Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

冗長化とは?構成パターンやAzureでの実現方法をわかりやすく解説

Category: 入門編

2025.08.16

障害・災害対策に不可欠な冗長化の基本とAzure設計の実践ステップ

システムにおける「冗長化」とは、障害が発生しても業務を継続できるように、あらかじめ予備の構成を用意しておく設計手法です。ハードウェア障害、通信断、災害など、様々なリスクの備えとして不可欠な考え方になります。

現在では、クラウド上でも多様な冗長化手法が提供されており、自社の要件に応じた柔軟な設計が可能になってきています。

本記事では、冗長化の基本的な考え方から、クラウド活用の代表例である Azure における冗長構成パターン、設計の進め方までを解説し、自社に適した構成を検討するまでの視点を提供します。

1. 冗長化とは

冗長化とは、システム障害やサイバー攻撃、自然災害などの突発的なトラブルが発生した際にも業務を継続できるよう、あらかじめ代替となるシステムや設備を用意しておく設計手法です。

冗長化は、データベースやストレージ、ネットワークなど多様な対象に適用できますが、本章では特にサーバーの冗長化に着目し、そのメリット・デメリットや、オンプレミス・クラウド・ハイブリッドにおける実装形態の違いについて解説していきます。

冗長化のメリット

冗長化のメリットとして、以下の 2 つが挙げられます。

  • 災害や障害発生時にも、待機系や代替経路への自動切り替えにより、サービスの停止を回避できます。これにより、業務の中断を最小限に抑え、売上損失や信頼低下を防ぐことができます。
  • 冗長構成をとることで、片系を停止してもサービスを継続できるため、システム全体を止めることなくソフトウェアの更新や設定変更を計画的に進めやすくなり、運用の柔軟性が高まります。

冗長化のデメリット

冗長化のデメリットとして、以下の 2 つが挙げられます。

  • 本番システムと同等の性能を持つ予備システムを用意する必要があるため、初期投資や運用にかかるコストが増大します。
  • 予備システムの維持や更新など、運用保守の面でも追加の労力が発生します。

冗長化構成は、コストや労力がかかるものの、障害やトラブルへの備えとして、安定稼働を実現するための基本的かつ不可欠な対策です。

代表的な構成

代表的な冗長化構成として、以下の 2 つが挙げられます。

構成名 説明
アクティブ・スタンバイ メインシステム(アクティブ)が稼働し、障害発生時に切り替える待機系(スタンバイ)で構成される。
アクティブ・アクティブ 複数のシステムが同時に稼働し、互いに負荷を分散する構成。高可用性を実現しやすいのが特徴。

これらの構成を支えるデータベースレイヤーでは、目的に応じて、マスター・スレーブ構成( 1 台のシステムが書き込みを担い、他のシステムが複製・読み取りを行う)や、マルチマスター構成(複数システムが書き込みを担い、相互に同期を行う)などのレプリケーション手法が採用されることがあります。

どの構成が自社に適しているかを見極め、要件に応じて導入することが重要です。

実装形態(オンプレミス/クラウド/ハイブリッド)

冗長化の実装は、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドといった構成の違いによって、実現方法が異なります。以下では、それぞれの特徴とそれぞれのメリット・デメリットを整理します。

オンプレミス クラウド ハイブリッド
特徴 自社内で物理サーバやネットワークを複数用意し、障害発生時の切り替えによって業務継続化を図る Azureなどのクラウドベンダーが提供するリージョンや可用性ゾーンを活用し、地理的に分散した冗長構成を実現する オンプレミスとクラウドを組み合わせる構成。主要処理はオンプレミスで行い、クラウドをフェイルオーバー先やバックアップ先として活用することで、冗長性や災害対策を強化できる。
メリット
  • 内部統制がしやすい
  • 自社要件に合わせた柔軟な設計が可能
  • 初期コストを抑えて開始できる
  • 準備や管理の負担が少なく、高可用性を手軽に実現できる
  • 既存資産を活用しつつ柔軟な拡張が可能
  • クラウド連携でDRやピーク対応が容易
デメリット
  • 初期投資が大きい
  • 運用管理の負担が大きい
  • 冗長性を高めると利用料金が増加
  • クラウド特有の運用知識が必要
  • 両環境にまたがるネットワーク設計・管理が複雑になりやすい
  • 両環境に精通した人材が必要

2. Azureの冗長構成のパターンとそれぞれの活用シーン

近年では、システムの拡張性や可用性の確保、コスト効率の向上といった理由から、クラウドやハイブリッド構成を活用した柔軟な冗長化設計が広まりつつあります。本章では、クラウド環境の代表例として、 Microsoft Azure における冗長構成のパターンを解説します。

Azure内の冗長構成

Azureには、可用性を確保するための複数の冗長構成が用意されています。たとえば、同一データセンター内で物理ホストを分ける「可用性セット」、同一リージョン内で複数のデータセンターに分散配置する「可用性ゾーン」、地理的に離れたリージョンを組み合わせる「リージョンペア」が代表的な手法になります。

日本では、東日本リージョンと西日本リージョンがリージョンペアとして設計されています。これらを活用し、バックアップやフェイルオーバー先をあらかじめ構成することで、大規模災害時にも業務継続性を高めることが可能です。

ハイブリッド構成

オンプレミスでメインシステムを稼働させ、 Azure をバックアップ先や障害発生時の待機環境として活用する構成です。

たとえば、オンプレミスの障害時には Azure 上のバックアップ環境へフェイルオーバーしてサービスを継続できるほか、通常時でもバックアップやアーカイブ用途としてクラウドを併用することで、運用の柔軟性と耐障害性を高められます。

3. Azureにおける冗長化設計の5つのステップ

Azureで冗長化を実現するには、大きく 5 つのステップに基づいて検討・設計するのが効果的です。

ステップ1:要件の明確化

目標とする稼働率や許容可能な復旧時間( RTO/RPO )など、自社システムの可用性要件を定義します。

ステップ2:構成要素の選定

要件に応じて、リージョンペアや可用性ゾーンの活用に加え、 Azure Storage で提供される複数の冗長保存オプションを活用し、障害時にもデータを保護できるようにします。さらに、 Azure LoadBalancer を使用したトラフィック分散などを組み合わせてアーキテクチャを設計します。

ステップ3:バックアップの設計

障害発生時に備え、 Azure Backup などを活用して定期的にバックアップを取得し、迅速なリカバリを実現する構成とします。

ステップ4:運用設計とテスト

本番リリース前に、障害シナリオを想定した運用テストやフェイルオーバーテストを実施し、手順書や緊急時の連絡体制も整備します。

ステップ5:本番運用と改善

運用開始後も監視・ログ分析を継続し、構成や体制を定期的に見直して、信頼性や可用性の向上につなげます。

4. まとめ

本記事では、冗長化の代表的な構成パターンや、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドにおける実装形態の違いについて解説しました。

Azureなどのクラウドを活用することで、管理コストを抑えながら、障害時にも安心して運用できる柔軟なシステム構成を実現できます。まずは、要件を整理したうえで要件に応じた最適な構成を選定し、実際の運用を見据えて検討することが重要です。

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