Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure VMware Solution(AVS)とは?メリットと構成、クラウドへの移行方法について解説

Category: 実践編

2022.07.08

Azure VMware Solution による移行のメリットは?シームレスなクラウド移行について解説

従来のオンプレミスに代わり、クラウドを導入する企業が増えています。クラウド化を検討する上で重要なポイントのひとつとして、既存システムのクラウド移行が挙げられます。既存システムになるべく手を加えず、スムーズにクラウド移行するためにはどうすればよいでしょうか。

マイクロソフトのクラウド、Azure が提供している Azure VMware Solution(AVS) は、VMware により仮想化されたシステムをスムーズに Azure へ移行可能としたソリューションです。

本記事では、クラウド移行の考え方と、Azure VMware Solution の概要、メリットについて解説します。

1. クラウドとは

改めてクラウドとはどのようなものか見ていきましょう。まず、クラウドの概要と種類について解説します。

クラウドとは

クラウドとは、ユーザーがインターネットを通じて必要なサービスにアクセスして利用する仕組みのことを指します。ユーザーは自前でサーバーやネットワークなどのIT インフラを用意することなく、必要なときに必要な分だけの CPU やメモリなどのコンピューターリソースやサービスを利用することが可能です。

クラウドの種類

一言でクラウドと言っても、いくつか種類があります。一般的に、クラウドには下記の種類があります。

  • パブリック・クラウド
  • プライベート・クラウド
  • ハイブリッド・クラウド

パブリック・クラウド

パブリック・クラウドとは、法人・個人問わずに利用機会が一般公開されており、利用規約を承諾することで誰でも利用できるクラウドです。サーバーやネットワーク、ストレージなどのリソースを利用者で共有して利用します。非常に高い可用性とスケーラビリティ、システム構築の俊敏性を備えていることがメリットで、代表的なパブリック・クラウドとして、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform などがあります。

プライベート・クラウド

プライベート・クラウドとは、特定の企業や組織が独自に調達して利用するクラウドです。特定の企業などの同一組織に属する部門や個人が利用するクラウドで、クラウドを利用する企業・組織自体または運営を委託された外部組織が運用・管理を行う形態が一般的です。回線やサーバーの設計、サービス要望に柔軟に対応できることと、独自のセキュリティ・ポリシーを適用でき、個人情報などの重要情報をインターネットにアップロードせず自社内に閉じて運用できるといったメリットがあります。

ハイブリッド・クラウド

ハイブリッド・クラウドとは、パブリック・クラウドとプライベート・クラウド(もしくはオンプレミス)を組み合わせて利用する構成です。パブリック・クラウドの特徴である俊敏性とスケーラビリティを持ちながら、インターネットに移行できない重要データは自社内に閉じて運用するといった、パブリックとプライベートの良いとこ取りが可能な構成です。プライベート・クラウド部分はコストが掛かりますが、企業のポリシーに合わせた柔軟な構成を実現することができます。

2. クラウド移行とは

クラウド移行とはどのようなものでしょうか。クラウド移行の目的やメリット、方法ついて解説します。

クラウド移行の目的とメリット

クラウド化の目的は、クラウドの最大のメリットである俊敏性、拡張性を最大限活用し、企業のビジネスの価値を最大化することです。

従来のオンプレミスでは、CPU やメモリなどのコンピューターリソースは時間と手間をかけて調達・構築する必要があるため、簡単には拡張ができませんでした。

クラウドは、管理画面よりマウス操作で簡単にコンピューターリソースを増設することができます。
企業がビジネスを行う上で、クラウドを利用することでサービスの迅速なリリースや改修を可能とし、市場の動向に合わせたビジネスを素早く展開することができます。クラウド移行は DX(デジタル・トランスフォーメーション)への第一歩とも言えます。

クラウド移行の方法

従来のオンプレミスのシステムをクラウド移行するためには、大きく下記のアプローチがあります。2 つの言葉を合わせて「リフト & シフト」と呼ぶこともあります。

  • クラウド・リフト
  • クラウド・シフト

クラウド・リフト

クラウド・リフトとは既存 IT 資産に極力手を加えずにクラウドへ載せ替えることを指します。既存システムの構成を極力変更せずにそのままの構成でパブリック・クラウドへ載せ替えることで、システムの動作に影響を与えず、安全に移行を行うことができます。ただし、既存システムがメインフレームや UNIX など、パブリック・クラウドと親和性の低い構成である場合は、まずパブリック・クラウドと親和性の高い、OS の Linux 化や、仮想化(プライベート・クラウドなど)への載せ替えなどを行い、その後パブリック・クラウドへ載せ替える方法が必要となる場合があります。

