Azure Managed Service Column <Azure運用コラム>

Azure Stackとは?企業のポリシーに合わせたハイブリッド・クラウドの構築方法を解説

Category: 入門編

2024.12.10

オンプレミス環境へクラウド機能を導入するサービスを紹介

従来のオンプレミスに代わり、クラウドを導入する企業が増えています。ただしセキュリティ・ポリシーによってはパブリック・クラウドを利用できない企業もあり、そうした企業ではオンプレミスとクラウドを併用するハイブリッド・クラウドという構成を採用するケースがあります。

Azure Stack は、 Microsoft が提供するハイブリッドクラウドプラットフォームで、 Azure のクラウドサービスや機能を自社のオンプレミス環境に導入することができます。本記事では、 Azure Stack の概要や構成するサービス、メリット・デメリットについて解説します。

1. Azure Stack とは

Azure Stack とは、本来はインターネット上で共同利用する Azure のサービスと機能を、自社内のオンプレミス環境や工場内でのデータ分析機器や画像処理機器などのエッジデバイスへ導入するためのサービスです。

Azure Stack には、OEM のハードウェア、OS、Azure サービス、サポートが含まれており、ハードウェアからサービスまでが一体化しています。

なお、 Azure Stack は Azure Stack HCI 、 Azure Stack Hub 、 Azure Stack Edge という 3 つのサービスで構成されています。それぞれのサービスについては次章で詳しく解説します。

Azure Stack によるクラウド構成

クラウド・コンピューティングとひと言で言っても、大きく次の 3 つの構成があります。

  • パブリック・クラウド
  • プライベート・クラウド
  • ハイブリッド・クラウド

このうち、Azure Stack では目的と用途に合わせてプライベート・クラウド構成とハイブリッド・クラウド構成を実現できます。各構成の特徴は次のとおりです。

ハイブリッド・クラウド構成

ハイブリッド・クラウド構成とは、オンプレミス環境の Azure Stack と Azure クラウドを接続し、ハイブリッド・クラウドとして利用する構成です。必要に応じて柔軟に Azure クラウドの無制限のリソースを利用することができ、クラウドに移行したくない重要データは Azure Stack 内に保持するといった利用が可能となります。

なお、Azure Stack は Azure クラウドと同様に、Azure Portal からの一元管理が可能です。

プライベート・クラウド構成

プライベート・クラウド構成とは、企業や自治体などが、自社内で利用するクラウド環境をオンプレミスの形で構築し、自社内やグループ企業内などに閉じて利用する構成です。

Azure クラウドとは接続せず、自社内のネットワークのみで利用します。社内のセキュリティ・ポリシー上、パブリック・クラウドの利用が難しい場合に向いている構成です。プライベートな環境であるためリソースに制約がありますが、限られたリソースの中において Azure の多くのサービスを利用することができます。

近年は特にパブリック・クラウドとプライベート・クラウドのメリットを併せ持つハイブリッド・クラウドが注目されており、Azure Stackもハイブリッド環境を構築するために用いられることが多いです。

2. Azure Stack を構成するサービス

Azure Stack を構成するサービス

先述したように、Azure Stack は次の 3 つのサービスで構成されています。

Azure Stack HCI

Azure Stack HCI ( Hyper-Converged Infrastructure )は、オンプレミス環境で仮想化基盤を提供するサービスです。 Microsoft による検証済みの HCI ハードウェアに Azure Stack HCI OS をインストールすることで、 Azure の一部機能をオンプレミスで実行可能にします。

また、 Azure ポータルを介してリモートから操作できるため、バックアップや監視、セキュリティ設定など、 Azure のクラウドサービスと統合した管理を実現します。

Azure Stack HCI 上で仮想デスクトップ( VDI )環境を提供する Azure Virtual Desktop on Azure Stack HCI というサービスも用意されています。

Azure Stack Hub

Azure Stack Hub は、オンプレミス環境に Azure サービスを導入する統合ハードウェアシステムです。検証済みのハードウェアに、専用のソフトウェアが事前にインストールされています。

Azure Stack Hub を導入することで、クラウド環境とほぼ同等の IaaS や PaaS 機能をオンプレミスで利用することが可能です。インターネット接続のない環境でも利用できるため、ネットワーク接続が限られる環境や、データを厳重に管理する必要がある場合に適しています。

Azure Stack HCI は仮想化インフラやデスクトップ仮想化をオンプレミスで実行するためのサービスであるのに対し、 Azure Stack Hub は、 Azure のクラウド機能をほぼそのままオンプレミスに再現します。より包括的なクラウド機能を提供する点が主な違いです。

Azure Stack Edge

Azure Stack Edge は、エッジ環境でのデータ処理を目的としたマネージドデバイスです。データをクラウドにアップロードする前に、 Azure Stack Edge デバイスでリアルタイムにデータを処理・分析できます。 AI モデルを使用した機械学習の処理やリアルタイム分析などの高パフォーマンスが求められるエッジコンピューティングをサポートすることが可能です。

