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Azure Data Factory の特徴や活用例、使い方を理解しよう
IT の進化により、ビジネスで利用するシステムの形態は多様化しています。それにより、システムが扱うデータも多様化し、システム毎にデータの形式が異なる、データの格納場所も分散化するなど、データ活用が困難となっている例も増えています。
データを効果的に分析・活用するには、膨大なデータを一元管理して蓄積する必要があります。Azure が提供する ETL/ELT のためのソリューション、Azure Data Factory では、オンプレミス・クラウドを問わずさまざまなデータを統合して一元管理することができます。
本記事では、ETL/ELT の目的と Azure Data Factory の概要、料金体系、主な機能について解説します。
1. Azure Data Factory とは
はじめに、Microsoft Azure が提供するETL( ELT )のためのサービス、Azure Data Factory の概要、料金体系について解説します。
Azure Data Factory の概要
Azure Data Factory とは、Azure が提供するデータ統合のためのプラットフォームです。 ETL 、 ELT の機能に加え、 CI/CD (継続的インテグレーション/デリバリー)のための機能や、モニタリング機能など豊富な機能を揃えています。
また、クラウドのデータ結合だけでなく、オンプレミスとクラウド、 SaaS を併用するハイブリッド環境でもデータ統合が可能です。データ統合の専門知識やプログラミングスキルがなくても、ハイブリッド環境それぞれのデータの一元管理や、データの変換、管理画面の設定・管理などを視覚的な GUI 操作で簡単に操作を行えます。
Azure Data Factory の料金体系
Azure Data Factory の料金体系は、利用した分だけ課金される従量課金制となっています。アクティビティ(データに対する処理)と、パイプライン(アクティビティをある目的のためにグルーピングしたもの)の実行時間に応じて課金が行われます。
※参考:Microsoft Azure データ パイプラインの価格
Azure Data Factory の構成要素
Azure Data Factory は下記の6つで構成されています。
- リンクされたサービス
- データセット
- アクティビティ
- パイプライン
- データフロー
- 統合ランタイム
それぞれの内容は下記のとおりです。
リンクされたサービス
リンクされたサービスは、 Azure Data Factory が外部に接続する際に必要な情報を定義できます。 たとえば、データソースの種類や接続先 URL 、 認証情報、アクセス方法などを定義することが可能です。
データセット
データセットでは、処理するデータの定義を設定できます。たとえば、データソースや取得方法、データを取得するタイミングなどを設定できます。
アクティビティ
アクティビティは、データ処理の操作を定義するものです。データのコピーや変換、制御といった操作を組み合わせることで、データ処理のワークフローを構築できます。
パイプライン
パイプラインは、複数のアクティビティを管理・制御するものです。複数のアクティビティを順番に処理させたり、同時に進行させたりすることが可能です。
データフロー
データフローでは、データのマッピングや、データ変換ロジックのグラフを作成・管理できます。
統合ランタイム
統合ランタイムでは、アクティビティとリンクされたサービスをつなげることが可能です。
2. ETL(ELT)とは
ETL、ELT という言葉が耳慣れないという人も多いかもしれませんが、ETL と ELT は共にデータ活用を理解する上で重要な仕組みです。ここでは、ETL・ELT の概要と必要性について解説します。
ETL(ELT)とは
ETL( Extract/Transform/Load )、ELT( Extract/Load/Transform )は共に、リモートのデータソースからデータを収集し統合するアプローチの中で発生する、下記プロセスの頭文字をとったものです。
- Extract(抽出)
- Transform(変換・加工)
- Load(ロード)
ETL と ELT は主にビジネス・インテリジェンス( BI )やビジネス・アナリティクス( BA )を行うために作成されるデータウェアハウスやデータレイクを構築する時に発生するプロセスとして知られています。
企業に散らばって配置されているさまざまな形式のデータを収集、変換・加工を行い、一元管理するためにデータウェアハウスやデータレイクにロードしてデータ統合を行う仕組みです。
ETL と ELT の違い
データレイクやデータウェアハウスを構築するプロセスには2通りあり、それぞれ ETL と ELT と呼ばれています。
ETL( Extract/Transform/Load )とは
ETL は、抽出、変換・加工、ロードの順序でデータ統合を行うアプローチです。 リモートのデータソースから情報を取得( Extract )し、定義されたフォーマットや文字コード等に変換・加工( Transform )を行い、データベースやデータウェアハウスにロード( Load )する順序でデータ統合を行います。
