目次
Microsoft Azureの主な機能、特徴を理解しよう
近年、従来のオンプレミスに代わりクラウドを導入する企業が増えています。クラウドはオンプレミスと比べて、インフラ調達の迅速性や、高い拡張性・可用性・セキュリティなど大きなメリットがあります。
マイクロソフト社の Microsoft Azure は、シェアを急激に拡大しており、後発のサービスながらトップの AWS を猛追しているサービスです。それだけに Azure のサービス内容や特徴について気になっている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、クラウドと Azure の概要、活用シーン、料金を解説したのちに、Azure 利用に向いている企業と移行のステップについて解説します。
1. クラウド / Azure とはどのようなものか
はじめに、Microsoft Azure の概要について説明します。
Microsoft Azure とは
Microsoft Azure は、マイクロソフト社が提供するクラウドサービスの総称です。現在、Amazon が提供する AWS ( Amazon Web Services )や、Google が提供する GCP ( Google Cloud Platform )など、様々なクラウドサービスが存在していますが、Azure もそれらと同様の「パブリック・クラウド」と呼ばれるクラウドサービスです。
Azure では、サーバーやネットワークなどの IaaS や、ID 管理、データベース、データ分析、IoT などの、PaaS を中心にさまざまなサービスを提供しています。
Microsoft は、世界のパブリッククラウドサービス市場のシェアで1位(17.1%)となっており、 Azure サービスの需要の高さがわかります。
クラウドとは
そもそも、クラウドとはどのようなものでしょうか。クラウドとは、企業、個人を問わず、インターネットを介してオープンにコンピューティング環境を提供しているサービスを指します。利用者はインターネットに接続して Web ブラウザやスマホアプリなどを介して利用することができます。
クラウドの種類
一言でクラウドと言っても、いくつかの種類に分類することができます。一般的なクラウドサービスの種類は下記の通りです。
- SaaS ( Software as a Service )
- PaaS ( Platform as a Service )
- IaaS ( Infrastructure as a Service )
SaaS( Software as a Service )
SaaS ( Software as a Service )は、アプリケーションが持つ機能をサービスとして提供するものです。業種や業務別のアプリケーションから、 SNS やクラウドメールのようなコミュニケーションツールなども SaaS として分類されています。たとえば、 Microsoft 365 や Dynamics 365 、 Azure DevOps などのサービスが該当します。
PaaS( Platform as a Service )
PaaS ( Platform as a Service )は、アプリケーションを開発・実行するためのツールや環境(プラットフォーム)をサービスとして提供するものです。プログラミング環境やデータベースなどの機能をネットワーク経由で提供します。近年は、データ分析や AI (人工知能)などの最新技術も組み込まれています。PaaS に該当するサービスは、 Azure App Services や Azure Functions 、 Azure SQL Database などです。
IaaS( Infrastructure as a Service )
IaaS ( Infrastructure as a Service )とは、サーバーなどのコンピューターやストレージ、ネットワークなどのハードウェアが提供する機能をサービスとして提供するものです。物理的なハードウェアを疑似的に分割・統合する仮想化の技術を活用し、利用者にコンピューター資源を割り当てます。IaaS に該当するサービスは、 Azure Virtual Machines や Azure Blob Storage 、 Azure Virtual Network などです。
Azure のサービスは、インフラの現場でマネージドサービスや認証・セキュリティなどのプラットフォームとしても高く評価されています。
2. Azure を使うとどんなメリットがあるのか
次に、Azure の特徴とメリットについて解説します。Azure のサービスが、どのようなサービスであるのかといった全体像を理解するために、Azure が持つ下記の特徴とメリットを理解していきましょう。
- マイクロソフト製品との親和性が高い
- グローバルネットワークによる高い可用性とスケーラビリティ
- ハイパフォーマンスなコンピューティング
- 高セキュアな環境
- Python 開発者向けのサポートが充実している
マイクロソフト製品との親和性が高い
Azure はクラウドサービスの分野でも非常に強い存在感を示しています。その要因のひとつとして、既存の PC 環境の構築において強い存在感を示していることが挙げられます。
