行できる仕組みです。
本記事では、 FaaS の基本的な概念や特徴、他のクラウドモデルとの違いを整理したうえで、 Microsoft Azure が提供する「 Azure Functions 」を中心に、導入メリットや代表的なユースケース、活用上の注意点、他の Azure サービスとの連携可能性などについて体系的に解説します。
1. FaaS(Function as a Service)とは
FaaS ( Function as a Service )とは、サーバーが不要なクラウド実行モデル、いわゆる「サーバーレス」を実現する仕組みのひとつで、アプリケーションの中で必要な処理を「関数」という単位で書くだけで、クラウド上で自動的に動かすことができる仕組みです。
処理が必要になったときだけ関数が実行され、終わればリソースは自動で解放されるため、実行環境を常に動かす必要がなく、管理の手間やコストを軽減できます。開発者はプログラムのロジックに集中でき、効率的にシステム開発を行うことができます。
他のクラウドモデル(IaaS、CaaS、PaaS、SaaS)との違い
FaaS は PaaS と SaaS の中間的な位置付けのモデルです。「関数の中身を書く」だけでアプリケーションを実行できる点が大きな特徴です。 IaaS は仮想マシンなどのインフラ環境を提供し、 CaaS は IaaS に加えてコンテナ実行基盤を提供します。 PaaS はアプリケーションの実行環境を提供しますが、ある程度の構成や設定が必要です。 SaaS は完成されたアプリケーションをそのまま利用できます。
FaaSが実現するイベント駆動型アーキテクチャの概要

図版出典:Microsoft公式サイト
FaaS は「イベントが起きたときに動く」仕組みになっています。たとえば、ファイルがアップロードされたとき、スケジュールに沿って特定の時間に処理したいとき、 Web サイトで何かリクエストがあったときなどが「イベント」にあたります。こうしたイベントをきっかけに、関数が自動で実行されます。無駄なく処理でき、スピードも速いのが特徴です。
主なFaaS
クラウド事業者が提供する主要な FaaS は以下の通りです。
- Azure Functions ( Microsoft Azure )
- AWS Lambda ( Amazon Web Services )
- Cloud Functions ( Google Cloud Platform )
2. FaaS導入のメリット
FaaS は、コードを書くだけで処理を実行できる手軽さが魅力ですが、それだけではありません。開発や運用の観点でも大きなメリットがあります。
インフラ管理が不要な開発環境
FaaS ではサーバーの構築や OS の管理が不要で、クラウド側が請け負います。そのため、開発者はアプリケーションのロジックに集中できます。運用負荷が減り、少人数のチームでも効率的な開発体制を整えられるのが特徴です。
スケーラビリティと高可用性の実現
FaaS は、アクセス数に応じて自動的にリソースを増減するため、どんな状況でも安定したパフォーマンスを維持できます。また、 Azure のようなクラウドサービス上で動作するため、サーバー障害時も自動で別のインスタンスに切り替わり、高い可用性が確保されます。
コストの最適化
FaaS は「使った分だけ」課金されます。待機(アイドル)状態の時間には料金がかからず、必要なタイミングだけ処理を実行する仕組みであるため、リソースの無駄が発生しにくいといえます。短時間で終わる定期処理やイベント駆動のバッチ処理には特に効果的です。
アプリケーション開発とリリース速度の向上
関数単位で小さく開発できるため、機能ごとに独立してテスト・リリースがしやすいのもメリットです。継続的インテグレーションや継続的デリバリー( CI / CD )との相性も良く、スピーディーな更新が可能になります。影響範囲も限定されるため、安全に機能追加や修正を行えるのも利点です。
3. FaaSの主なユースケースと注意点
FaaS は、処理を必要なときにだけ実行するという特性から、さまざまな業務に活用できます。ただし、全ての用途に最適というわけではなく、いくつかの注意点もあります。
FaaSの主なユースケース
もっとも一般的な使い方は「バックエンド API 処理」で、ユーザーのリクエストに応じてデータ取得や処理を関数単位で実行する方式です。さらに「定期バッチ処理」も FaaS と相性が良く、日次集計やファイル変換などの作業を自動化できます。
また、 FaaS はイベントをトリガーに動作するため、ファイルのアップロードや IoT センサーの通知をきっかけにした業務自動化にも活用されます。即時性のある処理が必要な業務に適しています。
FaaS導入時の注意点
FaaS には「コールドスタート」と呼ばれる遅延のリスクがあります。関数がしばらく使われていないと、起動時に数秒かかることがあり、リアルタイム性が求められる処理では注意が必要です。
また、 FaaS は長時間の処理に向いておらず、ログの取得やエラー解析も専用ツールの活用が前提になります。 Azure では Application Insights などを使えば、こうした課題にも対応しやすくなります。
4. AzureにおけるFaaSサービス
Microsoft Azure では「 Azure Functions 」が FaaS に対応する代表的なサービスであり、さまざまな用途で利用されています。 Azure Functions は豊富なトリガーと Microsoft 365 や Teams など、 Microsoft の他サービスとの連携性に優れており、柔軟で実践的なアプリケーション実装が可能な点が特徴です。
Azure Functionsの概要

図版出典:Microsoft公式サイト
Azure Functions は、イベントに応じて関数を実行するサーバーレスの実行環境です。 HTTP リクエスト、タイマー、 Blob Storage へのファイルアップロード、メッセージキューの受信など、さまざまなトリガーに対応しています。対応言語も C# 、 JavaScript 、 Python 、 PowerShell などが用意されており、チームのスキルに応じた開発が可能です。
Azure Logic Appsとの比較と連携
「 Azure Logic Apps 」は、コードを書かずにワークフローを組めるノーコードツールであり、定型的な業務自動化に適しています。一方、 Azure Functions はロジックを自由に記述できるため、柔軟な処理が求められる場面に向いています。 Logic Apps から Azure Functions を呼び出すなど両者は連携できるため、処理の流れに応じて適材適所で使い分けると効果的です。
他のAzureサービスとの統合によるメリット
Azure Functions は、 Event Grid や Blob Storage といった他の Azure サービスとの統合も容易です。たとえば、ファイルが保存されたタイミングで自動的に関数を実行するといった連携が可能です。関数の利用頻度を高めてコールドスタート問題を緩和したり、ログ監視の自動化なども実装できます。
5. まとめ
FaaS は、サーバーの管理を気にせず、必要なときだけ処理を実行できる柔軟なサービスモデルです。とくに Azure Functions は、豊富なトリガー対応や他サービスとの統合性の高さにより、実践的な業務にも適しています。コスト効率や開発スピードの面でも優れており、クラウド活用を加速させる手段として注目されています。
クラウドシフトを進めたいが、何から始めるべきかわからないという企業には、 Rworks の Azure 導入支援サービスが有効です。要件整理から構築・運用まで幅広くサポートしてくれるため、 FaaS を含む Azure 活用の第一歩として、ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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