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Azure Monitorで収集可能なデータや監視手法について
近年クラウドサービスの普及によりオンプレミス環境のインフラ設備をクラウド環境に移行する企業が増えています。クラウド環境は従量制課金であることから、上手く運用することで費用の削減も見込めることがメリットです。
しかしそのためには正常かつ効率的にシステムが稼働しているか監視し、仮想マシンのリソースなどの、適切なスケーリングを行う必要があります。
Azure Monitor は、 Azure に立てた仮想マシンをはじめ、あらゆるシステムの情報を収集し可視化することで、最適なパフォーマンスを実現するための監視ソリューションです。本記事では、 Azure Monitor の概要、取得できるデータ、監視できる内容や手法について解説します。具体的なメリット・デメリットや使い方も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1. Azure Monitorとは?
Azure Monitor は、 Microsoft が提供する統合的なシステム監視サービスです。監視対象リソースからメトリクス情報、ログ情報を収集し、可視化、分析、洞察、アクションの実行までを提供します。2018年9月に Azure でリリースされていた監視、分析ツールが1つのサービスに結合され、統合監視ソリューションとして提供されはじめました。
収集したデータは様々な方法で可視化、分析可能です。収集したデータの分析に基づき、アラートやオートスケールの発動に活用することで、大規模な運用の効率化をサポートします。
Azure サービスの監視だけでなく、オンプレミスのログやメトリクスも収集することで一元的な管理を実現します。収集した情報を管理ダッシュボードに反映させ、監視データを検索、関連付け、および共有する高度な可視化が可能です。

図版出典:Microsoft公式サイト
システム監視の重要性
システム監視を適切に行うことで、アプリケーションのエラーやハードウェア故障などを検知し、サービス停止などの大規模障害の発生を防ぐことができます。また、障害発生時は、システム監視状況を確認することで被疑箇所を絞り込めるため、復旧までの時間短縮も期待できます。
システム監視を行わなくても、システムはサービスを提供することはできますが、障害の検知や予防ができず、障害復旧にも時間を要する恐れがあります。安定かつ継続的にサービス提供するためにも、システム監視は重要な仕組みと言えるでしょう。
2. Azure Monitorの監視内容
Azure Monitor はどのような値を取得し、どのような監視をすることができるのでしょうか。実現可能な監視内容について解説します。
Azure Monitorで使用するデータ形式
Azure Monitor で利用されるデータ形式は「メトリック」と「ログ」の 2 種類があります。取得されたデータはデータストアに格納されます。
メトリック
メトリックとは、特定の時点におけるシステムの状態を示すデータで、ほぼリアルタイムで Azure のリソースから収集されます。メトリックには、たとえばマシンリソースやネットワークトラフィックの状況など、パフォーマンスに関する情報が含まれます。このメトリックをもとに、特定の閾値を超えた場合にアラートを発する設定をすることも可能です。
ログ
ログは、システム内で発生したイベントを時系列で出力するデータです。メトリックは数値が中心ですが、ログは詳細なテキストデータが表示されます。ログを収集・分析するツール Log Analytics を通じて、データから深い洞察を得られるため、障害などの問題の根本原因を特定するために活用できます。
Azure Monitorが収集するデータソースの監視対象
Azure Monitor が監視対象として収集するデータとして、アプリケーションから、オペレーティングシステム、 Azure サービス、プラットフォームなど様々なソースがあります。代表的な収集データソースについて解説します。
アプリケーション
プラットフォームを問わずパフォーマンスと機能に関するデータです。
ゲストオペレーティングシステム
アプリケーションが実行されているオペレーティングや、関連するシステムのデータです。 Azure 以外にも、別のクラウド環境やオンプレミスといったハイブリッド環境でもデータ収集、監視が可能です。
Azureリソース
仮想マシンや Kubernetes クラスターなど、Azure リソースの操作に関するメトリック、ログです。
Azure サブスクリプション
Azure サブスクリプションの操作と管理に関するデータと、 Azure 自体の正常性と操作に関するデータです。
Azure テナント
Azure Active Directory など、テナントレベルの Azure サービスの操作に関するデータです。
Azure リソースの変更
Azure リソース内の変更に関するデータと、インシデントと問題に対処した場合などのログです。
カスタムソース
データコレクター API を使用して任意の REST クライアントからログデータを収集できます。
ご紹介した項目は代表的なものです。他にも様々なデータを取得することができます。詳しくは Microsoft 公式サイトをご参照ください。
Azure Monitorの監視手法