改めて言及するまでもなく、マイクロソフト社は Windows や Office などを通じて既存システムにおいて他を圧倒しています。Azure は、これらの技術に基づいた連携の良さや企業とのつながりを活かして、クラウドサービスの分野でも存在感を高めています。
Windows 、Office の他にも、多くの企業で導入されている Active Directory 、SQL Server といった製品との親和性が高く連携や移行がしやすいため、既存環境がマイクロソフト製品を中心とした構成となっている場合は Azure へのクラウドリフト&シフトがしやすいことが大きなメリットです。
グローバルネットワークによる高い可用性とスケーラビリティ
Azure は、高性能なコンピューターを世界各国のデータセンターに構築することで強靭なネットワークを構築しています。
Azure を提供するマイクロソフトは、世界最大規模の「マイクロソフト グローバル ネットワーク」と呼ばれる巨大なネットワークを所持しており、データセンターの数については、2021 年 5 月時点で、世界 60 ヶ所以上あり、世界のユーザーに安全かつ迅速にサービスを提供しています。
Azure のサービスは、このネットワーク内で、サービスをグローバルレベルに分散配置しているため、単一のサーバー障害やリージョン障害にも耐えられる高い可用性、数千台規模のスケーラビリティを誇っています。
また、 Azure だけでなく、Bing 、Dynamics 365 、Microsoft 365 、Xbox も利用しており、何兆もの要求に応えられるハイパフォーマンスなネットワークが大きな特徴でありメリットでもあります。
ハイパフォーマンスなコンピューティング
Azure のデータセンターに設置されているコンピューターは、スパコンランキング TOP500 にもランクインするほどの高性能です。また 2019 年には、AI の開発団体である OPEN AI と、スパコンランキング 5 位に入る性能のコンピューターを共同開発しており「 Build 」にてサービス提供しています。
高セキュアな環境
Azure は、高いセキュリティを保つために、さまざまな取り組みをおこなっています。
- 安全な土台をつくるため、世界で 3,500 名のセキュリティ専門家が Azure のデータセンターやインフラ設備に対してセキュリティ対策を実施。
- ID 管理やアクセス権限の設定、ネットワークのセキュリティ保護など、セキュリティ保護に関連するサービスをAzure内にて提供。
- 膨大なデータ( 180 億件の BingWeb ページ、4,000 億件のメール、10 億件の Windows デバイス更新など)の分析により、最新のセキュリティリスクを分析し、脅威を迅速に発見。
これらの対策により、高いセキュリティを求める多くの企業でも、Azure が利用されています。
Python開発者向けのサポートが充実している
Azure は、 Python 開発者向けのサービスが充実していることもメリットです。たとえば、 Azure SDK for Python や Azure Functions といったサービスが挙げられます。Microsoft 社は、Python 開発者に役立つドキュメントやチュートリアル、サンプルコードを多く提供しています。
3. Azure を活用して何ができるのか
Azure では IaaS 、 PaaS を中心にさまざまなサービスが提供されています。それらのサービスをどのような場面でどう活用できるのか、下記のユースケースに沿って解説します。
- リモートワークを実現する
- オンプレミスのファイルサーバーをクラウドへ移行する
- オンプレミスとクラウドを安全に接続する
- Microsoft 365 と他のアプリケーションを同じ ID で利用する
- セキュリティを強化する
- BCP 対策を取る
- 企業データをクラウドで統合する
- コストを最適化する
- 管理負担を軽減する
- 業務を効率化・自動化する
- 意思決定を迅速化する
リモートワークを実現する
Azure を利用して、オフィス以外でも業務を行うリモートワークを実現することが可能です。リモートワークを行うには下記のサービスを利用します。
- Azure Virtual Desktop( AVD )
- Windows 365
Azure Virtual Desktop( AVD )
Azure Virtual Desktop ( AVD )は、Azure クラウド上で VDI(仮想デスクトップ)環境を提供するサービスです。 Windows10 マルチセッションに対応していることが大きな特徴であり、1 つの仮想 PC の中で、複数のデスクトップ環境を生成し、複数人で共有することでコスト削減効果が期待できます。
Windows 365
Windows365 は、「 Windows 365 クラウド PC 」とも呼ばれ、クラウド上で仮想デスクトップとして設置された Windows OS をインターネット越しにパソコンやタブレットから利用できる VDI サービスです。構築・運用の難易度が高い Azure Virtual Desktop の欠点を補うためのサービスであり、 Windows 365 はマイクロソフトがあらかじめ用意したメニューを選択することにより簡単に構築・運用ができます。