データの変換・加工はターゲットのデータウェアハウスの外で行われます。ロード前にデータの構造化を行うため、分析や解析するために適した形式のデータを蓄積するデータウェアハウス向けのアプローチと言えます。
ELT( Extract/Load/Transform )とは
ELT は、抽出、ロード、変換・加工の順序でデータ統合を行うアプローチです。 ETL と同様にリモートのデータソースから情報を取得( Extract )しますが、データの変換・加工を行わずそのままデータベース・データウェアハウスへのロード( Load )を行います。
ロード後にターゲットのデータベース内でデータの変換・加工( Transform )を行う点が ETL との違いであり、非構造データをそのままロードするため、加工していない生データを蓄積するデータレイク向けのアプローチと言えます。
ETL( ELT )の必要性
社内に点在する情報(データ)を有効活用し、経営に役立つ洞察を得るために、必要な情報(データ)を 1 箇所に集約し蓄積する必要があります。ETL や ELT はそのためのデータ収集と統合の役割を担うアプローチです。
社内に点在するデータソースからデータを抽出・蓄積するためにはデータの種類に応じたプログラムを製造する必要があり、専門知識や膨大な開発工数が必要となります。そうした課題を解決するのが ETL( ELT )ツールです。ETL( ELT )ツールを使用することでプログラミングスキルや専門知識が不要で効率的にデータ統合が可能となります。
3. Azure Data Factory の主な機能
Azure Data Factory は、さまざまな環境のデータを一元的に統合するために多くの機能を備えています。ここでは、Azure Data Factory が備えている下記の機能について解説します。
- 接続
- データの収集
- データの変換・強化
- CI/CD と公開
- モニタリング
接続
Azure Data Factory は、オンプレミスやクラウド、SaaS が持つデータベース、ファイル共有、FTP Web サービスなど、プラットフォームを問わずさまざまなデータソース(データの収集元)に接続することが可能です。
データの収集
データソースに接続した後、データの収集を行います。オンプレミスとクラウドの両方のデータソースから、Azure 内のデータストアにデータを移動することが可能です。収集の際はAzure のさまざまなサービスとの連携が可能です。
例えば、Azure Data Lake Storage でデータを収集し、Azure Blob Storage へ移動・格納し、後で Azure HDInsight Hadoop クラスターを使用してデータを変換するといった処理や連携も可能です。
データの変換・強化
Azure 内のデータストアにデータが集まったら、収集されたデータの変換処理を行います。この変換処理により、統一的なデータフォーマットに変換され、グラフなどで可視化することができるようになります。
Azure Data Factory は Apache Spark の技術を応用していますが、 Spark クラスターや Spark プログラミングの知識がなくても、データフローを使用して、簡単に Spark 上で実行されるデータ変換グラフを作成することができます。
CI/CD と公開
Azure Data Factory は、Azure DevOps と GitHub を使用して、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)環境を構築することができます。ETL プロセスの開発とデリバリーを段階的に進めたうえで、完成した製品を公開することが可能です。
モニタリング
モニタリングとは、Azure Data Factory でアクティビティやパイプラインを構築・運用する際、状況を監視する機能です。アクティビティやパイプラインを監視することで、データ統合の成功率や失敗率を確認することができます。
4. Azure Data Factory の特徴
Azure Data Factory の特徴は下記の4つです。
- さまざまなデータを統合・分析できる
- プログラミング知識不要でデータフローを作成できる
- ビジネスの成長に合わせて処理能力を拡張できる
- トラブルシューティングを容易に実施できる
それぞれの特徴について解説します。
さまざまなデータを統合・分析できる
オンプレミスやクラウド上にあるさまざまなデータ ソースを接続し、一元的に管理できます。異なる場所にあるデータを一つに統合することで、企業のデータ分析を促進できるでしょう。

プログラミング知識不要でデータフローを作成できる
ドラッグ&ドロップの操作でデータフローを簡単に構築できることも特徴です。専門的なプログラミング知識がなくても条件分岐やループといった複雑な処理を設定できます。
ビジネスの成長に合わせて処理能力を拡張できる
Azure Data Factory はクラウド型のサービスとなっており、処理能力を柔軟に拡張できる点も特徴です。ビジネスの成長に合わせて処理能力を拡張することで、企業のデータ統合基盤を維持しやすくなるでしょう。