3. Azure Stack のメリット・デメリット

ここでは Azure Stack を利用するメリット・デメリットについて解説します。

Azure Stack のメリット

Azure Stack を利用するメリットは下記の通りです。

  • ハイブリッド・クラウドとして柔軟に利用
  • アプリケーション実行環境の統一
  • 将来的なパブリック・クラウド移行への準備

ハイブリッド・クラウドとして柔軟に利用

Azure Stack はインターネットへの接続の有無に依らず利用可能です。インターネットに公開可能なデータは Azure クラウドへ保存し、社外秘のデータはオンプレミスの Azure Stack へ保存し、セキュリティを確保しながら相互接続するといった柔軟な構成を取れます。

アプリケーション実行環境の統一

Azure Stack で使用するハードウェア、OS、各種サービスは基本的に Azure クラウドと同様の仕様となっています。そのため、オンプレミスとクラウドで共通のサービス、言語、API を利用可能です。アプリケーション実行環境をクラウドとオンプレミスで統一できます。

将来的なパブリック・クラウド移行への準備

Azure Stack を利用することで、オンプレミス環境のインフラ、アプリケーションを Azure に適合した形へ移行することが可能です。そのため、将来的なパブリック・クラウドへの移行・統合がしやすくなります。

Azure Stack のデメリット

Azure Stack について、Azure クラウドと比較した場合のデメリットは下記の通りです。

  • 拡張性が限定的
  • 使用できない機能・サービスがある
  • セキュリティは自社のポリシーに委ねられる

スケーラビリティが限定的

Azure Stack は専用ハードウェアをオンプレミス環境へ設置して利用します。そのため、無限のリソースを持つ Azure クラウドと比較するとスケーラビリティが限定的と言わざるを得ません。

使用できない機能・サービスがある

Azure Stack では、Azure クラウドが提供している全ての機能やサービスを 100 % 利用できるわけではありません。 Marketplace で提供しているパッケージや Microsoft Entra ID (旧称 Azure Active Directory )の一部の機能、AI やデータベースの一部などは、 Azure クラウドに接続することで完全な形で利用できます。

セキュリティは自社のポリシーに委ねられる

Azure Stack は、Azure が備えているセキュリティ機能・サービスを利用することができます。ただし、オンプレミス環境であるため、物理的なセキュリティや、運用管理に関するセキュリティについては導入する企業のポリシーに委ねられることに留意が必要です。

4. Azure Stackのユースケース

次に、 Azure Stack の各サービスの利用シーンについて解説します。

社内データのバックアップと迅速な復旧体制の強化

社内データの確実なバックアップと迅速な復旧体制が必要な場合、 Azure Stack HCI を活用できます。オンプレミスの仮想サーバーのバックアップを Azure に保存し、万が一の障害時には即座にリストアすることが可能です。

法規制やセキュリティ要件を満たす社内データの管理

たとえば金融業界や医療業界などの機密情報や法規制に厳しい業界で Azure の機能を活用したい場合、 Azure Stack HCI が有効です。オンプレミス環境でしか保管できないデータや動作が許可されていないアプリケーションがある場合、それらを社内環境に留めつつ、 Azure のスケーラビリティや管理機能を活用できます。

インターネット接続が限定される工場や倉庫でのシステム運用

インターネット接続が不安定な環境でのシステム稼働が求められる場合、 Azure Stack Hub が適しています。インターネット接続に依存せず、仮想マシン運用やアプリケーションサービスなどの Azure の主要機能を現場で利用可能です。

生産ラインでのデータ分析の効率化

生産ラインで発生するデータを即時に分析し、すぐに意思決定を行いたい場合、 Azure Stack Edge の導入が有効です。現場に設置することでクラウドにデータを送信する前にリアルタイム分析ができるため、業務を効率化できます。

5. Azure Stack の料金体系

Azure Stack は、Azure クラウドと同様に利用した分だけ支払う従量課金制となっています。Azure Stackに含まれるOEMのハードウェア、OS、Azureサービス、サポートなどを初期費用なしの従量課金で利用することが可能です。

各サービスの料金については以下のページを参考にしてください。

6. まとめ

クラウドは、オンプレミスとの接続を含め、さまざまな構成を採用することができます。そのため、企業のポリシーに合わせたプラットフォームを検討・選定し、自社に合った形で管理・運営していくことが重要です。

Azure Stack は、さまざまな目的や用途に合わせて柔軟にハイブリッド・クラウド環境を構築できます。ぜひこの記事を参考に、Azure Stackを構成するサービスのなかで自社のニーズに合うものはあるか検討してみてください。

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Tag: Azure Stack ハイブリッドクラウド

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