オンプレミスのファイルサーバーをクラウドへ移行する
オンプレミスで稼働しているファイルサーバーをクラウドへ移行するには、下記のサービスが有効です。
- Azure Files
- Azure File Sync
Azure Files
Azure Files は、Azure が提供するフルマネージドのファイル共有サービスです。業界標準プロトコルである SMB 3.0 や NFS などをサポートしているため、互換性を気にせずファイル共有が可能です。オンプレミスのサーバーに直接マウントしてファイルを移行することもできます。
Azure File Sync
Azure File Sync は、オンプレミスまたはクラウド上の仮想マシンと Azure Files を同期するためのサービスです。オンプレミスで運用中のファイルサーバーを停止することなくファイルの同期による移行が可能となります。
オンプレミスとクラウドを安全に接続する
オンプレミスのシステムと Azure クラウドを安全に接続するには、下記のサービスを利用することで実現可能です。
- Azure VPN Gateway
- Azure ExpressRoute
Azure VPN Gateway

図版出典:Microsoft 公式サイト
Azure VPN Gateway は、オンプレミス環境や自社のデータセンターのネットワークと、Azure の仮想ネットワークの間を VPN ( Virtual Private Network )で接続するためのサービスです。 VPN により、インターネットを介してもセキュアで安全な接続が可能です。
Azure ExpressRoute

図版出典:Microsoft 公式サイト
Azure ExpressRoute は、オンプレミス環境や自社のデータセンターを、 Azure と閉域網で直接接続するサービスです。インターネットをではなく専用回線で直接接続するため、安全で品質の高い接続が可能です。
Microsoft 365と他のアプリケーションを同じIDで利用する
Microsoft 365 と、他のアプリケーションを同じ ID で利用するには、下記のサービスが有効です。
- Microsoft Entra ID
- Microsoft Entra Connect
Microsoft Entra ID

図版出典:Microsoft 公式サイト
Microsoft Entra ID (旧 Azure Active Directory )とは、マイクロソフトが提供するクラウドベースのID管理・アクセス管理サービスです。 Azure 、 Microsoft 365 や、外部の SaaS 、独自開発のアプリケーションなどの認証・認可やアクセスを管理します。 Microsoft365 とクラウド上の他のアプリケーションを同じ ID で認証することが可能となります。
Microsoft Entra Connect

図版出典:Microsoft 公式サイト
Microsoft Entra Connect (旧 Azure AD Connect ) は、 オンプレミスの AD と、 Microsoft Entra ID を同期するためのサービスです。オンプレミスのアプリケーションと Microsoft Entra ID を同期することで、同じ ID を使って利用できるようになります。
セキュリティを強化する
Azure のセキュリティを強化するにはさまざまな方法がありますが、代表的なものに下記のサービスがあります。
- Microsoft Entra ID (条件付きアクセス)
- Microsoft Entra Multi-Factor Authentication
Microsoft Entra ID(条件付きアクセス)
条件付きアクセスとは、 Microsoft Entra ID の機能のひとつで、ユーザー単位でリソースへのアクセス方法に条件を設けることで制御を行う方法です。例えば、社外の端末からのアクセスに対しては、多要素認証を必要とするなどの制御が可能です。
Microsoft Entra IDは「誰でも、どこからでも」認証要求が可能という点がメリットですが、裏を返せばセキュリティリスクでもあります。条件付きアクセスは、このリスクに対処するために設けられた機能です。
Microsoft Entra Multi-Factor Authentication

Microsoft Entra Multi-Factor Authentication も Microsoft Entra ID が持つ機能のひとつで、多要素認証( MFA )を実現します。多要素認証( MFA )とは、 Web サイトやアプリケーションなどのリソースにアクセスする前に、少なくとも 2 つの異なる検証要素を用いて自分の身元を証明することをユーザーに求めることでセキュリティを強化する機能です。
BCP対策を取る
BCP( Business Continuity Planning :事業継続計画)とは、企業の緊急事態発生時に事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧事業継続するための手段を決めておく計画のことです。 Azure では、 BCP の一部である DR (ディザスタ・リカバリ)を担うサービスとして下記を提供しています。
