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VDIとDaaSはどちらが自社に適している?それぞれの特徴を理解して選ぼう
働き方改革の浸透とクラウドの普及に伴い、仮想デスクトップの需要が高まっています。リモートワークが普及し、多くの企業でオフィスだけでなく、自宅など外部から仕事をすることができる環境の整備が求められているからです。
仮想デスクトップを実現するには、従来オンプレミスの VDI を利用する方法が主流でしたが、近年はクラウドサービスとして提供される DaaS も活用されています。代表的なものとしては Azure Virtual Desktop などがあります。自社に適した仮想デスクトップ環境を実現するには、適切な製品選びが重要です。
本記事では、仮想デスクトップを実現する VDI と DaaS の概要とそれぞれの特徴と違い、代表的な DaaS について解説します。
1. VDIとDaaSの違い
仮想デスクトップとは、仮想的な PC 環境を提供する仕組みです。サーバー上で稼働する仮想的な PC をユーザーに提供し、ユーザーは、通常の PC やシンクライアント端末から仮想デスクトップにリモート接続を行うことで、通常の PC と同じような感覚で利用できます。
VDIとDaaSはどちらも仮想デスクトップ環境を構築するためのソリューションです。まずはそれぞれの概要と違いについて解説します。
VDIとは
VDI ( Virtual Desktop Infrastructure )とは、自社内や自社のデータセンターにサーバーを設置し、そのサーバー上で仮想デスクトップを実現するための仮想化基盤(ハイパーバイザー)を構築して利用する方法です。
仮想デスクトップを実現する方法を広く VDI と呼ぶ場合もありますが、 DaaS と比較する場合、オンプレミスで運用される仮想デスクトップ環境を指すケースが多いです。
DaaSとは
DaaS とは、「 Desktop as a Service 」の略で、仮想デスクトップをクラウド上で稼働させ、インターネット経由でサービスとして提供する仕組みです。オンプレミスの VDI と違い、企業は自社でハードウェアや仮想化基盤を管理する必要がなく、スムーズかつ柔軟にデスクトップ環境を利用できます。
DaaS には下記3種類の導入形態があります。
- プライベートクラウド型
- バーチャルクラウド型
- パブリッククラウド型
プライベートクラウド型
プライベートクラウド型 DaaS は、クラウドサービス事業者に、他の利用者から完全に独立したプライベートクラウドを提供してもらい、その上に仮想デスクトップサービスを導入する形態です。オンプレミスに近い環境で、 OS やソフトウェア、運用管理方法を自社で自由に決めることができ、他のユーザーの利用状況によって影響を受けにくいメリットがあります。
ただし、利用開始までには時間がかかり、初期コストも高くなりやすい傾向があります。
バーチャルクラウド型
バーチャルクラウド型 DaaS は、クラウドサービス事業者が提供する IaaS または PaaS 上に仮想デスクトップを導入する形態です。AWS や Microsoft Azure 、 GCP などのパブリッククラウドに仮想サーバーを構築し、その上に仮想デスクトップを構築する構成となります。
インフラは他の利用者と共有され、仮想デスクトップサービスはユーザー側で構築・運用管理を行う必要がありますが、 IaaS や PaaS 部分の運用管理はクラウドサービス事業者が行うため、運用管理コストが少なくなり、カスタマイズ性も高いと言えます。
パブリッククラウド型
パブリッククラウド型 DaaS は、クラウドサービス事業者が提供する DaaS をそのまま利用する形態です。最も手軽に導入でき、構築・運用管理も不要のため低コストで専門知識がなくても導入することができます。
ただし、カスタマイズ性が低いというデメリットがあります。一般的に DaaS と呼ぶ時はこの形態を指すことが多いです。
VDIとDaaSの違い
ここでは、下記の観点において、一般的に利用されるパブリッククラウド型 DaaS と、オンプレミスの VDI の比較を行います。
- 構築・運用管理面の違い
- コスト面の違い
- セキュリティ面の違い
構築・運用管理面の違い
DaaS はクラウド事業者が構築と運用管理を行います。また、オンプレミスと比較して非常に高い可用性を備えていることが大きな特徴です。
これに対し、 VDI は自社でサーバーを導入する必要があるため、構築と運用管理を自分達で行う必要があり、専門知識と運用管理のコストと労力が必要です。冗長化などの可用性対策を講じていない場合は、重大な障害が発生した際にサービスが利用できなくなる可能性もあります。
コスト面の違い
DaaS は、一般的には月々の定額制または従量課金で利用することができます。また構築が不要なため、初期投資が必要ありません。
それに対し、 VDI はサーバーやネットワーク機器、仮想化基盤ソフトウェアなどを導入する必要があるため、相応の初期投資が必要です。
セキュリティ面の違い
DaaS は、クラウド事業者が運営する堅牢なデータセンター内に設置されたサーバー上の仮想デスクトップを利用します。クラウド事業者は安心・安全なサービス提供のためにさまざまなセキュリティリスクを想定して万全の対策を講じているため、非常に高いセキュリティを誇ります。
一方、 VDI は自社内に環境を構築するため、自社のセキュリティポリシーに合わせて、データセンターやサーバー、ネットワークのセキュリティ対策を自分達で行う必要があります。
2. Azureが提供するDaaS
Microsoft が提供するパブリッククラウドサービス「 Microsoft Azure 」では、次のようにさまざまな DaaS を提供しています。
Azure Virtual Desktop(AVD)
Azure Virtual Desktop ( AVD ) は、 Azure 上で Windows デスクトップ環境を提供する DaaS です。マルチセッション機能により、複数ユーザーが同一の Windows 10/11 環境でリソースを共有でき、コスト効率が高い点が特徴となっています。
