本コラムは全4回シリーズです。
システム運用改善の考え方や伴走型支援について解説します。
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目次
改善が回り始める組織になるための第一歩とは
「障害対応の再発防止や運用の標準化を検討しているが、思うように改善活動が進まない」このような状況に心当たりのあるインフラ担当者も多いのではないでしょうか。実際、運用改善の必要性を認識していても、目の前の障害対応や運用維持が優先され、改善施策の検討や実行まで手が回らないケースは少なくありません。
また、改善を進めるための知見やノウハウが不足していたり、何から着手すべきか判断できなかったりして、課題を認識しながらも行動に移せないケースもあるでしょう。障害対応の優先によって改善活動が先送りされ、改善が進まないためにさらに運用負荷が増えるという、負のループに陥っている現場も多く見られます。
本記事では、この「負のループ」の構造を整理するとともに、改善活動を阻害する主な要因やその影響について解説します。
1. 改善活動が進まない組織で起きている「負のループ」
運用改善が進まない組織では、改善活動の着手を阻む「負のループ」が形成されている場合があります。まずは、多くの運用現場で見られる代表的なパターンを整理します。
①日々の運用維持や障害対応業務に追われる
システム運用においては、障害対応や問い合わせ、定常運用など、優先度の高い業務が日々発生します。特に少人数体制の組織では、目の前の対応をこなすだけで一日が終わってしまうケースも珍しくありません。
②改善活動や根本対策が後回しになる
障害が発生した際、本来であれば原因分析や再発防止策の検討まで実施するのが望ましい姿です。しかし、サービス復旧や応急措置の完了後、次々に発生するほかの定常業務に追われるため、根本的な改善活動には時間を割けず先送りされる傾向があります。
③その場しのぎの属人的な対応が増え、運用品質の低下や対応遅延が発生する
改善が進まない状態が続くと場当たり的な対処が増加し、担当者個人の経験や知識に依存した運用が常態化していきます。手順書の未整備や運用ルールの形骸化が進み、「この対応は○○さんしかわからない」といった状況も発生しやすいでしょう。その結果、対応品質にばらつきが生じたり、障害発生時の初動対応が遅れたりするリスクが高まります。
④事後対応に追われ、事前防止の観点で改善を進める余裕がなくなる
原因分析や再発防止策が十分に実施されない状態では、同様の障害や問い合わせが繰り返し発生しやすくなります。
結果として、その都度対応に時間やリソースが消費され、再び「日々の運用維持や障害対応に追われる状態(①)」へと逆戻りしてしまいます。こうして、改善活動が一向に進まない負のループが継続していくのです。
2. 改善が止まる5つのボトルネック
改善活動が進まない理由として、「人手が足りない」「日々の業務が忙しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際には複数の要因が重なり合い、改善活動そのものが進みにくい状態に陥っているケースもあります。ここでは、運用改善が止まりやすい主なボトルネックを整理します。
①改善活動に割けるリソースが不足している
運用改善には、課題整理や原因分析、改善策の検討、実施後の検証など、継続的な工数が必要となります。しかし多くの運用現場は、日々の稼働維持に必要な人員のみで体制が組まれており、改善専任の担当者を置けないのが実態です。
そのため、改善活動は日常業務の合間に実施せざるを得ず、優先度の高い対応に押されて後回しになりがちです。特に一部のメンバーへ業務が集中している環境では、改善へ向ける余力を確保するのは困難でしょう。
結果として、改善の必要性を認識していながらも継続的な取り組みには至らず、「改善したいが着手できない状態」が常態化しやすくなります。
②改善活動を推進する知見やノウハウが社内にない
運用改善を進めるためには、課題の特定や原因分析だけでなく、改善施策の立案や優先順位付けに関する知見も必要です。しかし、日々の運用維持を中心に構成された体制では、改善活動を主導した経験を持つ人材が不足しているケースも少なくありません。
適切なノウハウがないと、課題を認識していても「何を、どのように改善すべきか」「改善施策の妥当性をどう判断するか」を整理できず、具体的な計画へ落とし込めないまま議論だけで終わる場合があります。その結果、解決の必要性を感じつつも具体的な一歩を踏み出せないまま、同じ課題を抱えて時間だけが経過してしまいます。
③改善の優先順位が決まらず着手できない