- Azure Site Recovery
Azure Site Recovery

図版出典:Microsoft 公式サイト
Azure Site Recovery とは、 DR (ディザスタ・リカバリ)を行うためのサービスです。オンプレミスまたは Azure のプライマリサイト(リージョン)にある物理サーバーや仮想マシンを、セカンダリサイトの Azure へレプリケーション(データ同期)し、プライマリサイトに障害が発生した場合は、セカンダリサイト(リージョン)へのフェールオーバー(切替え)を行います。
企業データをクラウドで統合する
規模の大きな企業では、部門やサービスごとに異なるシステムを利用しているケースがあり、そのためデータ型の不統一や分散の原因になっています。データを効率的に利活用するには、分断されたデータを一元管理する必要があります。 Azure ではそのためのサービスとして下記を提供しています。
- Azure Data Factory
Azure Data Factory

図版出典:Microsoft 公式サイト
Azure Data Factory は、さまざまな形式のデータを収集し連携するデータ統合管理サービスです。 ELT または ETL と呼ばれ、 Extract (抽出)、 Transform (変換)、 Load (格納)の機能を備えており、さまざまなシステムに連携して、データ分析に必要な情報を抽出するための一連の処理を自動化することができます。
コストを最適化する
Microsoft Cost Management を利用すれば、 Microsoft Azure のコストの分析や管理、最適化が可能になります。たとえば、仮想マシンやストレージ、データベースなどの各サービスでどれだけのコストがかかっているかをスムーズに把握することが可能です。リソースを最適化することで、不要なコストを削減できるでしょう。
管理負担を軽減する
Azure Automation を利用すれば、 定期的なタスクを自動化し、インフラ管理の負担を軽減できます。たとえば、サーバーのパッチ適用やバックアップのスケジュール管理、不要なリソースのクリーンアップなどを自動化することが可能です。
業務を効率化・自動化する
Azure DevOps や Azure AI Bot Service を利用すれば、業務の効率化や自動化を推進できます。 Azure DevOps では、コードのバージョン管理や進捗状況を可視化することが可能です。 Azure AI Bot Service では、顧客サポート業務を効率化するチャットボットを簡単に作成できます。顧客の質問に24時間対応できるシステムを構築すれば、業務の効率化・自動化だけでなく、顧客体験の向上にもつながるでしょう。
意思決定を迅速化する
Azure Synapse Analytics や Azure Machine Learning を利用すれば、データドリブンな意思決定を迅速に行えます。 Azure Synapse Analytics とは、データウェアハウスやデータレイクを活用して、大量のデータを高速に分析できるサービスのことです。
たとえば、リアルタイムデータを分析し、売上トレンドや市場変化を即座に把握することで、素早い意思決定を支援できます。
Azure Machine Learning では、 AI や機械学習モデルを簡単に作成・運用できます。需要予測や異常検知、顧客セグメント分析といった膨大なデータを活用することで、高度な分析を実現できるでしょう。経営判断の精度向上にもつながります。
4. Microsoft Azureの主な機能
ここでは、 Microsoft Azure の主な機能を紹介します。
Azure Portal
Azure Portal とは、 Azure 上のサービスを一元管理できる統合コンソールです。インターネットを介して Azure のサービスを一元管理できます。さらに、利用しているサービスのリソースや状態を確認したり、設定したりすることも可能です。様々なクラウドサービスをまとめて管理できるため、運用管理の手間を大幅に削減できます。
Microsoft Entra ID
Microsoft Entra ID (旧 Azure Active Directory )とは、認証やアクセス許可などに利用する ID を管理するアクセス管理ソリューションです。SSO (シングルサインオン)などの利便性が高い認証を利用できます。クラウドサービスの利用に必要なユーザー管理や認証を一元化できるため、セキュリティを確保しながら業務効率を高めることが可能です。
Azure Storage
Azure Storage とは、データをクラウドに保管できるクラウド ストレージ ソリューションです。Azure Blob Storage や Azure Files など、さまざまなストレージサービスが提供されています。Microsoft 側でハードディスクの拡張やセキュリティ対応などを実施するため、ユーザーはストレージの利用に集中できるのがメリットです。データの容量や種類に応じて最適なストレージを選択できるため、コストを抑えながら効率的なデータ管理を実現できます。
Azure Virtual Machines