クラウド・シフト

クラウド・シフトとは既存 IT 資産をクラウドへ最適化した設計・構成に変更(クラウド・ネイティブ化)し、クラウドの俊敏性、拡張性といったメリットを最大限享受できる構成に作り替えることを指します。クラウド・シフトは DX の実現に向けた重要なステップであり、アクセス数やトラフィック量に応じて柔軟にスケールでき、ビジネス戦略の変更に迅速に対応できるビジネスメリットの大きなシステムにすることが可能です。

3. Azure VMware Solution とは

マイクロソフトが提供しているパブリック・クラウド「 Microsoft Azure 」では、クラウド・リフトを支援するためのサービスとして、Azure VMware Solutions(AVS) が提供されています。ここでは、Azure VMware Solutions の概要と料金体系について解説します。

Azure VMware Solution の概要

Azure VMware Solution は Azure が提供するサービスのひとつで、Azure 内にユーザー専用の VMware によるプライベート・クラウド環境を提供するサービスです。Azure VMware Solution により既存のオンプレミスで動作する VMware vSphere の仮想マシンを、ほとんど手を加えることなく Azure へ移行することが可能です。

Azure へクラウド・リフトを行うことで、Azure が持つ高い可用性、拡張性、俊敏性といった Azure クラウドのメリットを享受することが可能となります。API やCLI を利用して、Azure Portal から VMware 仮想マシンの作成や管理を行うこともでき、一連の作業を自動化して運用の生産性を向上することも可能です。

Azure VMware Solution(AVS)の料金体系

Azure VMware Solution の料金体系は、基本的に利用時間に応じた従量課金となります。CPU コア、メモリ、ストレージを有する「ノード」と呼ばれる単位で課金されます。最低 3 ノード以上の利用が必要となり、料金には VMware のライセンスコストも含まれます。

なお、オンプレミスから Azure へ移行するプロジェクトに適用される「 Azure ハイブリッド特典」や、1 年または 3 年の予約を行う「事前予約インスタンス」を利用することで割引を受けることも可能です。

4. Azure VMware Solution によるクラウド移行のメリット

Azure VMware Solution を利用してクラウド移行を行うことのメリットは下記の通りです。

  • Azure と VMware のシームレスな統合による安全な移行
  • 既存の VMware 環境をそのまま利用できる互換性
  • Azure の価格特典を活用したコストパフォーマンスの高さ

Azure と VMware のシームレスな統合による安全な移行

Azure VMware Solution により、既存の VMware 環境をシームレスに Azure へ移行・拡張することが可能です。Azure VMware Solution は、マイクロソフトファーストパーティのサービスであるため、マイクロソフトが責任を持って品質保証を行っており、VMware 社による認証も受けています。品質保証やサポートが十分に受けられることで移行にかかるリスクを最小化し、安全に移行することが可能です。

既存の VMware 環境をそのまま利用できる互換性

Azure VMware Solution は、Azure 上で既存の VMware 環境で動作している仮想マシン、VMware ツール ( VMware vSphere、vSAN、vCenter、その他 vSphere クライアントや DevOps ツールなど) を引き続き使用可能な高い互換性を持っています。また、VMware の知識やスキルも引き続き活用できるため、余分なコストや人的リソースが不要です。

加えて、既存環境をそのまま移行することで、仮想マシンの IP アドレスを変更する必要もありません。そのため、ダウンタイム無しで移行ができるメリットもあります。

Azure の価格特典を活用したコストパフォーマンスの高さ

Azure VMware Solution はコストパフォーマンスにも優れています。Azure VMware Solution は Azure のサービスのひとつであるため、下記の通り Azure の価格特典を利用することが可能です。

  • Azure ハイブリッド特典
  • 事前予約インスタンス

また、Azure VMware Solutions の利用者は、Windows Server 2008 および SQL Server2008 を利用すると最大 3 年間、拡張セキュリティ更新プログラムの提供が無料となる特典もあり、コスト効率の高い方法で利用することが可能です。

5. Azure VMware Solution の構成

Azure VMware Solutionは、VMware vSphereのクラスター構成を、Azureが管理する専用のプライベート・クラウド環境(ベアメタル環境)の上で実現するサービスです。1つ以上のクラスターで構成し、クラスターは3~16台のホストノードで構成する必要があります。つまり、最小構成は1クラスター、3ノードの構成となります。

また、Azure VMware Solutionを稼働させるためには、下記のVMwareライセンスが必要です。

  • VMware vSphere
  • VMware vSAN
  • VMware NSX-T
  • VMware HCX

VMware vSphere

VMware vSphere は、VMware 社が提供している「 VMware ESXi 」「 VMware vCenter Server 」などの製品やオプション機能から構成される、仮想化ソフトウェアのパッケージ製品です。ESXi により、1 台の物理サーバー上に複数の仮想マシンを作成し、CPU やメモリなどのマシンリソースを各仮想マシンに分割して割り当て可能にする「ハイパーバイザー」としての機能を実現します。Azure VMware Solution においては、Azure のベアメタル環境上で仮想マシンを稼働させ、統合管理するためのプラットフォームとして使用されています。クラスターを構成するノード( ESXi )を提供し、このノード上で仮想マシンが稼働します。また、vCenter Server により、仮想マシンを統合管理することができます。