運用現場には、手順書整備や監視設計の見直し、構成管理の改善など、多くの改善候補が存在します。しかし、限られた時間や人員ですべてに取り組むことは難しいでしょう。そのため「何から着手すべきか」を判断できず、改善活動自体が停滞する場合もあります。
また、関係者ごとに優先順位の認識が異なる場合、改善方針の合意形成にも時間を要します。結果として、改善の必要性は共有されていても具体的な行動に移せず、課題が先送りされやすくなるのです。
④改善効果を測定する基準が曖昧になっている
改善活動を継続するためには、取り組みによって何が変わったのかを把握する必要があります。しかし、障害件数の減少や対応時間の短縮、運用工数の削減といった評価指標が整理されていない場合、改善効果を客観的に判断するのは困難です。
さらに、効果を可視化できなければ改善活動の成果を関係者へ説明しにくく、継続的な投資や協力を得ることも難しくなるでしょう。施策を実施しても成果が見えない状態が続くと、モチベーションが低下し、次第に改善活動そのものが形骸化してしまいます。
⑤改善した内容が標準化・ナレッジ化されず個人知識にとどまる
改善活動によって課題を解消できたとしても、その内容が組織全体の標準化やナレッジ共有につながらなければ、根本的な解決とはいえません。特定の担当者だけが改善内容や判断基準を理解している状態では、異動や退職、担当変更が発生した際に貴重な知見が失われてしまうからです。
また、改善内容が手順書や運用ルールへ反映されていない場合、同じトラブルが再発するリスクも高まります。結果として、改善活動を実施しても組織に定着せず、従来の非効率な運用が継続されることになりかねません。
これら 5 つのボトルネックはそれぞれ独立して見えるかもしれませんが、実際には密接に連鎖しています。そのため、「人を増やす」「時間を確保する」といった個別の対処だけでは、本質的な改善が進まないケースがほとんどです。
重要なのは、この 5 つが負の連鎖を引き起こしている構造そのものを認識することでしょう。一部の課題だけを切り取るのではなく、改善活動を継続できる組織的な仕組みとして整えるアプローチが求められます。
3. 改善活動が回り始めると何が変わるのか?
改善活動を継続できる組織では、障害対応に追われる状態から徐々に脱却し、運用品質の向上と事業成長の両立を目指しやすくなります。ここでは、改善活動が定着した組織で期待できる変化を紹介します。
「あの人がいないと回らない」状態からの脱却|安定した運用体制を実現する
運用ルールや手順、技術判断の背景が整理されることで、特定の担当者への依存を軽減できます。担当者の異動や退職が発生した場合でも、知識やノウハウを引き継ぎやすくなり、高い運用品質を維持可能です。
こうした環境を整備できれば人員変更の影響を受けにくくなり、継続的かつ安定した運用体制の構築につながるでしょう。
障害対応に追われる状態からの脱却|改善活動を継続できる体制を実現する
再発防止や自動化、運用フローの見直しが進むことで、同じような障害対応や手作業を繰り返す場面を減らせます。改善活動を継続できる体制が整えば、日々の突発業務に振り回されるシチュエーションも減少するはずです。
また、原因分析や運用ルールの整理はトラブルの再発防止や未然防止にも直結し、障害件数そのものを抑えやすくなります。万が一の障害発生時も、対応手順や判断基準が明確であれば、調査や復旧作業をスムーズに進められるでしょう。
さらに、夜間や休日の緊急対応が発生する頻度を抑えられるため、担当者の負荷軽減やモチベーション維持にもつながります。
「守りの運用」で手一杯な状態からの脱却|事業成長へリソースを振り向ける
運用維持に必要な工数を抑えられることで、本来取り組むべき施策へ時間を確保しやすくなります。たとえば、クラウド最適化や自動化、新サービスに向けた基盤整備など、中長期的な施策にも着手しやすくなるでしょう。
これらは単なる運用の効率化にとどまらず、サービス成長や事業推進を支える体制づくりに貢献します。
AI活用・自動化が進まない状態からの脱却|標準化された運用基盤を実現する
運用ルールや手順が整理されていない状態では、自動化や AI 活用を進めようとしても対象業務や判断基準が曖昧になります。これらは「何をどの条件で処理するか」が明確に定義されていることが前提であるため、標準化されていない運用では効果を発揮しにくいのです。
一方で、改善活動を通じて運用フローや対応手順の標準化が進めば、自動化すべき業務や、ナレッジとして活用すべき情報を整理できます。標準化された運用基盤は生成 AI や運用自動化ツールとも親和性が高く、効率化の効果を得やすいでしょう。
つまり改善活動は、単に運用品質を高めるだけでなく、将来的な AI 活用や運用自動化を進めるための基盤づくりでもあるのです。
