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現実世界をデジタルで再現することで何ができる?将来のビジネスに役立てる方法を解説
近年、デジタルツインという言葉が注目を集めています。あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、デジタルツインとはどのようなものでしょうか。デジタルツインは、現実の世界から収集した様々なデータを、言葉の通り「双子」のように、コンピュータ上で再現する技術です。収集した膨大なデータを活用して、現状把握や未来予測などさまざまな活用方法が期待されています。
マイクロソフトのクラウド「Azure」でもデジタルツインを実現するためのサービス、Azure Digital Twinsが提供されており、Azure IoTとの連携により様々なシーンで活用が可能となっています。
本記事では、デジタルツインの概要や活用シーンを踏まえ、Azure Digital Twinsの概要や料金体系、主な機能について解説します。
1. デジタルツインとは
デジタルツインは、現実世界のデータを収集・再構成することでさまざまな活用方法が期待されている技術ですが、あまり耳にしたことのない言葉かもしれません。まず、デジタルツインの概要について解説します。
デジタルツインとは
デジタルツインは、現実の空間から収集したデータを活用して、仮想空間に現実と同じ空間を作り上げる技術のことを指します。現実空間と双子のような関係性の空間をデジタル上に再現することから、デジタルツインと呼ばれています。収集した膨大なデータを元に、限りなく現実に近い物理的なシミュレーションがコンピュータ上で可能となり、現状把握によるサービスの改善や、ある条件下でのシミュレーションなどを行う上で有効な手段となります。
デジタルツインの世界市場規模(※1)は2021年で49億ドル、2026年におよそ502億ドル、市場の平均年成長率は59.0%に達すると予測されており、IoTの活用がより進むにつれてデジタルツインはますます重要な技術として期待されています。
※参考1 デジタルツイン:世界市場2026年予測
デジタルツインの活用シーン
デジタルツインの活用シーンは下記の通りです。
- リアルタイムデータの活用による現状把握や未来予測
- ある条件下における仮説検証・シミュレーション
- 工場などの遠隔監視・管理
リアルタイムデータの活用による現状把握や未来予測
デジタルツインは、収集したデータを元にコンピュータ上で現実空間を再現する技術です。限りなく現実に近い状況がリアルタイムに仮想空間に反映されているため、例えば工場の機器や、IoTデバイスなどのリアルタイムな故障状況や、近い将来の故障予測などが可能となります。
ある条件下における仮説検証・シミュレーション
リアルタイムに現実空間を再現できることから、収集したデータの条件を変更した場合にどのような動作・状況変化が起こりうるかの仮説検証やシミュレーションが可能となります。デジタルツインを活用することで、何度でも条件を変えて検証することができるため、より効果的な施策を打つことができます。
工場などの遠隔監視・管理
デジタルツインにより、工場の機械や、野外に設置したIoTデバイスなどの遠隔監視・管理が可能です。リアルタイムに機械やデバイスの状況を収集することで、何らかのトラブルによる状態変化を遠隔地にいながら迅速に察知し、素早く対処することが可能となります。
2. Azure Digital Twinsとは
マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」では、デジタルツインをクラウド上で構築するためのサービスを提供しています。ここでは、Azure Digital Twinsの概要と料金体系について解説します。
Azure Digital Twinsの概要
Azure Digital Twinsは、Azureが提供するデジタルツインを実現するためのサービスです。Azure IoTと連携して、IoTデバイスなどからのデータの取得や保存、時系列での参照やさまざまな分析機能などを備えています。
Azure Digital Twins を使用することで、クラウド上で対象の環境全体 (建物、工場、農場、エネルギー ネットワーク、鉄道、スタジアム、さらには都市全体など)に設置されたIoTデバイスと接続・連携し、あらゆる物理環境の人、場所、モノ、そしてそれらをつなぐ関係とプロセスまでを含めて、デジタルモデルを作成できるようになります。
Azure Digital Twinsの料金体系
Azure Digital Twinsの料金体系は、利用した分だけ課金される従量課金制(※2)となっています。課金対象は下記の通り、デジタルツインに対する操作やクエリを発行した場合などが対象となります。
- メッセージ
- 操作
- クエリユニット
3. Azure Digital Twinsの主な機能
デジタルツインは、どのようにして構築・管理されるのでしょうか。最後に、Azure Digital Twinsの主な機能について解説します。
モデル
Azure Digital Twinsでは、デジタルツインを定義するためにモデルと呼ばれる「型」を用いて、現実世界における人、場所、物を定義します。
モデルは、JSON-LDベースの Digital Twin Definition language (DTDL) で表現されます。オブジェクト指向プログラミング言語のクラスに似ており、モデルには名前と、プロパティ、テレメトリ、環境内でこの型のエンティティに何ができるかを説明するリレーションシップなどの要素を定義します。
モデルを定義した後に、これらのモデルを使用して、エンティティ(実体)としてのデジタルツインを生成します。
Azure Digital Twins Explorer(プレビュー版)
Azure Digital Twins Explorerとは、モデルやツイングラフなど、Azure Digital Twinsインスタンス内のデータ(ライブ実行環境)をグラフィカルに視覚化および操作するための開発者ツールです。Azure Portalからアクセスすることができ、インスタンス内のデータを操作するために下記の機能を備えています。
- クエリエクスプローラー
- ツイングラフに対してクエリ(問い合わせ)を実行し、結果を視覚的に表示する。
- モデル
- モデルの一覧を表示し、モデルの追加、削除、モデルの詳細の表示などのアクションを実行する。
- ツイン
- ツインとそれに関連付けられているリレーションシップの一覧を表示する。
- ツイングラフ
- ツインとリレーションシップを、カスタマイズ可能なツイングラフとして視覚化し管理を行う。
- モデルグラフ
- モデルとそれらが相互接続されている方法を、カスタマイズ可能なグラフの形式で視覚化する。
IoTおよびビジネスシステムからの入力
Azure Digital Twins のライブ実行環境を実際の最新の状態に保つために、Azure IoT Hubを使用して、IoTおよびIoT Edgeデバイスに接続し、データを最新化することができます。
また、REST APIやLogic Appsなどのその他のサービスへのコネクタを使用して、他のデータソースから Azure Digital Twins へ入力することも可能です。
ストレージと分析用の出力データ
Azure Digital Twins モデルのデータは、Azure Digital Twins Explorerだけでなく、他のAzureサービスと連携することも可能です。イベントルートを定義することで、下記のようにデジタルツインデータを他のAzureサービス、またはAzure外部に送信することができます。
- Azure Digital TwinsをTime Series Insightsに接続して、各ツインの時系列の履歴を追跡する
- Azure Digital Twins データをAzure Data Lakeに格納する
- Azure Digital Twins データを、Azure Synapse Analyticsまたは他のMicrosoftデータ分析ツールで分析する
- 大規模なワークフローと Logic Apps を統合する
- 柔軟なカスタマイズされたアクションために作成したアプリケーションにデータを送信する
4. まとめ
デジタルツインは、現実の世界から収集した様々なデータを元に、現状把握や未来予測などさまざまな活用が可能な技術です。Azureを活用することで、クラウド上でAzure IoTなどと連携して簡単にデジタルツインを構築することができます。工場やIoTデバイスの監視や現状把握、未来予測を行い、ビジネスを盛り上げるために導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Microsoft Azureを利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

Tag: Azure Digital Twins 複合現実
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