Azure Virtual Machines とは、サーバーなどの物理的なハードウェア上に仮想マシンを提供するコンピューティング リソースです。アプリケーションのデプロイや動作検証の環境などの用途で利用できます。必要な時に、必要なスペックの仮想マシンを迅速に準備できるため、ビジネスの変化に柔軟に対応できます。
Azure Information Protection
Azure Information Protection とは、クラウド上で電子メールやドキュメントの保護を行うサービスです。対象ファイルに対して閲覧や書き込みといった権限を付与できるため、情報漏えいのリスクを軽減できます。機密情報の分類やラベル付けを自動化できるため、重要データの管理と保護を効率的に実施できるでしょう。現在は、 Microsoft Purview Information Protection の一部として提供されています。
Azure AI
Azure AI と は、 Microsoft が提供しているAI(人工知能)を利用できるサービスです。AI 開発プラットフォームの Azure AI Studio や、 Azure OpenAI Service 、 Azure AI 検索 、 Azure AI 音声分析などの機能を利用できます。普段行っている業務に AI を簡単に導入することが可能です。
Azure Functions
Azure Functions とは、サーバーを構築せずにコードを実行できるサーバーレス ソリューションです。C# や JavaScript 、 F# 、 Python などの言語に対応しており、ユーザーは使い慣れた言語で開発を進められます。サーバー管理の手間がなく、開発に集中できるため、素早くアプリケーションを構築・デプロイできます。
Azure DevOps
Azure DevOps とは、開発から運用までのシステムを効率的に遂行できるサービスです。Azure 上でアプリケーションの開発プロセスを実現し、共同作業を効率化できます。プロジェクトの進捗状況を可視化できるため、開発の品質とスピードを向上させることが可能です。
5. Azure利用に向いている企業
Azure の他にも、 AWS や GCP といったクラウドサービスがありますが、どういった企業が Azure に向いているのでしょうか。 Azure の導入が向いている企業とは下記のような企業です。
- WindowsやMicrosoft365などのMS製品のライセンスを所持している企業
- 高い可用性やスケーラビリティを必要とするWebサービスを提供する企業
- 個人情報などの機密事項を取り扱う企業
WindowsやMicrosoft365などのMS製品のライセンスを所持している企業
Azure はマイクロソフト製品と親和性の高いクラウドサービスです。オンプレミスで利用中の Windows や Microsoft 365 、 SQL Server 、 Active Directory などのマイクロソフト製品は Azure への同期や移行がしやすいだけでなく、一部の製品については、ライセンスを Azure へ移行してもそのまま活用することができます。
高い可用性やスケーラビリティを必要とするWebサービスを提供する企業
Azure は「マイクロソフト グローバル ネットワーク」による高い可用性・スケーラビリティ・パフォーマンスが大きな特徴です。 Azure を利用することにより、信頼性の高い Web サービスや Web サイトなどを構築・運用することができます。
個人情報などの機密事項を取り扱う企業
Azure は、高いセキュリティを保つために、ID管理やアクセス権限の管理など、セキュリティ保護を目的としたサービスを Azure 内で提供しており、またセキュリティ専門家を集めて最新のセキュリティリスクを分析し、脅威に対して迅速に対応しています。 Azure の高いセキュリティにより、企業の機密事項を安全に運用することができます。
6. Azureへの移行はどのようなステップで進めるのがよいのか
Azure を利用するには、現在利用しているオンプレミス環境の業務システムを Azure へ移行する必要があります。オンプレミスから Azure への移行は、段階を踏んで着実に検討していく必要があるため、下記のステップで実施していくことがおすすめです。
- 【STEP1】移行範囲の決定
- 【STEP2】Azure導入範囲の分析
- 【STEP3】事前検証(PoC)
- 【STEP4】システム・機能ごとの移行設計
- 【STEP5】Azure移行後の監視・運用設計
- 【STEP6】運用開始後のセキュリティアセスメント
【STEP1】移行範囲の決定
まず、対象の業務システムのうち、 Azure に移行する範囲を決定する必要があります。 自社の業務内容と、移行対象のシステムの役割・特性、現在の運用ポリシー、運用体制を整理・分析して、 Azure を活用するのがよい範囲と利用する Azure のサービスを決定します。
【STEP2】Azure導入範囲の分析
次に、 Azure を活用する範囲を、システム単位・機能単位で検討します。 Azure 利用における制限事項を分析し、必要に応じて運用体制の改変や情報セキュリティポリシー等の見直しを行います。
【STEP3】事前検証(PoC)
STEP2 で検討した、 Azure 導入範囲のシステム・機能を、実際にAzureサービスを利用して実現できるかどうかを確認するために、事前検証( PoC )を行います。検証を通じて、問題点の洗い出しと、その具体的対策の検討を実施します。