ここまで取得するデータについて紹介しました。本章では取得したデータでどのような監視を行うことができるのかについて解説します。
アプリケーション監視
実行中のアプリケーションに対し、動作やパフォーマンスを監視します。定期的にアプリケーションへ監視用のテストリクエストを送信し応答内容から状況を判定するなどのカスタマイズも可能です。収集したデータは Azure Monitor に集約し、アラートの通知機能、検索機能、分析機能などあらゆる機能と連携することができます。
さらに Application Insights と連携することでオンプレミス環境や Azure 以外のクラウド環境で構築された仮想マシンにホストされているアプリケーションの監視も可能です。
インフラストラクチャー監視
インフラストラクチャー監視では、 VM Insights の機能と、 Azure Monitor が収集するメトリックとログ情報を利用し、仮想マシンのリソース、ネットワーク、ストレージなどの正常性やパフォーマンスを監視できます。
パフォーマンスを監視することで、トラブルの予兆やボトルネックを早期に発見し、予知保全を実現できます。安定稼働だけでなく将来的な IT 設備の投資計画の立案などにも活用できるでしょう。
ログ監視
ログの内容から状態を判定し、異常を検出する機能です。ログを収集するためには監視対象に Log Analytics のエージェントをインストールする必要があります。
ログ監視はエージェントがインストールできる環境であれば、 Azure 以外のあらゆる環境からログを収集できます。
3. Azure Monitorの5つの機能
Azure Monitor は、システムの監視や分析機能などを統合した統合監視ソリューションです。 Azure Monitor が提供する 5 つの機能について解説します。
Insight(洞察)| パフォーマンスのモニタリング
Insight (洞察)とは、前章で紹介したように Azure Monitor を構成する Application Insights や、 VM Insights などの機能を利用して、アプリケーション、仮想マシン、インフラのリソース使用状況やパフォーマンスの状況を監視する機能です。各リソースのメトリックやログをリアルタイムで収集し、パフォーマンス状況を Azure Monitor 上で詳しく確認できます。
Visualize(可視化)|データの視覚化
Visualize (可視化)とは、さまざまなメトリックやログを組み合わせて、アプリケーションやインフラを含めた Azure クラウド全体の状況・状態を Azure ダッシュボード上で、視覚的にわかりやすく表示する機能です。Workbook や PowerBI といった分析ツールと連携して分析レポートを作成することも可能です。システムの動向や異常を直感的に発見しやすくなり、データに基づく迅速な意思決定をサポートします。
Analyze(分析)| データの詳細分析
Analyze (分析)は、収集したメトリックとログを分析する機能です。メトリックはメトリックエクスプローラーを使用して値を視覚的に表示し、ログについては Log Analytics を使用して特定の条件に合致するログを抽出し、他のデータと組み合わせて表示することで、人間が分析しやすいよう視覚化することが可能です。障害発生時の根本原因を特定する際や、パフォーマンス最適化のための取り組みに非常に役立ちます。
Respond(対応)| アラートの発行
Respond (対応)は、収集したメトリックやログから、マシンリソースが事前に設定した閾値を超えた場合や、特定のメトリックやログを検出した場合に、アラートを発行する機能です。アラートの発生に従い、人間がリアルタイムに対応することで、問題への迅速な対応を可能とします。
Azure Monitor で発行できるアラートには次のような種類があります。
- メトリックアラート:リソースのメトリックを定期的に評価し、閾値を超えたときに発する
- ログ検索アラート:事前に定義した頻度でリソースログを評価し、特定の条件に一致したときに発する
- アクティビティログアラート:定義した条件に一致する新しいアクティビティが発生したときに発する
- スマート検出アラート: Web アプリケーションの異常や潜在的なパフォーマンスの問題を確認したときに自動的に発する
- Prometheus アラート: Prometheus (オープンソースの監視ツール)メトリックに基づいて発する
Integrate(統合)| 外部ツールとの連携
Integrate (統合)とは、 Export Apps や Azure Event Hubs の機能を使用して、 Azure Monitor で収集・分析したデータを取り出し、外部のツール・ソリューションへ配信することで、連携・統合を可能とした機能です。
また、 Logic Apps を使用することで、メトリックとログの読み取りと書き込みを含めた、タスクの自動化も可能です。この機能により、外部のツールやソリューションと Azure Monitor を統合したワークフローを構築することができるようになります。
4. Azure Monitorのメリット
Azure Monitor を利用することで、次のようなメリットが得られます。
迅速な異常検知