Microsoft 365 や Microsoft Entra ID (旧称 Azure Active Directory )との統合もスムーズで、リモートワークや多拠点アクセスのための柔軟なデスクトップ管理やセキュリティ管理が可能です。高度なカスタマイズができる点もメリットで、大規模な環境での利用に適しています。

Citrix DaaS Standard for Azure
Citrix DaaS Standard for Azure は、 Citrix が提供する Azure ベースの DaaS です。 Citrix が運用する「 Citrix Cloud 」をコントロールプレーンとし、ユーザーが運用する Azure 環境に仮想マシンを展開します。
Citrix のエコシステムと Azure を連携させることで、アクセス管理やアプリケーションの配信などがスムーズに行えます。従来の VDI が備える高度な機能を必要最小限に絞り、コストを抑えていることが特徴です。高機能な VDI を利用したいものの、コストがネックとなっている企業に適しています。
VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure
VMware Horizon Cloud on Microsoft Azure は、既存の VMware 環境をそのまま Azure に移行して DaaS として利用できるソリューションです。
VMware の管理ツールや設定が活用でき、既存の運用フローを維持しながら Azure のスケーラビリティや Windows 10/11 のマルチセッションなどのメリットを享受できます。 VMware ユーザーや、マルチクラウド戦略を採る企業に適しています。
Windows 365
Windows 365 は、 Microsoft が提供する「クラウド PC 」として知られる DaaS で、従来の PC と同様に使える仮想デスクトップ環境をクラウド上に構築できます。
各クラウド PC には用途に応じたスペックを割り当てることが可能です。導入と管理が簡単で、専門知識がなくてもすぐに利用を開始できるため、リソースが限られた中小企業や、運用負荷を抑えたい企業に向いています。
Windows 365 は Microsoft のクラウドサービスですが、厳密に言えば Azure の一部として直接提供されているものではありません。ただし、 Azure のインフラを基盤として構築されており、データは Azure 上に保管されます。また Microsoft Entra ID (旧称 Azure Active Directory )やその他の Azure サービスと統合して使用することも可能です。
3. Azure製品以外の代表的なDaaS
DaaS は Microsoft 以外にも多くのクラウドサービス事業者が提供しています。ここでは、広く利用されている代表的な DaaS について紹介します。
Amazon Workspaces(Amazon Web Service)
Amazon Workspaces とは、 Amazon Web Service ( AWS )が提供するパブリッククラウド型 DaaS です。インターネットがつながる場所であれば、場所と端末を問わずに利用可能です。 Windows または Linux OS のデスクトップ環境を選択でき、高速セットアップを利用すれば数分で利用可能となります。
Citrix DaaS
Citrix DaaSは、マルチクラウドおよびオンプレミス対応のDaaSソリューションです。先に紹介した Azure 専用のサービスとしてだけでなく、 AWS や GCP 、あるいはオンプレミス環境にも展開できます。
VDI 製品の大手である Citrix のさまざまなサービスをクラウド上で利用でき、 Citrix 独自のプロトコルによりネットワーク帯域が限られている環境でも高いパフォーマンスを維持できる点が特徴です。
4. オンプレミスのVDIからAzure Virtual Desktopへの移行方法
オンプレミスの VDI から DaaS へ移行する場合、適切な方法で行うことが重要です。ここでは AVD を例として手順を解説します。
1. 移行計画を立てる
まずは現在の VDI 環境の調査を行い、 AVD への移行に必要な要件を確認します。主な要件は次のとおりです。
- 必要なスペック(ユーザー数、仮想マシン構成、データ量など)
- コスト
- セキュリティ・コンプライアンス要件
- 移行スケジュール など
2. Azure環境を整える
AVD を利用するために必要なライセンスやアカウント、前提条件を確認して用意します。
詳しくは以下のページをご確認ください。
3. 仮想デスクトップ環境を構築する
Azure 上に AVD 環境を構築します。主な作業は次のとおりです。
- ホストプールの作成
- セッションホストの構成
- プロファイル管理の設定
4. アプリケーションとデータを移行する
移行ツール「 Azure Migrate 」を使用して、オンプレミスの VDI 環境から AVD へアプリケーションとデータを移行します。
5. 運用・管理と最適化を行う
運用開始後も、継続的にパフォーマンスの最適化やコスト管理を行います。
5. まとめ
本記事では、 DaaS と VDI の概要と違い、メリット・デメリット、代表的な DaaS について解説しました。働き方改革やテレワークの普及、デバイスの多様化に伴い、様々な DaaS が登場しており、特にMicrosoft Azureでは、さまざまなニーズに合わせたDaaSを提供しています。 DaaS 導入により、コスト削減やセキュリティ向上を見込むことができますので、ぜひ専門家の支援を受けながら、導入を検討してみてください。
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