Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

VMware Horizonとは?VDIの概要とAzure上での実現方法について解説

Category: 入門編

2025.03.11

働き方改革やDXにも寄与するVDIの最適な導入方法について解説

働き方改革や事業継続性維持の必要性から、場所を選ばずに仕事ができる環境の構築が進んでいます。またそれと同時に、持ち出した端末からの情報漏洩などセキュリティ上の懸念も増えています。

このような場所を選ばない仕事環境と強固なセキュリティを両立するのが、 VDI ソリューション の VMware Horizon です。本記事では VMware Horizon の概要や 導入のメリット、 Azure 上で実現するための方法などを解説します。

1. VMware Horizonとは

VMware Horizon とは、 VMware 社が提供する VDI ( Virtual Desktop Infrastructure :仮想デスクトップインフラストラクチャ)を実現するためのソフトウェアです。

オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなどが選べる柔軟な導入形態が特徴で、企業のIT環境に応じた最適な運用ができます。また可用性の高い仮想化基盤をもち、業務効率化やセキュリティ強化を目的とした仮想デスクトップ環境の構築をサポートします。

VDIとは

VDI とは、サーバー上に仮想化されたデスクトップ環境を構築し、業務で利用する PC などのクライアント端末へ画面を転送する技術です。クライアント側では通常のデスクトップ環境のように手元の画面でキーボードやマウスによる操作ができますが、実際の処理やデータの保存はサーバー側で行われます。

VDI には次のようなメリットがあります。

  • 端末にデータが保存されないため、情報漏洩のリスクを削減できる
  • オフィス以外の場所からでもネットワーク環境さえあれば業務データにアクセスできる
  • OS のアップデートなどのメンテナンスはサーバー側で一括で行えるため、端末の管理業務の負担を減らせる
  • 災害時や緊急時でもインターネット環境があれば業務システムにアクセスできるため、事業の継続性を確保しやすい

上記のように VDI にはメリットが多いですが、どのソリューションを選択するかが重要なポイントになります。 VMware Horizon は、高度な仮想化技術を活用し、企業の業務環境に最適な仮想デスクトップ基盤を提供する代表的な VDI ソリューションです。

2. VMware Horizonのプラットフォーム

VMware Horizon は、 VMware Horizon 8 と VMware Horizon Cloud Service の 2 つのプラットフォームと、これらのプラットフォームと組み合わせて使用する管理製品で構成されています。

VMware Horizon 8 プラットフォーム

VMware Horizon 8 は、仮想デスクトップとアプリケーションを vSphere ベースの環境で提供します。オンプレミスでもクラウドでも展開が可能です。

vSphere とは仮想化プラットフォームを構築するソフトウェア基盤を指します。

VMware Horizon 8 環境では、ユーザーのクライアント端末上の Horizon Client から、セッションを管理する Connection Server を経由して、 Horizon Agent がインストールされた vSphere 上の仮想マシンに接続する構成です。ユーザー認証には Active Directory が用いられます。

Remote Desktop Session Host ( RDSH ) を導入して、仮想デスクトップ全体ではなくアプリケーションのみをユーザーに公開することも可能です。

<VMware Horizon 8 全体図>
VMware Horizon 8 全体図

VMware Horizon Cloud Service プラットフォーム

VMware Horizon Cloud Service は基盤に vSphere を利用せず、ネイティブクラウド環境で仮想デスクトップとアプリケーションを提供します。

VMware Horizon Cloud Service の例として VMware Horizon Cloud on Azure があります。

<VMware Horizon Cloud on Azure 全体図>
VMware Horizon Cloud on Azure 全体図

3. VMware Horizonを構成するコンポーネント

VMware Horizon は、以下のようなコンポーネントで構成されています。

vSphere Desktop(仮想マシン管理)

Horizon 環境の仮想化基盤を提供するハイパーバイザーです。仮想マシンの作成・管理を行い、 Horizon 上の仮想デスクトップを安定して動作させる役割を担います。

vSAN for Horizon(ストレージ仮想化)

Horizon 環境向けに最適化された仮想ストレージです。従来の物理的なストレージを不要にし、サーバーの内蔵ストレージを統合・プール化して効率的に VDI に必要なストレージを提供します。

vRealize Operations for Horizon(パフォーマンス監視)

Horizon 環境のパフォーマンス監視と最適化を行うツールです。 CPU やメモリの使用状況、ユーザーの接続状況、仮想デスクトップのパフォーマンス指標を分析し、リソースの最適な配分をサポートします。

VMware Cloud Foundation for Horizon(統合インフラ管理)

Horizon を含む SDDC ( Software-Defined Data Center )環境を統合管理するプラットフォームです。運用プロセスの自動化や堅牢なセキュリティ機能、スケーラビリティを提供します。

User Environment Manager(ユーザープロファイル管理)

各ユーザーの設定や環境を管理し、ログインする端末や環境に関わらず、一貫したデスクトップ環境を提供するツールです。ユーザーごとにカスタマイズ可能な VDI 環境を実現します。

ThinApp(アプリケーション仮想化)

アプリケーションを仮想化し、 OS 環境に依存しない形で展開できるツールです。アプリをパッケージ化して配布し、互換性の問題を回避します。仮想デスクトップ上でのアプリケーション管理を効率化する目的で活用されます。

App Volumes(動的アプリケーション管理)