VMware vSAN

VMware vSAN は、VMware が提供する Software Defined Storage(SDS) です。SDS とは、ストレージをソフトウェアの機能により仮想化して管理する技術です。vSAN は、ESXi のカーネルに組み込まれているため、ESXi をインストールした物理サーバーに内蔵されている SSD (Solid State Drive) や HDD(Hard Disk Drive) を仮想的に束ねて、ひとつのデータストアとして利用することができます。Azure VMware Solution では、データストアとして vSAN を使用します。データの重複排除や圧縮がデフォルトで有効化されており、保存データは Azure Key Vault を用いて暗号化されます。

VMware NSX-T

VMware NSX-T は、ネットワーク仮想化ソフトウェアです。ネットワークとセキュリティの機能をソフトウェアで提供し、ハードウェアに依存しない柔軟なネットワーク構成を実現することが可能です。オーバーレイネットワークという、物理ネットワークを完全に隠蔽するネットワーク仮想化技術を備えており、VLAN よりはるかに多いネットワーク分割や、ホスト内でルーティングが可能です。また、従来の境界型ファイアウォール機器の代わりに、セキュリティ機能の「分散ファイアウォール」による仮想 NIC 単位でのファイアウォール設定が可能です。Azure VMware Solution では、NSX-T によりセキュアな仮想ネットワークを構成します。従来の VLAN 等は使用することができません。

VMware HCX

VMware HCX は、移行専用の仮想ネットワークを構成し、場所や距離に関係なくシームレスに仮想マシンを移行する機能を提供するソフトウェアです。移行元と移行先が vSphere 環境であれば、オンプレミスのデータセンターとパブリック・クラウド間で仮想マシンを移行させることができます。Azure VMware Solution では、オンプレミスの vSphere 環境から、Azure の専用ベアメタル環境上の vSphere へ仮想マシンを移行する役割を担います。

6. Azure VMware Solution による移行方法

オンプレミスの vSphere から Azure VMware Solution を利用してクラウド移行を行うには、VMware HCX の機能が必要です。HCX では、下記の通り 4つの移行手段が用意されています。いずれか一つを選択しなければいけないというものではなく、仮想マシンごとに任意の方式を採用できるようになっています。

  • HCX vMotion
  • HCX Bulk Migration
  • Cold Migration
  • Replication Assisted vMotion(RAV)

HCX vMotion

HCX vMotion は、仮想マシンを完全無停止で移行する機能です。VMware vSphere で従来から提供されている vMotion では、移行元と移行先の互換性要件として、CPU 種別や vSphere バージョンの合致などの条件や制約がありましたが、HCX vMotion ではシステム要件が大幅に緩和され、様々な構成のオンプレミス環境から Azure VMware Solution 環境へ移行しやすくなっています。

HCX Bulk Migration

HCX Bulk Migration は、オンプレミス環境から Azure VMware Solution 側に仮想マシンのレプリケーションを行い、任意のタイミングで移行できる手段です。レプリケーション中のダウンタイムはありませんが、実際の移行(切替)のタイミングでのみ、オンプレミス側仮想マシンの停止と、Azure VMware Solution 側仮想マシンの起動が発生するため、数分程度のダウンタイムが発生する点は考慮が必要です。

Cold Migration

HCX vMotion と HCX Bulk Migration が稼働中の仮想マシンを移行させる手段であるのに対して、Cold Migration はオフラインの仮想マシンを移行する機能です。停止中の仮想マシンがある場合、それらを起動することなく、そのまま Azure VMware Solution 側に移行することができます。

Replication Assisted vMotion(RAV)

Replication Assisted vMotion (RAV) は、HCX vMotion と HCX Bulk Migration を組み合わせた仕組みを持っています。仮想マシンのレプリケーションを行うという観点では Bulk Migration と同じですが、最後の切り替え時に仮想マシンの停止・起動を発生させることなく、vMotion 技術を利用して無停止で移行を完了させます。その結果、複数の仮想マシンをダウンタイムなしで一括移行できるようになります。

7. まとめ

クラウド移行とは、DX を見据えたビジネス変革の第一歩とも言える重要な取り組みです。システムをはじめからクラウド・ネイティブに設計できればよいですが、多くの企業がオンプレミスの既存システムを抱えているため、そうした企業にとってクラウド移行は大きな課題になります。Azure VMware Solution はそうした企業向けにAzure へのクラウド・リフトを支援するサービスです。自社の DX を見据えて、Azure への移行を検討してみてはいかがでしょうか。

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Tag: AVS Azure VMware Solution Azure移行

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