【STEP4】システム・機能ごとの移行設計
STEP2 で検討した、 Azure 導入範囲のシステム・機能に対して、 Azure に適した形で運用するための移行設計を行います。
具体的には、ファイルサーバーの移行設計、 Microsoft 365 や他アプリケーションを同一ID で利用するための設計、システムのバックアップ設計などを行います。
また、移行後にリモートワークを実現するために仮想デスクトップを利用したい場合は、Azure Virtual Desktop を利用するためのシステム設計・運用設計などもここで行います。
【STEP5】Azure移行後の監視・運用設計
Azure 移行後に、システムが正常に稼働することを担保するための、監視設計を行います。
また、システム移行後の安定運用を実現するために、見直し後の運用体制や情報セキュリティポリシーなどを基に、新システムに合わせた運用業務フローを設計します。
また、オンプレミスと Azure を併用する環境では、アプリケーションごとにID管理をする必要があり、運用が煩雑になります。そこで、既存の Active Directory を利用して、利用するアプリケーションのシングルサインオンを実現したくなりますが、適切なユーザー設計とアクセス制御が必要になることに留意が必要です。
【STEP6】運用開始後のセキュリティアセスメント
Azureへ移行後も、システム構成は日々変わっていきます。また、サイバーセキュリティ攻撃の手口も年々巧妙化しています。そうした中、セキュリティ対策をしっかり担保できているかどうか、定期的にセキュリティアセスメントを受け、適切な対処を行うことが必要です。
7. Azureの料金
ここでは、 Azure がどのような料金体系なのか、またどのように見積もりを行えばいいのか、具体的に説明します。
料金体系について
Azure は、 AWS などと同様に従量課金となっています。具体的な課金対象については以下の通りです。
- サーバーの起動時間など、サービスを利用した時間に対する課金
- データを Azure から外部に送信する際にかかる課金。外部から Azure へデータを送る場合は課金されません。
- 容量に対する課金。ストレージサービスなどは、保存しているデータ容量に対して課金されます。
そのほか、サービスの中には固定で費用がかかるサービスもあります。
見積もり方法
従量課金制度であるため、正確な利用料金を事前に把握しておくことは難しいですが、Azure 側で公式に提供しているツール(料金計算ツール)を利用して、概算料金の見積もりを出すことは可能です。具体的には、事前に以下のことを決めておくとよいでしょう。
システム構成
サーバーの台数や、スペック等を含めると、比較的正確な概算料金を算出することができます。
サービスの起動時間
サービスの利用時間に課金されるため、サーバーなどの起動時間が 1 時間なのか、 24 時間なのか、決めておくとよいでしょう。
ただし、はじめは入力すべき数値や用語等、難しい場合もあるため、詳しいベンダー等に依頼するという方法もあります。
8. まとめ
この記事では、 Azure の概要やサービス、 Azure への移行方法について紹介しました。Azure は比較的、後発のクラウドサービスですが、既に 10 年以上の実績を持ち着実にシェアを伸ばし続けています。 特に、オンプレミスやマイクロソフト製品との連携の強さを活かしたプラットフォーム関連のサービスに Azure の強みがあります。
本記事で紹介したサービスや移行をすべて自社で行うには、スキルを持った人材が必要です。専門家に相談することも含めて検討してみてはいかがでしょうか。
Azure の導入を相談したい


資料ダウンロード
課題解決に役立つ詳しいサービス資料はこちら

-
-
Azure導入支援・構築・運用サービス総合カタログ
Microsoft Azure サービスの導入検討・PoC、設計、構築、運用までを一貫してご支援いたします。
Azure導入・運用時のよくあるお悩み、お悩みを解決するためのアールワークスのご支援内容・方法、ご支援例などをご確認いただけます。
-
Microsoft Azureを利用したシステムの設計・構築を代行します。お客様のご要件を実現する構成をご提案・実装いたします。

Tag: AWS/Azure/GCP比較 Azure移行
よく読まれる記事
- 1 Microsoft Entra IDとは? オンプレAD、Azure ADとの違いや機能、エディション、移行方法をわかりやすく解説2024.04.05
- 2 Microsoft Purviewとは?概要や主な機能、導入するメリットを解説2023.09.11
- 3 Azure Bastionとは?踏み台による仮想マシンへのセキュアな接続方法について解説2022.05.12
- 4 Azureネットワークセキュリティグループ(NSG)とは?特徴や設定時の注意点を解説2021.04.28
- 5 VDIに必要なWindows VDAライセンスとは?費用感、ライセンスの考え方について解説します!2022.08.10
Category
Contactお問い合わせ
お見積もり・ご相談など、お気軽にお問い合わせください。