4. 改善に向けた第一歩!まず確認したい5つの視点
改善活動を阻害する要因を解消するだけでは、継続的な成果の実現は難しいでしょう。重要なのは、改善活動を一時的な取り組みで終わらせず、組織として継続できる状態をつくり出す視点です。ここでは、そのために必要な 5 つのアプローチを紹介します。
①改善活動を個人任せにしない
運用改善が進まない組織では、改善活動が一部の担当者の経験や意欲に依存しているケースも少なくありません。継続的な改善を実現するためには、個人の自主性に委ねるのではなく、組織として推進できる仕組みを整えることが重要です。
たとえば、次のような取り組みが考えられます。
- 改善テーマごとの担当者を明確にする
- 改善状況を定期的に確認する場を設ける
- チーム全体で課題を共有する
改善活動の責任や役割が曖昧なままでは、日々の業務に埋もれてしまいがちです。そのため「誰が」「何を」「いつまでに」進めるのかを明確にしましょう。
②改善活動を「特別な取り組み」にしない
改善活動を「余裕があるときに実施するもの」として扱うと、障害対応や問い合わせ対応が優先され、先送りされやすくなります。改善の定着には、日々の通常業務の延長線上に活動を組み込む工夫が必要です。
たとえば、次のように日常業務のなかで継続できる仕組みを設ける方法があります。
- 障害対応後の振り返りを必ず実施する
- 月次で運用課題を整理する時間を確保する
- 改善テーマを定例会議で確認する
改善活動を特別なプロジェクトとして扱うのではなく、運用業務の一部として組み込むことで、継続しやすくなるでしょう。
③改善サイクルを組織に定着させる第一歩として小さく始める
改善活動というと、大規模な運用の見直しやドキュメントの全面刷新、新規ツールの導入をイメージするかもしれません。しかし、最初から対象を広げすぎると着手のハードルが上がり、結果として頓挫してしまうリスクが高まります。
そのため、まずは障害が頻発しているシステムや問い合わせ件数が多い運用、属人化している手順など、優先度の高い領域から着手することが重要です。テーマを絞ることで成果を確認しやすくなり、次の改善活動にも取り組みやすくなります。完璧を目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねる視点が継続の鍵といえるでしょう。
④改善の効果を可視化し、関係者と共有する
改善活動を形骸化させないためには、「改善によって何が変わったのか」を関係者全員が理解できる状態をつくる必要があります。障害件数や対応時間、運用工数などを継続的に記録し、改善施策の効果を把握できるようにしましょう。
改善前後の変化を数値で明示できれば、周囲からの理解や協力も得やすくなります。運用改善は成果が見えにくい領域だからこそ、定期的に効果を振り返り、チーム内や関係部門と共有することが重要です。
⑤改善活動を支える外部の知見を活用する
運用現場だけで改善活動を継続することが難しい場合、課題の整理や標準化の推進、運用状況の可視化を支援できる外部パートナーの活用も有効な選択肢です。特に自社だけでは優先順位を決められない場合や、改善施策の妥当性を判断できない場合は、第三者の視点を取り入れることで前に進みやすくなります。
ここで重要なのは作業を委託することではなく、自社に改善サイクルが定着する体制を構築することです。そのため、運用作業の代行だけでなく、改善テーマの整理やロードマップ策定まで支援してくれる体制かどうかを事前に確認しておきましょう。
5. まとめ
日々の業務に追われるなかで、運用改善や標準化の取り組みは後回しになりがちです。しかし、その状態を放置すると運用の複雑化や属人化が進行し、運用負荷が増して改善の余裕がますます失われるという負のループに陥ってしまいます。
この悪循環の背景には、単なるリソース不足だけでなく、知見不足や効果測定の難しさなど、複数の要因が存在しています。そのため、なぜ改善活動が進まないのかを構造的に整理し、改善を継続できる組織的な仕組みを整えることが重要です。
Rworks の「 OPS-AID Works 」は、運用業務の代行だけでなく、運用課題の整理や改善テーマの優先順位付け、標準化の推進までを伴走型で支援するサービスです。運用改善を進めたいものの何から着手すべきかわからない場合や、改善活動が継続しないことに課題を感じている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
次回(第3回)は「システム運用改善はどこから始めるべき?属人化と運用負荷を減らす優先順位付けの考え方」を解説します。ぜひご覧ください。

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