仮想デスクトップ環境向けのアプリケーション・ユーザー管理ツールです。アプリケーションを仮想ディスクとして管理し、ユーザーへ迅速に配信します。 VDI 環境のアプリケーション管理を効率化し、アプリのデリバリー時間を短縮します。

Blast Extreme(モバイル用画面転送プロトコル)

モバイル環境に最適化された、デスクトップ配信に用いられるプロトコルです。レスポンスが低下しやすい外出先からのアクセスでも快適な操作性を提供します。CPU 消費が最小限に抑えられているためモバイルデバイスのバッテリー消費が少なく、長時間の利用が可能です。

4. VMware Horizonの特徴とメリット

VMware Horizon の主な特徴とメリットは下記の通りです。

  • ハイブリッド・クラウド環境の簡素化
  • データの保護とコンプライアンスの確保
  • ROI (投資収益率)の向上
  • 高可用性・サービス継続性の確保

ハイブリッド・クラウド環境の簡素化

VMware Horizon は、オンプレミス、クラウド両方に導入可能です。これにより、オンプレミスとクラウドをシームレスに管理でき、ハイブリッド・クラウド環境を簡単に構築できます。

データの保護とコンプライアンスの確保

VDI 化により、端末のデータは全てサーバー側で管理されます。そのためセキュリティが向上し、端末紛失・盗難等により、社内の重要データが外部へ流出するリスクが低減されます。

ROI(投資収益率)の向上

ROI(投資収益率)とは、投資に対してどれだけ利益を上げたのかを知るための指標です。 VMware Horizon により個別に管理していた端末を一元管理できるようになり、端末の管理・運用コストを大幅に削減できます。

高可用性・サービス継続性の確保

仮想マシンに高可用性を提供する VMware HA ( High Availability ) 機能との併用で、物理ホスト障害の際には正常なホストに仮想マシンが自動的に移行されます。また、仮想マシンを稼働させたままで物理ホスト間を移動できる vMotion 機能によりデスクトップを停止させずにメンテナンスを実施することが可能です。障害対応やメンテナンス時の工数削減にも役立ちます。

5. VMware Horizonのユースケース

以下に VMware Horizon のユースケースをいくつか紹介します。

リモートワーク

業務に使用するデスクトップやアプリケーションへ、どのような場所からでも安全にアクセス可能な VDI 環境により、従業員の柔軟な働き方を実現します。

事業継続性の向上

Horizon の導入に加えて、データのバックアップや冗長化、適切なネットワーク設計などの DR ( Disaster Recovery )対策を組み合わせることで、自然災害や大規模事故などの発生時にオフィスが使用不可になっても、普段と変わらない業務環境を維持できます。

Horizon はオフィスが使用不可になった場合でも、別の拠点や自宅から通常の業務環境にアクセス可能です。また、仮想デスクトップ環境を災害に強いデータセンターやクラウド上に配置することで、物理端末に依存せず、安全に業務を継続できます。

セキュリティ強化

Horizon はゼロトラストセキュリティ(「すべてのアクセスを信頼せず、常に検証する」というセキュリティモデル)を採用しています。そのため、 MFA (多要素認証)や SAML 認証、シングルサインオン( SSO )によるアクセス制御を強化できます。

6. VMware HorizonをAzure上で構築するには

VMware Horizon はクラウド環境に対応したサービスですが、 Azure 上で利用するためには 2 つの選択肢があります。それぞれの方法について解説する。

クラウド型のHorizon環境を利用(Horizon Cloud on Microsoft Azure)

先に解説したように、 VMware Horizon はクラウド版も提供されており、この総称が Horizon Cloud です。この中で、 Horizon Cloud on Microsoft Azure は、 Azure 向けに特化した仮想デスクトップ環境を提供するサービスです。

Azure 上で仮想デスクトップ環境を構築し、統合管理や他の Microsoft 製品とのシームレスな連携を実現します。運用負担を軽減し、 VDI 環境の展開や管理を効率化できる仕組みが整えられていることが特徴です。

クラウドネイティブな VDI 環境を構築したい場合や、 VDI 環境をスピーディーに整備したい場合に向いています。

既存のVMware環境を移行(Azure VMware Solution)

<AVSの仕組み>
Azure VMware Solution とは

図版出典:Microsoft公式サイト

Azure VMware Solution ( AVS )は、既存のオンプレミスの VMware 環境を Azure 上へ移行できるサービスです。

オンプレミスの Horizon 環境を変更せずにそのままクラウドへ移行できます。 Horizon を AVS 上に展開することで、従来の管理手法や運用ツールを維持しつつ、 Azure の拡張性や可用性を活用することが可能です。

既存のオンプレミスの Horizon からそのまま Azure へ移行したい場合や、既存の VMware ベースのワークロードを活かしたい企業に向いています。

AVS について詳しくは以下の記事をご覧ください。

7. まとめ

VDI や DaaS は、導入することによりセキュリティの強化やテレワークの実現、管理コストの低減など多くのメリットがあり、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)実現にも寄与する重要な仕組みと言えます。

VDI や DaaS は多くの製品・サービスがありますが、VMware Horizon は柔軟な導入形態や可用性の高さが特徴の信頼性の高いサービスです。 Azure をはじめクラウド環境への導入も可能なため、ぜひご検討ください。

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Tag: VMware Horizon

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