トラブルシューティングを容易に実施できる
エラーログや実行状況を監視し、データパイプラインの異常を迅速に発見することも可能です。トラブルシューティングを容易に実施できるようになります。
5. Azure Data Factory の活用例
ここでは、Azure Data Factory の活用例を 3 つ紹介します。
情報共有基盤の構築
Azure Data Factory を使えば、企業内外の多様なデータソースから必要な情報を収集し、情報共有のための基盤を構築することが可能です。最新の情報を収集・活用することで、迅速な意思決定が可能になります。
ビッグデータのクリーニングや変換
Azure Data Factory は、ビッグデータのクリーニングやデータ変換の工程でよく活用されています。仮にデータの中にノイズや欠損値が含まれていると、分析がうまくいかない要因になります。
Azure Data Factory では、これらのデータに対してクレンジング処理を行い、異常値の排除や空データの補完などを実施することが可能です。データの品質を向上させることができます。
クラウド間でのデータ移行やバックアップ
Azure Data Factory は、データを他のクラウドに移行する際や、クラウドにバックアップデータを保管する際に活用できます。特にオンプレミス環境や他のクラウドプロバイダー( AWS や Google Cloud など)から Azure へデータを移行する際に役立つでしょう。安全かつ効率的に大量のデータを転送できるようになります。
6. Azure Data Factory の使い方
続いて、Azure Data Factory の使い方を紹介します。下記の手順で始めることができます。
1. Web ブラウザー( Microsoft Edge か Google Chrome )で Azure Portal にアクセスします。
2. Azure Data Factory Studio に移動して「新しいデータ ファクトリの作成」を選択します。
3. Create a new data factory で一意の名前を入力し、データ ファクトリの作成時に使用する場所とサブスクリプションを選択します。
使い方の詳細は下記のページを参考にしてください。
クイック スタート: Azure portal を使用してデータ ファクトリを作成する
7. Azure Data Factory がおすすめの企業
Azure Data Factory は、下記のような企業におすすめです。
- データがさまざまなシステムに分散している企業
- ビッグデータを活用して意思決定を行いたい企業
- マルチクラウド戦略を採用している企業
データがさまざまなシステムに分散している企業
企業内には、顧客管理(CRM)システムや人事システム、製品管理システムなど、さまざまなシステムが存在します。多くの企業では、複数のシステムにデータが分散してしまい、システムごとにデータを保管しているケースがよく見られます。
Azure Data Factory を活用すれば、複数のシステムからデータを集約し、データの一貫性を確保することが可能です。統一された形式でデータを管理・活用できる仕組みを構築できるため、企業全体でデータを有効に活用できる体制を構築できるでしょう。
ビッグデータを活用して意思決定を行いたい企業
ビッグデータの分析では、大量のデータを迅速に収集・加工し、分析可能な状態に整えることが重要です。 Azure Data Factory では、データクレンジングや集計、変換を効率的に行えます。
さらにデータウェアハウスやデータレイクと連携し、大規模データの処理や分析を行う基盤も構築できます。ビッグデータを活用したタイムリーな意思決定が可能となり、ビジネスチャンスの創出や競争力の強化につながるでしょう。
マルチクラウド戦略を採用している企業
マルチクラウド戦略を採用している企業では、複数のクラウド環境におけるデータの統合や移動が欠かせません。たとえば、企業が Azure だけでなく AWS も活用している場合、それぞれのクラウドにあるデータを安全かつ効率的に連携させる必要があります。
Azure Data Factory を活用すれば、各クラウド環境の利点を活かしながら、データを自動で統合・移行することが可能です。一貫性のあるデータ運用をクラウド間で実現できます。
8. まとめ
企業がイノベーティブなビジネスを創発するには、これまでの企業活動により生まれたデータを効果的に分析・活用することが必要です。そのために膨大なデータを一元管理して蓄積し、視覚的に見やすくするために ETL や ELT の技術が重要となります。Azure のサービスを活用すると、専門知識やプログラミングスキルがなくてもデータ活用が可能となります。企業のビジネス変革のために導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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Tag: Azure Data Factory ビッグデータ
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