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クラウドネイティブな開発手法とは?アプリケーション開発に集中できる方法を解説
近年、システム開発において、サーバーレスを活用したアーキテクチャを採用する例が増えています。サーバーレスとは、サーバーを意識することなくアプリケーションの処理を行う技術です。サーバーレスの導入により、マシンリソースの効率化に伴うコスト削減が実現でき、その分アプリケーション開発にリソースを集中することができるようになります。
本記事では、サーバーレスの概要とメリット・デメリット、サーバーレスが向くシステムと向かないシステムについて解説します。
1.サーバーレスとは
クラウドの普及に伴い、サーバーレスという言葉をよく耳にするようになりました。サーバーレスとはどのようなものでしょうか。まず、サーバーレスの定義、アーキテクチャ、コンテナとの違いについて解説します。
サーバーレスの定義
サーバーレスとは、名前の通り、サーバーに依存することなくアプリケーションを実行する技術のことを指します。
サーバーレスは、クラウドを前提とした技術です。実際はアプリケーションを実行させるためのサーバーが存在しますが、抽象化されており利用者からは存在を意識されることがありません。サーバーはクラウドサービス事業者が管理し、インフラのプロビジョニング、運用保守、スケーリングはクラウドサービス事業者が責任をもって実施します。
サーバーレスのアーキテクチャ

サーバーレスの技術を採用してアプリケーションを実行させるアーキテクチャを、サーバーレスアーキテクチャと呼びます。サーバーレスアーキテクチャでは、例えばデータの更新や、ファイル・メールの受信など、特定のイベントが発生すると、サーバーレスの実行基盤が起動して事前定義したプログラムを実行する仕組みです。必要なときだけ処理を起動するため、常時サーバーが稼働しているシステムよりもリソース削減が可能で、効率的にサーバーを運用することができます。
サーバーレスとコンテナの違い

コンテナとは、アプリケーションを実行するために必要なライブラリやアプリケーションモジュールを一つにまとめたものです。コンテナにはアプリケーション実行に必要なものが一通り揃っているため、コンテナをサーバーに載せるだけでアプリケーションが実行可能となります。サーバーレスとコンテナの類似点、相違点は下記の通りです。
サーバーレスとコンテナの類似点
サーバーレスもコンテナも、アプリケーションをデプロイしてそのまま実行させることができます。また、物理サーバーまたは仮想サーバーを構築するより効率的にアプリケーション実行が可能です。
サーバーレスとコンテナの相違点
サーバーレスとコンテナは、いくつかの観点において違いがあります。
プラットフォーム
サーバーレスはクラウド上での利用が前提ですが、コンテナはオンプレミスでも動作可能です。
コスト
一般的に、サーバーレスはクラウドサービスのひとつであるため基本的に従量課金制となりますが、コンテナはオンプレミスで使用する場合はサーバーの導入・管理コストが必要です。
カスタマイズ性
サーバーレスは仕様の制約が大きいというデメリットがありますが、コンテナはサーバーなどのインフラから、 OS 、アプリケーションレイヤまで自分達で選択できるため、比較的自由度が高いと言えます。
2.サーバーレスのメリット・デメリット
サーバーレスはクラウド上で簡単にセットアップして利用できる便利なサービスですが、具体的にどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。ここでは、サーバーレスのメリットとデメリットについて解説します。
サーバーレスのメリット
サーバーレスのメリットは下記の通りです。
- ランニングコストの削減
- 高い可用性とスケーラビリティ
- 利用した分だけの課金
ランニングコストの削減
サーバーレスにより、開発者の生産性が向上し、運用コストを削減することが可能です。ソースコードの作成・修正の負荷が軽減され、 OS のメンテナンスや障害対応など、サーバーの運用保守負担も軽減されます。それにより、開発者はその分アプリケーション開発業務に集中する時間を増やすことができます。
高い可用性とスケーラビリティ
サーバーを利用してシステムを構成する場合、可用性を高めるために、サーバーやデータセンターの冗長化などを検討する必要があります。また、アクセス数やデータ量の増加に伴い、サーバーの増設などを検討する必要もあります。
サーバーレスはクラウドサービス上で提供されるため、可用性やスケーラビリティはクラウドサービス事業者側の責任で担保されます。そのため、自前でシステムを導入するより高い可用性やスケーラビリティを実現することが可能です。
利用した分だけの課金
サーバーレスは、一般的に、処理を実行した分だけコストがかかる従量課金制となっています。そのため、処理を実行しない時間はコストがかからず、コスト削減につなげることができます。
サーバーレスのデメリット
サーバーレスのデメリットは下記の通りです。
- カスタマイズ性の低下
- 処理性能・応答性が低い
- ベンダーロックイン
カスタマイズ性の低下
サーバーレスは、クラウドサービス事業者が提供するサービスです。こうしたサービスは、インターフェースの連携方法やキャパシティなどに制約を設けている場合があります。こうした場合、ユーザー固有のシステムの柔軟性やカスタマイズの度合いに影響を及ぼす可能性を考慮する必要があります。
処理性能・応答性が低い
サーバーレスは、オンプレミスで高性能なサーバー上で常にアプリケーションが稼働しているアーキテクチャと比較すると、リクエストを受けてからアプリケーションの起動までタイムラグがあるため、応答性が低いと言われています。高い応答性・処理性能が求められるシステムには向かない場合があります。
ベンダーロックイン
サーバーレスアーキテクチャは、一般的にクラウドサービス事業者が定める仕様に準拠しており、基本的に複数のクラウドや、オンプレミスでの実行を想定していません。
また、1つのクラウド上で開発したサーバーレスアプリケーションを他のクラウドへ移行することに制約・制限が発生することもあります。そのため、ベンダーロックインに陥る可能性があるということも考慮する必要があります。
3.サーバーレスの活用シーン
メリット・デメリットを勘案しても、非常に便利なサーバーレスですが、どんなシステムにも向いているのでしょうか。ここでは、サーバーレスが向くシステムと向かないシステムについて解説します。
サーバーレスが向くシステム
サーバーレスは、独立性が高く、疎結合な単純処理に最も向いています。例えば下記のような処理・アーキテクチャを採用したシステムが向いています。
- 送信されてきたデータの加工を行う処理
- イベント駆動の業務処理
サーバーレスは、その高いスケーラビリティにより無限にスケールさせることができます。
例えば、大規模な受信データに対して、細かく分割された単純な処理を用いて並列処理を行うような目的には非常に向いていると言えます。
サーバーレスが向かないシステム
サーバーレスのデメリットのひとつに、処理性能(応答性)が低いというものがあります。即応性が求められるシステム(低レイテンシなアプリケーション処理)は不利となります。また、サーバーレスは疎結合で独立性の高いものに向いているため、他の処理と密接に連携するものも性能面で不利となる恐れがあります。
4.まとめ
本記事では、サーバーレスの概要とメリット・デメリット、サーバーレスの活用シーンについて解説しました。サーバーレスの導入により、システム開発・運用保守コストを抑え、その分のリソースをアプリケーション開発に注ぎ込むことが可能となります。ぜひ専門家の支援を受けながら、導入を検討してみてください。
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Tag: サーバーレス
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