Azure Monitor は、システム全体をほぼリアルタイムで監視することにより、異常の発生を迅速に検知し、即座にアラートを発行する仕組みを提供します。たとえば、セキュリティの脅威や疑わしいアクティビティを検知したらすぐに検出するため、大規模障害などに発展する前に対応することが可能です。システムの安定稼働を維持しやすくなります。
複数環境の一元的な監視
Azure 環境のリソースだけでなく、オンプレミス環境や他のクラウドサービスも一元的に監視できるため、環境ごとに異なるツールを使用する必要がありません。ハイブリッド環境やマルチクラウド環境でもシステム全体を包括的に把握でき、担当者の作業負荷を減らしながら運用を効率化することが可能です。
コスト・パフォーマンスの最適化
リソースの使用状況を細かく把握できるため、パフォーマンスのボトルネックとなっている箇所を特定し、対応できます。また、使用率の低いリソースや不要なリソースを見極めるためにも役立ち、コストの無駄を最小限に抑えることが可能です。
データに基づく意思決定の実現
システムやリソースから集めた膨大なメトリックとログデータを一元管理し、高度な分析を行うことで、データに基づく精緻な意思決定を可能にします。
たとえば、パフォーマンスの傾向やリソースの消費パターンを把握し、予測可能な運用課題を事前に特定したり、ビジネスニーズに応じて適切なスケーリングやリソース配置を行ったりするために効果的です。またダッシュボードで視覚的にわかりやすく情報共有ができるため、チーム内での合意形成や戦略的判断もスムーズになります。
5. Azure Monitorのデメリット
メリットの多い Azure Monitor ですが、利用する上では次のようなポイントに注意する必要があります。
専門知識が必要
Azure Monitor の機能を十分に活用するには、 Azure Monitor の主な機能や、その機能が実際にどこのレイヤーまで適用されるのか、さらに設定方法などについての理解が求められます。社内の人的リソースが不足している場合は、専門家に相談することもおすすめです。
継続的なコスト管理が必要
Azure Monitor の料金は収集するデータの容量やログの保持期間、アラートの監視するシグナルの種類と数などに応じた従量課金制です。大量のデータを収集・保持する場合などは予想以上にコストが膨らむおそれがあります。適切な設定の検討や、継続的なコスト管理が必要です。
6. Azure Monitorの料金
料金体系は、基本的にサービスを利用したデータの容量に応じて変化する従量課金制で、取り込むデータの容量に応じて課金される仕組みです。
Azure Monitorの利用を開始すると、標準メトリック、アクティビティログの収集は自動的に有効になり、監視機能を無料で利用できます。取り込まれたデータを使用する高度な監視機能も追加コストなしで利用できます。
他にもカスタムメトリック、 Web テスト、アラートルール、通知手法に応じて料金が設定されています。詳しくは Microsoft 公式サイトをご参照ください。
※参考:Azure monitorの価格
7. Azure Monitorの使い方
最後に、 Azure Monitor での基本的な監視設定と監視結果の確認方法を紹介します。
リソースの監視設定
Azure でリソースを作成すると Azure Monitor が自動的に有効化され、メトリックとログの収集が開始されます。これにより、リソースのパフォーマンスや操作状況の基本的な監視が可能です。
ただし、詳細なログデータの収集や高度な分析機能を利用するためには、追加の設定が必要です。具体的には、 Log Analytics ワークスペースを作成し、リソースを接続します。また、 Azure Monitor エージェントを対象リソースにインストールすることで、オンプレミスや非 Azure 環境へも監視を拡張することが可能です。
監視結果の確認
監視データは Azure ポータルの「 Azure Monitor 」から確認できます。アラートの履歴やメトリックデータのグラフが表示され、パフォーマンス状況を視覚的に把握可能です。ログデータに対してクエリを実行し、詳細なデータを抽出することもできます。また、ダッシュボードをカスタムして重要なデータをまとめることも可能です。

図版出典:Microsoft公式サイト
8. まとめ
システムを安定的かつ継続的に運用するためには統合的な監視、分析ソリューションは欠かせません。また上手く使いこなせばコスト削減や将来的な IT 投資計画の立案に大きく役立つでしょう。
Azure Monitor は、 Azure 環境に限らずオンプレミス環境やマルチクラウド環境など幅広いソースからデータをほぼリアルタイムで収集し、統合的な監視を実現します。 Azure ポータルから簡単に設定・結果の確認ができるため、手間をかけずに迅速な意思決定を実現するために効果的です。
しかし、自社の利用状況にあわせた監視設定をすぐに始めるのは難しいかもしれません。 Azure Monitor には無料枠もあるので、まずは基本的なメトリックから監視することをお勧めします。自社で設定・運用が難しい場合、詳細の導入に当たっては専門家への相談をご検討ください。
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Tag: Azure Monitor
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